モンゴル総選挙、投票日前後は酒販売NG 8年間の政権運営に評価:朝日新聞デジタル
与党は大量に死票が出た前回選挙*1への国民の不満などを背景に今回、定数を76議席から126議席に増やし、さらに比例代表制を導入した。(ボーガス注:定数増、比例導入)いずれも野党に有利な変更のため、人民党は現有8割*2の占有率を下げる可能性が高い。
「与党人民党が議席減、野党民主党が議席増の見込み」とはいえ、それでもモンゴル総選挙で投票 与党政権維持か:時事ドットコム等に寄れば、「好景気」「最大野党民主党への支持が高くないこと」を背景に「与党人民党が多数議席を保持し政権維持する公算が高い」そうですが「定数増プラス比例代表制導入」とは、「定数減」「小選挙区中心の選挙制」と「自民に有利な選挙制が続く日本」とは偉い違いです。「死票の問題から比例制度を導入(但し、死票が多い中選挙区完全連記制はそのまま存続)って日本と逆方向じゃ無いか」と脱力します。日本のマスコミの多くは「大量の死票による自民一強」を何ら問題視しませんからね。
もはや日本は韓国や台湾どころか「昔は共産党一党独裁だったモンゴル」と比べても「民主主義の観点で劣ってる」のかもしれない。
モンゴル総選挙28日投開票、与野党比例1位に日本留学組 - 日本経済新聞
ググったら
モンゴル2024年国会総選挙参加政党・同盟について(3)人間党 - 3710920269湊邦生高知大教授(モンゴル研究)2024.6.19
人間党で特に私が注目しているのが、日本留学経験者の存在感です。人間党は幹部に大学院修了生や外国留学経験者が多いのですが、公式サイトを見ると、ドルジハンド党首が一橋大学、ナイダラー元党首が神戸大学でそれぞれ修士号を取得したとあります。
さらに、比例代表では第10位のミンジマー候補が神戸大学、第13位のガンボルド候補が一橋大学、第22位のルハムチメグ候補が京都大学、第43位のボヤンジャルガル候補が兵庫県立大学、選挙区では第4選挙区のゾンドイ候補が広島大学、第6選挙区のエンフバヤル候補が明治大学、エンフトヤー候補が亜細亜大学、第8選挙区のナランバヤル候補が京都大学のそれぞれ大学院に留学したとの経歴*5が公式サイトの候補者名簿に記載されています。
と言う記事もヒットしましたが、モンゴルでは日本のイメージが高いんですかね?
それとも「留学組のイメージが高い」にすぎず、「モンゴルの留学組の多く=日本留学」にすぎないのか。
モンゴル総選挙、与党党首が勝利宣言 過半数確保 - 日本経済新聞
ということで下馬評通り、与党人民党が過半数議席を獲得し、政権を維持しました。
但し問題は「改選前:定数76議席中人民党61議席(8割)、民主党11議席(1割)等」が「改選後(定数126)」でどうなったかですね。過半数(64議席以上)を保持したところで「与党65、野党61など、野党と議席が拮抗」なら「敗戦に近い勝利」でしょう。
モンゴル総選挙、与党が勝利宣言 政権維持も議席率5割台に低下|信濃毎日新聞デジタル 信州・長野県のニュースサイトによれば「与党の議席占有率が8割台(改選前)→過半数を維持したが、5割台(改選後)」で「敗戦に近い勝利」のようですが(追記:与党68議席、野党58議席であり「敗戦に近い勝利」ではないか。但しモンゴル2024年国会総選挙、公式結果速報と「答え合わせ」 - 3710920269が書くように、人民党は大幅に議席占有率を減らした(野党が議席占有率を大幅に増やした)とは言え、過半数を確保し政権維持したので、野党の今後の動向が問題でしょう)。
参考
モンゴル2024年国会総選挙参加政党・同盟について(1)モンゴル人民党 - 3710920269湊邦生高知大教授(モンゴル研究)2024.6.15、から一部紹介
1. はじめに
