高世仁に突っ込む(2019年7/24分)(追記あり)

選挙結果雑感 - 高世仁の「諸悪莫作」日記

 今回の選挙は案の定、低い投票率だった。
 メディアの責任は大きいと思う。選挙期間中の報道ぶりも酷かったが、投票日翌日の22日(月)の朝のワイドショーにはあきれた。トップの話題は当然選挙結果かと思いきや、主要民放はどこも、お笑いタレントと吉本興業の内輪もめ。未明に最終の投票結果が出たばかりなのに。

・低投票率と「選挙結果報道をまともにしないマスコミ」を嘆き批判する高世です。
 概ね同感ですが、一点だけ高世への疑問&批判があります。
 「別記事でも批判しました」が、吉本の件を「内輪もめ」と表現するのはいかがな物か。
 産経ですら【主張】吉本興業の不祥事 本末転倒もはなはだしい - 産経ニュース

・希望がない限り、芸人との契約書を作らないなどブラック企業その物ではないのか
・「記者会見したいなら吉本をやめろ」が事実なら宮迫らに対する『一種のパワハラ』ではないのか
・フライデーが報じなかったら吉本は宮迫らの『反社会的勢力からの金銭受領』の事実を隠蔽する気ではなかったのか

と言う趣旨の吉本批判をしています。
 吉本の件は「企業不祥事」であり、「内輪もめ」と「社会にとってどうでもいいこと」「吉本経営陣も、宮迫ら芸人もどっちもどっちである」かのように表現すべき話ではありません。
 もちろん、政財官界を巻き込んだ

■昭電(昭和電工)疑獄
 後に無罪判決が出た物の西尾末広*1元副総理、芦田均*2元首相、福田赳夫*3・大蔵省主計局長(後の首相)を収賄で起訴。
■造船疑獄
 佐藤*4自由党幹事長、池田*5自由党政調会長(いずれも後に首相)の名前が疑惑の政治家として浮上。吉田*6内閣が池田、佐藤を守るためにいわゆる指揮権を発動した事件として悪名高い。
九頭竜ダム疑惑
 池田首相に近い鹿島建設に工事を発注するため、不正が行われたとされる疑惑。後に石川達三が『金環食』として小説化し、この小説を元に山本薩夫が映画を制作。
 なお、鹿島建設社長・鹿島守之助は自民党参院議員(1953~1971年まで3期18年)、岸内閣北海道開発庁長官を務めている。
ロッキード事件
 田中*7元首相、橋本*8元運輸相らを収賄で起訴
■ダグラス・グラマン事件
 岸*9元首相らの名前が疑惑の政治家として浮上。
リクルート事件
 竹下*10首相、宮沢*11蔵相、安倍*12幹事長、渡辺*13政調会長、中曽根*14元首相ら政府、与党幹部が疑惑の政治家と騒がれた。藤波*15官房長官や元文部事務次官、元労働事務次官らを収賄で起訴
西松建設疑惑
 疑惑の政治家として、森*16元首相、二階・麻生内閣経産相(当時、現自民党幹事長)、小沢・民主党幹事長の名前が浮上。

レベルの企業不祥事でない限り、選挙結果報道の方が「一企業の不祥事」よりずっと大事なのは高世の言うとおりです。
 マスコミが吉本の件を報じてるのも「企業不祥事を起こした吉本」の責任を問う正義感などではなく単に「視聴率がとれるから*17」「安倍批判、ジャニーズ批判などに比べ吉本批判のほうがしやすいから」にすぎないでしょう。
 しかし吉本の件は不祥事であり、「フジサンケイグループの反・鹿内一族クーデター*18」「大塚家具の経営内紛」など「単に意見の違いでしかない話」とは話が違う。
 吉本の件を「内輪もめ」と表現した高世は「吉本の問題点を何とも思わない(あるいは、テレビ下請け業者・高世が『吉本批判したくないから詭弁で吉本をかばってる?*19』)」と表明してるのも同然であり、まさに「語るに落ちて」います。そこで露呈されてるのは高世の「倫理観のなさ」ないし「吉本に何も批判的なことが言えない高世の奴隷根性」でしょう。
 「産経に吉本を批判する資格があるのか」をひとまずおけば産経社説の方が高世よりまともです。
 俺が高世なら「吉本の件も大事だが選挙報道はもっと大事だ」「そしてマスコミには興味本位ではなく正すべき企業不祥事としてきちんと吉本について報じてほしい*20」と書いてるでしょう。
 吉本の件についても高世のように「内輪もめ」とは表現せず「吉本の不祥事」とかく。
 高世にとってはたとえば

