新刊紹介:「経済」2024年9月号

世界と日本
◆フランス国民議会選挙(米沢博史)
(内容紹介)
 マクロン派と新人民連合(左派)の共闘により極右「国民連合」の第一党が阻止されたことを喜ぶ一方で、マクロン派と左派では考えに大きな違いがあること、また「マクロン派の議席減少からアタル首相が退任したが後継首相がまだ決まっていないこと(左派が第一党になり、左派から首相を出すことを主張するがマクロンが否定的)」から、今後の動向が注目されるとしている。


◆イギリス総選挙(宮前忠夫)
(内容紹介)
 労働党が政権を奪取したものの「労働党の得票数自体は前回選挙に比べ減っており」、労働党の勝利と言うよりも「保守党の自滅(保守党の方が労働党よりも得票を減らした)」と主張。右翼政党の「リフォームUK(旧称ブレグシット党)」が保守党の票を食ったことが大きかったと見ている。
 また「左派の前労働党党首コービン(スターマー執行部により党を除名されたが、無所属で出馬し当選)」がわかりやすいが、スターマー執行部については「右傾化」「ブレア路線の二番煎じ」として「党内左派は否定的」であり、今後の動向が注目される。
 コービンは「除名されたとはいえ元党首でしかも当選」しており、今後もスターマー執行部にとって頭の痛い存在になるのでは無いか(コービンについては以前松竹伸幸&紙屋研究所に悪口する(2024年7/12日分) - bogus-simotukareのブログでも触れました)。
 なお、スコットランド民族党は「48→9」と大幅に議席を減らし、今後の動向(当面、スコットランド独立論が下火になるかどうかなど)が注目される。
参考

イギリス総選挙2024 労働党が大勝 14年ぶり政権交代 スターマー党首が首相に就任 | NHK | イギリス2024.7.5
 イギリスの政治や外交に詳しい慶應義塾大学細谷雄一*1教授は与党・保守党が大敗した背景として、
▼ジョンソン元首相が新型コロナ対策の規制が続く中首相官邸で開かれたパーティーに参加していた問題
に加え
▼保守党の候補者が今回の選挙の時期をめぐり賭けを行っていたことが決定打になった*2と指摘しました。
そして、
▼右派政党「リフォームUK」がイギリスのEUヨーロッパ連合からの離脱などを経て右傾化した保守党の支持層の受け皿になったと分析しています。

イギリス総選挙の得票率、右派ポピュリスト政党リフォームUKが伸び最大 - 日本経済新聞2024.7.5
 4日投開票の英総選挙で最も得票率を伸ばしたのは右派ポピュリスト政党のリフォームUKだった。移民の流入制限や大減税など過激な政策が支持を集めた。労働党、保守党を合わせた得票率は過去最低となり、二大政党制が揺らいだ。
 リフォームUKの得票率は14.3%と2019年の前回総選挙に比べて12.3ポイント増えた。


◆見えないガザ戦争の出口(平井文子)
(内容紹介)
 ネタニヤフ首相が「ハマス殲滅」を唱え軍事路線を強める状況で「ガザ戦争の出口」が見えないことが指摘されています。
 なお、戦争目的に「ハマス打倒」を掲げるネタニヤフですが、平井論文は、実際には他にも「ガザの天然ガス利権」という戦争目的があると指摘しています。欧米がイスラエルに甘い理由の一つは「天然ガスを安くイスラエルが供給している」と言う面もあるようです(皮肉にも「ロシアが経済制裁への報復措置として、欧州への天然ガス供給を減らしてること」や「そもそもウクライナが『ロシアからのガス購入など辞めろ』と要請していること」がイスラエルを利している)。
参考

[寄稿]イスラエル-パレスチナ戦争で利益を得る者が真の「戦犯」 : 社説・コラム : ハンギョレ新聞
 イスラエルパレスチナガザ地区がある東地中海沿岸には、莫大な埋蔵量の天然ガスがある。イスラエルの発電量の70%以上を同地域のガス田が担っている。問題は、イスラエルが資源を独占するためにパレスチナの主権を奪ってきたということだ。

戦争の裏に天然ガスあり藤田進 | 世界史研究所 Reserch Institute for World History
 「ハマース殲滅」を掲げて住民を強制退去させガザ全面支配をめざしているイスラエル軍のジェノサイド攻撃が、抵抗を排除してガザ沖合天然ガス開発事業を本格化させようとする米国・イスラエル・国際資本の意向と結びついていることを浮かび上がらせた。


◆インドの第三次モディ政権(西海敏夫)
(内容紹介)
 総選挙に勝利し、第三次政権をスタートさせたモディ首相だが、選挙前予想(議席増)と違い、与党連合(インド人民党が中心)は過半数(総議席は540議席なので271議席)を越える議席は確保した物の、「350→293議席(57議席減)」と改選前より大幅に議席を減らした。また改選前と違い、インド人民党は「303→240(63議席減)」となり「単独過半数」ではなくなった(連立相手の議席数と足して過半数)。
 これに対し野党連合(長く与党だった国民会議派が中心)は234議席と躍進した。モディの政権運営は改選前より困難になると思われる。
 与党の敗北理由としては
1)物価高
2)失業率の高さ
3)モディのヒンズー至上主義に対する「ヒンズー穏健派」「非ヒンズー勢力(イスラム)」の反発
4)モディのヒンズー至上主義は「ヒンズー教徒」ではあっても「上層カーストから差別を受ける下層カーストにとってはむしろ有害であったこと(上層カーストに有利な代物であったこと)」
があると見られる。
参考