今回からはモンゴルの2024年国会総選挙に参加する政党・同盟についてご紹介します。初回はモンゴル最古の政党であるモンゴル人民党です。
2. モンゴル最古の政党、社会主義時代の独裁政党から社会民主主義を謳う大政党へ
人民党は100年以上の歴史を有するモンゴル最古の政党です。かつての社会主義時代には「モンゴル人民革命党」として国権を独占、独裁政党として君臨してきました。1990年に民主化運動を受けて一党独裁制を放棄したのですが、その後もしばしば政権を獲得しており、モンゴル最大の政党といっても間違いではないでしょう。
とはいえ、人民党はかつての社会主義や一党独裁の復活は掲げていません。むしろ、本稿執筆時点で公式サイトに「われわれは社会民主主義者である*6」と掲げる等、自らを中道左派政党として位置付けているようです。もっとも、モンゴル政治における「左派」「右派」の違いというのが、私などからすればよく分からないのですが。
3. 前回総選挙で圧勝、史上初めて自由選挙により政権を維持
モンゴルでは民主化以降、総選挙のたびに政権枠組みが変わってきましたが、前回の2020年総選挙では人民党が議席を減らしたものの、76議席中61議席という圧倒的な議席数を獲得しました。ここまでの大勝は(ボーガス注:多数党に有利な小選挙区制で生み出された日本の自民党一強同様、中選挙区完全連記制度という多数党に有利な)選挙制度によってもたらされた部分もあるのですが、ともあれ自由選挙で人民党が勝利したことで、フレルスフ首相(当時)が政権を維持することになりました。総選挙を通じて政権が維持されるのは、モンゴルの歴史では初めてのことです。
4. 2021年大統領選挙でも大勝
2021年に入ると新型コロナウイルス感染症への対応を巡ってウランバートルで抗議デモが勃発すると、フレルスフ首相はあっさり辞任、オヨーン=エルデネ内閣官房長官が後任に選ばれます。辞任の背景としてフレルスフ氏が大統領就任を狙っていたためだとする風聞もありましたが、同年に行われた大統領選挙では人民党から同氏が立候補、総選挙後の民主党内紛の当事者であるエルデネ候補や第三勢力の「正しい人・選挙人同盟」のエンフバト候補を大差で破ります。モンゴルでは大統領・首相・国会議長*7が国権三長*8として扱われるのですが、人民党はこの大勝によって2009年以来12年ぶりに3つのポストを独占したことになります。
7. 閣僚・党幹部らは選挙区から立候補
人民党の特徴が、オヨーン=エルデネ首相やアマルバヤスガラン内閣官房長官・党書記をはじめ、ザンダンシャタル国会議長等、現職閣僚や党の幹部が軒並み選挙区から立候補していることです。モンゴルでは選挙区と比例代表の重複立候補が認められていないので、全て選挙区のみの単独立候補となります。
もっとも、人民党に関する限り、戦術としてはこれが適切と言えるでしょう。人民党は前回総選挙で(ボーガス注:日本の小選挙区同様、多数党に有利な)中選挙区完全連記制の特徴を活かし、(ボーガス注:得票率を大幅に上回る議席を得た自民党*9と同様に)得票率を大幅に上回る議席を得ることに成功しました。今回の選挙区選挙も同じ制度で争われることから、前回総選挙と条件が変わらないようであれば、得票率がリアルに反映される比例代表制よりも、選挙区の方が当選の可能性が高いことになります。あくまで前回総選挙と同じく、人民党が最も支持を得ているならば、ですが。
モンゴル2024年国会総選挙参加政党・同盟について(2)民主党(6/17追記) - 3710920269湊邦生高知大教授(モンゴル研究)2024.6.16、から一部紹介
1. 民主化勢力の大同団結で誕生