三越・岡田事件
 岡田と反岡田の内輪もめ
■ゴーン事件
 ゴーンと日産の内輪もめ

なのか。勿論これらの事件とて「背任などの違法行為があった(三越・岡田事件など)」「背任などの違法行為の疑いがある(ゴーン事件など)」企業不祥事であって内輪もめといってすましていい話ではありません(そもそも内輪もめ、内紛だからどうでもいいとはいえず「違法、不当な行為を暴露する内部告発」ならその内紛を報じることは十分公共性があります)。
 むしろ宮迫らの思惑が何かに関係なく「内部告発」と表現すべき話ではないのか。

 マスコミにはほとんど無視された「れいわ新選組」が、比例区で2議席獲得という大成果を上げた。ALS筋萎縮性側索硬化症の患者、船後靖彦氏*21(61)と脳性まひの木村英子氏*22(54)の2人で、この二人が参議院に登院すること自体が、政治はどうあるべきかを考えさせる材料になる。ショック療法として期待したい。

 当然ながら「登院だけで終わってはいけない」のは当然のことです。政治活動をしないといけない。社会(与野党各党やマスコミなど)が支援すべきなのは当然として、党首の山本氏ら「れいわ」関係者にもそれなりの覚悟と努力が求められます。
 そういえば今回の件で「なぜ社会党参院の比例第一位に萱野茂*23を掲載しないのか、なぜ日本初のアイヌ議員を確実に誕生させようとしないのか」と批判した本多勝一*24のコラムを思い出しました。
 ちなみにこの本多コラムが取り上げた件は

萱野茂ウィキペディア参照)
・1992年:第16回参議院議員通常選挙日本社会党から比例代表の名簿第11位で立候補(この時は次点で落選)。
・1994年8月:繰り上げ当選でアイヌ初の国会議員となる。
・1996年9月:社会民主党の分裂に伴い社会民主党を離党、民主党結成に参画。
・1998年7月:任期満了に伴い政界を引退。息子の萱野志*25が同年参院選社民党から出馬するも落選している。

ということになりました(本多コラムが書かれたのは確か落選直後で繰り上げ当選の前)。
 今回、山本氏は「重度身体障害者の二人を党首の自分よりも国会に送り出したい」と言う態度をとったわけです。
 山本氏が「本多コラム」を知ってるかどうか、本多氏が山本氏をどう評価するのか、気になるところです。

 結果は野党統一候補、新人の芳賀道也氏*26が279,709票で当選、与党の現役、大沼瑞穂*27の263,185票を退けた。差はわずか2万6500。

 高世の批判していた大沼氏は落選したそうです。「大差の敗北ではないとはいえ」「山形に住む気はない*28」と公言して恥じない落下傘候補であることが地元民の反発を招いたのでしょう。一方、野党も勝利したとは言え大差ではない。野党共闘の重要性が改めて示されたと言うべきでしょう。

【追記】

高世仁リツイート
■きっこ
 カルロス・ゴーンの問題は日産という一企業の中だけの問題なのでどうでもいいが、吉本興業は安倍政権とズブズブで安倍政権から100億円も支援されている上に辺野古の基地利権にまで深く絡んでいるので徹底的に追及しなければならない。