農村と低カースト民が「NO」~インド総選挙で与党は議席大幅減 | 公益社団法人 日本経済研究センター
 ナレンドラ・モディ首相(73)率いる与党インド人民党(BJP)が主導する与党連合・国民民主同盟(NDA)が選挙対象543議席の国会下院で過半数を超える293議席を獲得、インドでは初代首相ネール以来となる「同一政権による連続3期目」を決めた。しかし、NDA議席数は前回よりもマイナス55議席という大幅減。前回比103議席増の232議席と大躍進した老舗政党・国民会議派(コングレス)を中心とした新たな野党連合・インド国家開発包括同盟(INDIA*3)に肉薄される結果となった。前回303議席を獲得するなど圧勝したBJPは今回、63議席減の240議席にとどまり、単独での過半数確保に失敗。有力地域政党などとの連立で「第3次モディ政権」をスタートさせることになった。
 議席減の原因は疲弊した農村の不満が予想外に強かったことや、巨大ヒンドゥー寺院建設など宗教色の濃い政策がダリット(不可触民)など被差別カースト民には評価されなかったことが挙げられる。もちろん、一向に改善しない失業やインフレ、イスラム教徒への差別的な政策、メディアや野党の締め付けなどにも有権者の厳しい審判が下ったといえるだろう。
 最大与党BJPが首都デリーの7選挙区で全勝するなど大都市で軒並み勝利し、ヒンドゥー語話者が多いインド中部や東部などのいわゆる「ヒンドゥーハートランド」でも牙城をほぼ守った与党連合だったが、農村部では相次ぎ議席を失い、もともと地元政党が強い北東部の西ベンガル州や南部タミルナドゥ州、ケララ州などでも全く振るわなかった。2019年総選挙で国民会議派のラフル・ガンディー総裁(当時)への刺客候補として当選したスムリティ・イラニ児童・女性開発相が落選。商都ムンバイを擁するマハラシュトラ州の首相(県知事に相当)も務め、モディ首相の信任が篤かったデヴェンドラ・ファドナビス州副首相は苦戦の責任を取って辞意を表明した。
 また、北部ウッタルプラデシュ州バラナシー選挙区から立候補し当選したモディ首相も、次点との得票差は前回の約48万票から15万票ほどに減少している。
 有力誌「インディア・トゥデイ」によると、農村部ではBJPが前回2019年選挙の198議席から今回の149議席へと大きく議席を減らしたが、逆に国民会議派は26議席を積み上げて計55議席と躍進した。
 こうした数字から、農村部の疲弊は想像以上であり、多くの農民票が野党に流れたことを示している。また宗教対立の火種となったアヨーディヤのラーマ寺院や、聖地バラナシーでの巨大ヒンドゥー寺院群「カーシー・ビシュワナート」寺院を政府主導で建設するなど宗教色の濃い政策を歓迎したのは主にBJPのコアな支持層であるブラーミン(バラモン)など上位カーストで、同じヒンドゥー教徒でも農民などに多い「その他後進カーストOBC)」や「ダリット」たちとの間には大きな温度差があったとことが浮かび上がってきた。選挙後の現地論評をチェックしていくと、「穏健派ヒンドゥー教徒の間には、ヒンドゥー色の濃い政策への違和感が強かった」との指摘もあった。
 一方、デリーの有力シンクタンク「発展途上社会研究センター(CSDS)」の選挙後調査によると、しぶといインフレや高止まりした若年失業率にもかかわらず、25歳以下の若年層のうちBJPに投票した割合は39%と世代別では最も高く、前回からは1ポイントしか減っていない。若者の間では依然モディ首相の人気が高く、野党がまだそれほど信用されていないこと、そして政策の継続を求める声が依然強かったことの表れだろう。
 「これは2004年の再現だね」。
 複数のインテリインド人が今回の選挙結果をこう論評している。8%を超える経済成長を背景に「輝くインド」などと好景気をアピールしたBJPバジパイ政権が大方の予想を裏切って敗北し、国民会議派に政権を奪取された、2004年総選挙のことを指している。
この時、政府による経済成長アピールは、前々年の干ばつなどで疲弊し高成長から取り残された農民や貧困層の神経を逆なでし、有権者に反発が広がったとされている。たしかに現在の政治・社会状況とよく似ている。インド全体ではようやくコロナ禍を脱却し再び8%超の高度成長路線に復帰したが、「肥料や農薬、種子などが軒並み高騰しているのに、農産物価格は上がらない」と、農民らの不満は長くくすぶっていた。パンジャブ州などインド北西部の農民らは2020年から翌2021年にかけてデリーや隣接するハリヤナ州などで1年半近くにわたって抗議デモを繰り広げた。これに油を注いだのがモディ政権が2020年9月に可決・成立させた「新農業法」だった。農産物の流通自由化を盛り込んだ新法だったが事前の説明や根回しが不十分で、これによってMSP(最低支持価格)による農産物買い上げ制度が廃止されるのではと疑心暗鬼になった農民は各地で行動を先鋭化させたのだった。
 総選挙においてなぜ農民や低カースト民の不満が政権首脳部に届かなかったのか。地方政治家から連戦連勝で中央政界に飛び込んで一気に首相の座をつかんだモディ氏は並みいるベテラン政治家に比べて党内基盤が弱く、グジャラート州時代から信頼してきた側近や官僚らを重用し首相府に権力を集中させるスタイルで政権を運営してきた。アルン・ジャイトリー元財務相やスシュマ・スワラジ元外相らライバル政治家が相次いで死去し「モディ1強、BJP1強」が常態化したことが政権内や党内の切磋琢磨を阻害し、首相府に「不都合な情報」が入って来なくなった原因だとしたら、その病巣は根深い。
 そしてモディ政権には随所に「驕り」と受け止められても仕方のない振る舞いが目立っていた。(ボーガス注:選挙期間中に)中央捜査局(CIB)や財務省傘下の法執行局(ED)といった捜査機関を使って野党指導者を相次ぎ(ボーガス注:選挙違反や脱税の容疑などで)逮捕するなどロシア顔負けの手法は論外だったが、BJPのスポークスウーマンだったヌプール・シャルマ氏がイスラム教の預言者ムハンマドを侮辱したとされる発言で辞任。さらには主要20カ国・地域首脳会議(G20)の関係会合を、隣国パキスタンとの係争地で国連安保理決議上は「中立地」とされるカシミール地方で開催するなど、政治センスを疑うような逸脱ぶりだ。
 今回の選挙結果は「民主主義の勝利」というより、所得が増えない農民の不満や巨大ヒンドゥー寺院建設を冷ややかに見ていた低カースト民の感情が民意として具体化した、と考えるべきだと思う。
 「政策の継続を期待するが、一党独裁や強権政治はダメ」。
 これが選挙によって示された有権者の総意といえるのではないか。
 また、モディ首相を批判するドキュメンタリーを放映した英BBCのオフィスが(ボーガス注:脱税容疑で)税務当局の査察を受けたことなどを背景に、当局の報復におびえたメディアの「忖度」も多くの人々をミスリードした。昨年7月には、日本企業も多く進出するデリー郊外のハリヤナ州でヒンドゥー教徒イスラム教徒の宗教対立から7人が死亡する暴動が起きた。今年2~3月の農民デモでも警官隊との衝突で5人が死亡しているが、世論の転換点となり選挙の行方に影響を及ぼしたであろうこれらの事件も、多くのメディアがスルーしている。もっとも、モディ政権最大の失敗といえる「高額紙幣廃止」や、コロナ感染拡大を止められなかったうえに大量の失業者を生んだ「大規模ロックダウン(都市封鎖)」、そして早すぎたモディ首相の「対コロナ勝利宣言」、さらには経済不振の原因をすべてコロナのせいにして批判を乗り切ったプロパガンダも、(ボーガス注:モディ政権の報復を恐れて)真っ当に批判した報道は極めて少ない。
