新刊紹介:「経済」12月号

「経済」12月号の詳細については以下のサイトをご覧ください。興味のある記事だけ紹介してみます。
http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/
■巻頭言「いじめと人間集団」
(内容要約)
 「次長課長の河本叩き」「在特会」「ワタミの労働者いじめ」「橋下の文楽への嫌がらせ」「沖縄へのオスプレイ強行配備」などがまかり通る国で学校でいじめが起こるのは当たり前だ。学校でのいじめをなくす対処療法も大事だが「日本社会自体の歪みもなくさなければ」という実に正論、直球ストレート。


■世界と日本
【ディーセント・ワークデー】(宮前忠夫*1
(内容要約)
 「ディーセントワーク(英語)」とは平たく言うと「人間らしい労働」、つまりワタミや「原発被爆労働」に代表される「長時間低賃金労働」「危険労働」ではないまともな労働と言うことであり、「ディーセント・ワークデー」とは「そういう労働獲得のために頑張ろう!」と労組が運動する日のことである。毎年10月7日がその日らしい。


ベネズエラ大統領選挙】(新藤通弘*2
(内容要約)
ま、言うまでもなくチャベス同志がめでたく四選を果たしたわけだ。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-10-13/2012101302_01_1.html
赤旗掲載の志位同士の祝辞
 7日の大統領選挙であなたが4度目の当選を勝ちとられたことに、祝賀のあいさつを送ります。この選挙結果は、新自由主義路線に反対し、国民生活の向上に重点を置いたあなたの改革路線に対する国民の信任をあらためて示しました。
 私たちは、あなたがたが、この事業をいっそう発展させ、自立した国づくりを進める活動でさらに大きな成功をおさめられることを、心から願っています。

とはいえチャベス同志に問題がないわけではありません。まず思い浮かぶのは後継者の問題でしょう。いつまでも五選、六選とチャベス同志が大統領をやり続けるわけにも行かないでしょう。
他にもいろいろ問題はあります。
まず赤旗の指摘を見てみましょう。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-10-09/2012100907_01_1.html
チャベス大統領4選、ベネズエラ大統領選挙 改革路線 改めて信任
 チャベス政権は、豊富な石油輸出収入を国民生活改善の施策に振り向け、安価な食料品販売網の設立、最低賃金の連続的引き上げ、公的医療機関の無料化などを実現。この結果、貧困世帯の割合は、チャベス大統領就任前の1998年の44・3%から26・7%(2011年)まで大幅に引き下げるなどの成果を挙げてきました。
 チャベス氏が約10ポイントの差で対抗馬のカプリレス氏に勝利したことは、「改革の全般的な方向について多数の有権者が信任した」(経済学者ルベン・ララ氏)ことを示しています。
 一方、今回のチャベス氏の得票率は勝利した過去3回の大統領選挙と比べて最低水準にとどまりました。野党側は2年前の国会議員選の得票数からさらに100万票も上積みする「善戦」でした。治安悪化への不安やインフレなどの経済問題への懸念が影響したとの報道もあります。
 カプリレス候補は、民営化推進など新自由主義政策を信奉する右派の政治家。しかし、財界が牛耳るマスコミは、穏健な改革者のイメージを大宣伝しました。カプリレス氏は各地の遊説で、チャベス政権の「ミシオン(社会開発の諸計画)の内容はいいが、ほとんど機能していない」などの訴えを繰り返しました。
 担当者の汚職や能力不足などのためにミシオンがうまく進んでいないところがあるのは事実です。そのため、こうしたチャベス政権への不満をあおる攻撃は、大きな効果を発揮しました。
 チャベス大統領は計画の実行をきちんとフォローするしくみが不足していたことを自らの「誤り」の一つだと認め、改善を約束。勝利宣言の演説でも「よりよい大統領になる」と表明しました。

