テレ朝・おはよう時代劇『暴れん坊将軍9』第17話「乙女の叫び 私の命をさしあげます!」(1999年放送の再放送)(2023年11月7日記載)

◆第17話「乙女の叫び 私の命をさしあげます!」(2023年11月7日再放送)
 タイトルは「父・久兵衛」を救うためなら「自分が死罪になっても構わない(大岡はその要望を拒絶しますが)」というおさきの言葉です。
 なお「自分が死罪になっても構わない」の元ネタは以下の森鴎外小説でしょう。

最後の一句 - Wikipedia
 元文3年(1738年)大阪の船乗り業「桂屋」の主人・太郎兵衛は、知人の不正を被る形で死罪となった。悲嘆にくれる家族の中で、長女のいちは父の無罪を信じ、単身、大阪西町奉行・佐々成意に助命の願書を出し、父の代わりに自身を死罪にするよう申し立てる。そして太郎兵衛は、宮中の桜町天皇大嘗会執行を名目に死罪を免れるのであった。

 さて番組の内容紹介。

番組詳細|テレビ朝日
 江戸の町に黒装束の盗賊一味が出没し、忠相(田村亮)が必死の探索を行なっていた。そんな中、目安箱に「ある寺の住職が盗賊と結託している」との投書が投げ込まれ、吉宗は仲間割れからの密告ではないかと推察する。数日後、雑司ケ谷『瑞雲寺』の寺男が殺され、目撃者の証言から油問屋(ボーガス注:伊勢屋)の主人・久兵衛(木村元)が下手人として捕らえられる。そして、久兵衛の娘「おさき」(前田亜季)の訴えも虚しく死罪が決まった。一方、「め組の頭」長次郎(山本譲二)は独自に久兵衛の無実を証明しようとするが

 下手人として捕縛された久兵衛が大岡相手に罪を認めた理由が「今回の謎」ではあります。
 調査を開始した長次郎は目撃者が【1】「伊勢屋久兵衛は一突きで殺した」と言ってるにもかかわらず遺体は滅多刺しで、にもかかわらず捕縛された久兵衛がほとんど返り血もないこと、【2】「口論となって殺した」と久兵衛が自白したにもかかわらず目撃者は口論の声を聞いてないこと、何が口論理由か久兵衛の供述があやふやなことから「何らかの理由」で久兵衛が「何者かによって既に殺された寺男」を目撃者の前でわざと刺すことで下手人をかばってるのでは?、と推理します。
 盗賊一味の一人「庄三(宮下直紀)」が伊勢屋押し込みに消極的であること、久兵衛が明らかに下手人をかばってること
→密告も、寺男(盗賊一味)殺害も庄三の行為であり、久兵衛が何らかの理由で庄三をかばってるのでは?、ということは容易に予想がつきますが、その理由がすぐには明らかにされません。
 一方で「黒装束の盗賊一味=白鷺の伝蔵(佐藤京一)」「『瑞雲寺』僧侶・良源(小峰隆司)」「良源と癒着する寺社奉行・石崎土佐守(石濱朗)」がグルであることは早い段階で明らかになります。
 さて、30分ほど経過したところで、【1】庄三が実は「おさきの実の兄」であること、【2】「商家の息子」だった庄三は店に強盗に入った盗賊に両親を殺された上、おさきをさらわれたこと、そのことで自暴自棄となり盗賊に身を落としたこと【3】盗賊一味の一人が、今は過去を後悔して盗賊から足を洗い「伊勢屋久兵衛」となっていること、【4】伊勢屋の娘が実はおさきだと知り、伊勢屋押し込みに消極的な庄三が口論から寺男(盗賊の一味)を殺害したこと、【5】過去の反省から「庄三の殺人」を偶然知った久兵衛が庄三の罪を意図的にかぶったことが明らかになります。
 庄三を証人(良源が一味と癒着してると証言)として引き連れて、寺社奉行・石崎の元へ向かい、「まずは良源を捕縛したい」と彼を追及する大岡ですが、大岡の油断から庄三が石崎によって謀殺(最後まで庄三とおさきの関係をおさきは知らない設定)。
 そして伝蔵、良源の前で「もはやワシの地位も安泰」と高言する石崎についに「徳田こと吉宗」たちが怒りの成敗。
 石崎は「庄三暗殺」で面子を潰された大岡が成敗し、伝蔵、良源はお庭番二人が成敗。
 「悪人をあぶり出すため」に「久兵衛死罪」と嘘の発表をしたことは、まあ「いい」としても、何故かそれを結局表向きは取り消さず、伊勢屋は闕所(財産没収→ただし実際には財産は幕府に没収されたわけではなく久兵衛に引き渡され、彼が新天地で同様の商売を行うであろうことが示唆される)、「久兵衛」が別人として「おさき」と生きていくことが説明されてエンド。