 インドで計40年以上にわたって政権を担ったものの、党勢衰退で一時は再起不能とまで言われた国民会議派は今回の選挙で前回比ほぼ倍増の99議席を獲得した。かつては「ひ弱で優柔不断」と批判され、プレッシャーに押しつぶされて雲隠れするなど政党指導者としては失格の烙印を押されていたネール・ガンディー家4代目のラフル・ガンディー*4元総裁(54)も、2022年9月から約5カ月にわたってインドを南北に縦断する「バーラト・ジョド・ヤトラ」(インド団結の行進)を完遂。総選挙でも精力的に各地を遊説したことでその評価はかなり高まった。
 2億4000万人超の人口を抱えるウッタルプラデシュ州には全国で最大となる下院議員80議席が割り当てられていて、国政選挙の勝敗を左右してきた。同州では国民会議派と組んだ地元政党・社会主義党(サマジワジ党=SP)が前回比35議席増の37議席国民会議派の7議席を合わせて野党連合「INDIA」で43議席を獲得し、与党連合37議席を逆転した。また、インド最大の商都ムンバイを擁する人口約1億1000万人の西部マハラシュトラ州でも、国民会議派が前回のわずか1議席から13議席へと大幅増。(ボーガス注:野党連合メンバーの)右派政党シブ・セナ(ウダブ派)とナショナリスト会議派(NCP)シャラド派がともに議席を増やし、野党連合INDIA全体で31議席(野党系無所属議員を含む)と、与党連合NDAの17議席を上回った。
 これら野党陣営が議席を増やした背景はもちろん、各地における与党BJPへの不満や批判票を確実に吸収した結果だが、巨大州における候補者調整などの選挙協力がうまくいったことも大きく作用した。過去の選挙では野党が擁立した複数の候補が票を食い合いBJP候補が漁夫の利を得るケースが目立ったが、各地でこうした野党の「共倒れ」を回避できたことの効果はてきめんだった。
 野党連合「INDIA」結成は選挙前1年を切った23年6月と出遅れ、最後まで統一首相候補を決められないなど結束に不安があった野党連合だったが、ふたを開けてみれば大健闘だったといえる。
 過去10年間のモディ政権も、友党を取り込んだ「連立」政権ではあったが、単独で下院の過半数を押さえられなかった与党BJPとモディ首相にとって今回は、地域政党の離反が政権崩壊につながる危うい連立を維持していかねばならない。中でも与党第2党、第3党として連立に加わった「アンドラプラデシュ州の政権与党」TDP(テルグ人国家党)と「ビハール州の政権与党」JD-U(ジャナタ・ダル統一派)はモディ政権の存続を左右する立場を手に入れた。計28議席を有する両党がもし連立を解消すれば、与党連合は一気に過半数を割り込むことになる。仮に彼らが野党連合に合流すれば計算上、政権交代もあり得る。
 JD-Uは今回の総選挙直前の1月に突如、野党連合INDIAを離脱して与党陣営に走り、見事勝ち馬に乗った*5
 (ボーガス注:「アンドラプラデシュ州の政権与党」、「ビハール州の政権与党」という)権力を維持するため(ボーガス注:国民会議派とBJPの)二大政党陣営を渡り歩いてきた両党がどこまで本気でモディ政権を支えるかは不透明で、(中略)また、いずれも州内のイスラム教徒が重要な支持基盤であり、難民受け入れの対象からイスラム教徒を除外する「改正国籍法」制定などモディ政権による反イスラム的な政策には見直しを迫る可能性もある。過去にもしばしば見られたように、増税補助金削減、民営化など州にとって都合の悪い政策には連立解消をちらつかせて反対する場面もありそうだ。
 このように「第3次」モディ政権では連立を支える地域政党の発言力が大きくなるとともに、選挙で苦戦した教訓から農村対策や被差別カースト民への配慮などにより重点を置くことになりそうだ。外資優遇政策半導体産業振興など短期的な経済成長を追求するよりも、国内により多くのカネを投じることが優先されるだろう。ましてや既得権益に手を突っ込む「土地収用法の再改正」や不況時などの雇用調整を可能にする「労働諸法の改正」は一段と困難になりそうだ。
 (ボーガス注:選挙での敗北で)神通力が衰えたモディ氏に対しては今後、メディアや学者、大企業が忖度をやめ、遠慮なく政府批判の声を上げるだろう。ネットや携帯電話回線の遮断といった言論・報道の自由にかかわる政治手法や、「信教の自由」を危うくする、として欧米からの批判が多いヒンドゥー色の濃い政策などはさすがに見直さざるを得ないだろう。
 公称600万人のメンバーを擁するBJP最大の支持母体・民族奉仕団(RSS)の最高指導者であるモハン・バグワット総裁は「インドに生まれたものは皆ヒンドゥー教徒である」といった発言でしばしば物議を醸してきた。ラーマ寺院建設や反イスラム的な政策にもRSSの意向が働いたといわれており、選挙における「宗教」アプローチが空転したことでRSSとBJPの関係にも軋みが見え始めた。
 RSSの有力幹部であるインドレシュ・クマール氏は選挙後、地元メディアに対し「選挙で苦戦したのはBJPが傲慢だったからだ」と批判した。これに先立ち、BJPのナッダ総裁は「RSSは文化団体、我々は政治組織であり、RSSの支援を受けなくてもやっていける」と発言しており、(ボーガス注:選挙での敗戦はRSSから与党BJPが得る票より、RSS批判派がBJPでは無く野党に投じる票の方が大きいという理解から)RSSとは距離を置こうとしているとの観測が強まっていた。
 経済発展を歓迎した若者や都市中間層などの人気に支えられ、好景気という上げ潮に乗ってグジャラート州首相からのし上がったモディ首相。「勝ち局面」では無類の強さを見せてきたが、守勢に立たされた時にどういう動きに出るのか。そして、躍進した野党連合の勢いは本物なのか、若者や都市中間層はいつまで失業やインフレを我慢できるのか。今後5年間のインド政治からは引き続き目が離せない。
【追記】
 選挙結果を「サプライズ」と評するメディアや研究者が目立ちましたが、後から振り返ってみるとモディ首相率いる与党連合には選挙前からあちこちで「苦戦の予兆」がみられました。それでも(ボーガス注:議席を大幅に減らしても与党連合では過半数を維持し、政権交代を阻止したという意味で)勝ち切ったということはモディ人気の根強さに加え、有権者が野党にはまだ全幅の信頼を置いていない、ということを示しています。多くの人々がモディ政権続投を望んだ一方で、疲弊した農村部を放置してきた政策やヒンドゥー偏重政治には「ノー」を突き付けたということでしょう。
 (ボーガス注:与党の多数議席をバックに)一党独裁に近い状況で思うがままにやってきたモディ政権は今後、農民や被差別カースト民の不満を抑え、手ごわい連立パートナーたちと渡り合いながら、独立100周年となる2047年までの先進国入りを目指して経済成長を追い求めていくことになります。
 それにしても今回の選挙、多くの有権者が(ボーガス注:野党に票を投じ、与党を敗北させることで、与党が勝利した)前回選挙と全く異なる投票行動を見せたわけです。インドの民主主義もなかなかに複雑怪奇です。
(主任研究員・山田剛)

