サミットでの安倍発言への批判

■リテラ『安倍首相のサミット発言「リーマンショック級の危機」に世界中から失笑! 仏「ル・モンド」は「安倍のお騒がせ発言」と』
http://lite-ra.com/2016/05/post-2285.html

 実はマスコミはあまり報じていないが、各国首脳はそのトンチンカンな主張に困惑を隠さなかったという。それでも、フランスのオランド大統領をはじめ複数の首脳は大人の対応で表立った批判は控えた*1が、ドイツのメルケル首相やイギリスのキャメロン首相は「世界経済は安定成長への兆しをみせている」と安倍発言をバッサリ切り捨てた。
 また、安倍が事前に各国を回って根回ししていたにもかかわらず、キャメロン首相は「財政出動は各国の事情に応じてやればいい」と従来からの姿勢を一歩たりとも譲らず、オバマ米大統領も、「各国がそれぞれの必要性と余力に基づき成長を加速することに注力する」と、各国の独自判断を強調した。
 27日付の日本経済新聞によれば、そもそも安倍が配ったペーパーについては自民党執行部内からも「世界からどんな反応が出るか心配だ」との声が漏れていたという。その心配は的中したというわけだ。
 しかし、これはあくまで海外での話だ。このサミットという場所でのトンデモデマ発言について、日本国内のマスコミからは(ボーガス注:批判がないわけではないが)ほとんど批判が聞かれない。それどころか、「消費増税延期という結論は与野党同じなんだから、野党がサミットの安倍発言を批判するのはおかしい」などと言っているテレビ番組まであった。
 こいつらはいったいどこまで安倍政権に尻尾をふるのか。
(中略)
 自分が公言した「消費税増税延期はしない」という言葉を選挙のために平気で破り、さらにそれをごまかすために、国際社会の重要な会議を利用した(ボーガス注:が、さすがに欧米首脳に相手にされなかった)。普通なら「日本のトップが恥ずかしいことをするな」と厳しい批判の声があがって当然だろう。
 ところが、こんなデマ首相をメディアは擁護し、世論も支持しているのだ。息をするように嘘をつく首相を長くのさばらせた結果、もしかしたら、日本という国全体が国際的信用なんて一顧だにしない“恥知らずな国”になりつつあるということなのか。

 産経ではまず載らない記事でしょう。
 確かに今「中国景気停滞」で世界的にも景気が悪い。とはいえ「リーマンショック時と同じ」なんてことは客観的事実としてない。
 以前産経が記事にしたベネズエラ原油安で経済がやばい)なんてのは相当に問題ですが、それにしたって現時点では世界経済的には「リーマンショック」程の問題じゃない。
 安倍もそんな事は分かってるでしょう。そもそもつい最近まで予定通り消費税10%増税するのかと岡田民進党代表に聞かれ「リーマンショック時とは認識してない→予定通りやる」と安倍本人も言っていたはずです。考えが変わったと言う事でしょうか。
 とにかく以前(10%増税先送り解散の時)、「リーマンショック時ほどの事態にならない限り消費税10%増税する」と「愚かにも断言してしまった」安倍としては「消費税増税延期」を口にするには欧米首脳に『今はリーマンショック時と同じ』といって欲しい。そうでないと「リーマンショック時じゃないんだからあんたの理屈だと増税しないとおかしいやん」「世界的にリーマンショック時じゃないのに増税できないほど日本経済悪いのならアベノミクス失敗てことジャン」「どっちにしろあんた、あのとき、ろくに考え無しに放言してたことじゃん」と批判派に批判される。
 ここで欧米首脳が「安倍さんの言うように今はリーマンショック時です」と言ってもらえれば安倍も大変ありがたい。
 でもさすがの欧米首脳(米、カナダ、英仏独伊)もそんな事しない。
 そんな嘘ついたら国内でマスコミや野党の非難を浴びてしまう。「今がリーマンショックてどういうことや。そんな事実ないやろ。その認識だと、あんた、今後どういう経済政策するんや」「もしかして安倍政権に助け船出したんか。いくら日本との友好が大事とは言えそれはもはや許されるレベルと違うやろ」なんて聞かれたらしどろもどろでしょう。欧米野党やマスコミもこんな嘘を許す程、安倍に甘くない。正直リテラ記事が言うように安倍及び自民党の酷さと安倍翼賛メディアの酷さ、安倍を支持する日本人の酷さにはうんざりです。
 なお、ルモンドってのは別に反安倍じゃないでしょう。とはいえあまりにも安倍が言ってることが馬鹿すぎるので辛辣な記事になるんでしょう。まあウヨ連中にとっては「安倍批判するメディアは全て反安倍の偏向メディア」でしょうが。


