今日のMSN産経ニュース(10/26分)(追記・訂正あり)

産経抄】10月26日
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121026/stt12102603180004-n1.htm

小学生のころ初めて手にした石原慎太郎氏の著作は、小説ではない。両親が読み終えてちゃぶ台に置いていた、『スパルタ教育』*1だった。どれほど子育ての参考になったのか、定かではないが。

ええっ、そこは産経記者なら「石原先生直伝(?)のスパルタ教育で僕もこんなに立派になりました」って書こうよ。冗談はともかく「長男、三男を自民党に議員で押し込んだ」「次男を弟・裕次郎のつてで芸能界入りさせた」「四男の絵を税金で買ってやった」ってこの人の親としての有り様はどう見ても「スパルタ」じゃないけどね。
 まあ、次男は「努力の人なんだろう」とは思うけど。スタートラインはおじさん・裕次郎のバックアップで有利だったとは言え芸能界って「親族の七光」で成功する世界かといったら明らかにそれだけでは成功しない世界でしょう。コネで芸能界入りした芸能人が全て成功してるわけじゃないし、親族のコネなんかない芸能人だっている。人気ってものは七光でどうこうなるものじゃないでしょう。コネで芸能界入りして、成功してる芸能人(例:故・古今亭志ん朝)だって「親族の七光りだけ」じゃないでしょう。当然努力している。
 それに次男は気象予報士の試験合格してるわけで、まあ、公認会計士とか弁護士とか医師ほど難しくはないでしょうが、ある程度勉強しなきゃ合格しないでしょうから。一方、長男、三男が進出した政界はコネで通用するってのも恐ろしい話だけどね。

齢(よわい)八十を数える石原氏ほど、「リーダーである父親」のイメージの強い政治家は見当たらない。

もしかしたら残念ながらそういう「メディアが創った虚構のイメージ」はあるのかもしれませんが、石原の批判本を読めば彼がそんな立派な代物でないことはよくわかります。

過激な発言でしばしば物議を醸す石原氏には、拒否反応を示す人が少なくない。

「過激な発言」でなくて「軽率で乱暴な失言」です。まあ、そういうのを「本音の政治家」と評価するらしい「俺には理解不能な低能」がいるらしいことは知っていますが。そして拒否反応なんかじゃなくて批判してるんですよ。

中央官僚の国家支配をぶちこわす

ということは小泉純一郎首相も、現民主党政権も言っていました。であるなら、石原という人が「彼らの改革をどう評価するのか」「自分は彼らの失敗(石原は彼らを失敗だと思ってるんでしょう)をどう克服するのか」説得力ある言葉で語るべきでしょうがそんな意思も能力もないでしょうし、マスゴミもスルーするんでしょう。そもそもあの男や取り巻きに「中央官僚の国家支配をぶちこわすまともなプラン」などないし、作る気もないでしょう。ただの宣伝文句に過ぎません。
ガチ信者は石原万歳ではなからそういう問題意識もないんでしょう。大体、石原には大臣経験(福田内閣環境庁長官、竹下内閣運輸相)があるんですがそのときは何をやっていたのか?。官僚支配とやらを壊していたのか?
まあ、俺個人の感想を言うなら「時代錯誤で無責任な極右」に政治をめちゃくちゃにされるくらいなら官僚主導で結構です。
こういうことを石原が言うのも「復興予算を捕鯨につぎ込む」などと言う無茶苦茶な復興予算流用問題で「俺に追い風」とか思ってるのかもしれませんが、断言してもいい。この、「パフォーマンスしかできない、やれない、興味ない男が首相」なら復興予算のデタラメぶりはあんなもんじゃすまないですよ。たぶんあの男は部下に丸投げでノーチェックだから。

国の会計制度から教育問題まで、日本を衰退から救う処方箋を示した。

 東京新聞の経済面(http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/economic_confe/list/CK2012102602000097.html)によると石原の主張「国の会計は単式」「俺が複式を導入したい」というのは全くの嘘のようです。実は「過去は単式オンリーだったが、今は複式と単式の併用」「単式にもメリット、デメリットがあるし、複式にもメリット、デメリットあって複式が単式より優れているとは簡単には言えない」と言うのが正しい。東京新聞は「石原氏の真意が不明」としていますが昔の知識をそのまま振り回してアップデートしてないだけでしょう。もし知ってるのなら「国は複式だが俺の理想とは違う」ときちんと説明するでしょうから。東京新聞はきちんと批判しろよと思う。つうか本来政府が速攻で突っ込めよ。これから突っ込むのならいいが。
 まあ、そこを誰かに突っ込まれたら「国の複式なんて本当の複式じゃない。1週間待って下さい。本当の複式簿記を見せてあげますよ(日テレアニメ「美味しんぼ山岡士郎の中の人の声で)」とか石原は詭弁を言い出すのかもしれませんが。