 「メディア恫喝とか、野党弾圧とか、何処の安倍晋三プーチンやネタニヤフでも可)だよ」と言いたくなる酷さですね。「モディが首相のインド」は果たしてまともな民主国と言えるのか。 
 それにしてもフランス(極右の第一党化を阻止)でもインド(政権交代できなかったものの与党が大幅に議席減し、野党は躍進)でも「共闘大勝利」であり、日本でも「同様に共闘を進め、勝利を得たい」ところです。


◆韓国政府による「分断の陰謀」(洪相鉉)
(内容紹介)
 尹錫悦政権が韓国のナショナルセンター(特に尹と対立する左派系)を「正規職員を対象とした恵まれた集団」「労働貴族」扱いして攻撃している事について「非正規職員に対して、政権は保護施策をとってるわけでもないのに恥知らず極まりない」と批判する一方で、ナショナルセンターにも「非正規の組織化の点」でまだ努力が不十分であるとしている。


特集「中国の経済・社会の焦点」
中国経済:不動産不況で5%成長は止まるか(丸川知雄*6
(内容紹介)
 不動産不況の打撃は大きいが、中国経済には未だ「都市部に比べまだ豊かでない地方」など「未開拓の余地が大きく」5%成長は達成できるのでは無いかとしているが、小生の無能のため詳細な紹介は省略します。


◆NEV*7産業から見える新たな挑戦(李澤建*8
(内容紹介)
 中国のNEV産業について論じられていますが、小生の無能のため詳細な紹介は省略します。
参考

新エネルギー車|きょうのことばセレクション 詳細|経済ナレッジバンク|日経をヨクヨムためのナビサイト - nikkei4946.com
新エネルギー車
 中国政府は電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)を新エネルギー車(NEV)として区分し、補助金や各種規則で製造や販売を振興する。

中国 4月の新車販売 EVなど「新エネルギー車」の好調続く | NHK | 中国2024.5.11
 中国の4月の新車の販売台数が発表され、EVなどの「新エネルギー車」の販売が去年の同じ月と比べて33.5%のプラスと好調で、販売全体を押し上げました。


◆岐路に立つポストコロナ時代の労使関係(石井知章*9
(内容紹介)
 習近平政権は労使紛争(ストライキなど)の押さえ込みに全力を挙げ、それは一定の成果を上げたが、コロナによる失業者の増大でそうした状況は「(紛争が再び増える方向に)変化するかもしれない」「今後の動向に注目したい」としているが、小生の無能のため詳細な紹介は省略します。


◆若者・新卒者の高失業率をどう見るか(横井和彦*10
(内容紹介)
 若者・新卒者の高失業率について
1)経済発展の鈍化とともに
2)高学歴者(大卒者)の増加によるいわゆる「雇用のミスマッチ(大卒者は待遇の良い就職を望むが実際の企業の募集は、彼らの希望より低い待遇が多い)」があるとしているが、小生の無能のため詳細な紹介は省略します。


ジェンダー平等の現在:中国の女性たちによる性暴力と構造的な差別への反発(阿古智子*11
(内容紹介)
 中国での「#MeToo運動(女性に対する性暴力の告発*12)」が専ら論じられているが、「ジェンダー平等」と言った場合「雇用問題(男女別賃金格差など)」「LGBT問題(同性婚の法制化など)」など「多種多様な内容がある(性暴力問題に限定されない)」のでタイトルと本文に乖離がある。
 「ジェンダー平等の現在」と言うタイトルならば、もっと幅広い問題を論じるべきだし、「#MeToo運動(女性に対する性暴力の告発)」を専ら論じるのであれば、別のタイトルにすべきかと思う。
 なお、阿古氏は中国での「#MeToo運動」で以下の記事を書いています。
彭帥はどこに?「#MeToo」運動は中国で再燃するか?(阿古智子) - エキスパート - Yahoo!ニュース2021.11.18

【参考:中国の#MeToo運動】

女子学生が自殺、北京大が20年前のセクハラ調査報告書公開 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News2018.4.12
 名門・北京大学の卒業生がインターネット上で、女子学生が教員からセクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)を受けた結果、自殺にまで至ったという20年前の事件を実名で暴露したことが、社会的に大きな注目を集めていた。この問題を受け、北京大学は8日、20年前の調査報告書を公開した。
  同大学で当時中国文学科の教員だった瀋陽氏の女子学生への行為が原因だった。女子学生の死亡を受け、大学側は当時、「行政警告処分の決定」とする調査報告書をまとめていた。
 当時の調査書によると、1998年、女子学生が死亡したことを受け、北京公安局の調査班が捜査していた。その結果、瀋陽氏の行為が不当であり、教師としての道徳に違反したと結論を出した。同大学は、公安機関から提供された調査報告書をもとに、警告処分を行ったとされる。
 最近になってネット上でセクハラ事件が広まった後、事態を重く見た北京大学側は、大学の紀律委員会などに再審査を依頼。当時の関連資料を取り寄せ、当事者や関係者に事情聴取を行ったほか、8日には林建華*13学長主催でこの問題に関する会議を開いた。
 会議では、大学の歴史上に起きた経験と教訓を真摯に総括し、管理上のさまざまな問題や制度上の不完全さの問題に対し深い反省と戒めとするとし、確固たる制度と措置をもって教師と学生の正当な利益を保障することなどを提案した。