 赤旗が指摘してる問題としては「治安悪化」「インフレ」「汚職」がありますね。また赤旗が明確にはふれていないが、軽く触れてる問題として「豊富な石油輸出収入」ってのがあります。これはベネズエラの問題点としてよく指摘されますし、新藤氏も指摘しています。
 要するにベネズエラ以外の発展途上国でもよく言われることですが「いわゆるモノカルチャー経済」の問題です。「資源(ベネズエラの場合、石油)を売って食ってく」というのは悪いことではないですが、それに偏ってると資源が安値になると国の経済が危なくなってしまう。要するに商工業とのバランスがとれた経済を目指す必要がある、ということです。石油化学工業ってのが一番簡単に考えられる手ですが、そのあたりどうなんでしょうか。ま、チャベス政権以前からベネズエラが抱えてる難問で、これはどこの発展途上国も抱えてる難問(中東の産油国なんかもそうでしょう)ですので、解決困難であることは事実ですが何とか頑張って欲しいところです。


【「新日鉄住金」の発足】(大場陽次)
(内容要約)
 新日鉄住金ってのは新日鉄新日本製鉄)と住友金属工業が合併してできた鉄鋼会社です。知ってる人は知ってるでしょうが新日鉄八幡製鉄と富士製鉄が合併してできた会社で当時は大型合併と騒がれましたし、公正取引委員会独禁法違反の疑いがあるとこの合併には否定的でした。
 それが、新日鉄と住金が合併しても当時ほど騒がれないし、公取も何も言わないというのだから時代は変わった。まあ、それだけ「グローバリズムの波」とやらで日本鉄鋼業が苦しいと言うことでしょうが。実際、新日鉄住金は世界第二位で規模ではここより大きい「アルセロール・ミッタル」というのがあるわけです。これで日本の製鋼業は四社体制から「新日鉄住金」「JFEスチール川崎製鉄日本鋼管が合併)」「神戸製鋼所」の三社体制になったわけです。


特集「どうする日本の社会保障
■「社会保障制度改革推進法は何をねらうのか」(横山寿一*3
(内容要約)
要約がうまくできないので赤旗の紹介で代替します。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-08-25/2012082502_01_1.html
主張『社会保障「解体」法施行、改悪の具体化阻むたたかいを』
 民主、自民、公明の3党が、消費税増税法と抱き合わせで強行した「社会保障制度改革推進法」が22日施行されました。医療・介護・年金・生活保護などの大改悪方針を盛り込んだ法律です。法律実施の第一歩として制度改悪を議論する「社会保障制度改革国民会議」の設置を急ぐ発言が、野田佳彦政権側から相次いでいることは重大です。消費税大増税社会保障削減という「二つの激痛」を国民に強いる大改悪の具体化をストップさせることが求められます。
 社会保障制度改革推進法は、税と社会保障「一体改革」関連法のひとつです。もともと政府提出法案ではありませんでしたが、民自公3党の密室「修正」協議のなかで自民党が突然持ち出し、民主党が丸のみしたものです。
 社会保障の基本は「自助・自立」の「自己責任」であるとして、国や地方自治体の公的責任と財政支出を大後退させる方向を鮮明にしています。自民党の“社会保障の哲学”が貫かれた法律です。社会保障の向上・増進を国の責任と義務づけた憲法25条の理念を放棄する、文字通り「社会保障解体宣言」というべきものです。
 社会保障の主要財源を消費税に限る「社会保障目的税化」や、医療や介護の「給付の重点化」「効率化」など縮減まで明記しています。「医療崩壊」「介護難民」を生み出した小泉「構造改革」以上の「激痛」を国民にもたらしかねません。
 「国民皆保険」を突き崩すような条項もあります。日本医師会からは貧富の差で医療を差別する「混合診療」の全面解禁などにつながりかねないとして「政府が国民皆保険を放棄するかのような姿勢を示したことは看過するわけにいきません」と批判する意見も表明されています。
 社会保障切り捨ての推進法は、野田内閣が宣伝してきた、消費税増税は「社会保障充実のため」という口実がまったく成り立たないことを示すものです。来年度予算編成でも生活保護をはじめとする社会保障費を圧縮するとしています。消費税増税法の3党「修正」で増収分を大型公共事業に流用できる条項が盛り込まれたことと合わせ、消費税増税の道理のなさがますます浮き彫りになっています。
 重要なのは、推進法で具体的に決まっているものは国民会議(委員20人以内)設置ということだけです。各制度の実際の改悪は今後の国民会議の議論などを経て、新たな法案や法改正案として国会に出され立法化されるまで実行に移せません。国民会議発足も難航しています。民主、自民の党略的な思惑からメンバーも選べないのが実態です。国民世論を前に噴き出した矛盾の反映です。たたかいはこれからです。


