今日の産経ニュース(3/5分)(追記・訂正あり)

■【高木桂一の『ここだけ』の話「共産党=テロ政党」野次、「自民=ネオナチ」発言、どちらが“歴史的事実”に即しているか*1
http://www.sankei.com/premium/news/150305/prm1503050008-n1.html
 今の安倍政権は極右政権なんですから「ネオナチ呼ばわりされても仕方ない」でしょう。海外メディアなんかも安倍のことを「ウルトラナショナリスト」、つまり「ウルトラ(極端な)」「ナショナリスト国家主義者)」と呼んでるわけですから。
 一方「昭和20年代の火焔瓶闘争」なんぞ、今さら持ち出して「共産はテロ政党」などというのは馬鹿げています(実際にはこのヤジは「共産は安倍さんを批判するなんてイスラム国の仲間か!」というものであって火焔瓶闘争など関係ありませんが)。
 大体、自民党すら「共産にわびを入れてること」で

 筆者は山田氏を100%擁護するわけではないが、「テロ政党」なる表現が、共産党の主張する「誹謗中傷」にあたるとまでは考えていないからである。
 共産党嫌いを公言する維新の党最高顧問の橋下徹大阪市長は2月20日、同党所属の豊田貴志京都府議が議会で共産党を「テロ政党とも評される」と述べたことに対し「(テロ政党という)発言はだめだ」とダメ出ししたが、筆者は橋下氏の見解に完全には与しない。

などと共産に因縁をつける産経は正気じゃありません(「100%擁護はしないが誹謗に当たるとは思わない」という産経の主張は全く意味不明ですが)。
 「共産の過去でテロ政党呼ばわりがOK」だったら「ドイツと同盟関係にあった戦前日本」は親ナチそのものであり、岸信介*2(東条内閣商工相)、賀屋興宣*3(近衛、東条内閣蔵相)、重光葵*4(東条、小磯内閣外相)ら「戦前日本の有力政治家も参加した自民党」も「親ナチの流れがあるんだからネオナチと呼んで何が悪い」となるでしょう。あるいは旧軍の犯行(例:南京事件)で「旧軍の後継者である自衛隊を犯罪者呼ばわりすること」も可能になるでしょう。つうかまさかとは思いますが「自衛隊を犯罪者呼ばわりさせないため」、産経は旧軍の犯行を「中韓の捏造」呼ばわりし、なかったことにしようとしてるのですか?(もちろん産経の行為でかえって自衛隊や日本の評判が落ちる)

警察庁は「焦点*5269号 警備警察50年*6」(平成16年9月発行)で「暴力革命の方針を堅持する日本共産党」と明記し、同党の歴史をこう記述している。

 やれやれですね。予算確保のため強弁してるだけで今時警察だって「暴力革命の方針を堅持する日本共産党」なんて本心では思ってないでしょう。「昭和20年代武装闘争の記憶がまだ残る」昭和30年代ならまだしも「昭和40年代以降」はそんなこと警察すら考えてないでしょう。まあ、産経だって本心では「暴力革命の方針を堅持する日本共産党」なんて少しも思ってないでしょうが。
 なお、「焦点269号」には「右翼テロ」についての記述もありますので一部を紹介してみましょう。