中国の名門大学を騒がせたセクハラ告発運動:日経ビジネス電子版2018.4.20
 羅茜茜は2011年に北京航空航天大学の博士課程を修了したが、在学中に博士課程の副指導教官であった陳小武から激しいセクハラを受けたとし、陳小武は十数年間にわたって少なくとも7人の女子学生にセクハラを行い、そのうちの1人を妊娠させたと実名告発したのだった。この告発を受けて調査を行った北京航空航天大学は、1月11日にセクハラの事実を認定し、陳小武に対し大学院常務副院長の職を免じ、大学院指導教官資格と教員資格を取り消した。
 さて、4月に入ると羅茜茜の時と同様に米国から新たなセクハラ告発が行われたが、それは中国を代表する北京大学と南京大学に関わるものであったので、メディアはこれを大々的に報じたのだった。
 4月5日、カナダに居住する北京大学修士である李悠悠が中国のコミュニティサイト豆瓣(douban)に文章を発表して、教育部(日本の「文科省」に相当)が認定する「長江学者特別招聘教授」<注1>の瀋陽(ボーガス注:22年前は北京大学教授、告発当時は南京大学教授)が、22年前に北京大学中文系(中国語学部)の女子学生「高岩」に性的暴行を働き、自殺に至らしめたとして実名告発したのだった。
<注1>「長江学者」とは、国内外の高等教育界から著名な人材を招致して中国の大学で教育の指導に当たってもらい、中国の大学教師の水準を早急に引き上げる「長江計画」に基づき、中国政府が選考したトップクラスの学者であり、大学の教授として特別招聘した人を指す。
 それでは、4月5日付で李悠悠が瀋陽を告発した文章の内容はどのようなものだったのか。その概要は以下の通り。
【1】李悠悠は、北京大学社会学部を卒業後、同大大学院でマスコミュニケーション学の修士号を取得した。その後は米国へ留学して法律を学び、現在はカナダに居住している。彼女と高岩は高校時代から同窓の親友であった。1995年、李悠悠と高岩は北京大学へ一緒に入学し、同じ学生宿舎に住み、寝室もすごく近かった。
 高岩の専攻は中文系であった。不幸なことに、当時、瀋陽が副教授で、彼が高岩たち1995年度入学の中文系本科1年生の科目「現代漢語(現代中国語)」の担当教諭だった。
【2】この時、瀋陽は40歳、既婚で子供がいた。一方の高岩は19歳だった。
(中略)
【5】1996年の9月、大学2年の最初の日、高岩は李悠悠に涙ながらに「瀋陽は餓狼(飢えた狼)同様に私に襲い掛かって来た」と口ごもりつつ告白した。高岩が李悠悠に断続的に話したことをまとめると以下の通り。
(1)瀋陽は高岩の服を脱がせて裸にすると、彼女を犯した。さらに、高岩が考えたこともなかったことが起こったのであった。瀋陽は同じ文学班の女子学生と頻繁に会い、会うだけでなく性的な関係を持っていたのだった。
(2)そればかりか、瀋陽はその女子学生に「私は少しも高岩なんて好きじゃない。彼女が自分から私にまとわりついて来てベッドに誘ったのだ。君の方が高岩よりよっぽど綺麗なのに、どうして私が高岩なんか好きになれようか。きっと彼女は精神病なんだ」と言ったらしい。その女子学生はどういうつもりか、瀋陽が話したままを高岩と同じ宿舎の女子学生や同じ文学班や他の班の女子学生に言いふらしたのだった。
(3)この話は瞬く間に大学中に広まり、一部の人々は高岩に後ろ指を指さした。このため、ただでさえも瀋陽の毒牙にかかって肉体的・精神的に打撃を受けていた高岩は、さらなる打撃を受けて休学を届け出た。
(中略)
【7】そして、1998年3月11日、高岩は自殺という方式でこの世を去った。
(中略)
【9】高岩の死去から20年間、瀋陽は教授という立場で、講義の場で学生たちに、「かつて自分のせいで1人の女子学生が死んだという噂があるようだが、それはデマであり、本当の原因は彼女が精神病だったからだ」と述べていた。また、2016年に出版された『甲子学者治学談』という書物の中に掲載された瀋陽回顧録『一直在路上―六十年人生風景一瞥(ずっと歩いて来た六十年の人生風景を一瞥する)』の中で、1998年に1人の女子学生が自殺したことに触れ、「その後多くの人が彼女の死が自分と関係があると言い、男女関係まで疑われたが、どうして彼女を救えなかったのか悔やまれる」と書いて、同情する振りをして、高岩の死と無関係であることを強調した。
【10】高岩の死から20年後に、瀋陽が60歳となって厚顔無恥な文章を書いたことで、李悠悠は堪忍袋の緒が切れた。
 李悠悠の告発文を受けて、南京大学は4月7日付で公式ウェブサイトに『北京大学卒業生がネット上に発表した文章に関する南京大学文学院(文学部)の声明』を発表し、瀋陽に南京大学文学院の教授を辞職するよう要請すると同時に、瀋陽の教授としての職務を停止した旨を発表した。一方、人事登録は依然として南京大学にあるが、瀋陽は2017年2月に上海師範大学への移籍を南京大学へ申請して、7月から上海師範大学人文学院(人文学部)の教授になっていた。南京大学が上記の声明を発表すると、上海師範大学もこれに続いて、2017年7月に瀋陽との間で締結した教員契約を打ち切ると発表した。
 また、翌4月8日には、北京大学瀋陽に関する特別会議を招集すると同時に、1998年に瀋陽行政処分した際の関係書類を公開した。同書類には、瀋陽が高岩を抱擁して接吻したことは認めたけれども、その責任は高岩にあり、高岩が瀋陽に恋愛関係となることを求めたもので、瀋陽はガールフレンドで良いじゃないかと答えたが、その理由は高岩の精神状態に問題があったからと明記されていた。北京大学は李悠悠の告発を踏まえて、瀋陽の虚言が明らかになったとして、さらなる学内管理の強化を呼びかけた。要するに、「死人に口なし」で、瀋陽は虚言を弄して大学当局を騙して、処罰を軽い行政処分に止めさせたのだった。
 ところで、上述した北京航空航天大学の陳小武も瀋陽と同じく教育部認定の長江学者特別招聘教授であった。セクハラ行為が確認された後、教育部は陳小武(1月14日付)、瀋陽(4月7日付)に対してそれぞれ「長江学者」の称号を取り消すと同時にすでに給付した奨励金の返却を命じた。

中国・女子受験生の「セクハラ自殺」の余波:日経ビジネス電子版福島香織*14(2018.7.4)
 山東省の臨沂大学の教授が長期にわたって複数の女子学生にセクハラし続け、6月に事件が明るみに出た。ある女子学生は、卒論指導を受けていた教授から、骨折して生活に不自由しているので買い物などを頼まれてほしい、とのメッセージを受けた。女子学生が家に行くと、卑猥な言動とともに肉体関係を迫られたという。すでに卒業した女子学生は教授からのメッセージ記録とともに学校に調査を申し出たところ、それが認められて、この教授に対する調査を大学側が実施、他にも複数の被害者女子学生が名乗り出ていた。教授は「教師としての道徳性に問題あり」として解任されたという。
 また人民大学の文学部副教授が突然解任されたのも学内調査でセクハラ行為が明らかになったからだという。この副教授は女子学生の論文指導を行って信頼を獲得した後、突然「獣性」を発揮して、女子学生をもてあそんだという。人民大学では経済学部教授がセクハラ常習犯で、たまたま南京大学から来ていた客員講師の博士がこれに気づき、告発。客員講師が来ていた期間中だけでも7人の女子学生がセクハラ被害を訴えていたという。人民大学ではもう一人、今年春にセクハラ問題が暴露され解雇された教授がいる。