■「「税・社会保障一体改革」とのたたかい」
介護保険:「介護の危機」増幅させる一体改革(日下部雅喜)】
【老人福祉:市場に翻弄、「介護難民」の実態(矢部弘明)】
(内容要約)
赤旗の記事で代替。

主張『介護報酬改定、“在宅ケア難民”を増やすな』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2012-01-27/2012012701_05_1.html
介護保険 ますます使いにくくなった、認知症の人と家族の会』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-11-08/2012110802_02_1.html
主張『介護の生活援助短縮、“使わせない”路線を転換せよ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-10-29/2012102902_01_1.html


【保育:子ども・子育て関連法でどうなる(逆井直紀)】
(内容要約)
いわゆる「子ども子育て新システム関連法」への批判。赤旗記事で代替する。
参考
赤旗
主張『保育「新システム」、自公民の強行許さず、廃案へ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-07-08/2012070802_01_1.html
『どうみる? 修正 保育「新システム」(1)』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-07-18/ftp2012071810_01_0.html
『どうみる? 修正 保育「新システム」(2)』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-07-19/ftp2012071910_01_0.html
『どうみる? 修正 保育「新システム」(3)』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-07-21/ftp2012072109_01_0.html
『どうみる? 修正 保育「新システム」(4)』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-07-25/ftp2012072510_01_0.html
『どうみる? 修正 保育「新システム」(5)』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-07-26/ftp2012072610_01_0.html
自治体義務後退する、子育て新システム 田村氏が批判』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-07-27/2012072702_02_1.html
『子ども・子育て新システム関連法案、「廃案まで頑張る」、国会要請・集会』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-08-02/2012080204_03_1.html
『子育て新システム、市町村の義務後退、滞納すれば保育所退所、田村議員追及で浮き彫り』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-08-04/2012080404_01_1.html
『新システムNO 保育充実を、東京で大集会』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-11-04/2012110401_02_1.html


【住宅:社会保障としての住まいへ(高瀬康正)】
(内容要約)
赤旗の記事で代替。住宅政策を福祉政策と思う人は少ないかもしれないが次のような記事を読めば福祉的側面があることがわかるだろう。

赤旗「UR賃貸住宅、公共住宅で継続を、公団自治協が国交相要請」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-07-28/2012072804_01_1.html


国保:自己責任と助け合いからの脱却(長友薫輝)】
(内容要約)
 国民健康保険の保険料は貧困者にとって高いため、滞納者が増えてるが適切な対応が取られていないという指摘。

参考

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-08-01/2012080104_03_0.html
赤旗国保料値上げやめよ、厚労省方針で田村議員」
 日本共産党の田村智子議員は7月26日の参院社会保障・税特別委員会で、国民健康保険料(税)が高すぎる問題を取り上げ、消費税増税で軽減されるのかと追及しました。
 田村氏は、年収300万円の世帯で年40万円になるなど、国保料が高すぎて払いきれず、保険証をとりあげられたり、不安定雇用で未加入の若者が広がっていると指摘し、「『国民皆保険』の危機だ」と述べました。
 「一体改革」では消費税増税と引き換えに低所得者向けの保険料軽減に最大2200億円を投入する一方、厚労省は保険料の引き上げなどにより、国保会計への一般会計の繰り入れ3900億円をできる限り早期に解消するよう地方自治体に求めています。
 田村氏が「これでは国保料が大幅に引き上げられることになる」と迫ると、小宮山洋子厚労相は「低所得者に配慮する」と述べつつ、「(一般会計からの繰り入れの)解消に努める。全体として努力もしていただく」と正当化しました。
 田村氏は「消費税を増税した上、保険料も値上げが続く。いまでも払えずに滞納が広がっているのに、とんでもない負担増になり、国民生活の破壊になる。こんな『改革』は撤回すべきだ」と強調しました。


