今日の中国ニュース(2021年2月21日分)

「海警法は国際法違反」と発信求める与野党 政府は「運用次第」(1/2ページ) - 産経ニュース

国際法違反だと明確にいうことが大事だ」
 国民民主党前原誠司*1元外相は17日の衆院予算委員会で、政府にこう迫った。首相は「わが国の強い懸念を中国にしっかり伝えたい」と述べるにとどめた。
 政府関係者は「海警法をただちに国際法違反と指摘するのは困難」と慎重な立場を崩さない。
 国連海洋法条約は「沿岸国は無害でない通航を防止するため、領海内で必要な措置をとれる」(25条)とも定める。海上保安庁の巡視船も、条件を満たせば(ボーガス注:過去に実績がある、海保による不審船撃沈など)外国公船などへの最小限度の武器使用ができる。外務省幹部は「この論点で中国を批判すれば海保の武器使用にも跳ね返る。海警法が国際法違反に当たるかは中国の運用次第だ」と語る。

 あまりにも無茶苦茶な悪口をすれば日中関係を悪くし、日本企業の中国ビジネスに悪影響があること、現時点では実害がないことから、俺個人は「この件」では菅政権の対応を評価します。「学術会議会員の不当な任命拒否」など他の件はもちろん話が別ですが。


原発120基分の発電力が1年で 中国、再生可能エネルギー急拡大 | 毎日新聞

 習近平国家主席は昨年9月の国連総会で、「2030年までに二酸化炭素(CO2)排出量を減少に転じさせ、2060年までに(CO2排出量を実質ゼロとする)カーボンニュートラル達成を目指して努力する」と表明。さらに12月の別の国連会議で、太陽光と風力の設備容量を2030年までに計12億キロワット以上に引き上げる意向を示した。

 ということで原発を増設している中国ですが、一方で「再生可能エネルギー」にも力を入れており是非はともかく、「単純な原発推進」ではないわけです。ウヨ連中は中国を批判するにせよ、(日本政府の原発推進を正当化するために)肯定的に評価するにせよ「中国の原発推進」については触れても「再生可能エネルギー推進」についてはまず触れませんが。


中印、カシミール地方の対峙解消 中国「日米豪印」を警戒か - 産経ニュース
 中印ともにカシミール問題で「必要以上にもめたくない」ということですね。


◆楊海英*2のツイート

楊海英
 気鋭の文化人類学者の島村一平さん*3の新作「ヒップホップ・モンゴリア*4」をいただきました。遊牧民が都市へ流れ、(ボーガス注:ヒップホップなどの)西洋文化を受け入れて、グローバル化が進む過程を描いた力作。

 つまりは「内モンゴルだけで無く、外モンゴルだって、近代化によって遊牧なんか下火」つう話ですね。楊が常日頃放言する「遊牧万歳」や「遊牧を強制的に辞めさせた中国許せない」が嘘であることを「楊自ら露呈している」のが実に滑稽です。まあ「モンゴル研究者仲間」から贈呈された本について何のコメントもせずに無視するわけにはさすがにいかなかったのでしょうが。

【参考:ヒップホップ・モンゴリア】

タタール (ヒップホップ) - Wikipedia
 モンゴルのヒップホップ・グループ。グループ名は、モンゴル系の民族のひとつタタールにちなんでいる。
 2005年には日本のラッパーAK-69とのコラボレーションを行うなど、日本でも有名。