中国版「#MeToo」運動の女性記者など2人に実刑判決 政権転覆あおった罪 中国 広州の裁判所 | NHK | 中国2024.6.15
 中国の裁判所は、性被害を告発する中国版の「#MeToo」運動で知られる女性記者など2人に対し、政権の転覆をあおった罪で懲役5年と3年6か月の判決を、それぞれ言い渡しました。
 判決が言い渡されたのは、性被害を告発する中国版の「#MeToo」運動で調査報道を手がけたことで知られるフリーの女性記者、黄雪琴氏と、労働者の権利を保護する活動家の王建兵氏の2人です。
 2人をめぐっては、去年9月に30余りの国際団体が直ちに釈放するよう求めていました。
 判決について、中国外務省の林剣報道官は14日の記者会見で「法律を犯せば、誰でも法律の制裁を受ける。中国の司法主権に挑戦し内政に干渉するいかなる国家や組織にも断固として反対する」と強調しました。
 習近平指導部は、人権や自由を口実に外国が体制に揺さぶりをかけていると警戒を強めています。

赤旗中国人民大教授 セクハラで処分/学生が被害告発2024.7.24
 中国人民大学は22日、同大文学院副院長の王貴元教授が学生に対し長期にわたりセクシュアルハラスメントをしていたとして、教授免職、中国共産党党籍剥奪処分を下したと発表しました。
 王教授から被害を受けていた同大博士課程の学生が21日夜に中国のSNS上で、実名で性被害を告発。学生は2年以上にわたりセクハラを受け、性的関係を強要されていました。学生が拒絶した後、王教授は学生を卒業させないなど報復したといいます。
 告発を受け、人民大学はすぐに調査を始め、王教授が校則や教師の道徳に違反しているとして処分を決めました。
 SNS上で、多くの人が告発した学生への支持を表明。学生は22日夜、「素早い処理に感謝する。皆の関心と支援に感謝する」と投稿しました。

中国の名門大学教授、セクハラ訴えられ即解雇…中国版「MeToo」 : 中国•台湾 : 日本•国際 : ハンギョレ新聞2024.7.24
 中国の名門大学である中国人民大学の博士課程の女性が、指導教授からセクハラ被害を受けたことを21日に暴露した。中国社会では珍しい「MeToo」(セクハラに対する社会的告発)のニュースにソーシャルメディアは騒然となり、学校側は暴露の翌日にこの教授を解雇し、当局に報告した。
 中国人民大学文学院の博士課程に在籍するこの女性は21日、中国のSNSの新浪微博(ウェイボー)に顔と実名を公開した後、自身のセクハラ被害の経験を説明する59分の動画を公開した。女性は2022年5月、自身の博士課程の指導教授である王貴元教授(65)から身体的・言語的に性的な嫌がらせを受け、性的要求を拒否したところ博士号を取得させないという脅迫にあったと主張した。王教授は中国人民大学文学院の党書記であり副院長だ。
 中国人民大学はただちに動き、翌22日に声明を通じて、女性の主張が事実であり当該教授を解雇したことを明らかにした。中国人民大学は王教授の行動が「党の規律と学校の規定に違反」したものであり、王教授の党籍を剥奪し、法に従い当局に今回の事件を報告したことを明らかにした。

中国名門大学の教授、博士課程の女子学生へのセクハラで完全追放:時事ドットコム
 中国の名門大学である中国人民大学は22日、指導する博士課程の女子学生に対するセクハラと強制わいせつ行為を理由に、同大学文学院の元副院長の王貴元博士課程指導教授に対して、雇用関係の取り消し、教授職、博士課程指導資格、中国人民大学教員職の取り消しなどの一連の処分を行うとする公告を発表しました。同時に、法に基づいて関連証拠を警察に通報したとのことです。
 中国人民大学文学院の博士課程在学中のある女子学生は前日の21日夜、指導を受けている王貴元教授が自らをセクハラしたことを実名で告発する動画をSNSに投稿しました。女子学生によると、王教授は2022年5月21日に自分に対してセクハラや強制わいせつ行為をして性的関係を求めました。それを拒否すると、王教授はその後2年余りにわたって彼女に報復し、卒業を許さないと脅しました。
 中国人民大学は告発を受け、7月22日午前に中国のミニブログサイト「微博(ウェイボー)」の公式アカウントで、調査チームを直ちに設立し、昼夜兼行で調査と確認を進めていると発表していました。告発動画を発表した女子学生は22日夜にSNSに投稿し、「事件発生の後、学校側は私のことをとても心配し、私の安否を気遣い、二次被害を受けていないか、ほかに影響を受けることはないかなど、さまざまな配慮をしてくれて、とても感謝している。学校は厳しくかつ迅速に対処し、すでに今日の午後に結果を出した。こうした迅速な対応、決して容赦しない態度を誇りに思う」と述べた上で、「これから安心して勉強できる」と改めて感謝の意を示しました。
 中国教育部が2020年に発表した「大学院生指導教員行動準則」には、教員は学生と不正な関係を持ってはならないと明確に定めています。さらに昨年8月に行われた教育部の発表会では、「教員のモラルに関する世論は大学の教員全体のイメージに大きな損害を与えている」とする教育部としての見解が示されました。

 中国版「#MeToo」運動の女性記者など2人に実刑判決 政権転覆あおった罪 中国 広州の裁判所 | NHK | 中国だけ見れば「中国はまだ遅れてる」という見方に傾きがちですが、一方で「上で紹介した他のセクハラ関係記事」を考えれば話は複雑でしょう。
 基本的には「女性に対する性暴力(セクハラ等)について、中国の状況は改善の方向にある」のではないか。
 彭帥はどこに?「#MeToo」運動は中国で再燃するか?(阿古智子) - エキスパート - Yahoo!ニュースが触れる張高麗*15(彭帥*16がセクハラ告発)も処罰は受けてない物の、もはや「政治生命は事実上終わった」ようですし。
 中国版「#MeToo」運動の女性記者など2人に実刑判決 政権転覆あおった罪 中国 広州の裁判所 | NHK | 中国について言えば「話がセクハラ告発に留まらず政権批判に向かった」から当局の抑圧がかかったのであり、一方「上で紹介した他のセクハラ関係記事の場合」は「セクハラ犯人個人(あるいは彼をかばう一部の人間)」にしか批判が向かわず「政府批判ではない」と評価されたから「解雇等の懲戒処分」ではないか(単なる「可能性の指摘」であり、「セクハラ批判に留まらず政権批判したのが良くなかった」と言ってるわけでは勿論ありません)。
【参考:ケヴィン・スペイシー

