私が今までに読んだ本の紹介:藤野豊「忘れられた地域史を歩く:近現代日本における差別の諸相」(2006年10月刊行、大月書店)

・目次は以下の通り。
序章.歴史学における地域
第一章.神奈川の水平社運動
第二章.別府・的が浜との出会い
第三章.奄美ハンセン病問題
第四章.熊本・本妙寺からの出発
第五章.「滅び行くアイヌ」像の復活
第六章.「紀元二六〇〇年」の記憶
第七章.沖縄の買売春
第八章.「村興し」と「トルコ風呂」*1
第九章.隠された横浜の戦後史*2
第一〇章.ソロクト、楽生院、そしてミクロネシア*3
第一一章.「裏日本」の農村*4
終章.差別の連鎖を断て

・第二〜四章、一〇章はハンセン病問題が、第七〜九章では買売春問題(どちらも著者のライフワークらしい)が取り上げられている。
(著者には、ハンセン病問題については、「ハンセン病戦後民主主義」(岩波書店)、「ハンセン病・反省なき国家」(かもがわ出版)等が、売買春問題については「性の国家管理―買売春近現代史」(不二出版)等が、部落史研究としては「水平運動の社会思想史的研究」(雄山閣)等の著作がある。)

*1:富山県利賀村(現・南砺市)で1975年に起こった「村興し」目的の「トルコ風呂」(ソープランド)誘致計画を取り上げた文章。当時の村長はやる気満々だったらしいが、結局は反対運動もあって挫折する。しかし過疎地だからってやることが無茶すぎないか?

*2:黄金町とか曙町とかのことである、よく知らないが

*3:ソロクトは韓国の、楽生院は台湾のハンセン病患者収容施設。言うまでもなく日本政府による設置である。また、ミクロネシアも戦前は日本の植民地でありハンセン病患者収容施設が日本政府により設置された。朝鮮のハンセン病史については、滝尾英二「朝鮮ハンセン病史―日本植民地下の小鹿島(ソロクト)」(未来社)がある。

*4:イタイイタイ病が取り上げられている。