衆院選について雑感(12/15)(追記あり)

■『衆院選について雑感(12/14)(追記あり)その2(開票後)』
http://d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/20141214/2345620987
で既にkojitaken氏、vanacoral氏のブログ、ネット上のメディア記事などをネタに
1)自公圧勝が残念だ
2)共産が躍進して嬉しい
3)また沖縄選挙区(4つ)で小選挙区当選「建白書勢力(新知事勢力、反自公勢力)」全員当選が嬉しい
などと書きましたがあらためて他にもいろいろと。まあ昨日の時点では全ての選挙結果が分かってないですからね(流石に途中で寝た)

http://b.hatena.ne.jp/entry/www3.nhk.or.jp/news/html/20141215/k10013968451000.html
■『共産 14年ぶり20議席獲得*1NHKニュース)』のブックマーク
Mukke
 もうちょっと伸びてほしかったが,しかしこれは素直に大勝利と評すべきだろうなあ。次も共産党に入れます。

 あの「真ん中から右の」Mukkeさんが「共産に投票」とは信じられないがよく考えたら
1)「在特会支持すら表明していた」昔はともかく今は穏健保守を自認してるらしいMukkeさんにとっては安倍自民、橋下維新、石原次世代といった極右色の強い政党は支持しがたい。民主は極右政党とは言えないが「松原仁」のような極右もいてその点、すごく曖昧
2)今回躍進が予想されていたのは共産のみ
3)Mukkeさんにとって重要な問題であるチベット問題について言えば、反中国極右政党「次世代」を除けばどこの党も大差なし(中国を擁護はしないが断交などハードランディング路線でもない)。とはいえMukkeさんもさすがに「反中国」てだけで次世代を支持するほどの極右でない
となると「まあ、あえて票を入れれば共産かなあ」ということなのだろうか。「狭義の左派」ではありえないMukkeさんが「次回も共産に投票予定」というのは「共産の伸びもある意味本物(保守からも一定の支持を得ている)」かも、と思う。


■浅井基文ブログ『衆議院選結果の最大のポイント(新華社記者質問への回答)』
http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2014/659.html
 浅井氏の複雑な思いが感じられるエントリです。
 新華社記者の「安倍極右路線を打倒する為に必要なことは何か」と言う質問に浅井氏曰く「国内の安倍批判にあまり期待できない」「外圧しかないんじゃないか」というシニカルな見方を示しています。
 一方で浅井氏は安倍に批判的な市民運動の存在も勿論認識していますし「過大評価はできないとは言え」共産の躍進も評価しています。そこは「外圧しかないんじゃないか」と絶望的に思う一方で「外圧だけでなく内発的努力も大切だし、それは不可能なことではないんじゃないか」という思いもあってうまく考えがまとまってないという所でしょう。いずれにせよ「外圧が大事」なのはおっしゃるとおりです。中韓など安倍批判派との連帯が大事でしょう。なお、浅井氏は「米国は集団的自衛権やTPPで安倍が米国の思惑通りに動くことを期待して批判を控えてる」として米国の外圧にはあまり期待していません。
 もちろん米国だって安倍のあまりの無茶苦茶には一定の批判をしますがそれが「腰が引けてる」ことも否定できない事実でしょう。


■kojitakenの日記『しぶとい維新、41議席を獲得orz』
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20141215/1418578002
 42議席が「マイナス1」の41議席ですから確かにしぶといとはいえるのでしょう。
 しかし議席は減らしてるわけですからね。「次世代の惨敗」「みんな解党→渡辺喜美の落選」といった「他の第三極の悲劇」に比べたら「ずっとマシ」ですがこれを「勝利」と評価していいものか。


■五十嵐仁の転成仁語『2014年総選挙の結果をどう見るか』
http://igajin.blog.so-net.ne.jp/2014-12-15
 小生もほぼ五十嵐氏と同意見なので大量に引用しましょう。五十嵐氏の文章に不満があるとすれば「自民議席減」「ふがいない民主の戦績と共産の躍進」「公明の微増」「次世代の惨敗」に触れても氏が「維新の微減」「沖縄選挙区での反自民勢力の全面勝利」に触れてないことですね。維新の微減について言えば「未だにアレに期待する人がいる」ということでげんなりしますが「江田結いとの合流」「民主との選挙協力」で持ったという面が大きい(つまり橋下パワーは一時期に比べればそれほどではない、だから当人も選挙に出なかった)でしょうから、橋下もそんなに喜べないでしょう。「惨敗で党首辞任確実」という状況に比べれば「首の皮一枚つながった」だけで今後も橋下の苦しい状況は基本続くでしょう。甘く見ては行けないでしょうがid:kojitaken氏が言うほど悲観する話でもないのでないか。何せ「佐藤ゆかり」なんて自民の落下傘候補に維新は負けてますからね。全盛期の橋下ならあり得ない話でしょう。また橋下が「自公に色目を使う」一方で江田は「野党再編」を目指しています。また「維新と次世代の分裂」のような「橋下グループと江田グループの分裂」が起こるかも知れません。
 