日本維新の会代表の橋下徹大阪市長は早速、連携の可能性を示した。

橋下も落ちたなあと。橋下が石原との連携に曖昧な態度をとり続けたのは
1)石原や、石原の周囲、マスコミなどに石原の部下のように扱われたくない
2)石原支持者と橋下支持者は必ずしもかぶらない(例:橋下の若さを評価する者は爺の石原を評価しない)のでメリットがあると限らない、ことが理由でしょうに、最近の世論調査で既存ミニ政党(社民、共産、公明、みんな、たちあがれ)と大して支持率が変わらないことによほど追い込まれてるんだなと。これで浮上なんかしないでお互い沈んで欲しいけどどうですかね。
 なお、石原が国政進出を言い出したのは俺の邪推と独断と偏見ですけど、「維新の低迷」もあるんじゃないか。「今国政進出を表明すれば落ち目の橋下が頭を下げて俺の子分になるんじゃないか、ウヒヒ」的な考え。維新の人気が高かったらこの男は橋下の子分扱いされることを恐れて都知事職にとどまりつづけるでしょう。

石原新党の結成によって、与党民主党の受けた衝撃の大きさは計り知れない。離党者が続々と新党に駆け込むようだと、解散への風圧はますます強まりそうだ。

まあ、それはないんじゃないですかね。どこかに移籍を考えてる民主党議員でも次の世論調査結果待ちでしょう。世論調査で支持がかなり高かったら(個人的にそうだったら嫌ですが)、行く奴もいるかもしれない。ただ橋下党(維新の怪)が今、支持率低迷してるように、ご祝儀相場で最初高くても何時落っこちるかわからないわけで、よほど選挙に弱い人間でもない限り、行かないんじゃないですかね。希望的観測ではありますが。
 そして石原新党ができようとできまいと普通に考えて解散はしないでしょう。民主党や野田政権の支持率が低いから。

▼「父」といえば、長男である自民党石原伸晃前幹事長が、先の党総裁選で敗れたことから、新党結成に向けての障害がなくなった、との見方がある。首相*2の父になり損ねたのが国政復帰の理由とは、思いたくない。

ブクマにも書きましたけどそれ以外に何の理由があるのか?。ただ産経ですら「思いたくない」としか書かず、「絶対に違う」と書けない点が面白い。
しかし伸晃曰く「事前に話はなかった」そうで,それが事実なら迷惑きわまりないオヤジですね。「お前が自民総裁になったら、俺に協力しろ、なれなかったら新党を創る、お前が自民を離党して参加しようとしなかろうと構わないが反対はするな」って何様なんでしょうか。


【追記】
ちなみに石原の「スパルタ教育」でググったら面白い記事が見つかったので紹介しましょう。

http://hirorin.otaden.jp/e142284.html
山本弘のSF秘密基地BLOG『石原慎太郎「スパルタ教育」より』
23 ヌード画を隠すな
 わたくしの家庭では、妻や、母親は反対するが、わたくしは子どもたちの前でヌード写真の氾濫した雑誌*3を隠さぬことにしている。
(中略)
しょせん子どもたちは、いつかの時点でナマの裸を知り、裸の肉体の交渉*4がなんであるかを知らなくてはならない。それを不自然に隠すことのほうがどのように悪い想像力を育て、悪い衝動を子どもたちのなかに培うかわからない。
 わたくしが子どものころ、父親の書斎に当時珍しい世界の裸体画の美術全集があった。意識してか、あるいは不注意でか、家のものも、わたくしたちにその美術書を隠さなかった。わたくしはいつも隠れて、美術全集を書だなから引き出しては開き、その裸体に見入った。
 現今の子どもは労せずしてそれができるが、いずれにしても幼児のときに見た裸体画の記憶は、子どもに決して不健康ではない。さまざまな想像と情操を育む。

これをエントリで紹介したSF作家・山本弘氏(と学会会長)は呆れてるようですがそりゃそうですよ。「それどこがスパルタなの?」&「今、お前が宗教右翼と一緒になって行ってることと違うじゃねえか?」って話ですよ。ちなみにこの記事は「山本氏というそれなりに有名な人のエントリ」、「ネタが石原のトンデモ発言」ということで沢山のはてブがついています。
 ちなみに次男・良純が「石原家の人びと」(2001年、新潮社)という本を書いてるようですが、これのネット上の書評が大変面白い。
 「どう見ても父親批判としか思えない」「良純一人、父親から自立できたのかよくわかる」んだそうです。
 まずはこの書評(http://bbgmgt-institute.org/ishi-yoshi.html

 良純はまず,自分の父:慎太郎をこう描いている。

 「それにしても人を怒鳴ったり,大声出したりするのは健康に良いらしい。肩も凝らなければ,ストレス発散にもなる」(16頁)。

 俺も石原をその種のゲスだと理解していますが、次男さん自ら「俺の父親はゲス」と認めてくれました。

「親父の行動の基本に,正義感があることを僕は認める。ところが,その正義感を裏打ちするのが思いこみと独善的な価値観だから,いらぬトラブルを招く」(43-44頁)。

 あの男に正義感があるとは全く思いませんが、それはともかく。肉親の良純先生ですら「思いこみと独善的な価値観」「いらぬトラブルを招く」というのが石原慎太郎です。愛情があるはずの肉親ですらこう言わざるを得ない男・石原が他人から非難されるのは実に当然の話です。
 次にアマゾンレビュー。