 当初「吉本問題なんかどうでもいい」と言ってた高世がこれです(苦笑)。いつもながらいい加減でデタラメな男です。
 「ナポレオンの辞書に不可能の文字はない」そうですが高世の辞書に「誠実性」「論理一貫性」などの文字はないんでしょう(呆)
 高世がここまで180度態度を変えるとは高世の周囲から、俺みたいな「確かに選挙報道の方が大事だし、テレビ局は視聴率のことだけで吉本問題を取り上げてる。しかし高世さん、あなたが言うほど吉本問題はどうでもいい問題じゃないよ」という批判が続出したんでしょうか?
 なお、ゴーンの問題だって起訴事実が本当なら「重大な企業犯罪」であるし、「であるならば犯罪者」ゴーンを「安倍を含む日本政財官界」が高く持ち上げ続けてきたことを考えれば「どうでもいい問題」などではありません。
 もちろんゴーンの言い分「私は無実だ」が正しい場合でも「日産経営陣が、対立するゴーンを潰すためにインチキ証拠で検察をだました」と言う話ですから「重大なえん罪事件」であり、これまた「どうでもいい問題」などではありません。
 「大塚家具の経営内紛」などなら「大塚家具関係者以外にとってはどうでもいい」といってもいいかもしれませんが。
 高世ときっこの馬鹿さがよく分かるツイートです。
 なお、「吉本が国から100億円」「吉本と辺野古再開発計画」ですが

(2ページ目)【安倍政権】吉本興業と安倍政権は蜜月 官民ファンド100億円出資の行方|日刊ゲンダイDIGITAL
 第2次安倍政権発足後の13年に設立された官民ファンド「クールジャパン機構」(東京)も吉本と近しい。政府が約586億円出資する機構は14年と18年の2回、計22億円を吉本が関わる事業へ出資。今年4月にも吉本などが参画した新会社が手掛ける「教育コンテンツ等を国内外に発信する国産プラットフォーム事業」へ最大100億円も出資するという。

沖縄担当相、吉本興業・大崎洋会長の委員交代の考えなし 米軍基地跡利用懇談会 | 沖縄タイムス+プラス ニュース | 沖縄タイムス+プラス
 宮腰光寛沖縄担当相は23日の記者会見で、所属芸人の「闇営業」問題が広がっている吉本興業の大崎洋会長に関し、沖縄の米軍基地跡地利用に関する有識者懇談会の委員を交代させる考えがないことを明らかにした。

だそうです。
 なるほど何も安倍が「吉本新喜劇にでただけではなく」、吉本は政府に食い込んでるわけです。

*1:社会党書記長、片山内閣官房長官、芦田内閣副総理、民社党委員長を歴任

*2:幣原内閣厚生相、片山内閣副総理・外相、首相を歴任

*3:岸内閣農林相、自民党政調会長(池田総裁時代)、幹事長(佐藤総裁時代)、佐藤内閣蔵相、外相、田中内閣行政管理庁長官、蔵相、三木内閣副総理・経済企画庁長官などを経て首相

*4:運輸次官から政界入り。吉田内閣郵政相、建設相、岸内閣蔵相、池田内閣通産相などを経て首相

*5:大蔵次官から政界入り。吉田内閣蔵相、通産相、石橋内閣蔵相、岸内閣蔵相、通産相などを経て首相

*6:戦前、天津総領事、奉天総領事、外務次官、駐伊大使、駐英大使などを歴任。戦後、東久邇、幣原内閣外相を経て首相。

*7:岸内閣郵政相、池田内閣蔵相、佐藤内閣通産相などを経て首相

*8:池田内閣建設相、佐藤内閣建設相、官房長官、運輸相、自民党幹事長(田中総裁時代)など歴任

*9:戦前、満州国総務庁次長、商工次官、東条内閣商工相を歴任。戦後、自民党幹事長(鳩山総裁時代)、石橋内閣外相を経て首相

*10:佐藤、田中内閣官房長官、三木内閣建設相、大平、中曽根内閣蔵相、自民党幹事長(中曽根総裁時代)などを経て首相

*11:池田内閣経済企画庁長官、佐藤内閣通産相、三木内閣外相、鈴木内閣官房長官、中曽根、竹下内閣蔵相などを経て首相。首相退任後も小渕、森内閣で蔵相

*12:三木内閣農林相、福田内閣官房長官自民党政調会長(大平総裁時代)、鈴木内閣通産相、中曽根内閣外相、自民党幹事長(竹下総裁時代)など歴任

*13:福田内閣厚生相、大平内閣農水相、鈴木内閣蔵相、中曽根内閣通産相自民党政調会長(中曽根、竹下総裁時代)、宮沢内閣副総理・外相など歴任

*14:岸内閣科学技術庁長官、佐藤内閣運輸相、防衛庁長官、田中内閣通産相自民党幹事長(三木総裁時代)、総務会長(福田総裁時代)、鈴木内閣行政管理庁長官などを経て首相

