週刊ダイヤモンド・短期集中連載『瓦解する神社』

週刊ダイヤモンド『瓦解する神社(第3回):神社本庁「恐怖政治」の実態、地方の大神社で全面戦争も』
http://diamond.jp/articles/-/134148
 2ヶ月前の少し古い記事です。「赤旗」「週刊金曜日」「岩波の世界」など左派系あるいはアンチ右翼系のメディアならともかく週刊ダイヤモンドにこういう記事が載るのが意外です。

 “お江戸”の大神社が6月、全国8万社の神社を束ねる「神社本庁」からの離脱を決定した。片や、地方では神社本庁と地元の“全面戦争”も勃発。特集「瓦解する神社」最終回の第3回は、本庁で強まる恐怖支配に迫る。(週刊ダイヤモンド・ダイヤモンドオンライン編集部 「瓦解する神社」取材班)
 「深川の八幡さま」として知られる富岡八幡宮(東京都江東区)が6月中旬、神社本庁(以下、本庁)からの“離脱”を決めたことが、週刊ダイヤモンド・ダイヤモンドオンライン編集部「瓦解する神社」取材班の取材で分かった。宗教法人法に基づく東京都の認証手続きを経て、早ければ9月までに離脱が認められる。
(中略)
 どうして、こうした“最悪”の事態に陥ってしまったのか。
 本庁秘書部は「答えることはない」と取材を拒否したが、事情に詳しい神社関係者は「直接的な理由は、富岡八幡宮宮司人事について、責任役員会の具申を本庁が無視し続けてきたため」と明かす。実際、富岡八幡宮では、トップを宮司“代務者”が6年以上も務めているという大手神社としては異常な事態が続いている。
 宮司の人事は、氏子などから選出された3人以上の責任役員のうち、代表役員(神社の場合は宮司)を除いた責任役員の推薦(具申)をもとに、神社本庁(正確には「統理」)が任命すると神社本庁庁規、神社規則に定められている。
 それが、富岡八幡宮の場合、「先代宮司の引退後、長女が代行役の『宮司代務者』に就いた。その長女を正式に宮司にしようと、13年から今春まで合わせて3回具申したものの本庁側が認めず、先延ばしされ続けてきた」(前出の神社界関係者)という。
 その理由について、本庁と富岡八幡宮の双方に対し、様々な憶測が飛び交う。真相はさておき、関係者が共通して危惧するのは、こうした“大神社”と本庁の確執から富岡八幡宮のように本庁を離脱する大神社*1が近年、相次いでいることだ(表参照)。
 とりわけ、本庁関係者が「富岡八幡宮以上に頭が痛い」という問題が勃発しているのが九州・大分県だ。
■大分の宇佐神宮では本庁と全面戦争に発展
 大分県宇佐市宇佐神宮。祭神・信仰別の神社数で全国4万社あまりという神社界の“最大勢力”である「八幡宮」の総本宮で、伊勢神宮に次ぐ有力神社として出雲大社明治神宮などと共に名が挙がる有名神社である。
 宇佐神宮を地元で支え続けてきた県神社庁宇佐支部が今年5月、氏子などで構成される支部総代会総会で、前代未聞の決議を行った。
 その中身は、「高圧的、独善的な宮司に関係修復をする心は皆無」と宇佐神宮の新任宮司を批判し、宇佐神宮の祭典や、遷宮に対する氏子への寄付要請を一切拒否することなどが盛り込まれた事実上の“絶縁状”だ。こうした事態に、県の神社関係者、本庁関係者は「本庁と大分の全面戦争の様相だ」とため息をつく。
(中略)
 前出の市関係者はこの現状にため息を漏らす。
「地元の宇佐神宮が今は『本庁の宇佐神宮』になってしまった。かつて宇佐神宮の責任役員が『これは本庁の乗っ取りだ』と言っていた。当時は真に受ける者は少なかったが、その予言通りになった。初めからオール宇佐態勢で臨めばよかったのだが、後の祭りだ」
(中略)
 ある重鎮の神職は言う。
神社本庁職員といえば、昔は国家公務員でいうキャリア組のような存在で、部長級ともなれば人格面でも学識面でも群を抜いていた。そのため、宮司の後継者問題に悩む地方に乞われて赴任していったものだ。だが、今ではその慣例を逆手に取り、天下り先として利用しているとしか思えない」
(中略)
「本庁の傘下にいてプラスになることは一つもない」(大神社宮司)という声が日々高まる中、神社界を束ねる神社本庁はその存在意義を失いつつある。
(後略)

