新刊紹介:「経済」2024年8月号

◆随想「マルクスの引き合わせ」西野勉*1高知大学名誉教授)
(内容紹介)
 1995年に「英国のマルクスの墓」墓参で偶然出会った田中美智子氏*2の思い出を述べていますが小生の無能のため詳細な紹介は省略します。


世界と日本
◆台湾新政権発足と中国の対応(平井潤一)
(内容紹介)
 日本共産党系の雑誌らしいと言うべきか、「中国が高圧的」とかなり中国批判が強いですが、俺個人は逆に「中国の反発を無視してペロシ下院議長(当時)が訪台」など「民進党や米国」の方に問題があると思いますね。国民党政権時代には「それなりの友好関係」が構築されていたわけです。
 「いわゆる断交ドミノ」の打撃を考えれば、台湾(民進党政権)は中国との「友好関係構築」に動くべきでしょう。


ニジェール政変と対外関係(佐々木優*3
(内容紹介)
 「旧宗主国」フランスが支援していた前政権を打倒して誕生した軍事政権について触れています。
 軍事政権はロシアに接近してるようですが、これは「クーデタの背後にロシアがいる」というよりは「前政権支持のフランス」に対決してまで支援してくれる大国が「ロシアぐらいしか無い」と見るべきでしょう。既にロシアは「マリ」「ブルキナファソ」等、アフリカ各国にいわゆるアフリカ部隊(旧称:ワグネル部隊)を進出させているので、ニジェール政権もロシアに接近しやすかったのでしょう。
 ロシアにとっても「自国を支持する国」が一つでも増えることは利益ですが、ニジェールは「世界有数のウラン産出国」なのでそういう意味でもロシアに利益がある。


◆日鉄のUSスチール買収と日米同盟(山脇友宏)
(内容紹介)
 大統領選が終了するまでは、労組票が逃げることを恐れてバイデンは買収を許可しないが、終了すれば、「USスチール経営陣」や「米国財界」は「買収に乗り気」なので、大統領選挙後は(バイデン当選の場合は勿論、トランプ当選の場合も)買収を許可するのでは無いか(そして労組も買収を認めた上での条件闘争に移るのでは無いか)と見ています。


特集「歪む日本経済:円安・株高・生活苦」
◆国民の暮らしを守り、経済の再生へ(大門実紀史*4
(内容紹介)
 「共産党の経済再生プラン」が紹介されています。
日本共産党の経済再生プラン 全文│政策・提言全文│ダウンロード│日本共産党中央委員会
日本共産党の経済再生プラン 30年におよぶ経済停滞・暮らしの困難を打開するために 三つの改革で暮らしに希望を│くらし・社会保障・経済│日本共産党の政策│日本共産党中央委員会2023.9.28
主張/経済再生プラン/30年の停滞を打ち破るために2023.10.2
日本共産党の財源提案の基本的考え方/大門政策委員会副委員長に聞く2023.11.8


◆深まる日本経済の停滞と生活劣化(工藤昌宏*5
(内容紹介)
 日本経済の停滞原因を「国民負担増等による内需縮小」と指摘。
 「最低賃金の引き上げ」「社会保障の充実」「消費減税と大企業への課税強化」「累進課税強化」等による「国民負担軽減→内需拡大」を主張している。


◆日銀の金融政策、枠組みの見直しへ(建部正義*6
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
「出口戦略」情報開示を/日銀金融緩和策 小池氏、総裁ただす/参院財金委2023.12.8
リスク回避 対案示す/日銀金融緩和見直しで小池氏/参院財金委2024.4.11
日銀金融政策 財政赤字の穴埋め/田村貴昭議員 「戦前の軍拡に道」/衆院財金委2024.4.11
主張/止まらぬ異常円安/アベノミクスからの決別こそ2024.4.24
アベノミクスの過ち(上)/異次元緩和破綻し円売り2024.5.4


◆大企業の2024年3月期決算:3期連続で最高益(小栗崇資*7
(内容紹介)
 日本大企業の高収益について「円安による為替差益」や「財テクによる収益」の要素が大きく「営業収益自体が増えてるわけでは必ずしも無い」という厳しい指摘がされている。


春闘史でも異例な2024春闘:高水準回答も賃金目減り(鹿田勝一)
(内容紹介)
 賃金アップの伸びは過去と比べ大きいが、「物価上昇」を考えれば、賃金は目減りしており、労組運動の奮闘が求められる。
 特に「大企業」と比べ「中小企業」の賃金アップが低いことが大きな問題である。


特集「経済安全保障を問う:「戦争する国」づくりの危険性」
◆「経済安全保障」の背景と影響を考える(阿部太郎*8
◆米国の対中国戦略と「経済安全保障」:対米従属の新段階(坂本雅子*9
◆科学・技術のゆくえと経済安保(井原聰*10
(内容紹介)
 「経済安全保障(経済秘密保護法など)」の背景として1)日本の軍事大国化を目指す政財官界の動き、2)米中対立において「米国側に付くこと」を求める米国の要請があることを指摘。警戒を呼びかけている。
参考
主張/経済安保法の成立/軍事と一体化許さぬ声大きく2022.5.13
経済秘密保護法案/井原聰東北大名誉教授の意見陳述(要旨)/参院内閣委2024.5.8
https://nishoren.net/new-information/19832