【障害者福祉:「骨格提言」実現への新段階(峰島厚*4)】
(内容要約)
障害者自立支援法改正」という障害者団体の声を無視した野田政権への批判が主な内容。赤旗記事で代替。
参考
『障害者の声 なぜ聞かぬ、自立支援法「恒久化」 民自公が採決強行、田村議員反対討論』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-06-20/2012062001_03_1.html
『あきらめず 新法めざす、総合支援法強行 障害者ら決意』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-06-20/2012062015_01_1.html
『総合支援法成立、声聞かず 審議わずか、障害者ら 新法へ運動を決意』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-06-21/2012062115_01_1.html
『どうする 障害者就労、福祉と雇用 合わせた制度必要』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-09-05/2012090514_01_1.html
フォーラム開催主張『障害者の生活苦、“家族頼み”はもはや限界だ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-10-24/2012102401_05_1.html


生活保護生存権をめぐる攻防の10年(木下武徳*5)】
(内容要約)
赤旗記事で代替。
主張『生活保護たたき、生存権奪う“便乗改悪”やめよ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-05-29/2012052901_05_1.html
『親族に「扶養」説明責任、生活保護受給者 厚労省がたたき台』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-09-29/2012092901_04_1.html
生活保護、使い道まで管理、厚労省 受給抑制へ「たたき台」』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-09-30/2012093002_01_1.html
生活保護、「貧困は個人責任」公的責任は放棄』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-09-30/2012093002_02_1.html
主張『生活保護改悪案、新たな締め出しは許されぬ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-09-30/2012093001_05_1.html
主張『生活保護基準引き下げ、くらしの「防波堤」なくすのか』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-10-12/2012101201_05_1.html
『かつて反対の民主党生活保護基準引き下げ狙う』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-11-04/2012110402_01_1.html
『民主ワーキングチーム事務局長、生活保護で暴言「入りやすくすれば日本人の心が腐る」』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-11-06/2012110602_02_1.html


特集「フクシマは発信する」2
■「『福島学』の挑戦」(二瓶由美子)
(内容要約)
筆者は福島にある「桜の聖母短期大学」教員で、「福島学」とは筆者が学生相手に取り組んでいる試みである。
ググって見つかった以下のサイトを紹介しておく。

桜の聖母短期大学福島学(2年):”復興元年”を迎える福島について学ぶ」
http://www.sakuranoseibo.jp/information/studyinfo/3662/
相双ゆたどさ「桜の聖母短期大学移動文化祭“今日ゆうSmile!〜桜でつなぐ笑顔のわ〜”」
http://yumesoso.jp/yutadosa/archives/6344.html
福島民報「移動文化祭、笑顔届ける 南相馬で桜の聖母短大」
http://www.minpo.jp/news/detail/201209173688


■「原発被災者の1年半を追って」(尾崎孝史)
(内容要約)
 NHKドキュメンタリー「家族は放射能の向こうに」に登場した被災家族・木村さん一家が取り上げられている。取材者(NHKと尾崎氏)が違うとは言え取材対象(木村さん一家)は同じなので参考までにこのドキュメンタリーを取り上げたブログを紹介してみよう。

http://blackblade.at.webry.info/201109/article_134.html
NHK「家族は放射能の向こうに」
木村さん
原子力なんてなくたって、家族に会えればそれで十分だ」
原発なければ(注:父親の遺体は)12日にみつかってますよね。(助かっていたかも)そんな気分になりますよ。」
大熊町の不明者は捜索されていない。東電の人は捜索隊にはいってくれ。これは要望ではない。われわれ(注:大熊町民)からの命令だと思ってくれ」

