「キリスト」ラーメンは青森・新郷村! 住民、墓守る (追記・訂正あり)

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFB21030_V20C14A4000000/
キリストが日本に渡来し、新郷村で生をまっとうしたという根拠は、昭和初期に茨城県の竹内家で見つかった古文書だ。

 ウィキペ「竹内文書」を見ればわかりますし、まあ普通の人間なら常識で気付きますけど「見つかった」んじゃなくて「昭和時代に捏造された偽書」ですよね。キリストが日本に来てるわけがない。実は最後の最後にこの記事も「学会は偽書と認定してる」「村も本気で信じてるわけではない」と書いています。

だが磔刑(たっけい)になったのは身代わりとなった弟のイスキリ

もちろんイスキリなんていません。

1935年に竹内家の当主が古代史研究家らを引き連れて新郷村を訪れた。当主らは村長の案内で小高い丘のやぶの中にある2つの丸い盛り土を見つけ、向かって右側がキリストの墓、左側がイスキリの墓だと「認定」した。

もちろん「なんちゃって古代史研究家」であってまともな人間じゃありません。

 右手がキリストの墓で、傍らに上下逆の2つの三角形を重ね合わせた「ダビデの星」をあしらい、「十来塚」と書いた墓碑が立っている。左手の十字架はキリストの弟のイスキリの墓だという。
 2つの十字架の間には、イスラエルエルサレム市が2004年に新郷村に寄贈した縦25センチ、横70センチの白い石が埋められている。エルサレムで建材として広く使われている「エルサレム・ストーン」という大理石だ。
 表面にはヘブライ語で「この石はイスラエル国エルサレム市と新郷の友好の証としてエルサレム市より寄贈されたものである」と刻まれている。除幕式には当時の駐日イスラエル大使も参列した。

 イスラエルだって「ネタとわかってやってるわけ」ですが元ネタが明らかなガセですからね。つきあって良かったのか。
 「ホロコースト否定論やシオン賢者の議定書などと違い実害はない」「むしろイスラエルの宣伝に役立つ」という理解なんでしょうが、一国の大使がよくこんなおふざけにつきあうと思います。

キリストの墓のある一帯の地主である沢口家の家紋は五角形の桔梗(ききょう)だ。これは、もともとダビデの星のような六角形だったが、あまりにも畏れ多いので五角形にしたという説が伝わっている。

 桔梗紋の家紋は別に「沢口家の専売特許」じゃありませんが。しかしトンデモさんも良くこの種の詭弁を考えつくもんです。

墓が発見された当時の沢口家の当主は西洋人のように青い目をしていて、日本人離れした2メートル近い背丈があった、とも伝えられている。

 仮にそれが事実だとしても「明治時代に外国人と沢口家の祖先が結婚しても」「青い眼で2メートル」にはなりうるでしょうね。しかも「伝えられてる」と逃げ腰なところが情けない。「青い眼で2メートル」を断言できないのかよ。

新郷村には集落名や山名に「戸来(へらい)」という地名が残っているが、これはヘブライに由来するという説もまことしやかに語り継がれている。

 完全に「タモリ倶楽部」の「空耳アワー」の世界です。

 「キリストの墓」が発見された当時の沢口家当主の孫に当たる現当主の沢口純一郎さん(58)に聞くと、(中略)祖父が西洋人のようだったという言い伝えについては、「確かに体はがっしりしていたが、身長は多分170センチ台だった思う。目の色が青いということもなかった」と否定的だ。

 まあ、普通そうでしょう。あの時代に身長が2メートルもある人がいるとは考えづらい。今だってそんな日本人はあまりいません。そもそも外国人だって2メートルもある人は少ないのではないか。

 もちろん新郷村の人は、キリスト伝説を真面目に信じているわけではない。そもそも伝説の根拠となった「竹内文書」は、現在では「偽書」と断定されている。
 それにもかかわらず、キリストの墓を手厚く守り続け、慰霊祭を50年間も欠かさず開いているのは、うさん臭い話を冗談として楽しむことができる「シャレ心」があるからだろう。言い換えるなら、心のおおらかさ、懐の深さが感じられる。キリスト伝説を観光振興に生かそうという、いい意味でのしたたかさも垣間見える。
 たとえば、駐車場の脇にある民間経営の売店の名称は「キリストっぷ*1」で、営業時間は「十字架ら三時まで*2」と掲示してあった。村役場の近くにある飲食店「ラーメン亭えびす屋」では「キリストラーメン」(580円)が人気メニューだ。

 さすがに産経と違い「ウッソー、キリストの墓なんかデマでしょ」と言う読者に対し「ではここでネタバラシ」ということのようです。なかなか、「事実じゃない」と書かないので「え、真実扱いしてるの?」と少し焦ってしまいましたが。
 しかし明らかなデマを「しゃれ心、冗談」「観光振興のための方便」で済ませちゃっていいのかしら。

【追記】
■産経『青森「ナニャドラヤ」 神秘まとう「キリストの墓」』
http://sankei.jp.msn.com/life/news/140506/trd14050614450031-n1.htm
も同じネタを扱っていますが日経が最後にきちんと「歴史学者の多くは偽歴史学と評価しているし、村も本気で信じてるわけではない」と書いてるのに対しそのあたり完全にあいまいにごまかしてるのが実に産経らしいと思います。
 ただし同じ産経でも
■産経【ウェルカム東北! 隠れた「名所」を巡る(1)】キリストの墓(新郷村) 伝説根付く“神秘の村”
http://www.sankei.com/region/news/160430/rgn1604300042-n3.html
はきちんと「偽書に基づくデマだ」と明記しています。

*1:コンビニのミニストップと引っかけてるのでしょう

*2:もちろん「十時から三時まで」のこと