赤旗日曜版の歴史小説「業政(なりまさ)駈ける」がなかなか面白い(追記・訂正あり)

基本的に、しんぶん赤旗(日曜版を含む)の連載小説は読み飛ばしていた(そもそも小説自体、松本清張とか一部を除いてあまり読まない)私だが、これは面白い。
筆者は、NHK大河ドラマ天地人」で一躍有名となった歴史小説家・火坂雅志氏。「天地人」の「直江兼継」といい、この小説の「長野業政」といい、秀吉、家康ほどの有名人でも成功者でもない。火坂氏について全然知らないが氏はそういったマイナーな存在を取り上げることが多いのだろうか?。まあ、有名な存在は既に多くの人間が小説にしており、書いても面白くない(そしてあまり売れない?)と言うこともあるのかもしれないが。

今までの流れを説明すると次の通り。

・主人公は上州(今の群馬県)の戦国武将・長野業政。*1
(現時点では、有名どころでは上泉信綱*2真田幸隆*3が出ている)
・業政は、上州に侵攻してきた武田信玄の大軍を見事な戦略で撃退する。
(もちろん武田を逆に滅亡させるほどの力は、長野氏にはない。ウィキペディアによれば、業政死後、上州に侵攻した武田に、長野氏は降伏する)*4
・武田撃退後、業政は北条氏によって、逃亡を余儀なくされた関東管領*5上杉憲政に「越後(今の新潟県)の長尾景虎*6の力を借りて北条氏を打倒すべし」と進言する。
・しかし、人間不信に陥っている憲政は「景虎が自分の要請に応えるだろうか」「応えたところで彼が第二の北条氏になるだけなのでは」とためらう。
・仕方なく、業政は、自ら越後に出かけ、景虎の人物を見極めるとともに、北条打倒を要請することを憲政に約束する。
・わずかな供で、越後に出かけた業政。彼は、そこで、家臣の内紛に嫌気がさした景虎が出家するとの書き置きを残し、行方不明になったことを知らされる。景虎に北条打倒の話を持ちかけるどころか、長尾家自体が危険な状況になっていたのである(今ここまで)

【追記】
1)今後の「業政」紹介だが連載が終了し、書籍となった段階でまた改めて。もしかしたら、やらないかもしれないが。
なお、赤旗連載小説、主人公・業政がマイナーとは言え、著者が火坂氏、登場人物が信玄、謙信となかなか華麗だから、書籍化されたら新聞書評などで話題になるかもな、と思う。
2)赤旗というと固いと思っている方が多いかもしれない。その感想は間違いではないと思うが、火坂氏の小説*7のように柔らかいところ*8もあるので一度読んでいただきたいと思う。(買えと言っているわけではなく、図書館で読むとか手はいろいろあるだろう。日刊が1部100円、日曜版が1部200円なので、買っても良いとは思うが)
最近は、辻井喬堤清二)氏など、共産とは立場の違う方々(穏健保守や非共産系・左派)も登場するので、極端な共産嫌い(極右、極左)でない限りそれなりに面白いのではないか?
3)2012年12月9日追記。
 すっかりこの記事を書いたことを忘れていたのだが、ネット上の書評をいくつか紹介しておこう。本は角川から2010年に発行された。


backyard elegy『業政駆ける』
http://blog.livedoor.jp/sanchato-gorone/archives/51539830.html

東奥義塾高等学校公式ブログ『業政駈ける』
http://gijuku.blog129.fc2.com/blog-entry-437.html

*1:ウィキペディアでは「長野業正」表記なのだが、日坂氏の小説では「業政」表記を使用している。

*2:長野氏の家臣。長野氏滅亡後は兵法家として諸国放浪の旅に出る

*3:もともとは業政の盟友だが、武田氏に降伏し、家臣となる

*4:戦国時代の名将の子どもも大変だなと思う。業政死後の長野氏以外でも、義元死後の今川氏、信玄死後の武田氏、信長死後の織田氏、秀吉死後の豊臣氏などは衰退または滅亡しているのだから。

*5:室町幕府の役職だがこの当時は当然機能していなかった。

*6:後の上杉謙信。憲政から上杉家の家督を譲られ「上杉」姓となる。

*7:例えば現在、日曜版に連載されている漫画「今日もいい天気」の作者は商業誌でも活躍している山本おさむ氏だ。また火坂氏の前は、「バッテリー」で知られるあさのあつこ氏が、その前は直木賞作家の山本一力氏が確か連載していた。

*8:もちろん、機関紙だから共産色があるのは当然だ。また新聞の性格上、「日経のような企業情報が充実してない」、「プロレスや競輪・競艇は載ってない(競馬は載ってたと思う)」、「エロ、グロ、残虐表現もNG」、「大企業の広告が載ってない」といった一般紙と違う点はあるが。