ハリウッドを追放されたケビン・スペイシー、借金は億単位、家も失う(猿渡由紀) - エキスパート - Yahoo!ニュース2024.6.14
 「#MeToo」運動勃発でケビン・スペイシーがハリウッドを追放されて、7年半。
 被害を告発した男性は複数おり、スペイシーは刑事捜査も受け、民事でも訴えられた。それらの裁判はすべてスペイシーの勝利に終わり、彼の無罪は証明された形だ。にもかかわらず、2度のオスカーに輝くこの名俳優の姿をスクリーンで見ることは、今もないまま。そんなスペイシーは、今週、イギリスの著名ジャーナリスト、ピアース・モーガンの配信番組「Piers Morgan Uncensored」に出演。1時間半にわたるインタビューの中で、時に涙顔になりながら、心境を赤裸々に語った。
 この7年半の間には、「人生のどん底を経験しました」と、スペイシー。
 「今、どこに住んでいますか」というシンプルな問いに泣きそうな表情に。
 「今週、ボルチモアの家を差し押さえられたんです。家は競売に出されます。なので、あなたの質問への答は『私はどこに住んでいるのかわからない』です」
 モーガンに「今、お金をどれだけ持っているのですか」と聞かれると、「ゼロ」と答えている。
 「弁護士代が高いということはご存知ですよね。私にはまだ弁護士への支払いがたくさん残っています。100万ドル(日本円にして億)単位で」
 そこから抜け出すには、仕事に戻らなければならない。昨年のイギリスの刑事裁判で勝訴する前にも、スペイシーは、自分と組みたいと言ってくれている業界人はいると自信を見せていたが、現実は思ったより厳しかったようだ。
「監督、プロデューサー、俳優、資金を出してくれる人たちから、たくさんオファーをいただきます。みんな、私と仕事をしたいと言ってくれます。問題はスタジオ、配信会社、配給会社。ほかの人が乗り気でも、いつも誰かひとりが『観客を怒らせることになる』と言い出すのですよ。」


◆少子・高齢化と社会保障(井手啓二*17
(内容紹介)
 中国の社会保障制度(年金、失業保険、労災保険医療保険介護保険)について
1)個人負担があり、「負担を嫌う貧困者」に未加入者が多い(未加入だと当然給付が受けられない)
2)全国統一の制度となっておらず、地域ごとに、まちまちであり、裕福な自治体では制度が充実しているが、貧乏な自治体では制度が貧弱という地域格差があること(また医療保険介護保険の場合、田舎では都会と違い病院や介護事業所と言った医療サービス、介護サービスが十分整備されていないという意味での「地域格差」問題もある)
を指摘。
 「全国共通制度化すること(勿論その際できる限り、高い給付レベルにあわせる)」「未加入者をなくすこと(勿論個人負担をなくし全額税負担にすることも考えられるが)」が今後の課題としている。


◆中国の南シナ海進出(末浪靖司*18
(内容紹介)
 いわゆる南沙諸島問題(中国、フィリピン、ベトナム)が取り上げられていますが、「ベトナム、フィリピン、中国」はお互いに重要な貿易相手国であり、全面対決になる可能性は低いとみています。
 その上で「にもかかわらず」南沙諸島問題を軍拡の口実にしようとしている日米両国政府を批判しています。
 なお、筆者は何故か指摘していませんが中国の領有権主張は「中国共産党オリジナル」ではなく「蒋介石中華民国時代からの主張の引き継ぎ」であり「台湾もほとんど同じ主張であること」に注意が必要でしょう
 なお、筆者は仲裁裁判所での中国敗訴判決などを理由に中国の主張には否定的ですが、小生はこの問題については素人なので特にコメントしません。ちなみに浅井基文先生は仲裁裁判所判決には批判的です(例えば南シナ海問題に関する仲裁裁定|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページ(2016.7.17)、南シナ海仲裁裁定の問題点(中国専門家の指摘)|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページ(2016.7.18)参照)。


◆株価高騰と株主(投資ファンド)主権型コーポレートガバナンス(國島弘*19
(内容紹介)
 株主(投資ファンド)の意向に従い「株価高騰」を図ることを至上命題とするのでは無く「労働者」「下請け企業や取引先企業」「地域社会」「消費者」など様々なステークホルダー(利害関係者)の利益を反映した企業統治コーポレートガバナンス)が求められるとしていますが、小生の無能のため詳細な紹介は省略します。


◆「ゾンビ企業」論と中小企業支援批判を考える(山本篤*20
(内容紹介)
 中小企業支援について「倒産すべき企業を無駄に延命させてるだけ」とするいわゆる「ゾンビ企業論」が批判されていますが、小生の無能のため詳細な紹介は省略します。
参考

コロナ融資「別枠」に/小池氏「過剰債務で廃業危機」/参院財金委2023.3.14
 小池氏は、コロナ禍、物価・原材料高、過剰債務の「三重苦」にあえぐ中小企業が「ゾンビ」呼ばわりされていると批判し、「ゾンビ企業が淘汰されるべきとお考えか」と質問。鈴木俊一*21財務相は「『ゾンビ』と表すのは失礼だ」と述べ、支援は重要だと認めました。


◆シリーズ「現代のグローバル企業分析」第12回『ファイザー*22、ロッシュ*23武田薬品*24』(松原由美)
(内容紹介)

ファイザー - Wikipedia
 1990年代、積極的な大型買収を繰り返し、高脂血症薬リピトール(ワーナー・ランバート*25が開発)、抗うつ薬ゾロフト、勃起不全薬バイアグラ、抗炎症剤セレブレックスなどの商品を抱える巨大企業に成長する。
 2003年には、アメリカの製薬会社ファルマシア社を買収し、この時点で世界最大の製薬会社となった。2009年にはアメリカの製薬会社ワイス社を約680億ドルで買収。
 有力な新薬を会社ごと買収して収益を上げる手法は「ファイザーモデル」と呼ばれ、1990年代から進んだ製薬業界再編の旗頭となった。