【追記】
 せっかくなので第三回以外の記事も見てみます。
 まずは第1回。
週刊ダイヤモンド『瓦解する神社(第1回):神社本庁で不可解な不動産取引、刑事告訴も飛び出す大騒動勃発』
http://diamond.jp/articles/-/132516

「事情を知る本庁職員や有力神社の神職は、神社界における『森友学園問題』と呼んでいる」と自嘲するのは、本庁の役員会関係者だ。
(中略)
 複数の本庁関係者や、神職などに対する取材を進めると、「本庁の実権を握る一部の幹部が、特定の不動産業者と癒着し、貴重な本庁の財産を損なっているのではないか」という疑惑が浮上してきた。
 事の発端は、一昨年の2015年10月までさかのぼる。
 本庁の議決機関で、全国の神職などから選出される「評議員会」において、本庁が所有し、20世帯以上が入る職員用宿舎「百合丘職舎」(川崎市)を、新宿区の不動産会社「ディンプルインターナショナル」に売却することが承認された。その額は、1億8400万円だった。
 ところが、売買契約日の同年11月27日、本庁からディンプルへ売却されるかたわらで、同じ地方銀行の別室において、もう一つの不動産売買契約が交わされる。ディンプルから東村山市の不動産会社A社への“即日転売”だ。「ディンプルに売られる」とだけ説明されていた本庁の役員会は、ふたを開けてびっくりしたという。
 その上、A社への売却額は、ディンプルへの売却額1億8400万円よりも高い「2億円を大きく超える金額だった」と別の本庁関係者は明かす。
(中略)
 ただ、話がこれで終われば、「不動産取引に疎い宗教法人が、不動産会社に合法的に手玉に取られた」という話。ところがだ。昨年5月、今度は、A社がさらに大手ハウスメーカーB社に不動産を転売、その価格が一気に3億円超に跳ね上がったというからひっくり返る。
(中略)
 実は、本庁は百合丘職舎の売却案が内部で出た当初、当時の財務部長(前任)は競争入札を行うべく大手信託銀行などに相談していた。その過程で、相談先からは「3億円前後の値がつくだろう」という評価を受けており、また、実際に内々に「3億円近い買い取り額を提示する買い手もいた」(当時の事情に詳しい本庁関係者)という。それが、内規で原則禁じられているはずの随意契約により、1億円以上低い金額でたたき売られたことになる。
 では、なぜ随意契約による1億8400万円という売却額が、評議員会で承認されたのか。
 ディンプルとの随意契約に後ろ向きだった前財務部長が“更迭”され、K氏が財務部長に変わると話は一気に進む。評議員会や役員会で説明を求められたK氏が、売却の経緯や金額の根拠を説明した議事録(神社業界誌掲載)によれば、「入札に至るまでの時間的制約により、随意契約的な内容で契約を取り交わした」(中略)とある。
 まず、入札にかけられないほど緊急の時間的制約があったのかだが、「不動産の価格は流動的で、ディンプルに即座に売らなければ、値下がりするかもしれない」などとディンプルとの契約を推し進めた幹部たちは説明したという。「そんな理由がまかり通るなら、不動産売買全てが随意契約でしか行えないことになる」と、さらに別の本庁関係者は呆れる。実際、即日転売で2億円を超え、さらに、わずか半年後には当初の想定していた売価3億円を超える値で買い手がついており、何とも苦しい。
(中略)
 では、なぜディンプルが「随意契約的な内容」で、百合丘職舎を手中に収めることができたのか。
(中略)
 ある本庁関係者は「本庁の人間なら誰でも知っていることだが…」と前置きした上で言う。
「ディンプル社長のT氏は、実は『日本メディアミックス』という会社の社長も務めており、その取締役に、日本レスリング協会長を務める福田富昭*2が就いている。その福田氏は、本庁の元幹部である神政連会長の打田文博氏と懇意にしている。そして打田氏は、本庁の総長である田中恆清氏*3と盟友という関係。こうした流れで、ディンプルは本庁との関係を深めていた。
(後略)」
 ちなみに日本メディアミックスは、「日本で唯一の『皇室』専門誌」と謳って「全国の神社が半ば強制的に買わされている」(ある神職)という季刊誌『皇室』(扶桑社)の販売会社だ。
(中略)
 神社界の疑惑はどこまで白日の下にさらされるのか、関係者は固唾を飲んで見守っている。

