祝!橋下徹、大阪都構想住民投票で敗北(追記あり)

 他の方のブログエントリやツイッターを引用してコメントしてみます。

■kojitakenの日記『祝! 「大阪都構想」否決! 橋下、政界引退へ!!』
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20150518/1431884454
 橋下は「任期が来たら市長は辞める」と発言をトーンダウンさせていますので政界引退するどころか、市長辞任さえ怪しいですが、橋下敗北自体はいいことです。

「反対が70万5585票で賛成の69万4844票をわずかに上回り」、とはなんという薄氷の勝利か。だが政治は結果がすべてだ。橋下徹の「終わりの始まり」である。さらに、橋下を改憲の切り札にしようとたくらんで(注:橋下を公然と応援して)いた安倍晋三にも大きな打撃を与えることになった。歴史的な結果だった。

 全く同感です。江田憲司も維新代表の辞意を表明しましたし、これで維新(特に大阪維新)の没落がついに始まったと言う事でしょうか。

shigeto20006氏のツイート
・私たちの街、ふるさとを守ってくださった大阪市民の皆様、ありがとうございます。
・今度は本当に(注:市長辞任の)約束を守ってくれるんだな? すぐには無いだろうが、いずれ国政選挙に出馬するなどは十分に考えられるので、大阪市長を辞めた後も十分に警戒しなければならない。
・(注:市長辞任を表明した)橋下徹に続いて江田憲司まで(注:維新代表を)辞めるとは、維新の党は一気に瓦解するんじゃないだろうか。みんなの党と同類の一時の徒花になりそうだ
大阪都構想の否決は今年1月の佐賀県知事選での樋渡啓祐の落選に続く、日本の地方自治のターニングポイントになりそうな気がする。「改革」の名の下に住民生活を破壊する独善的なリーダーの時代は、これをきっかけに終わらせなければならないのだ。
・それにしても、大阪で生まれ育った私にとって、橋下徹と「大阪都構想」は常にふるさとを脅かし続けるモンスターのような存在だったわけで、それがようやく消え去ることになったのは本当に清々しい気分だ。ハシズムのない大阪を取り戻すのが、こんなに大変なことだったとは
・今回の住民投票で明らかになった大阪市民・府民の間の対立と分断を解消するのは大変なことだろう。私たち(注:都構想反対派)も和解に向けて努力しなければなるまい。「大阪都構想」に賛成した人たちは許そう。でも、大阪を破壊した橋下徹(注:たち都構想推進者)だけは、私は絶対に許さない。

 これまた全く同感ですね。最後のツイートについて言えば中国が「一般日本国民は許せるがA級戦犯なんか許せない」と言うのと似たような話でしょう。


■現代ビジネス『大阪都構想は、マジで洒落にならん話(1)〜賛成する学者なんて誰もいない編〜』(藤井聡*1
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43312
 安倍ブレーンにして産経文化人の藤井氏ですが「改憲に有利なんてふざけた理由で、橋下都構想を支持できるか!。大阪市がぼろぼろになってしまう!」「この問題に左右はない!」という筋の通った態度で男を上げたとは言えるでしょう。