 昨日、注目された2014年衆院選の投開票が実施されました。その結果は以下のようになっています。これを、どう見たらよいのでしょうか。
(中略)
 第1に、自民党は予想されていたような300議席突破はならず、当選前の293議席より2議席減らして291議席となりました。選挙中盤の予測によって「揺れ戻し*2」が生じたようで、選挙前よりも議席を減らしたわけですから勝利したわけではありません。
 同時に、単独での安定多数を維持していますから、依然として強権的で強引な国会運営を行う基盤を得たことになります。「信任を得た」と言い張ってスピードアップする危険性もあり、これまで暴走してきた安倍首相にガソリンを注入するような形になってしまったかもしれません。
 しかし、安倍首相は景気回復の一点に争点を絞って支持を求めており、今回の自民党への投票は「アベノミクスで景気が良くなるなら、もう少し様子を見てみよう」というもので、一種の「執行猶予」による支持であったと思われます。それを勘違いして、集団的自衛権原発再稼働などで新たな「暴走」を始めれば、その時こそ、大きなしっぺ返しを食らうことになるでしょう。
 第2に、公明党は選挙前の31議席から4議席増やして35議席になりました。その結果、与党では1議席増の324議席衆院議席の3分の2を超え、参院で否決された法案の再可決が可能な勢力を維持しています。
 与党としての勢力にほとんど変化はありませんが、その内部で公明党の比重が増えたことには意味があります。これまでの安倍首相の暴走に不安を感じた国民の一部が、「ブレーキ役」としての期待をかけたのでしょう。
 しかし、それは錆びついていて十分に作動するとは限らないということは集団的自衛権閣議決定に至る過程で示されており、関連法の改定でどれだけ効くかは不明です。消費再増税に際しての「軽減税率導入」という約束とともに、今後の対応が試されることになるでしょう。
 第3に、民主党は選挙前の65議席から11議席増やして73議席になりましたが、予想されていたほどには議席回復がなりませんでした。党内には敗北感が漂い、小選挙区で当選できなかった海江田万里代表は辞意を表明しています。
 有権者の期待を裏切って失望を買った民主党政権の後遺症を癒すにも、野党の再編や選挙協力を進めるためにも、2年間は短かすぎたということでしょうか。この点では、安倍首相による「今のうち解散」という戦術にまんまとはまってしまったということができます。
 加えて、消費増税原発再稼働、TPP参加などの政策には民主党も反対しているわけではなく、改憲についての党内の意見も割れており、安倍首相の暴走に対してブレーキなのかアクセルなのか不明だという曖昧さがあります。海江田代表の(注:地味な)キャラクターもあって支持は盛り上がらず、維新の党から批判されるなど選挙協力は不発で、十分な結果を生むには至らなかったということでしょう。
 第4に、このようななかで、一人気を吐いたのが日本共産党です。共産党は公示前の議席を倍増させただけでなく、小選挙区の1議席を含めて13議席も増やして21議席となり議案提案権を獲得しました。
 今回の選挙で最も議席を増やしたのが共産党であったということからすれば、勝ったのは共産党で、今度の選挙は共産党のための選挙だったということができます。アベノミクスなど安倍首相が進もうとしている「この道」に対して、「もう少しやらせてみよう」と思った有権者自民党に、「あまり行き過ぎては困る」という有権者公明党民主党に、「ブレーキをかけて止めてもらいたい」と考えた有権者共産党に入れたということでしょう。
 これまでも政策的には「自共対決」と言うべき構造が存在していましたが、今回の選挙での有権者の投票行動においても、これからの国会での勢力分野としても、一段と「自共対決」の構図が鮮明になってきたということができます。しかも、与野党の力関係はあまり変わらなかった一方で、野党内では「自民党野党支部」のような次世代の党が19議席から17議席も減らして2議席となるなど様変わりしており、共産党が活躍できる余地は格段に高まったと言えるでしょう。
 与党で現状維持を達成したものの、自民党議席を減らし(注:共産党議席を増やし)てしまった安倍首相にとっては、「めでたさも中くらいなり」という心境かもしれません。
(中略)
 選挙前にあった「何のための解散なのか」という疑問は、「何のための解散だったのか」という不満となって自民党内に高まるかもしれません。今回の選挙で自民党議席を減らす一方で、逆に議席を増やしたのは共産党(13議席増)と民主党(11議席増)、それに公明党(3議席増)だけだったのですから……。

■五十嵐仁の転成仁語『「安倍さん、サンキュー」と、私が共産党委員長ならそう言うかもしれない』
http://igajin.blog.so-net.ne.jp/2014-12-17

