新刊紹介:「経済」11月号(追記・訂正あり)

 「経済」11月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。
http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/
 以下は私が読んで面白いと思った部分のみ紹介します。(詳しくは11月号を読んでください)

■世界と日本

円高介入―問われる経済成長のあり方(小西一雄)】
(内容要約)
円高対策は必要だが、輸出に過剰に頼る日本企業の現状には問題がある。日本の不況を克服するには内需を拡大する必要がある。内需を拡大するには賃上げを行うべきであり、それがワーキングプアなどと言った社会問題の解決にも繋がるという話。

【伊フィアットで不当解雇(宮前忠夫)】
(内容要約)
・イタリア・フィアット社が行った労組潰し(フィアットはもちろんその事実を認めようとしないが)の不当解雇に地裁は解雇無効の判断を行ったが会社は控訴。財界はフィアット擁護の声明を行い、労組側はこれに抗議している。
 政界の動き
フィアットは裁判所決定に従うべきだ」:ナポリターノ大統領、マッテオリ運輸相
フィアットの判断を支持する」:ベルルスコーニ首相、ジェルミニ教育相

【中国の最低賃金引き上げ(平井潤一)】
(内容要約)
・中国の最低賃金が引き上げられたことは評価できる。

■特集「資本主義って何?・マルクスの眼」
【「なぜ資本主義は貧困を広げるのか」(唐鎌直義)】
(内容要約)
・「なぜ資本主義は貧困を広げるのか」についての答えは
「資本主義それ自体には貧困を克服するシステムがビルトインされてるわけではないから」だろう。むしろ「貧困」のある方が貧乏人をこき使えて願ったりかなったりかも知れない。

【「マルクスとイギリス資本主義」(浜林正夫)】
(内容要約)
マルクスはイギリスを「資本主義の典型」と見なして研究を行った。イギリス以外の国では資本主義は(特に農業分野で)未発達であった。

【「現代の「搾取」はどう強められたか:非正規雇用成果主義賃金と労働者支配」(古屋孝夫)】
(内容要約)
・小泉構造改革による搾取の強化は、格差社会批判により一時挫折したが、財界はあきらめてはいない。民主党政権にも財界よりの人間はおり注意が必要。

【「非正規労働は「自己責任」なのか」(関野秀明)】
(内容要約)
非正規労働者は低能力なので非正規になったのであり自己責任であるとする論(筆者に寄れば大竹文雄八代尚宏)への批判。この不況ではどんなに能力があろうと正規職員となることは難しいし、専門職分野でも非正規化は進んでいるというのが筆者の批判のポイントのようだ。

【「メンタルヘルスからみた「働かせ方」の異常」(天笠崇)】
(内容要約)
・過労死、過労自殺は働かせ方の異常が原因であり、それは改められるべきである。

■「民主党連立政権の農業政策を問う」(河相一成)】
(内容要約)
民主党の農業政策はFTA推進が典型であるが基本的には、新自由主義的な代物であり注意が必要。農業には自然環境に左右されると言った特殊性があり、単純な新自由主義万歳が妥当とは思われない。


■ルポ「ファンドは事業会社に何をもたらすか:昭和ゴムの経営・職場を守る闘い」(北健一)
(内容要約)
・怪しげなファンド会社・APFに食い物にされているらしい昭和ゴムでの労働者の戦いのルポ。
・まず昭和ゴムの歴史。
 明治製菓の子会社として誕生するが、経営不振から明治が昭和の株をファンド会社ヒルゴールド社(この会社にはいわゆる仕手筋の西田晴夫氏*1が関わっていたという)に売却。その後色々あり、現在の株主がファンド会社・APF(アジアパートナーシップファンド)である。
・ファンドが絡んだ労働問題としては他にリーマン絡みの「京品ホテル事件」が有名だろう(北氏は週刊金曜日にこの件についてルポを書いている)。
・何かファンドっていいイメージが持てないなあ。

参考)昭和ゴム労組のブログ(http://blogs.yahoo.co.jp/showa_rubber_rouso


【追記】
新日本出版社「経済」編集部ブログ「編集部から:ブログでの11月号の紹介」(http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/blog/?p=524)から本誌11月号を紹介したブログを紹介する。


Internet Zone:WordPressでBlog生活『これは凄い論文だ!! 『経済』11月号』(http://ratio.sakura.ne.jp/archives/2010/10/05231020/


ブログ「未来―私達の力で歴史を動かそう!」
「なぜ19世紀のマルクスの古典を学ぶのか」(http://f-mirai.at.webry.info/201010/article_8.html
「『資本論』と、民営化という「市場」拡大」(http://f-mirai.at.webry.info/201010/article_9.html
「資本主義って何?マルクスの眼」(http://f-mirai.at.webry.info/201010/article_11.html



高知県労働者学習協議会ブログ『雑誌「経済」に霜田さんがのる』(http://jblpalagon.seesaa.net/article/165056539.html

*1:西田氏は「東の加藤、西の西田」と言われた大物仕手。2007年に南野建設(当時)の株価操縦で逮捕されている。加藤とは誠備グループを率いた加藤あきら氏のこと。