独裁者の家長を持った息子の世論への暴露本 2006/6/12
By Japan Impartial Integrity "Rocks"
 筆者良純を除けば、なんとも頼りないモヤシのような息子。良純のような「オチこぼれ」よりも親に従順で「親の期待を裏切らなかった」であったろう彼らが、なぜモヤシに成り下がったのかがわかる。良純は石原家の日常を普通に書き下しているようで、実はその独裁者に対する非常に辛辣な非難を潜ませている。国土交通大臣として結局なにをやったのか終始わからなかった息子*5、親に頭を下げてもらってなんとか政治家になれた息子*6、そして芸能界入りしながらどうにも親の届かない範疇で苦悶し、結局石原家を脱することで気象予報士・芸能界で返り咲いた息子*7。親の管理は行き届きするとかえって息子がダメになるというのは非常にいい教訓だ。「なんでも偉大な父を持つと息子が苦労するようで」という石原慎太郎の反省(?)の弁が反芻される。この本は世間に露呈しない異質な空気を醸し出す石原帝国を家族内の手記として世間に知らしめた立派な内部告発本である。

帯書きに騙されてはいけない 2006/6/3
By Japan Impartial Integrity "Rocks"
 慎太郎がいかにしてスーパー家族を生み出したか、なんて本ではない。良純だけがなぜ路を外れたのかという本である。いうなれば良純による石原家の暴露本といっても過言ではない。いかに慎太郎の「理想的」教育法(彼は実際には自著*8の教育法に沿わなかった)というものが圧迫的で独善的で唯物的なものであるかを知らしめてくれる。あの三兄弟を見る限り、良純だけがかろうじて自力で道を切り開いたように見える。あとの二人はパペット。慎太郎の意図するまま動く操り人形だ。兄は暖簾のように頼りないし、弟は親父の言いなりの結果、応援演説してもらってご丁寧に落選までしている。兄と弟はいうなれば常に慎太郎の影であり、父の愛玩動物の域を出ない。お尻を拭くにも父の許可がいるという類の人だ。良純はその宗教がかった枠からは、かろうじて脱出に成功できたというわけだ。慎太郎の教育法には明らかに欠陥がある。そしてこの手に負えない独裁者の下で育つ子供は、良純のような子供以外、父親の自己愛性パーソナリティ障害の餌食になるという警鐘なのである。

 「 Japan Impartial Integrity "Rocks"」先生は2回も書くなよと思わないでもないが文章が俺的に面白いからいいや。

反面調査 2009/11/11
By レオナルド・ダ・ヴィンチ
 石原慎太郎の「スパルタ教育」関連の著作を先に数冊読んだ上で、自身の子供に対する実際の教育はどうだったのかを子供の側から確認(反面調査)するのに役立つ本。
 慎太郎の「スパルタ教育」は自身の理想であり、スポーツと自然によって鍛え、情操と知恵を養い育むという方向性は実践したことが分かるが、「スパルタ」という言葉のイメージに反し、相当甘く放任で過保護であったことも事実のようである。石原家の教育でしっかりしていたのは、いずこでも同じだが、母親や祖母であったようだ。

 「本当は過保護」ねえ。まあ、四男の絵を税金で買う男だからな。

この家にして、この人たちあり, 2004/1/18
By XP
 家族の内部を外にさらすなというタブーにあえて挑戦している本。
 日頃、テレビで見る石原慎太郎都知事の独善的な物言い、石原伸晃大臣の軽薄な物言いは、実生活そのものだったのだ。「親父がレポーターを怒鳴りつけるの」は「親父一流の健康法」であるとか、子供の頃にゲームで弟を騙した知恵が「金融危機の際、政府の金融特別委員としての手腕に生かされている」*9だとか、その手の事例が多く出てくる。

*1:1969年、光文社刊行。1969年(今から43年前、石原は37歳。この時点で石原の子どもは自称画家の四男まで全員生まれている)に小学生だったとするなら小学1年生(8歳)でも抄子は51歳ですね。まあ産経抄を若者が書くとも思えないしそんな年齢で不思議はないか。

*2:安倍だってまだ首相になってないですけどね。気の早いことで。

*3:今で言えば週刊現代とかポストとかのオヤジ向け雑誌だろう。

*4:要するに性交渉、セックスのこと

*5:長男のこと

*6:三男のこと

*7:次男・良純のこと

*8:石原の著書「スパルタ教育」のこと。実際には日本の多くの父親同様、「基本的に、母親にしつけはお任せ」だったらしい。

*9:皮肉つうか嫌みつうかだまされた弟の恨みじゃねえの。ブラックだな、良純