参考

暴れん坊将軍9
 手下の犯した非道を恥じ、足を洗って遺児の娘を守り育ててきた盗賊の首領は、生きていたその兄が仕出かした殺しに際会し、彼の罪をもかぶろうとする。しかし思いは空しく、盗っ人の一味になっていた「兄」は、賊と結託していた寺社奉行の手にかかってしまい、妹とまみゆることなく散るのだった。
※前非を悔い「捕えられた」兄・庄三は寺社方に引き渡された段で密殺されるというひっでぇ展開、庄三はどちらにせよ罪に服さねばならないので、こういうケースでは「死」が用意されていることもよくあるが、(ボーガス注:庄三を守ろうとして殺される)付き添いの南町同心はカワイソ過ぎ、峰蘭太郎演じるこれをぶっすり殺るのは寺社奉行の家来の福ちゃん(ボーガス注:こと福本清三)。

ビショウジョ ト シレモノ | ~閑話休題~2019.3.12
 暴れん坊将軍を見ていた。今は第9シリーズの再放送をやっている。このシリーズは個人的には隠れた名作が多いと思う。
(中略)
 このシリーズでは数日前に放送された作品も好き。今の若い人にはあまり馴染みが無いかもしれないが、前田亜季さんが出ている作品。前田亜季さん*1と言えば、姉の前田愛さんと90年代後半~2000年代前半まで数々のヒロイン役に抜擢され、当時よく耳にした『チャイドル』の代表格だった。
 数日前に放送された『乙女の叫び、私の命をさしあげます』は震えるほどの可憐さだった。20年くらい前の作品で多分前田亜季さんは中1か中2くらい。時代は異なるけれど、今の美的感覚でも当時の彼女は『The 美少女』だと思う。多分、今の若い人が見ても『美少女』と感じるだろう。

 小峰隆司氏については以下を紹介しておきます。

「1万回死んだ男」斬られ役・小峰隆司さん死去 87歳 福本清三さんに続く悲報― スポニチ Sponichi Annex 芸能2021.2.18
 長年にわたって時代劇の悪役や斬られ役として活躍し「1万回死んだ男」と呼ばれた俳優の小峰隆司(こみね・りゅうじ=本名鈴木朝夫=すずき・あさお)さんが今月10日、胃がんのため京都市の自宅で死去した。87歳。愛知県出身。葬儀・告別式は近親者らで執り行った。「5万回斬られた男」の異名を持つ俳優の福本清三さん(享年77)も今年1月に亡くなったばかりだった。
 「水戸黄門」「大岡越前」「暴れん坊将軍」など多くのテレビシリーズやサスペンスドラマのほか、「仁義なき戦い」シリーズなど映画にも出演。2002年には大阪・MBSのドキュメンタリー「1万回死んだ男~刹那に懸ける斬られ役」も制作された。
 福本さんの初主演映画「太秦ライムライト」(2014年)の脚本・プロデューサーを務めた大野裕之*2(46)は、自身のツイッターで「また悲しい報せです。元東映剣会の小峰隆司さんが2月10日にお亡くなりになりました。87歳。福本清三さんの先輩で『1万回斬られた男』とも。『太秦ライムライト』の冒頭近くのテレビ版『江戸桜風雲録』の監督役です。完成後『いい映画や。また作ってや』と激励されたことが忘れられません。合掌」と悼んだ。

*1:1985年生まれ。1996年、映画『学校の怪談2』、1997年映画『学校の怪談3』でヒロイン役を務めた。1999年、TBS『しおり伝説〜スター誕生〜』で昼ドラマ初主演。2000年、映画『バトル・ロワイアル』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。2001年、アニメ『Cosmic Baton Girl コメットさん☆』(テレビ東京)でテレビアニメの声優として初主演(コメットさん)。2006年、映画『最終兵器彼女』で主演。2015年、単発テレビドラマ『農業女子はらぺ娘』(NHKBSプレミアム)で久しぶりの主演(前田亜季 - Wikipedia参照)

*2:著書『チャップリン再入門』(2005年、NHK生活人新書)、『チャップリン:作品とその生涯』(2017年、中公文庫)、『ディズニーとチャップリン:エンタメビジネスを生んだ巨人』(2021年、光文社新書)等