ヒップホップ・モンゴリア、あるいは世界の周縁で貧富の格差を叫ぶということ / 島村一平 / 文化人類学・モンゴル研究 | SYNODOS -シノドス-2018.6.11
 貧富の格差や政治腐敗といった社会問題にするどく切り込むドキュメンタリー『モンゴリアン・ブリング』が、今月17日渋谷にあるミニシアター、アップリンクファクトリーで初めて上映される。
「ヒップホップの発祥地は、モンゴルなんだよ」
 映画の冒頭、民族衣装(デゲル)で身を固めた中年の男が大真面目に語る。どこかの国のとんでも起源説みたいだと切って捨てるのはたやすい。しかし、そう思わせるような文化的背景がモンゴルにあるのは事実だ。実はこの男は、れっきとした伝統的な口承文芸の担い手、ユルールチ(祝詞語り部)である。
 彼の「ヒップホップ・モンゴル起源説」については、あとで検討するとして、まずはヒップホップがモンゴルという国の「固有の文化」と呼べるくらい進化をとげている、という事実は認める必要があろう。そのライムのテクニックにおいても、歌われる内容においても、びっくりするくらいクールで個性的だ。レゲエがジャマイカという国の代名詞であるように、ヒップホップがモンゴルの代名詞だと言われる日も近いのではないか、と思えるくらいだ。もはや遊牧民やモンゴル相撲、馬頭琴だけが、「モンゴル文化」ではない。
 そう、この国は、ヒップホップ・モンゴリアなのである。
 そんなモンゴル・ヒップホップの今を世界に向けて初めて発信したのが、オーストラリア人のベンジ・ビンクス監督によるドキュメンタリー映画「モンゴルアン・ブリング」(2012年)である。
 モンゴルのラッパーたちは、貧富の格差や環境問題、政治腐敗といったローカルかつグローバルなイシューにするどく切り込む。愛だの青春だの友情だのといったことしか歌わない、どこかの国*5のヒップホップ風フォーク歌手たち*6とはわけが違う。
 映画の舞台は、モンゴルの首都ウランバートル(以下、UB)。人口146万人。人口310万人のこの国の約半分が首都に集中している。モンゴルといえば、大草原と遊牧民イメージで語られることが多いが、2018年現在、実は遊牧民はもはや総人口の10%にも満たない。
 急激な人口流入グローバル化が進むこの都市では、高層ビルの建設が進み、街の中心部には高級ホテルや高級レストランが立ち並ぶ。ブランドに身を固めたおしゃれな女子たちがGUCCILouis Vuittonの専門店で新作を物色する。グルメだってフランス料理やイタリアン、インド料理や中華はもちろん和牛ステーキや寿司だって食べれる。
 2000年代以降、豊富な鉱山資源の開発が進み、この国の経済は急速に成長した。その結果、煌びやかな都市文化が花開いていった。その陰で貧富の格差は拡大し、明日のパンにも困りゴミを漁って暮らす人々すら出てきたのである。
 政府庁舎のある街の中心部周辺は、高層ビルが立ち並ぶ。
 タワーマンションや集合住宅にはセントラルヒーティング(注1)が完備されており、-30度を超える真冬でも室内は常に+20度ほどに保たれている。しかしこうした快適な暮らしを享受するのは、この都市の市民の半分弱に過ぎない。残りは、「ゲル地区」と呼ばれる暖房や上下水道の整備されていないスラムで暮らしている。
(注1)火力発電所で発生した熱で温水を作り、都市の集合住宅に温水菅で分配することで部屋を暖める暖房のシステム。
 そんなUBを悩ますもう一つの大きな問題は、世界最悪レベルの大気汚染である。
 とある海外のニュースサイトでは「もはやディストピア・レベル」だなんて表現していたけど、残念ながらその通りだと思う。その一方で政治家や会社経営者といったモンゴルの金持ちは、大気汚染の影響が少ないUB南部のボグド山麓に豪邸を建ててくらしている。
 そんなUBでヒップホップの震源地となっているのが、「ゲル地区(Ger Khoroolol)」と呼ばれるスラム街である。
 電気はかろうじて来ているが、セントラルヒーティングも来ていない。したがって暖をとるためにゲルの中でストーブの燃料として石炭を使うので、その排煙がUBの大気汚染の大きな一因となっている。中には石炭が手に入らないので、廃タイヤを燃やす家庭もあったりする。ダイオキシンが発生する。しかし廃タイヤは熱効率がいいし、ただ同然で手に入るのでなかなかやめられない。
 市の中心に住むUB市民たちは、地方から流入してきたゲル地区の住民を見下す。彼らは、大気汚染や車の渋滞、都市の犯罪の増加やモラルの低下といったUBの社会問題の原因をすべてゲル地区の地方出身者のせいにする傾向が強い。そんな地方出身者は「オルク(ork)」と呼ばれる。これは、モンゴル語で地方出身者を意味するオロン・ノタギーンハンの短縮形からきた語だそうだが、同時に/むしろハリウッド映画「ロード・オブ・ザ・リング指輪物語)」に登場する「オーク(ork)」(ゴブリン。醜く残虐な人間とは異なる種族)からつけられたといったほうが正しい。
 そんな「ゲル地区」こそが、モンゴリアン・ヒップホップの揺籃の地の一つだと言っても過言ではない。
 1992年2月にモンゴル人民共和国社会主義を放棄した。国名も「モンゴル国」と改め、市場経済・自由選挙を導入した民主主義国家として再出発することなった。この頃、モンゴルにロック、ポップス、ヒップホップといった「西側の音楽」が洪水のごとく流入してくるようになった。それに呼応する形で、様々なジャンルのバンドが結成されるようになったのである。
 90年代のロックはナショナリズムを歌っても、貧しい者の怒りが歌われることはなかった。もちろんそこまで貧富の格差がなかったこともあるし、国全体で西側の文化を学ぼうという空気感が強かったのである。だからロックやヒップホップといったサブカルチャーがクラッシックと同レベルで国立芸大で教えられたりするなど、ハイカルチャーとして受容されているかのような不思議な現象も起こった。
 2000年代後半になると、鉱山開発バブルの時代が始まり、モンゴルはGDPが急速に成長する一方で、貧富の差が拡大していく。食い詰めた地方出身者が首都に移住してゲル地区が膨張していく中、本作の主人公であるモンゴル・ヒップホップの帝王GeeやQuizaたちが登場する時代へと移っていくわけである。
 GeeやQuiza、Gennieやエンフタイワンたちは、社会問題に対して非常にコンシャスだ。映画に登場するラッパーを目指す少年たちも、驚くほど、クリアに社会の矛盾を見つめている。彼らの声に耳を澄ますことで、グローバル経済や政治腐敗に翻弄されながらも逞しく生きていくゲル地区の人々の姿が生き生きと伝わってくる。そうしたヒップホップが語る生の声は、時として数値データなどより社会実態を掴む上で役に立つのではないだろうか。