以前にも書きましたが、民主党は1990年のモンゴル民主化運動を率いた勢力の多くが合流して2000年に誕生した政党です。同年に行われた総選挙ではモンゴル人民革命党(現・モンゴル人民党)が76議席中72議席を獲得、民主化勢力には壊滅的な結果となったことから、(ボーガス注:自民一強への対抗のために開始された日本の野党共闘と同様に)大同団結の必要が生まれたのでした。
ただ、いわば「寄り合い所帯」からスタートした民主党には結党以来、(ボーガス注:寄り合い所帯である日本の民主党と同様に)派閥間の勢力争いや正統性をめぐる争いがついて回ります。また、この間に離党して新党を結成する者も相次いでいます(気がつけば元の鞘に納まった政治家もいるのですが)。
そして、このような党のまとまりの無さは、2020年総選挙後に遺憾なく発揮されることになります。
2. 2020年総選挙後に党首の座を巡り党内二分
2020年総選挙で民主党は前回に続く大敗を喫します。その結果、当時のエルデネ党首は党規に従って辞任*10することになり、トワーン党首代行が次期党首の選出業務に当たることになりました。ところが、新たな党首が決まらないうちに、辞任したはずのエルデネ党首が、党首の公印を自らが持っていることを根拠に党首の座を主張します。これにトワーン党首代行が納得するはずもなく、エルデネ派と反エルデネ派の2極による対立抗争が始まりました。
両派は独自の党首を選出したばかりか、2021年の大統領選挙や国会議員補欠選挙でもそれぞれが異なる候補者を届け出ました。これに対し、(中略)選挙管理委員会はエルデネ派の候補を認める決定を下しています。もっとも、党内がまとまらないのに選挙で勝てるわけがなく、いずれの選挙でもエルデネ派の候補は敗退しています。
3. 2023年に分断収束も、今度は別の不安表面化
ところが、2023年に入るとエルデネ前党首が突如和解への動きに出ます。反エルデネ派のガントゥムル党首を承認、党首公印を引き渡したのです。これにより、2年半にわたる党内分断はようやく終結します。エルデネ前党首の行動の背景としては、対立が続く過程で自派からの離脱者が相次ぎ、追い込まれていたことが考えられます。
これで一件落着、かと思いきや、今度はバトトルガ前大統領と反対派の対立が表面化します。民主党候補として2017年に大統領に選出されながら(ボーガス注:大統領の再任を禁止する憲法改正で)2021年大統領選挙への立候補を阻まれたバトトルガ前大統領は、2023年に入ると民主党内での影響力回復に動きます。その結果、前大統領は首都の党組織トップである首都党委員長に自派の人物を据えることに成功しました。前大統領はかねてよりエルベグドルジ*11元大統領らとオリが悪く、民主党員の中には前大統領とプーチン・ロシア大統領との親密さを挙げて拒絶反応を示す人も少なくありません。「一難去ってまた一難」という状況下で、ガントゥムル党首ら党幹部は国会総選挙候補者の選出を迫られることになりました。
6. 世代交代は図れたか?
党内抗争を経て党首以下の若返りに成功した人民党とは対照的に、民主党は世代交代が進んでいませんでした。民主化運動当時の若者が30年の間に長老と化し、若手が登場しなかったのです。昔の若者の候補者が民主化当時からの掛け声で臨んで失敗した2021年の国政選挙は、若手不在の象徴ともいえるでしょう。
ただ、今回の総選挙では状況が変わっているようです。民主化運動当時の人物は軒並み姿を消した一方、20代後半で比例上位に名を連ねた先述のツェングーン候補のような新たな世代が見られます。正確には候補者らの平均年齢をとった方が良いので、あくまで大雑把な話ではありますが。
とはいえ、旧世代がこのまま退場するかどうかは分かりません。再び前面に立つこともあれば、隠然とした影響力を保っている可能性もあります。民主党の世代交代が真に図れたかどうかを判断するのは、今回の総選挙の結果や、結果への反応次第と言えそうです。
7. 民主党の危機?民主主義の危機?