 まあこれでわかるように森友で安倍が清廉潔白だなんて思ってる人間はほとんどいないわけです。
 しかし「神社本庁森友学園問題」、つまり「神社本庁幹部が本庁所有地を破格の安値で売却」し、森友同様に「業務上横領や背任と言った犯罪が成立するかも知れない疑惑」とは尋常ではありません。
 なお、コメ欄で指摘頂きましたが、これについては
■リテラ『神社本庁で森友問題そっくりの疑惑の不動産取引!「皇室」ファン雑誌販売をめぐり幹部の利益誘導疑惑も浮上』
http://lite-ra.com/2017/07/post-3337.html
という記事もあります。
 次に第2回。
週刊ダイヤモンド『瓦解する神社(第2回):神社本庁の「政治力」と「資金力」、不気味がるほどではなかった!』
http://diamond.jp/articles/-/133401

 昨年の正月。初詣で賑わう各地の神社で、“不穏”な動きが表面化した。
 参拝客でごった返していた都内のある神社では、境内に「誇りある日本をめざして」「憲法は私たちのもの」と書かれたのぼりが掲げられ、近くに設置されたテントには、「国民の手でつくろう美しい日本の憲法」「ただいま、1000万人賛同者を募集しています。ご協力下さい」なる文言が書かれたポスターとA4の署名用紙、それを入れる箱が置かれていたのだ。
 じつは、こうした神社はここだけではなかった。というのも、東京都の神社をまとめる「神社庁」が、各神社で憲法改正に賛同の署名活動を行うよう指示していたからだ。
 なぜ神社庁が支持を出し、神社が署名活動を行ったのか。
 実は、全国8万社の神社を管理・指導する神社界の“中枢”であり“総元締め”でもある「神社本庁」、そしてその地方機関である神社庁は、「神道政治連盟(神政連)」という政治団体と関係が深い。
(中略)
 神政連は、自民党、引いては安倍政権との関係の深さが、かねてから指摘されている。
 神政連の活動を支持する議員連盟として「神道政治連盟国会議員懇話会」という組織があるが、2017年6月20日時点で、自民党を中心に衆議院議員228人、参議院議員81人の合計309人の国会議員が所属している。
 しかも、第三次安倍政権の現閣僚20人の内、公明党出身の石井啓一*4国土交通大臣を除いた19人全員が懇談会のメンバー。その懇談会の会長は、安倍晋三首相が務めているからだ。
 そんな安倍首相の悲願は憲法改正。思いを同じくする神政連も、日本最大の保守組織「日本会議」とともに政権を支える保守勢力として影響力を発揮するチャンス。そこで神政連が神社庁に働きかけ、署名活動という“行動”に出たというわけだ。
 こうした動きを捉えて、「すわ、国家神道の復活か」などと危ぶむ声も一部で上がるが、そこまではいかなくても、神社界と安倍政権との距離の近さに、どこか不気味さを感じる方も少なくないだろう。
 ところが、である。「今や神政連は、政治に対してたいした影響力があるわけではない」と神社本庁関係者は口を揃える。
 事実、今回の署名活動も、日本会議から指示されるがままで、それに従っただけ。以前は神政連の方が勢力を誇っていたにもかかわらずだ。