 もしも一人の例外も無く全ての専門家が完璧な「ダメだし」をしてるのなら、多くの大阪市民達も、都構想が大阪を救ってくれるだろう、という薄淡い期待を持つこともなかったに違いない。
 しかし「不幸」な事に、都構想さえやれば未来が開けるかのような淡い期待に対して、「大丈夫、それで正解ですよ」と甘く語りかける学者達がいたのだ。本誌にも寄稿している佐々木信夫*2(注:中央大学)教授、高橋洋一*3(注:嘉悦大学)教授、そして、他誌で精力的に都構想賛成論を展開している上山信一*4(注:慶應義塾大学)教授の三人だ。この三人がいたからこそ、多くの市民が「得体の知れない都構想」を支持してもいいかも、という気分が正当化されたのである。
 しかし、彼らは皆「大阪市特別顧問」であることをご存じだろうか(ただし佐々木氏は、本年3月末日まで)。いわば彼らは、自分が提案した「都構想」という作品を、世間に宣伝しているのではないかと疑われても仕方ない立場にあるわけだ。
 しかも、彼らの内の佐々木氏と上山氏は、顧問就任する「前」に「都構想」を批判していたのだ。
 上山氏は、「図書館が府と市で二つあって無駄だとか…けち臭い話…。稼働率が高けりゃ置いとけばいいし、改善が進んでいる(府も市もあほじゃない)。」とツイートしている(2011年10月26日)。つまり、今、大阪市民が都構想に賛成する最大の論拠としている「二重行政」論を「けち臭い」とまでこきおろしたわけだ。
 さらには同じく都構想を賛成する重要理由である「大阪市は無能だ論」に対して「市もあほじゃない」という形で、最大級の非難を差し向けている。これではまるで「反対派の急先鋒」だ。
 そして佐々木氏に至っては、同じく顧問就任前に「都になれば成長するわけではない。東京が繁栄しているのは企業の本社機能が集まっているためで、都制という自治制度とは関係ない」とまで言い放っている(日経2011年12月11日)。
 つまり、今、橋下氏がTVコマーシャルで喧伝しまくっている「都構想で大阪を豊かにする」というメッセージに対して強烈な冷や水を浴びせかけていたわけだ。さらには、同じインタビューで、都構想を成立するため(の財源捻出のため)には「現在の大阪市の行政サービスの水準を下げ」ざるを得ないとまで述べている。
 これもまた、「反対派の急先鋒」とまでメディアで紹介される筆者が本誌で論じた論調そのものだ。
(中略)
 つまり特殊な立場である顧問を対象から除外するなら、都構想に熱烈な賛同を示している都構想に関する分野の学者なんて一人もいないのである(もしおられるなら是非教えていただきたい)。何と言っても佐々木氏や上山氏ですら、顧問就任以前には都構想に賛成どころか強烈な批判を差し向けていたのだから。
(中略)
 佐々木氏は長い間東京都の職員として勤め上げた人物だが、彼もまたその経験も踏まえつつ、次のように発言している。
「この際、「東京市」の復活も構想すべきではないか。」(『東京都政』*5岩波新書・佐々木信夫著 P208)
 つまり都区制度なんて一刻も早く終わらせるべき馬鹿馬鹿しいシステムなのだ、と橋下市長の信頼あつき佐々木元顧問もおっしゃっていた訳なのである。

太字強調しましたが

佐々木氏と上山氏は、顧問就任する「前」に「都構想」を批判していたのだ。

と言うのが重要なポイントですね。そして彼らが「顧問就任前」には橋下は今ほど「都構想にご執心ではなかった」ことも重要なポイントです。「最初から都構想に執着していたのに隠していたのか」それとも「何らかの理由で都構想に執着するように考えが変化したのか」、橋下の本心は彼にしか分かりませんが彼が「都構想に異常なまでに執着する態度を見せるようになる」「住民投票で、議会との完全対決も辞さないようになる」のは実は割と最近のことです。
 当初は「反対意見があれば都構想にはこだわらないかのようなポーズ」をとっていた。
 つまり佐々木氏、上山氏は「顧問になってから&橋下が都構想に執着するようになってから」「過去の自分の大阪都構想批判、あるいは東京23区制度批判をなかったことにして」橋下都構想を持ち上げてるわけでこれははっきりいって、藤井氏が批判するように御用学者以外の何物でもないでしょう。
 そして「そんな御用学者しか持ち上げない代物・都構想など評価できるわけがない」という藤井氏の態度も至極当然と言うべきでしょう。


藤井聡大阪都構想騒動、今こそ「事後検証」が求められています』
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/05/26/fujii-144/