最後はどうにもまとまらない話になってしまいます。
今回の選挙戦開始以来、民主党は記者会見の場等で他党による金銭バラマキや民主党候補への誹謗中傷といった不正があるとたびたび主張しています。
これらの主張の当否自体については、現時点では判断材料がないので論じません。むしろ気になるのは、(民主党に限らない話ではありますが)このまま投票日を迎えて、もし選挙結果が不利なものだった場合、選挙結果についても不当性を訴えて受け入れないのでは、ということです。
民主化以来、モンゴルは十分に公正な選挙を行ってきたと言えるでしょう。ゆえに、選挙結果が不正や操作によって左右されたとは思い難いところです。
とはいえ、民主党をはじめ野党側の懸念も理解できないではありません。前回総選挙で野党・無所属候補者の一部が相次いで拘束されましたし、昨年12月と今年5月にはジャーナリストの拘束やニュースサイトの強制閉鎖があり、国際NGO「国境なき記者団」が批判する事態になっています。
また、その「国境なき記者団」が毎年発表している報道の自由指数(世界報道自由度ランキング)でモンゴルの指数が直近10年で低下を続け、評価も「悪い」にまで落ちており、これはモンゴル国内でも少なからず報じられました。
もっとも、選挙でまたも負けたとなれば、また党首が辞任して体制を作り直さないといけないわけで、その過程でまたぞろ党内の混乱や対立ということは十分考えられますし、むしろそちらの心配が先だろう、という考えもできます。と書いてきたものの、もちろん民主党が選挙で勝利する*12可能性もあるのですが。
【追記】
まさか小生ごとき「モンゴル素人」が書いた「思いつきの記事」に「モンゴル専門家」湊氏からコメント頂けるとは思ってもみませんでした。ありがとうございます。
なお、選挙速報についての湊氏の記事も紹介しておきます。
モンゴル2024年国会総選挙、公式結果速報と「答え合わせ」 - 3710920269湊邦生高知大教授(モンゴル研究)2024.6.29、から一部紹介
モンゴル2024年国会総選挙は6月28日(金)に全国で投票が行われ、即日開票の結果、翌日未明に公式な結果速報が発表されました。詳細な検討は後日行うとして、まずはこの速報をざっと見た上で、「答え合わせ」を行います。
1. はじめに
選挙結果については詳細な検討を要しますし、それはおいおい行います。ただ、まずは取り急ぎ、結果がどのようなものだったか、ここで簡単にご紹介しておこうと思います。
2. 事前の結果予想(憶測)
ですがその前に、事前に私が行った結果予想、というか憶測レベルのものについて、触れておきたいと思います(結果速報の方が気になる方は、3. まで飛ばしていただいて結構です)。
(中略)
このような予想を行うことには批判があるでしょう。実際、研究者の仕事は事実に基づく分析や議論を行うことです。まして、以前にも書いた通りモンゴルの選挙については(ボーガス注:欧米や日本等と違い)世論調査や出口調査といったデータが利用できるわけでもなく、にもかかわらず当て推量を行うのは、研究者の本分ではありません。
ですが、今回の総選挙ではあえて予想を立ててみました。単純にやってみたかったのもあるのですが(汗)、事前に立てた見通しを明らかにしないまま、開票結果についてだけ分かっていたかのような話をするのも、後出しじゃんけんみたいでなんかイヤだなぁと思ったためです。
で、この予想がどの程度「当たった」かは、次の結果速報に照らしてみていくことになります。
3. 開票結果速報
人民党68議席、民主党42議席、人間党8議席、市民の意志・緑の党:4議席、国民同盟(モンゴル緑の党・モンゴル民族民主党)4議席、以上になります。
結果については詳しくはおいおい見るとして、寸評だけしておくと、人民党は過半数を維持し(ボーガス注:政権与党の地位を守っ)たものの議席率は低下、大統領拒否権を覆せる3分の2を割り込みました。民主党は議席率を3分の1に回復させましたが、第一党の座は得られず。人間党は議席率を大幅に上げたものの躍進と言えるかは正直微妙、「市民の意志・緑の党」は悲願(のはず)の国会復帰実現、国民同盟は何とか阻止条項の5%をクリアして新統一同盟と明暗、その新統一同盟を含め他の政党・同盟は今回も共倒れ、というところです。