東洋経済オンライン『「リーマン・ショック前夜」の薄弱すぎる根拠:いったい誰が分析資料を作ったのか?』(安積明子)
http://toyokeizai.net/articles/-/120248

 26日の討議ではデヴィッド・キャメロン英首相が「危機とはいえない」と反論し、フランソワ・オランド仏大統領も記者会見で「私たちは危機の中にいない」と述べるなど、G7に参加した各国の首脳の見解は安倍首相が主張する内容で一致していたとは言い難い。
 また(ボーガス注:サミットで披露された『リーマンショック時に似ている』という)安倍首相の経済に対する見解は、23日に公表された(ボーガス注:政府の)月例経済報告とも異なるのだ。同報告の評価は「世界の景気は弱さが見られるものの、全体としては緩やかに回復している。先行きについては、緩やかな回復が続くことが期待される」というもの。同報告を決定した関係閣僚会議には安倍首相が直々に参加したが、この時には首相の口から異論は聞かれなかったという。
 それなのにどうしてわずか数日のうちに、世界経済についての評価がかくも劇的に変化したのか。そもそも首脳会談で示された資料は、誰が作成したものなのか。
 これについて驚愕すべき事実が判明した。
 民進党が27日午前に開いた「“リーマン・ショック前夜”検証チーム」で、外務省経済局政策課の首席事務官が「作成責任者は誰かわからない。どういう経緯で作られたのかは説明できない」と述べたのである。
 「サミットで経済政策を担当するのは外務省経済局。だから首相がサミットの討議に提出した資料について担当部局の首席事務官が『知らない』などと言うことはまずありえない*2」。
 同検証チームの世話人のひとりである玉木雄一郎衆院議員は訝しがる。
 さらに驚嘆すべきは、首脳会談で安倍首相が「リーマン・ショック前夜」の根拠として提示した資料だ。この資料は、世界経済の需要動向を示す「コモディティ価格の推移」「新興国の経済指標」「新興国への資金流入」「2016年成長率の予測推移」の4点で構成されている。
 「コモディティ価格の推移」によれば、2014年6月から2016年1月にかけてエネルギーや食料、素材などの商品価格は185.2から83.0へと55%下落しており、リーマン・ショック前後の2008年7月から2009年2月までの下落率(219.9から98.2の55%減)と一致する。よって安倍首相によればいま現在が「リーマン・ショック前夜」の根拠となるというのだが、これはかなり奇妙である。
 というのも、リーマン・ショック時は7カ月かけてコモディティ価格が55%下落したのに対し、近々のコモディティ価格は55%下落するのに19カ月かかっている。同じ下落率でも期間が変われば、経済に与えるショックは異なるのは常識だ。
 次に単なる商品価格の下落だけでは、景気のよしあしは測れない点だ。コモディティ価格は主に石油価格で決定されるが、石油価格の下落は必ずしも景気が悪いことが理由とは限らない。最近の下落はOPECが減産合意できなかったこと、米国との関係修復でイランが石油増産を開始したことなど*3が原因だ。さらにアメリカのシェールガス革命の影響も大きい。ISがシリアやイラクで略奪した油田から産出した石油も、価格下落の原因と考えられる。そもそも原材料の価格が下がると、必ず景気が悪くなるのだろうか。
 原材料が安くなれば、企業はコストを減らすことができる。
(中略)
 民進党岡田克也*4代表も27日の会見で、2016年4月にIMFが公表した世界経済見通しでは、米国、ユーロ圏、新興国ともに微増しており、日本だけが2017年に対前年比GDP成長率がマイナス0.1%に下落していることを示した。
「(IMFの見解は)2016年よりも2017年は(経済は)成長する。ただひとつ下がっているのが日本で、2017年にマイナスが予想されているのは消費税(増税)の影響だ」。
 IMFも反応した。クリスティーヌ・ラガルド*5専務理事は27日、「世界経済は(ボーガス注:リーマンショックのあった)2008年のような危機にはない」と安倍首相の意見をまっこうから否定。
(中略)
 5月に行われたJNNによる調査では41%が消費税引き上げに賛成だが延期すべきで、41%が引き上げに反対など、多数がいま上げるべきではないという見解。そこで苦肉の策として考え出されたのが、「(ボーガス注:欧米首脳の賛同が得られない、こじつけといっていい)リーマン・ショック前夜論」だったのだ。
 安倍首相は、そこまで消費増税による景気失速(ボーガス注:とそれによる選挙敗北や、自民党内からの安倍おろしの発生)に恐怖感を持っているということなのだろう。ただ(ボーガス注:サミット)担当官庁の外務省も蚊帳の外に置くにわか仕立ての安普請では、世界のリーダーを納得させるどころか国民の理解も得られるはずはない。美しく神聖な伊勢神宮から始まったサミットだけに、目玉とすべき政策のお粗末ぶりがあまりにも目立ってしまったといえる。