http://urano.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-bea0.html
木村さんの手記
「大熊は今日も穏やかで、すぐにでもここで再び生活を始められるようです。
 しかし、集められた瓦礫と雑草、そして人気のない街が現実を強烈に教えてくれます。
 あなたたちが突然いなくなって、4ヶ月が過ぎ、どうしてこんなことになったのかいろいろ考えてきました。
 しかし、自然の前で私たちは、ただただ無力で、この結果に理由などないのだと驚きます。
 ただ、あなた達を救えなかったことを私は一生後悔していくだろうと思います。
 家族が津波にのまれ苦しんでいる時、私は養豚場で仕事を続けていました。誰よりも早く、あなたたちのもとへ駆けつけなければならなかった私は、未曾有の地震があったにもかかわらず、あんな津波が来るとは想像できませんでした。ほんとうに申し訳ありません。
 くやしかったと思います。辛かったと思います。
 人にとって命が一番大切なはずなのに、他人に(注:原発事故の危険性という)リスクを背負わせてその上であぐらをかいていたり、更には、そのリスクすら気付かない人*6もいます。
 おかげで、(注:放射能の危険で町を去らざるを得ず)あなたたちを捜すこともできず、ほったらかして置くしかありませんでした。あなたたちはそれを見て天国で苦笑していることと思います。
 いつか又ここ*7に戻って、あなたたちを奪った海を眺めながら生活したいものです。
 もう二度と後悔しないよう、あなたたちが残してくれた家族を守りながら生きていきます」

木村さんの発言
大熊町で行方不明者が全く捜査されていません。東電で経営に携わっていた方々に、原発近くの夫沢地区の捜索にはいっていただきたい。これは要望でも何でもなく我々の命令だと思って下さい。検討する余地はないと思います」

http://www.geocities.jp/hoso_katarukai/0609hatugen.html
木村さんの講演
(前略)
 望むことは、自分の力で汐凪を捜すことです。「俺は、精一杯お前を捜してるぞ」汐凪にそう言えないことが、遺族にとって一番辛いことです。
(中略)
 東電にどう責任をとってもらうのか。放送でもありましたが、東電の幹部に被爆してでも捜索して頂きたいというのが本音です。補償金ももちろん大事ですが、精神的苦痛を和らげてくれるものではありません。しかも、それが税金で賄われるなんて納得できるはずもありません。
 東電幹部、過去の役員、御用学者、原発安全神話を作り上げてきた方々は、今どんな生活をしてるのでしょう? 4畳半一間に小さなキッチン、ユニットバスのついた部屋に住んでるのでしょうか? もしそれ以上に良い生活をしてるなら、その財産をすべて売って補償金に充ててください*8。他の関連企業に天下ってないでしょうか? もしそうなら、そこでの役員報酬は全て原発避難民のために使ってください。東電でもらっていた報酬も全て返還すべきだとも思います。安全管理に関して全く仕事してなかったようなものですから。良心がある方なら、普通そうするはずです。税金を使うのはそれからです。更に、刑事責任にもとわれるべきだと私は思います。
 原子力発電は必要なのか、不要なのか。私は不要と考えます。今回のような事故を引き起こす可能性のあるものをそのまま使っていくことには納得できません。大飯原発再稼働がかなり現実味を帯びてきたことは、残念に思います。いわゆる原子力村に群がってきた方々にとっては喜ばしいニュースなのでしょうか。 原発を出来るだけ早い段階で廃止させる方法は、我々一般市民の意識にあると私は思います。節電です。私たちは贅沢することを当たり前と思ってないでしょうか? 無理をしようとは思いません。無駄をしない、大事にする意識を一人一人の人間が持つことだと思います。
(中略)
 昨年の震災では、あまりに大きなものを失いました。それに対する後悔の念は日々強まるばかりです。ああしておけば良かった、こうすれば助かったかもしれない。特に、まだ大人に頼って生きる存在だった子供たちを守れなかったことが、悔しくてなりません。後悔の念と共にそれを教訓として残していかなければと思います。
 こんな例があります。ある津波にのまれた小学校では、奇跡的に犠牲者は一人も出なかったそうです。でも、それには校長先生の大きな判断がありました。校長先生は、地震後に父兄が迎えに来ても子供たちを一人も返さず、思いついた高台へ全員で避難しました。他の先生方は、そこまでしなくてもと思ったそうです。しかし、そのまま子供達を帰していたら、津波の犠牲になっていた可能性が高かった。結果として、校長先生の決断に子供達は救われました。 その校長先生のような大人が汐凪の周りにいたらと、つくづく思います。彼女を救うチャンスはあったはずです。そうできなかったのは、父親である私も含め責任と想像力のある大人が彼女の周りにはいなかったからではないでしょうか?