*15:大平内閣労働相、中曽根内閣官房長官など歴任

*16:中曽根内閣文相、自民党政調会長(宮沢総裁時代)、宮沢内閣通産相、村山内閣建設相、自民党総務会長(橋本総裁時代)、幹事長(小渕総裁時代)などを経て首相

*17:なお、吉本社長記者会見の行われた7/22には安倍も選挙後の記者会見をしていましたが注目度は低い物でした。国民の「政治的無関心の反映」なのでそれがいいとはいいませんが、安倍支持が「安倍らが強弁するほど強固な物ではないこと」を示しています。

*18:1992年7月21日、鹿内宏明ニッポン放送社長、フジテレビ社長、産経社長を経てフジサンケイグループ議長に就任した鹿内信隆の女婿)は産経新聞取締役会にて突然産経会長職を解任された。翌7月22日、宏明は記者会見を開き、ニッポン放送、フジテレビの会長とフジサンケイグループ会議議長も辞任すると自ら発表した。長く続いた鹿内家の産経支配は終わりを迎えた。このクーデターの中心人物は日枝久・フジテレビ社長(当時)とされる(ウィキペディア鹿内宏明」参照)

*19:この可能性はかなりあるんじゃないかと俺は思っています。

*20:とはいえ正直な話、新聞や雑誌はともかくテレビにはそうした報道をすることをほとんど期待していませんが。

*21:介護サービス事業会社「株式会社アース」取締役副社長、サービス付高齢者向け住宅「サボテン六高台」名誉施設長。著書『増補新装版 しあわせの王様:全身麻痺のALSを生きる舩後靖彦の挑戦』(2016年、ロクリン社)(ウィキペディア「船後靖彦」参照)

*22:全都在宅障害者の保障を考える会代表、全国公的介護保障要求者組合書記長、自立ステーションつばさ事務局長(ウィキペディア「木村英子」参照)

*23:著書『アイヌの碑』(朝日文庫)、『アイヌ歳時記:二風谷のくらしと心』(ちくま学芸文庫)、『アイヌの昔話:ひとつぶのサッチポロ』(平凡社ライブラリー)など

*24:著書『中学生からの作文技術』(朝日選書)、『新・アメリカ合州国』(朝日文芸文庫)、『アイヌ民族』、『アメリカ合州国』、『アラビア遊牧民』、『植村直己の冒険』、『NHK受信料拒否の論理』、『カナダ=エスキモー』、『きたぐにの動物たち』、『釧路湿原:日本環境の現在』、『検証・カンボジア大虐殺』、『50歳から再開した山歩き』、『子供たちの復讐』、『殺される側の論理』、『殺す側の論理』、『事実とは何か』、『実戦・日本語の作文技術』、『しゃがむ姿勢はカッコ悪いか?』、『憧憬のヒマラヤ』、『職業としてのジャーナリスト』、『先住民族アイヌの現在』、『戦場の村』、『そして我が祖国・日本』、『中国の旅』、『天皇の軍隊』、『南京への道』、『日本環境報告』、『新版・日本語の作文技術』、『ニューギニア高地人』、『冒険と日本人』、『北海道探検記』、『滅びゆくジャーナリズム』、『マスコミかジャーナリズムか』、『マゼランが来た』、『新版 山を考える』、『リーダーは何をしていたか』、『ルポルタージュの方法』(以上、朝日文庫)、『本多勝一戦争論』、『本多勝一の日本論:ロシア、アメリカとの関係を問う』(以上、新日本出版社)など

*25:萱野茂二風谷アイヌ資料館館長

*26:山形放送元アナウンサー

*27:第4次安倍内閣で厚労大臣政務官

*28:この点が高世の大沼批判理由の一つです。