 01年の参議院選挙でもこんなことがあった。神政連は、自民党公認候補として比例区から出馬した有村治子*5を支援していたのだが、得票数が少なくて苦しみ、当選確実の報が明け方まで出なかった。最終的には当選したが、蓋を開けてみれば、神社は全国津々浦々にあるにもかかわらず、票が入っていない地域が少なからずあったというのである。
(中略)
「神社の神主たちも世代交代が進んでしまった。そのため、新憲法の制定や、皇室と日本の文化伝統を大切にする社会作り、靖国の英霊に対する国家儀礼の確立といった、神政連が掲げてきた目標に関心がなくなっており、積極的な活動もしなくなっている」(神社本庁関係者) 
 しかし、このようにすっかり力を失いつつある神政連に対し、国会議員たちはなぜ懇談会のメンバーになってまで支持を仰ぐのか。
「議員たちは(ボーガス注:神政連のもつ)票がほしいというよりは、神社が主催する地元の“祭り”が狙い。地方では、いまだ多くの人が集まるため、祭りは有権者の前で演説できる絶好のチャンス。その機会を得るために懇談会のメンバーになっているだけで、神社本庁や神政連に対する忠誠心など何もない」と神社本庁関係者は明かすのだ。
 ここまでは、神社界と政治の距離を見てきた。それでは、神社本庁のカネはどうなのであろうか。
「最近、頒布が減少しているぞ。式年遷宮を目指してとにかく増やせ!」
 今から5〜6年前のこと。全国各地の神社に対し、一斉にこんな “げき”が飛ばされた。発信源は神社本庁だ。
 神社本庁が増やせと命じていたのは「神宮大麻」の頒布数だ。神宮大麻とは、簡単に言えば、神社界のピラミッドの頂点に立つ伊勢神宮が配る「天照皇大神宮」と書かれた「お札」のこと。各家庭の神棚にまつり、日々、祈りを捧げれば、遠くからでもお伊勢さん(伊勢神宮)のご加護を授かることができるというものだ。
 この神宮大麻は、その大きさによって大・中・小とあるが、小で1体800円。全国の神社は、これを氏子などに販売し、最大の“収益源”としているのだ。
 神社本庁は、バブル時代、この神宮大麻の帆布数を「1000万体まで増やす」との目標を掲げ、全国の神社に厳しい“ノルマ”を課していたが、バブルの崩壊によりその数は減少の一途をたどっていた。
(中略)
 こうして見ていくと、神社本庁には「政治力」「資金力」ともに恐れるほどのものはないことが分かる。それでも世間から不気味がられるのは、(ボーガス注:一見すると巨大組織であり)「外からその内情をうかがい知ることができないから」に尽きるのではないか。
 だが、現在の神社本庁には問題が山積し、組織がぐらついている。現執行部は、それを押さえつけようと強権を発動し、多方面から批判や不満が吹き出している。次回、その詳細についてお伝えする。

*1:ダイヤモンドが紹介してるのは明治神宮(ただし後に復帰)、日光東照宮気多大社、梨木神社。

*2:国際レスリング連盟(FILA)副会長、日本オリンピック委員会JOC)副会長などスポーツ界の要職を歴任

*3:日本会議副会長

*4:小泉内閣財務副大臣公明党政調会長などを経て第三次安倍内閣国交相

*5:第2次安倍内閣少子化問題等担当相