◆『エコノミック・ステイトクラフト』とは何か(森原康仁*11
(内容紹介)
 「エコノミック・ステイトクラフト」とは「自国の経済施策(経済支援や経済制裁、あるいはNAFTA、TPP等の経済合意など)によって他国の政策に影響を及ぼそうとする方策」のことであり、そうした考え自体は別に最近のものではなく、「アパルトヘイト南アへの経済制裁」「核開発を理由とした北朝鮮やイランへの米国の経済制裁」など、昔からあるものだが、問題は最近の「エコノミック・ステイトクラフト」論者の多くは「民主国家(米国を中心とする)VS専制国家(米国が敵視する中露やイラン等を想定)」論の立場を採用し、米国の国益を絶対視すると共に、専制国家との対決を不可避と見なす「危険な傾向があること」である。
 ウクライナ戦争という「対外侵攻」まで実行したロシアはともかく、「ロシアほどの暴挙には至っていない」中国やイランをいたずらに敵視する「エコノミック・ステイトクラフト」論は「中台有事」「中東有事(イランVSイスラエル)」を引き起こしかねず、批判せざるを得ない。


◆『コープみやざき』訪問記:マルクスの「協同組合論」の意義に寄せて(友寄英隆*12
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

「日本でいちばん大切にしたい会社」、生協が初受賞 | サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan
 今年で9回目となる「人を大切にする経営学会」の「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞は、生活協同組合コープみやざき(宮崎県宮崎市)が経済産業大臣賞を受賞した。協同組合が同賞を受賞するのは初めて。「実質定年なしの無期雇用で、現在も70歳以上の社員が29名いること」や「業績ではなく、社員の雇用や高い満足度を守ることを第一とする45年間ぶれない経営姿勢」などが評価のポイントとなった。

【田代洋一・協同の現場を歩く】組合員の声に沿い仕事をする コープみやざき(宮崎県)|田代洋一・協同の現場を歩く|シリーズ|農政|JAcom 農業協同組合新聞
 コープみやざきが「人を大切にする経営学会」の「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の最高賞を受賞した。同生協では、正規職員の6割を占める総合職の離職率は2.4%。
 まず総代会議案書に驚いた。一冊目は1号議案「2018年度努力してきたこと、2019年度取り組むこと」で67頁あり、組合員、職員などの事例や声の紹介に当てられている。その後のページには、2000人職員の仕事の指針となる「基本方針書」が資料として載せてある。いつ頃からそういうスタイルになったのか。真方和男理事長は「1984年の組織運営の改革以降少しずつ増えてきた」という。同生協の「あゆみ」(年表)に当たると、1973年に690人の主婦で設立されたが、10年後の1984年、「組合員の声を聴き、理事会で検討し生かすように組織運営を変更」したとある。

*1:著書『経済学と所有』(1989年、世界書院)

*2:1922~2019年。日本福祉大学助教授、共産党衆院議員(1972~1980年、1983~1990年)等を歴任(田中美智子 - Wikipedia参照)

*3:明治大学助教順天堂大学講師を経て、文教大学准教授

*4:日本共産党政策副委員長(中央委員兼務)。元参院議員。著書『「属国ニッポン」経済版』(2003年、新日本出版社)、『新自由主義の犯罪』(2007年、新日本出版社)、『ルールある経済って、なに?』(2010年、新日本出版社)、『カジノミクス』(2018年、新日本出版社)、『やさしく強い経済学』(2022年、新日本出版社

*5:東京工科大学名誉教授。著書『日本海運業の展開と企業集団』(1991年、文眞堂

*6:中央大学名誉教授。著書『貨幣・金融論の現代的課題』(1997年、大月書店)、『金融危機下の日銀の金融政策』(2010年、中央大学出版部)、『21世紀型世界経済危機と金融政策』(2013年、新日本出版社)、『なぜ異次元金融緩和は失策なのか』(2016年、新日本出版社)等

*7:駒澤大学名誉教授。著書『アメリ連結会計生成史論』(2002年、日本経済評論社)、『株式会社会計の基本構造』(2014年、中央経済社

*8:名古屋学院大学教授

*9:名古屋経済大学名誉教授。著書『財閥と帝国主義三井物産と中国』(2003年、ミネルヴァ書房)、『空洞化と属国化』(2017年、新日本出版社

*10:東北大学名誉教授

*11:専修大学教授。著書『アメリカIT産業のサービス化:ウィンテル支配とIBMの事業変革』(2017年、日本経済評論社

*12:著書『「新自由主義」とは何か』(2006年、新日本出版社)、『変革の時代、その経済的基礎』(2010年、光陽出版社)、『「国際競争力」とは何か』(2011年、かもがわ出版)、『大震災後の日本経済、何をなすべきか』(2011年、学習の友社)、『「アベノミクス」の陥穽』(2013年、かもがわ出版)、『アベノミクスと日本資本主義』(2014年、新日本出版社)、『アベノミクスの終焉、ピケティの反乱、マルクスの逆襲』(2015年、かもがわ出版)、『「一億総活躍社会」とはなにか』(2016年、かもがわ出版)、『「人口減少社会」とは何か:人口問題を考える12章』(2017年、学習の友社)、『AIと資本主義:マルクス経済学ではこう考える』(2019年、本の泉社)、『コロナ・パンデミックと日本資本主義』(2020年、学習の友社)、『「デジタル社会」とは何か』(2022年、学習の友社)、『「人新世」と唯物史観』(2022年、本の泉社)、『「人口減少」社会とマルクス経済学』(2023年、新日本出版社)等