■「タックスヘイブングローバル資本主義の聖域」(合田寛*9
(内容要約)
タックス・ヘイブン規制を訴える内容。
タックスヘイブンの問題としては以下のようなものがあげられる。
1)税収の減少:まあ、これは当たり前の話だ
2)組織犯罪のマネーロンダリングタックスヘイブンが組織犯罪に悪用されてるという話。
3)金融危機の助長:タックスヘイブン利用者は複雑なやり方で租税逃れをするため、金融危機の時は「タックスヘイブンのせいで金融取引実態をつかむことが困難→被害額の把握が遅れる→金融危機への対応が遅れる」ということで金融危機を助長したと言われている(もちろん金融危機の主たる原因ではないが)


■「解体に向かうアメリカ型企業社会:低賃金・低福祉・組合不在の米国の行方」(大塚秀之*10
(内容要約)
「タイトルで出落ち」と言った感じ。アメリカと言う国は「国家システムとしての福祉」というものはヨーロッパの福祉大国と比べたらまるで乏しく、それを補っていたのがいわゆる「企業福祉」だったわけだ。でその企業福祉のバックには労使協調主義があった。
 しかし、ネオリベラリズムが猛威をふるいそうした「労使協調主義をバックにした企業福祉」は企業サイドから攻撃を受けているという話。なかには組合を敵視し、組合潰しを公然としかけるワタミのような会社(例:ウォルマート)も出てきた。
 ではどうすればいいのか。難しい問題だが筆者は次のような道を何とかして進むべきだろうとしている。しかし筆者の記述を信じる限り、アメリカ労働運動の問題はかなり日本とかぶっている。

1)組合パワーの強化
 何故そうした攻撃がまかり通るかといえば理由の一つは組合加入率の低下である。何とかして加入率を上げる必要がある。その場合、やはり問題となるのは日本同様、取り組みが遅れている非正規の組合加入である。
2)組合の企業外運動への取り組み
 筆者はアメリカの労組は「企業との交渉で待遇を改善させることにばかりかまけてきた」との認識から「企業外での運動へもっと取り組むこと」を求めている。
3)国家による福祉システムの充実
 そもそも「企業福祉」に過剰に頼ること自体が問題であり、ヨーロッパのような福祉国家(国家による福祉システム)を目指すべしとしている。3)がおそらく一番難しいだろう。組合オンリーの問題ではないからだ。



■「電気・電子産業の構造変化と東アジア」(山藤次郎)
(内容要約)
 細かい点をオミットして、おおざっぱにまとめれば「中国、台湾、韓国が伸びていて、日本は落ち目なので何とかしないと行けない」と言ういつもの話。ただし筆者も「過去の日本の成功体験や今の中国、台湾、韓国などの成功体験から学ぶべき教訓を引き出せないか」とするだけで、さすがに「これで日本が勝てる」という案までは出せていない。


■「いま、日本の近現代史を学ぶ面白さ:『日本資本主義発達史講座』80年にちなんで」(加藤幸三郎)
(内容要約)
 加藤氏へのインタビュー記事。Q&A形式で書いてみる。