モンゴルがヒップホップ大国だという件 | 国立民族学博物館2021年2月1日(島村一平)
 現在、モンゴル国ではヒップホップ(ラップ・ミュージック)が凄いことになっていることをご存じだろうか。人口330万人の国なのに、ヒップホップの曲が、Youtube動画再生回数で百万回を超えることも珍しくない。中には再生1千万回超えの曲もある。
 レゲエがジャマイカという国の代名詞であるように、ヒップホップがモンゴルの代名詞だと言われる日も近いのではないか、と思えるくらいである。
 ヒップホップはアメリカの黒人たちの社会矛盾に対する叫び声として始まった。モンゴルにおいてもヒップホップが支持されるには、それだけ(ボーガス注:近代化、都市化により)貧富の差などの社会問題が前景化していることを意味している。モンゴルのラッパーたちは、鋭い批判精神で社会格差や政治の腐敗をえぐり出す。
 筆者は近く、そんなヒップホップがつむぎだすモンゴル社会の姿を扱った著書『ヒップホップ・モンゴリア―韻がつむぐ人類学』(青土社)を刊行する。今までとは異なるモンゴル像がそこにある。

*1:鳩山内閣国交相菅内閣外相、野田内閣国家戦略担当相、民主党政調会長(野田代表時代)、民進党代表などを経て国民民主党代表代行

*2:静岡大学教授。著書『草原と馬とモンゴル人』(2001年、NHKブックス)、『モンゴル草原の文人たち:手写本が語る民族誌』(2005年、平凡社)、『ユーラシア草原からのメッセージ:遊牧研究の最前線』(共著、2005年、平凡社)、『チンギス・ハーン祭祀』(2005年、風響社)、『墓標なき草原(上)(下):内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録』(2009年、岩波書店→後に2018年、岩波現代文庫)、『続・墓標なき草原:内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録』(2011年、岩波書店)、『中国とモンゴルのはざまで:ウラーンフーの実らなかった民族自決の夢』(2013年、岩波現代全書)、『植民地としてのモンゴル:中国の官制ナショナリズムと革命思想』(2013年、勉誠出版)、『ジェノサイドと文化大革命内モンゴルの民族問題』(2014年、勉誠出版)、『モンゴルとイスラーム的中国』(2014年、文春学藝ライブラリー)、『チベットに舞う日本刀:モンゴル騎兵の現代史』(2014年、文藝春秋→後に『モンゴル騎兵の現代史:チベットに舞う日本刀』と改題した上で、2020年、中公文庫)、『狂暴国家中国の正体』(2014年、扶桑社新書)、『日本陸軍とモンゴル:興安軍官学校の知られざる戦い』(2015年、中公新書)、『モンゴル人の民族自決と「対日協力」:いまなお続く中国文化大革命』(2016年、集広舎)、『フロンティアと国際社会の中国文化大革命: いまなお中国と世界を呪縛する50年前の歴史』(共著、2016年、集広舎)、『「中国」という神話:習近平「偉大なる中華民族」のウソ』(2018年、文春新書)、『「知識青年」の1968年:中国の辺境と文化大革命』(2018年、岩波書店)、『最後の馬賊:「帝国」の将軍・李守信』(2018年、講談社)、『モンゴル人の中国革命』(2018年、ちくま新書)、『中国人の少数民族根絶計画』(2019年、産経NF文庫)、『モンゴル最後の王女:文化大革命を生き抜いたチンギス・ハーンの末裔』(共著、2019年、草思社文庫)、『独裁の中国現代史:毛沢東から習近平まで』(2019年、文春新書)、『逆転の大中国史』(2019年、文春文庫) 、『中国が世界を動かした「1968」』(共著、2019年、藤原書店)、『世界を不幸にする植民地主義国家・中国』(2020年、徳間書店)、『モンゴルの親族組織と政治祭祀』(2020年、風響社)、『内モンゴル紛争:危機の民族地政学』(2021年、ちくま新書)、『紅衛兵とモンゴル人大虐殺:草原の文化大革命(仮題)』(2021年3月刊行予定、筑摩選書)など

*3:滋賀県立大学准教授などを経て国立民族学博物館准教授。著書『増殖するシャーマン:モンゴル・ブリヤートシャーマニズムエスニシティ』(2012年、春風社)、『草原と鉱石:モンゴル・チベットにおける資源開発と環境問題』(編著、2015年、明石書店)、『大学生が見た素顔のモンゴル』(編著、2017年、サンライズ出版

*4:2021年、青土社

*5:まあ、日本でしょうが

*6:具体的に誰かは知りません。