 内容的にはリテラと同じ方向性(安倍批判)です。どう見ても安倍はその場しのぎの嘘を考え無しでやっているようにしか見えません。
 なお興味深いのは書き手の名前です。
 この安積女史、「夕刊フジなどで名前を見てご存じの方もいるでしょう*6」が
夕刊フジ
中韓への修学旅行に警鐘「反日洗脳教育の危険」千葉黎明高校*7西村清理事長が激白(魚拓)
http://megalodon.jp/2012-1013-0357-39/www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20121011/dms1210111541018-n1.htm
■『韓国政府に都有地「貸し出し」 片山さつき氏が元夫・舛添知事に異議「政策順序が違う」』
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20160327/plt1603270830001-n1.htm
東洋経済オンライン「変質するユネスコ、「南京事件登録」の大問題:ボコヴァ氏*8は、なぜ"中国寄り"*9なのか」
http://toyokeizai.net/articles/-/88488
■ビジネスジャーナル「外務省、慰安婦報告書の一部を意図的に削除か…裏で韓国からの圧力か」
http://biz-journal.jp/2016/03/post_14084.html
などというトンデモ記事を書き「河野談話否定論」「南京事件否定論」をかましたり、舛添知事の韓国学校への都有地貸し出しに因縁つけたりするバカウヨです。要するに産経・阿比留の同類です(一方リテラは逆にそうした嫌韓国・反中国を批判するメディアです)。
 そんなバカウヨ安積女史ですら『ある程度の常識があれば』「安倍のリーマンショック発言」は擁護する気にならなかったという話です(もちろん産経・阿比留などほとんどのバカウヨは安倍をこの件でも下手すりゃ擁護、擁護しない場合でも安倍批判したくないので発言を無視しますが)。
 つうか安倍のリーマン発言を批判するだけの知力あるのなら、どう見ても女史の「河野談話否定論」「南京事件否定論」は故意のデマゴギーでしょう。つうか経済問題で安倍批判する人間が歴史認識では安倍万歳てのもよくわかりません。「野党内の極右」、つまり松原仁みたいな立ち位置なのか?

*1:まあ外交ってのは基本そう言うもんです。よほどの理由がない限り、相手国首脳の面子を潰すようなことはしない。特に安倍はサミットのホスト国首脳ですし。

*2:外務省発言を信じれば安倍が故意に外務官僚を外したと言う事でしょう。

*3:まあ「など」には「中国景気後退が含まれる」と見るのが一般的見解でしょうがそれでも安倍発言は正当化出来ないでしょう。

*4:民主党幹事長(鳩山代表時代)、鳩山、菅内閣外相、野田内閣副総理・行政刷新担当相、民主党代表代行(海江田代表時代)を歴任

*5:ドビルパン内閣農業・漁業相、フィヨン内閣財務相など歴任

*6:つうか小生もその一人ですが

*7:理事長が「中韓への修学旅行は反日洗脳教育の危険がある」と夕刊フジ相手に放言するこの学校がまともでないことはよく分かりました。たぶん歴史教科書も自由社育鵬社でしょう。

*8:ブルガリア外相。現在、ユネスコ事務局長

*9:無論そんな事実はありません。彼女が事務局長でなくてもあの資料は登録されたでしょう。そもそも彼女が登録をごり押ししたという事実も確認されてません。