Apes! Not Monkeys!本館「政権交代と料亭」http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20090920/p1、を読んで思ったこと。
「へえ、そうなの」と言うのが率直な感想である。「自民=料亭政治」、「民主=非・料亭政治」というのは意外。
「自民党が今も料亭政治をやっているというのが意外」なら「民主党の幹部には旧・田中派(典型的には小沢一郎だが)がいるのに料亭政治がないと言うのも意外」だ。
また、記事になるほど、自民党のシェアが大きいというのも意外。
なお、id:apesnotmonkeys氏などが指摘しているように一般人がお祝い事で料亭を普通使わないのは「値段が高い(あるいは高そう)」「使い方が分からないので敷居が高い」(つまり、回転寿司ははやっても老舗寿司屋はそうでもないらしいのと同じ理由)が理由だろうから、 利用を増やすなら、そのあたりをどうクリアするかと言うことだと思う。(新聞記事によれば結婚や法事など一般への売り込みをかける料亭がある一方、「料亭政治の夢よ、再び」と言う料亭もあるようだ。「高級」「伝統」イメージを破壊しない形での一般への営業に賭ける他生き残りの道はもはやないと思うが。)
ちなみに、過去の料亭政治について触れている、私が持っている本の記述を参考に上げてみよう。記事が本当なら、時代は変わったと思わざるをえない。
「御手洗辰雄*1が『歴史は夜つくられる、という言葉があるが、日本の政治はその上に待合いでつくられるといった方が真実に近い』と述べたように、接待や密談の場として、かつてはしばしば赤坂や神楽坂、向島、新橋などの料亭や待合いが使われてきた。(中略)岩見隆夫も『とにかく日本型政界の大特徴は「夜の会合」だ。政治は昼よりも夜、確実に躍動する。政治家は夜謀って朝動く、とも言われる』(岩見「自民党には言いたいことが山ほどある」138頁)と書いている。
しかもこの夜の謀はたいがい料亭を舞台に行われ、それが外部に漏れないように料亭は都会の中の密室を形作っている。(中略)政治家や高級官僚、財界人たちは、これらの料亭街に夜な夜な出没しては密議を凝らし、芸者をあげて騒いだ。しかも、福田派は『新長谷川』『ひょう亭』『満ん賀ん』『川崎』『大野』、田中派は『松ヶ枝』『川崎』『一条』『口悦』、中曽根派は『金龍』『ふくでん』『千代新』『中川』などと、出入りする店や呼ぶ芸者などが決まっていた。」
五十嵐仁「戦後政治の実像」72〜73頁
この五十嵐本でも、料亭での政治的謀がいくつか上げられている。
いくつか例を挙げると次の通り。
・二階堂進擁立工作で矢野絢也・公明党書記長と鈴木善幸・元首相が密会:料亭「重箱」
・金丸信を幹事長にするよう、小沢一郎、梶山静六、羽田孜が中曽根康弘首相に依頼:料亭「口悦」
・創政会(後の経世会)の世話人会:料亭「桂」
・皇民党事件解決に動いたヤクザ石井進(稲川会会長)への金丸のお礼のあいさつ:料亭「藍亭」
・自民党離党前の小沢一郎と山岸章・連合会長の密会:ホテル・ニューオータニ内の料亭「千羽鶴」*2
「田中は赤坂の『愛用の料亭』・『千代新』に『創価学会を斬る』の著者・藤原弘達明治大学教授を呼び出し、『初版分は全部買い取ろう』と持ちかけた。しかし、藤原は出版の意思を変えなかった。」
江藤俊介・七里和乗「自民党・創価学会・公明党:国民不在の連立政権秘史」102頁
「『読売新聞』の連載は(中略)『通用せぬ”夜の政治”』などの見出しで次のように書いています。
『「もう夜の政治は出来なくなったねエ」
自民党のある幹部議員は、共産党の進出*3に率直な感想をもらしている。これまで自民党の国会運営のパターンといえば、強行採決をしてもいつの間にやら、民社党なり公明党なりを取り込んでしまう。そしてしばしば社会党だけを孤立させて法案の成立を図るというものだった。そのためには、東京・赤坂の料理屋で深夜、与野党の”国対族”が国会の運び方を協議することもしばしばだった。(中略)しかし共産党は夜の料理屋での談合政治を受け付けないだろう。』」
松本善明*4「平和の鉱脈と日本共産党」145〜146頁