4. 事前予想の「答え合わせ」
予想のうち外れたのは(ボーガス注:予想よりも議席が多かった)民主党。投稿した通り、与党人民党への批判票が私が予想したよりも民主党に集まったということなのかなと思います。
あとは予想の範囲内でしたが、印象的なのは「市民の意志・緑の党」の健闘と新統一同盟の議席ゼロです。後者はパラリンピックのメダリスト等、有名人を集めた一方で、前者は目玉らしい目玉に乏しい感じがあったのですが、フタを開けてみれば議席を得たのは「市民の意志・緑の党」でした。
また、市民運動党(ИХН)と市民参加統一同盟党(ИОНН)については議席ゼロの可能性は高いと思いつつ、他の中小政党よりはまだ議席を得る目があるかと思っていました。市民運動党はあれだけ候補が集められるのだからと思ったのと、市民参加統一同盟党は国会議員経験のあるオヨーンゲレル党首の存在が理由ですが、やはり甘くはありませんでした。この辺の理由はもう少し検討しないと分かりませんが。
5. 小括
今回の国会総選挙、結果としては人民党が(ボーガス注:議席占有率を大幅に減少させたものの)過半数を維持し(ボーガス注:政権与党の地位を守っ)た一方で民主党も(ボーガス注:議席占有率を大幅に増やして)復権、他の野党も議席を伸ばしました。一見すれば、どの政党・同盟もそれなりに良い結果を得られたように思われます。
ですが、個人的にはこの結果が「勝者なき選挙」になる可能性が大いにあると見ています。強いて言えば(ボーガス注:議席占有率を大幅に減少させたものの過半数を確保し政権与党の地位を守った)人民党独り勝ちになりそうな気もしますが、その人民党も(ボーガス注:議席占有率の大幅減少で)小さからぬ打撃を受けています。それだけに、対応を誤れば政権不安定の恐れもありそうです。
ただこの辺については、選挙結果を見ながらの解説を行うべきなので、今後のエントリに回したいと思います。
またマスコミ報道も紹介しておきます。
モンゴル議会選挙 与党 人民党が引き続き政権運営へ | NHK | 海外の選挙2024.6.29
4年に1度行われるモンゴルの議会選挙は、経済政策や汚職対策などを争点に28日、投票が行われました。
今回の選挙から、議員の定数がこれまでの76から126に増え、モンゴルのメディアによりますと、29日未明時点の暫定的な開票結果で、与党の人民党が過半数の68議席を獲得したということです。
一方、野党では民主党が42議席、人間党が8議席をそれぞれ獲得しました。
人民党は、議席の占有率が選挙前の8割から5割余りに低下しましたが、2016年から維持してきた政権運営を引き続き担うことになりました。
モンゴル総選挙、与党が政権維持 運営安定へ野党に連立を呼びかけ:朝日新聞デジタル2024.7.1
6月28日に投開票されたモンゴル国民大会議(国会、定数126)の総選挙で、与党人民党が過半数の68議席を獲得し、政権を維持することになった。1日、選挙管理委員会が発表した。ただ、同党は議席占有率を改選前から大きく下げており、現地メディアによると、オヨーンエルデネ首相は野党に連立を呼びかけた。
選管の発表によると、野党の獲得議席は民主党が42議席、次いで人間党が8議席などと続いた。今回の選挙では、人口増などを理由に定数が76議席から増え、比例代表制も採用されて野党に有利な変更*13となっていた。
一方の人民党は、こうした事情に加え、物価高や相次いで発覚した汚職問題などへの不満が響いて議席占有率を改選前の8割から5割台に下げた。連立の呼びかけは、政権運営の安定を狙ったものとみられる。
モンゴル与党の議席占有率が大幅低下、野党との連立政権を模索 総選挙の開票結果発表 - 産経ニュース2024.7.2