武田薬品工業 - Wikipedia
◆2017年1月9日
 がん関連の米国製薬企業ARIAD Pharmaceuticals社の全株式を「約52億米ドル」で買収することに合意
◆2018年5月8日
 アイルランドの製薬大手シャイアー社を約760億ポンド(日本円にして約6兆8000億円)で買収することに合意。日本のM&Aで過去最高額であり、売上高3.3兆円、世界7位(当時)となる日本初のメガファーマが誕生することになった。

ということで「ファイザー、武田が近年M&A(企業買収)で急速に拡大成長してきた」のに対し、ロシュはそうではない」等の指摘がされていますが、小生の無能のため詳細な紹介は省略します。

*1:著書『大英帝国の外交官』(2005年、筑摩書房)、『外交による平和:アンソニー・イーデンと二十世紀の国際政治』(2005年、有斐閣)、『倫理的な戦争:トニー・ブレアの栄光と挫折』(2009年、慶應義塾大学出版会)、『国際秩序』(2012年、中公新書)、『迷走するイギリス: EU離脱と欧州の危機』(2016年、慶應義塾大学出版会)、『安保論争』(2016年、ちくま新書)、『世界史としての「大東亜戦争」』(2022年、PHP新書)等

*2:勿論「不祥事はダメ押し」になったでしょうが、不祥事だけで負けたかのように言ってるあたりがウヨの細谷らしい。明らかに「物価高」等の生活問題、政策問題も影響したでしょうに。

*3:どう見ても最初から略称を覚えやすい「INDIA」にしてそれから正式名称(?)「インド国家開発包括同盟(Indian National Developmental Inclusive Alliance)」を決めたように思います。

*4:ネール元首相のひ孫。インディラ・ガンジー元首相の孫。ラジブ・ガンジー元首相の子

*5:「自民にすり寄ったり、立民にすり寄ったりする」国民民主や維新のようなせこい振る舞いです。何処の国にもそうした「党利党略の輩」はいることを痛感しますが、果たして「政権与党入りした」とはいえ「BJPが大幅議席減、野党連合が大幅議席増」では「勝ち馬に乗った」といえるのかどうか。

*6:東京大学教授。著書『現代中国の産業』(2007年、中公新書)、『チャイニーズ・ドリーム』(2013年、ちくま新書)等

*7:ここでは「ニュー・エネルギー・ビークル(電気自動車、プラグインハイブリッド車燃料電池車)」の略称

*8:大阪産業大学教授。著書『新興国企業の成長戦略:中国自動車産業が語る”持たざる者”の強み』(2019年、晃洋書房

*9:明治大学教授。著書『中国社会主義国家と労働組合』(2007年、御茶の水書房)、『K・A・ウィットフォーゲルの東洋的社会論』(2008年、社会評論社)、『現代中国政治と労働社会』(2010年、御茶の水書房)、『中国革命論のパラダイム転換:K.A.ウィットフォーゲルの「アジア的復古」をめぐり』(2012年、社会評論社)、『ポストコロナにおける中国の労働社会』(編著、2024年、日本経済評論社)等

*10:同志社大学教授

*11:東京大学教授。著書『増補新版・貧者を喰らう国』(2014年、新潮選書)、『香港・あなたはどこへ向かうのか』(2020年、出版舎ジグ)

*12:まあジャニー喜多川(ジャニー死後、ジャニーズ事務所が被害者に対する謝罪と金銭賠償に追い込まれる)やケヴィン・スペイシー(1995年に『ユージュアル・サスペクツ』でアカデミー助演男優賞を、1999年に『アメリカン・ビューティー』でアカデミー主演男優賞を受賞するが、疑惑発覚後は事実上、業界追放)など「一部の性加害告発(#MeToo運動)」は「加害者:同性愛者の男性」「被害者:男性」ですが

*13:重慶大学学長、浙江大学学長、北京大学学長等を歴任(林建華 - Wikipedia参照)

*14:著書『中国「反日デモ」の深層』(2012年、扶桑社新書)、『現代中国悪女列伝』(2013年、文春新書)、『本当は日本が大好きな中国人』(2015年、朝日新書)、『ウイグル人に何が起きているのか』(2019年、PHP新書)、『ウイグル・香港を殺すもの』(2021年、ワニブックスPLUS新書)、『台湾に何が起きているのか』(2022年、PHP新書)等

*15:深圳市党委員会書記、山東省長、山東省党委員会書記、天津市党委員会書記、第一副首相(党中央政治局常務委員兼務)を歴任

*16:2013年全英オープン女子ダブルス、2014年全仏オープン女子ダブルスの優勝者

*17:長崎大学名誉教授。著書『中国社会主義と経済改革』(1988年、法律文化社

*18:著書『9条「解釈改憲」から密約まで:対米従属の正体』(2012年、高文研)、『機密解禁文書にみる日米同盟』(2015年、高文研)、『「日米指揮権密約」の研究』(2018年、創元社)、『米中関係の実像』(2022年、かもがわ出版

*19:創価大学教授。著書『経営学の組織論的研究』(1992年、白桃書房

*20:日本大学教授

*21:小泉内閣環境相、第四次安倍内閣五輪相等を経て岸田内閣財務相

*22:米国の製薬メーカー。1849年、チャールズ・ファイザーが創業

*23:スイスの製薬メーカー。1896年、フリッツ・ホフマン・ラ・ロッシュが創業

*24:武田薬品工業 - Wikipediaによれば、日本の製薬メーカーでは売上高1位、世界の製薬メーカーでは売上高9位(2009年)であり、アステラス製薬(世界18位:2005年4月に山之内製薬藤沢薬品工業が合併して発足)、第一三共(世界20位:2005年9月に第一製薬と三共が合併して発足)、大塚ホールディングス(世界21位:大塚製薬アース製薬大鵬薬品工業等)、エーザイ(世界29位)と共に国内5大製薬メーカーの一つ。売上高のすべてが医療用医薬品売上で、消化性潰瘍治療薬、制癌剤を主力製品とする。かつては医療用医薬品以外の事業も手がけていたが、子会社だった「武田食品工業」は2006年4月、ハウス食品との共同出資による「ハウスウェルネスフーズ」に移行し、飲料部門を含む食品部門から撤退した。さらに、2021年には、アリナミン、ベンザなどの一般用医薬品の製造・販売子会社だった武田コンシューマヘルスケア(現・アリナミン製薬)の株式を米国ブラックストーン・グループへ譲渡し、一般用医薬品事業からも撤退した。

*25:後にファイザーが買収。医薬品事業以外にも「剃刀のシック(但しランバート社を買収したファイザーが後に電池メーカーであるエナジャイザー社にシックブランドを売却)」、「ガム・キャンディのアダムス(但しランバート社を買収したファイザーが後に食品メーカーであるキャドバリー社にアダムスブランドを売却)」等のブランドを保有ワーナー・ランバート - Wikipedia参照)