 今回の「都構想騒動」について総括するような言論は,極めて不十分です.
 これは大変に由々しき事態です.そもそも都構想が通っていたら,当方が繰り返し主張してきたように,
大阪市民の自治は失われて大阪市はつぶされて大阪はダメになり,
・関西の地盤沈下が加速し,それを通して,日本が破壊される
という超絶な危機に直面していたのです.同時に,
・あらゆる反対意見をデマと断じつつ公権力を使って弾圧し,
・ウソで固めたプロパガンダを繰り返して政治的目的を達成する
という,あからさまな「ルール違反」でもって実際に政治が動いてしまうことを通して,日本の自由民主社会そのものが深刻な危機さらされる,という事態にも私たちは直面していたのです.
 つまり,今回はたまたま大阪,そして日本の政治経済が直面していた深刻な危機が回避されただけで,ちょっとした条件が変わっていれば(なんといっても票差は1万741票,0.8%弱しかなかったのです!),深刻な被害が私たち日本国家にもたらされていたに違いないところまで立ち至っていたわけです.
 それはいわば超大型台風が上陸し,数十兆円もの経済被害と数万人という死者がでかねない状況下で,いくつかの幸運と担当者の懸命の努力によってギリギリのところで災害が防がれた、という様な状況です。
 こんな時,防災担当者は,台風が過ぎ去った後に何も考えずに日常に戻るようなことは絶対にいたしません.まっとうな者は皆,今回たまたま災害を防げた事を神に感謝しつつ,自分たちの防災システムの強靭性を真剣に
「検証」
するのです.そうした徹底的な検証があってはじめて、「次」の台風に備えて一体何をすべきかが見えてくるわけです。さもなければ同じような台風が訪れた時には、今度こそ想像を絶する災害が発生することにもなりかねないからです。
 これはリスク管理、あるいは、強靱化対策における常識中の常識。
 だからしばしば,
「もう終わったことなんだから,とやかく言うなよ。未来を考えようぜ。」
というような意見を目にすることがありますが、それこそ「今」の気分だけを重視して「未来」を無視するトンデモ無い意見。大阪の未来、日本の未来のためにも、今回の橋下維新による都構想騒動とは一体なんだったかの「徹底的な検証」が強く求められているのです。

 全く同感ですね。もちろん「都構想賛成派への不毛な党派的攻撃」は無意味ですがそれは「なあなあ」でノーサイドにすることがいいと言う意味とは全然違います。「不毛な党派的攻撃はしないがなあなあでごまかさない、必要な批判はする」、難しいことですがそれこそが必要なことでしょう。何せ当の橋下は都構想の問題点を未だに認めてません。当然ながら都構想は終わっても「都構想的なだまし・恫喝路線」を今後も橋下が「可能な限り」続行するであろうことも間違いないわけです。それを阻止するためには今後も都構想の批判・検証が必要でしょう。

*1:著書『公共事業が日本を救う』(2010年、文春新書)、『列島強靱化論:日本復活5カ年計画』(2011年、文春新書)、『大阪都構想が日本を破壊する』(2015年、文春新書)など。藤井氏の大阪都構想批判サイト(http://satoshi-fujii.com/

*2:著書『都庁』(1991年、岩波新書)、『市町村合併』(2002年、ちくま新書)、『地方議員』(2009年、PHP新書)、『道州制』(2010年、ちくま新書)、『都知事』(2011年、中公新書)など地方自治に関する本多数。

*3:著書『日本経済のウソ』(2010年、ちくま新書)、『この金融政策が日本経済を救う』(2011年、光文社新書)、『この経済政策が日本を殺す:日銀と財務省の罠』(2011年、扶桑社新書)、『経済のしくみがわかる「数学の話」』(2014年、PHP文庫)など

*4:著書『行政の経営改革』(2002年、第一法規出版)、『自治体改革の突破口』(2009年、日経BP社)、『組織がみるみる変わる改革力』(2014年、朝日新書)など行政改革関係の本多数。

*5:2003年刊行