モンゴルの選挙管理委員会は1日、国民大会議(国会、定数126)総選挙の開票結果を発表した。与党モンゴル人民党が過半数の68議席を獲得した。議席占有率は改選前の約80%から約54%へと大幅に低下しており、人民党は野党との連立政権を模索しているもようだ。
物価上昇や渋滞の深刻化といった経済・社会問題に加え、2016年から単独政権を続けてきた人民党への不満が党勢低下につながった。最大野党の民主党は42議席で、占有率は約15%から約33%へと躍進を遂げた。続いて人間党が8議席を確保するなどと野党勢力が拡大した。
今回の総選挙では議員定数を前回までの76議席から126議席に拡大したほか、比例代表制も採用した。こうした変更が野党勢力に有利に働いた*14とみられている。人民党は野党との連携で政権運営の安定を図る考えとみられる。
*1:中選挙区完全連記制(日本の小選挙区同様に多数党に有利で死票が多い)のようです。俺も無知なので「中選挙区完全連記制」については知識がありませんが(なお、過去の日本にあった中選挙区制度は単記制度)
*3:共産党一党独裁時代の政権党「モンゴル人民革命党」の流れをくむ「モンゴル人民党」(62議席、地方が主要地盤)。現在は社会主義インターナショナル(英国労働党、ドイツ社民党、日本の社民党等が加盟)に加盟する社民政党
*4:最大野党は「モンゴル民主党」(11議席、都市が主要地盤)。マスコミ記事では第二野党がどこかわかりませんでしたが、湊邦生高知大教授(モンゴル研究)の記事モンゴル2024年国会総選挙参加政党・同盟について(3)人間党 - 3710920269(2024.6.19)によると第二野党として「モンゴル人間党(旧称はモンゴル労働国民党、民主党と同じく都市が支持基盤:但し1議席に留まる→今回選挙で複数議席に増やせるかどうかが注目点)」があるとのこと。湊氏の経歴については湊 邦生 (Kunio Minato) - マイポータル - researchmap参照。湊氏の著書として『遊牧の経済学:モンゴル国遊牧地域に見るもうひとつの「農村部門」』(2017年、晃洋書房)
*5:まあ、現都知事(自称カイロ大学卒)と違って経歴詐称ではさすがにないのでは無いか。
*6:社会主義インターナショナル(英国労働党、ドイツ社民党、日本の社民党等が加盟)に加盟している(モンゴル人民党 - Wikipedia参照)
*8:日本では「国権三長=首相、衆参両院議長、最高裁長官」でしょうが、モンゴルでの最高裁長官の扱いはどうなのか?
*9:これについては例えば上脇『なぜ4割の得票で8割の議席なのか:いまこそ、小選挙区制の見直しを』(2013年、日本機関紙出版センター)等の指摘があります
*10:当時の民主党の党規約では「総選挙に敗北(議席減)したら当然に党首を辞任すること」が定められていたようです。
*11:首相、大統領等を歴任
*12:湊氏の言う「勝利」の意味がこの記事だけでは不明です。「民主党の議席占有率増、人民党の議席占有率減=勝利(現在、定数76議席中62議席が人民党、最大野党民主党は11議席、但し、今回、定数は126議席と大幅増)」なら民主党は勝利の見込みですが「政権交代できるかどうか(定数126議席のうちの多数議席を獲得し、人民党を上回れるかどうか)」と言う意味では勝利の見込みは低そうです。なお「民主党の議席は増加したが政権交代にまで至らなかった場合」に民主党がどういう判断をするのか(敗戦と見なし党首が辞任するのか等)は現時点では不明です。【追記】湊氏から頂いたコメントに寄れば議席数が「民主党>人民党」であれば、「民主党と人民党の議席差が僅差で、仮に人民党が連立内閣(民主党との大連立でアレ、少数野党との連立でアレ)で政権維持した」としても民主党勝利で「党内に異論はない」だろうが、人民党が議席占有率を減らし、民主党が議席数、議席占有率を増やしたとは言え、議席数が「人民党>民主党」だったので「民主党執行部は民主党の議席増、議席占有率増、人民党の議席占有率減少を理由に勝利宣言する」だろうが「党執行部に対立する個人、グループが敗北を言い立て内紛が起こったり、離党する可能性があり、今後が注目される」ということのようです。