 共産党との「共同」の輪に、古賀誠さん*3加藤紘一さん*4野中広務さん*5などの自民党幹事長OB、第一次安倍内閣での法制局長官だった宮崎礼壱さんや小泉政権での法制局長官だった阪田雅裕さん*6防衛庁長官官房長などの旧防衛官僚だった柳沢協二*7内閣官房副長官補、『戦後史の正体』*8というベストセラーの作者で外務省国際情報局長や防衛大学校教授を歴任した旧外務官僚*9孫崎享さん、改憲派として知られていた小林節*10 慶応大学名誉教授、二見伸明*11公明党副委員長などを続々と参加させたのも、言ってみれば安倍首相の「功績」でした。

 「過大評価は禁物」ですが、この五十嵐氏の指摘は重要ですよね。
 共産側も「右(安倍に批判的な穏健保守)にウイングをのばす」一方、穏健保守(自民党元幹部、改憲派だが安倍ほど極右でない小林節氏)の側にも「自民があんなに極右じゃ共産と手を組むこともやむなし」と考える者も出てきたわけです。古賀誠氏ら、五十嵐氏が名前を挙げてる人々は赤旗(日曜版を含む)に登場し安倍批判を行ったわけです。これも明らかに「共産躍進」の一原因でしょう。まあ、これを「野合」と批判する「ゴリゴリのサヨ」もいるんでしょうが小生はそうじゃないので大いにOKです。

参考
赤旗
■『古賀自民元幹事長、96条改憲 やるべきでない、「赤旗」日曜版に登場』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-31/2013053101_08_1.html
■『集団的自衛権行使の容認 歴代長官異議あり憲法解釈の信頼損なう』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-08-30/2013083001_01_1.html
■『日曜版18日号、加藤紘一自民党元幹事長が登場、集団的自衛権問題で大特集』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-05-17/2014051703_01_0.html
■『二見元公明党副委員長 閣議決定賛成の同党批判、「赤旗」日曜版登場に反響』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-05/2014070501_08_1.html
■『沖縄知事選 元自民幹事長・野中広務さんら、オナガ*12候補の必勝を期待』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-11-03/2014110301_03_1.html


朝日新聞加藤紘一氏、集団的自衛権行使容認を批判 「赤旗」に』
http://www.asahi.com/articles/ASG5H4H7MG5HUTFK00G.html
産経新聞『加藤、古賀、野中氏…元自民幹部 宿敵「赤旗」に続々登場で首相批判』
http://www.sankei.com/politics/news/140518/plt1405180001-n1.html


■浅井基文ブログ『衆議院総選挙の結果をどう見るか』
http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2014/660.html
 浅井氏のエントリについて詳しくは引用しません。大きな内容としては五十嵐仁氏やid:vanacoral氏に近い見方と言えるでしょう。
 つまり
1)マイナス面として自公多数議席投票率の低さ(政治的無関心の現れ)を上げ
2)プラス面として、共産の躍進、沖縄選挙区の完勝、次世代の惨敗、維新の退潮をあげ
3)マイナス面をどうやって小さくし、プラス面をどうやって大きくしていくかが今後の課題だ
という話です。マイナス面に悲観しすぎず、プラス面に楽観*13しすぎず、今後、的確な認識で的確な手を打つ必要があると言う事ですが「言うは易し、行うは難し」ではあります。

*1:なお最終的には21議席である

*2:いわゆる負け犬効果(アンダードッグ効果

*3:橋本内閣運輸相、自民党幹事長(森総裁時代)を歴任

*4:中曽根内閣防衛庁長官、宮沢内閣官房長官自民党政務調査会長(河野総裁時代)、幹事長(橋本総裁時代)を歴任

*5:村山内閣自治相・国家公安委員長小渕内閣官房長官自民党幹事長(森総裁時代)を歴任

*6:著書『「法の番人」内閣法制局の矜持』(2014年、大月書店)

*7:著書『亡国の安保政策:安倍政権と「積極的平和主義」の罠』(2014年、岩波書店)、『自分で考える集団的自衛権』(2014年、青灯社)など

*8:2012年、創元社

*9:原文のまま。「旧防衛官僚(旧防衛庁時代の官僚)」という表現に引きずられた誤記ではないかと思う。

*10:著書『白熱講義! 集団的自衛権』(2014年、ベスト新書)など

*11:羽田内閣で運輸相。なお二見氏は新生党(小沢・羽田グループ)や公明党日本新党民社党などが合同してできた新進党が1997年に崩壊した際には東祥三(後に「国民の生活が第一」幹事長)などとともに小沢一郎自由党入りしており、赤旗登場以前から公明党との距離は離れていた。

*12:那覇市長、現沖縄県知事

*13:と言う人はあまりいないでしょうが