今日のMSN産経ニュース(1/30分)

 日付が思いっきりずれてますが、毎日更新の形にしたいのでこのまま続けます。

■力強さを失った日本 「中国化」するしかないのか
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120210/biz12021010030009-n1.htm
ブクマもつけましたが産経文化人らしいひどさ。この産経文化人「だけ」が酷いのか、産経文化人が紹介する本の著者も酷いのかはわかりませんが、本の紹介が正しければ著者も酷いんでしょうね(紹介が間違ってれば、それもそれで酷い話です)。
 「いわゆるネオリベ化=中国化」のようですが、まずなぜ「中国化」と言い換えるのか意味不明。別にネオリベは「中国の専売特許」じゃありませんし、「ネオリベで何が悪い」というティーパーティーのいるアメリカなんかはともかく、中国は実態はともかく、建前では共産国家ですが。そして中国化と言う言葉でネオリベを想像する人はあまりいないでしょうから、かえって混乱のネタをつくってるだけでしょう。

最近話題になっている言葉が、「中国化」である。

どこで話題になってるんでしょうか?。聞いたことがありませんが。

中国は10世紀、宋の時代に、社会のしくみを大きく変えた。上級国家公務員試験に相当する科挙を設け、皇帝以外に世襲はなく国民は基本的に実力に見合った地位や収入が手に入る仕組みにしたことである。実力主義の登場だ。

科挙=試験による実力主義*1と言う認識を認めるとしても、それ(試験による実力主義)はネオリベと同一視することができることなのかとか、それは当時の中国が世界で最初だったなど特筆すべき事なのか(そうでなきゃ中国化などという言葉は使うべきでないでしょう)、と言った疑問が普通に浮かぶと俺は思いますが。産経文化人には浮かばないようです。

一方、統治システムを隋・唐代と中国から輸入した日本は、宋代から中国とたもとを分かち、身分制を温存した。

・「統治システムを輸入」って日本の律令制は、影響は受けていても、単純な「中国からの輸入物」じゃないでしょうに。
・「たもとをわかち」って表現は明らかにおかしいでしょう。足利義満日明貿易とか中国とのつきあいはその後も続いたんですから。
・「日本は中国と違い身分制を温存した」って、中国だって身分制はあったでしょうし、日本だって「武家政治」は誰が考えても「身分制だから実力主義じゃない」という代物じゃないわけです(「実力主義ネオリベ」って理解も酷いですが。別にネオリベ批判は実力主義を否定してるわけじゃないし、ネオリベ政治家に二世議員がいることを考えても、ネオリベがその建前とは違って実態は「単純な実力主義」ではないことは明白ですが)。
源平合戦南北朝動乱、戦国時代と言ったものは産経文化人の頭からも與那覇氏の頭からもどっかに飛んでいったようです。

「中国化」の対立語は「江戸時代化」である。江戸時代には「イエ」ごとに世襲によって身分が固定され、居住地域も制限された。しかしアニマル・スピリットを持たずにおとなしくさえしていれば保護され、何とか食べていける時代でもあった。

冗談も大概にしてほしい。産経文化人だけがそういってるのか、與那覇氏もそういってるのか知りませんが百姓一揆のことだけ考えても江戸時代は「何とか食べていける時代」じゃないでしょう。
江戸時代は幕末など一時期をのぞき「戦乱のない平和な時代」でしたし、それはもちろんいいことでしたが、それは「餓死などない豊かな時代」を意味しません。
また身分固定というのも「御家人株の売買(←時代劇でもたまにネタになるんですけどね)」とかあったので、一面的な理解でしょう。
まともな歴史学者なら素人の俺以上に、この産経文化人の文章にも与那覇本にも突っ込めるでしょうね。それぐらい噴飯物の「江戸時代理解」「中国史理解」でしょう。

規制緩和既得権益の撤廃を意味した。

という名目による「新たな権益の設定」と見るべきでしょう。労働者保護法制まで既得権益呼ばわりする連中は「今まで以上の労働者こき使い」という「大企業の新たな権益を設定」しているだけです。

*1:実際には科挙試験ができる人間は金持ち階級に限られるでしょうから、単純な実力主義ではあり得ないでしょうが