Q「経済史研究に進まれたいきさつは」
A「父が築地魚市場の仲買人だったこともあり、漁業経済史をやりたいと思って東京教育大学(筑波大の前身)に進学した。しかし漁業経済史は難しいテーマであることに気付いた。当時、東教大教授だった楫西光速氏が『日本近代綿業の成立』(1950年、角川書店)を出したこともあり、繊維産業研究を今までやってきた。」

Q「発達史講座との関わりについて」
A「東教大では学部講義の中で発達史講座について触れられることはなかった。院に進み、繊維産業研究を本格的に行い、先行研究を調べる中で知った。その後、専修大学に就職したが、専修には山田盛太郎*11や小林良正*12という『講座』執筆者が在籍していた。」

以下、いろいろと『講座』についての加藤氏の見解が述べられるが一点だけ。

Q「マルクス資本論』のいう本源的蓄積とは日本だと何がそれに当たるのか」
A「『1:版籍奉還廃藩置県』『2:地租改正』、『3:秩禄処分』がそれにあたる。1によって日本は「藩の集合体」という形から「中央集権の統一国家」へと変化した。2において地租は「金納」だったため、農村の市場経済化が進んだ。3により、士族は藩から切り離され、市場経済社会で生きていくことを余儀なくされた」


■コラム「生存者症候群」
(内容要約)
「生存者症候群」というのが何かはググって見つけた以下の記述が参考になるだろう。

サバイバーズ・ギルト(ウィキペ参照)
 戦争や災害、事故、事件、虐待などに遭いながら奇跡の生還を遂げた人が周りの人々が亡くなったのに自分が助かったことに対して、しばしば感じる罪悪感のこと

「サバイバーズ・ギルト=生存者症候群」と言う理解でいいのだろう。ただこのコラムが問題にしてるのはもっぱら労働問題だが。その意味では以下の記述(某労務事務所のサイト)がこのコラムの問題意識に近いだろう。まあ「生存者症候群」を「リストラにならなかった人たちが今度は自分が首を切られるのではないかと不安になりうつ状態になってしまうこと」とするのは「生存者症候群」はウィキペの記述によれば明らかに「労働問題限定」「うつ限定」ではないので相当に問題のある表現だとは思うが。

http://www.office-iwamoto.jp/article/13181524.html
 サバイバー(生存者)症候群とはリストラにならなかった人たちが今度は自分が首を切られるのではないかと不安になりうつ状態になってしまうことです。
 リストラによる人員整理により今までの仕事の量が増えてしまい過度の労働時間を強いられるようになったり、仕事の責任が重くのしかかったりします。


サバイバーシンドロームの症状
・罪悪感
・自分が首を切られるかもしれないという恐怖感
・無気力


サバイバーシンドロームの対策
 リストラによる人員整理というのは労働者にいつ首を切られるかもしれないという恐怖感を与えるだけではなく会社全体のモチベーションが下がり結果としてリストラする前よりも会社経営が悪化するおそれもあります。
 リストラをしなくても社会保険料の節約などにより会社の改善を図ることができます。
 リストラは最後の手段として考えるべきです。

*1:著書『人間らしく働くルール―ヨーロッパの挑戦』(2001年、学習の友社)

*2:著書『現代キューバ経済史』(2000年、大村書店)、『革命のベネズエラ紀行』(2006年、新日本出版社

*3:著書『社会保障の市場化・営利化』(2003年、新日本出版社)、『社会保障の再構築』(2009年、新日本出版社

*4:著書『障害者自立支援法と実践の創造』(2007年、 全国障害者問題研究会出版部)

*5:著書『アメリカ福祉の民間化』(2007年、日本経済評論社

*6:いわゆる原発村のこと

*7:大熊町のこと

*8:だそうですよ、子飼いの公明党原発を推進させた池田大作先生。他にもそういう人はいますけど。

*9:著書『大増税時代』(2004年、大月書店)、『格差社会と大増税』(2011年、学習の友社)

*10:著書『現代アメリカ社会論』(2001年、大月書店)、『格差国家アメリカ』(2007年、大月書店)

*11:著書『日本資本主義分析』(岩波文庫

*12:著書『日本資本主義論争の回顧』(1976年、白石書店