https://www.npa.go.jp/archive/keibi/syouten/syouten269/sec02/sec02_04.htm
 戦後の左翼運動の盛り上がり、とりわけ昭和34年以降の日米安全保障条約改定反対闘争(60年安保闘争)を中心とした大衆運動の盛り上がりは、右翼に「共産主義革命」に対する危機感を増大させ、(中略)また、このような危機感を背景に、
衆議院面会所において、河上丈太郎*7社会党顧問にナイフで切りつけ、左肩部に全治3週間の傷害を与えた「河上社会党代議士殺人未遂事件」(35年6月)
を皮切りに、
●総理官邸において岸首相に登山ナイフで切りつけ、左臀部6か所に全治2週間の傷害を与えた「岸首相傷害事件*8」(同年7月)
日比谷公会堂で演説中の浅沼稲次郎*9社会党委員長を短刀で殺害した「浅沼社会党委員長殺人事件」(同年10月)
天皇陛下を誹謗する記事を雑誌に掲載したとして中央公論社社長の妻及び家政婦を殺傷した「嶋中事件」(36年2月)
等一連の右翼によるテロ事件が続発し、社会に大きな衝撃を与えました。
 こうしたテロ気運の盛り上がりの中、「国家、民族の危機を救うためには実力行動もやむを得ない」とする、「民族正当防衛論」や「クーデター合理論」が主張され、戦後初の右翼によるクーデター企図事件といわれる「三無(さんゆう)事件*10」(36年12月)が発覚しました。この事件は、「三無主義(無税・無失業・無戦争)」政策の実践を訴え、共産革命の企図を封じ、国家革新の実現を目的に、政界関係者等の殺害、国会議事堂の襲撃等を企図したものです。
 40年代には、70年安保闘争の高揚や、45年7月に日本共産党が「1970年代後半に『民主連合政府』を樹立する」という展望を明らかにしたこと、日中国交正常化と台湾との断交(47年9月)という我が国の外交路線に大きな転換がみられたことなどの諸情勢に刺激され、右翼は一層左翼勢力に対する対決姿勢を強めました。こうした情勢を背景に、
●地方遊説中の宮本*11日本共産党委員長を刺身包丁で襲撃した「宮本日本共産党委員長襲撃事件」(48年5月)
●成田*12社会党委員長の殺害を企図し、肉切包丁を所持して同委員長に接近しようとした「成田社会党委員長殺人予備事件」(49年5月)
が発生しました。
 さらに、「我が国における左翼勢力の急激な伸張の一因は、ソ連、中国、北朝鮮等の共産主義諸国にある」として、これら諸国の各種行事や代表団の来日等の機会に対決行動の盛り上げを図り、このような中で、
●バイバコフ*13ソ連副首相を木刀で殴打した「バイバコフ・ソ連副首相暴行事件」(43年1月)
●ノビコフ・ソ連副首相の宿舎に侵入した「ノビコフ・ソ連副首相宿舎侵入事件」(45年4月)
等が発生しました。

(1)「51年綱領」の廃止
 日本共産党は、昭和30年7月の第6回全国協議会(6全協)で、20年代後半に行った武装闘争を「誤りのうちもっとも大きなものは極左冒険主義である」(=革命情勢がないのに武装蜂起した)などと自己批判しました。そして、33年7月の第7回党大会で、暴力革命唯一論の立場に立った「51年綱領」を「一つの重要な歴史的な役割を果たした」と評価した上で廃止しました。

であるなら共産党はもはや「過去の武装闘争」を正当化してないわけで、何でこういう文章を書きながら「テロ政党ヤジ」を正当化出来ると産経が思うのか訳がわかりません。

*1:以下の拙文では発言内容の問題をもっぱら取り上げましたが「自民=議会での不規則発言(ヤジ)」、「共産=幹部政治家の記者会見や機関紙・赤旗の記事」といった手法の違いもあります。産経のようにヤジを「政治家の記者会見や機関紙記事」と同列視して正当化するなんて論外です。

*2:戦後、自民党幹事長、石橋内閣外相を経て首相

*3:A級戦犯として無期刑が下るがいわゆる逆コースにより1955年に釈放。池田内閣法相、自民党政務調査会長(池田総裁時代)など歴任。

*4:A級戦犯として禁固7年の判決。戦後、鳩山内閣外相

*5:警察庁発行の広報誌

*6:警察庁サイト(https://www.npa.go.jp/archive/keibi/syouten/syouten269/index.htm)で「269号」のHTMLデータ、pdfデータが読める

*7:右派社会党委員長、社会党顧問を経て社会党委員長

*8:児玉誉士夫大野伴睦(初代自民党副総裁、児玉が支援していた)立ち会いの下に岸が「大野の政治的協力を得るため」に「次の自民党総裁には大野君を指名する」と約束したにも関わらずそれを反故にし池田勇人(石橋内閣蔵相、岸内閣通産相など歴任)を指名したあげく「床の間(自民党総裁ポスト)に肥だめ(大野)がおけるか」と悪口雑言したことへの児玉の報復だというのが通説的見解です。

*9:社会党書記長、委員長を歴任。

*10:破防法が初めて適用された事件としても知られる。

*11:日本共産党書記長、委員長、議長を歴任

*12:社会党政策審議会長、書記長、委員長を歴任

*13:ソ連石油工業相、ゴスプラン(ソ連国家計画委員会)議長、副首相を歴任