新刊紹介:「経済」2021年5月号

「経済」5月号について、俺の説明できる範囲で簡単に紹介します。
 http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/
◆随想『トランプ後のアメリカのこと』(岡田則男)
(内容紹介)
 「トランプが辞めてよかった」が

◆コロナの蔓延
◆人種、民族問題の激化
◆宗教マイノリティ(イスラムなど)、性マイノリティ(LGBT)への差別
◆温暖化防止協定からの脱退、イラン核合意の破棄
◆常軌を逸したイスラエルびいきの外交

などといった「トランプの負の遺産」をどこまでバイデンが清算できるかは「今後の様子見」という話です。


世界と日本
◆中国全人代、香港問題が焦点(平井潤一)
(内容紹介)
 中国全人代について、香港問題を中心に論じています。
【参考】
全人代、香港の選挙制度改変採択して閉幕 民主派排除へ:朝日新聞デジタル

中国 全人代 最終日 香港の選挙制度変更を決定 | 香港 抗議活動 | NHKニュース
 中国の李克強*1首相は、香港の選挙制度の変更を決めたことについて「愛国者による香港の統治を堅持し、一国二制度を完全なものにするためだ」と述べて正当化し、香港への関与を続ける考えを強調しました。

赤旗
香港選挙制度改変を提案/民主派排除「愛国者の統治」/中国全人代が開幕
香港選挙 支配へ改変/中国 全人代常務委が可決
【参考終わり】


◆韓国・非正規の正規職転換(洪相鉉)
(内容紹介)
 新刊紹介:「経済」10月号 - bogus-simotukareのブログで紹介した◆韓国非正規労働の実態:仁川国際空港公社の直接雇用問題(洪相鉉)の続報ですが、正直、「洪氏の評価」がさらに「文政権に対して厳しい物になっている」程度の事しか俺にはよく分かりませんでした。


特集「マルクス経済学のすすめ2021」
◆自然と人間の物質代謝マルクスの生活・環境への基本視点(岩佐茂*2
 『環境の思想:エコロジーマルクス主義の接点』(1994年、創風社)、『環境保護の思想』(2007年、旬報社)、『マルクスエコロジー』(共著、2016年、堀之内出版)などの著書を持つ筆者がエコロジーの観点からマルクスについて論じていますが、小生の無能さから詳細な紹介は省略します。

参考

カール・マルクスと自然の搾取(ル・モンド・ディプロマティーク日本語版)ル・モンド・ディプロマティーク 仏語版2018年6月号より)
 長らくマルクスエコロジーに対して無理解な思想家だとみなされてきた。だが、米国の知識人ジョン・ベラミー・フォスター*3マルクスの世界観が体系的にエコロジー的であり、そのエコロジー的見方がマルクス唯物論に由来していると主張する。マルクスは、労働を通じた人間の自然への関与を説明するのに「物質代謝(Stoffwechsel)」という概念を使用している。
テムズ川の汚染
 マルクスエコロジーに無関心であるどころか、1850年代の終わりと1860年代の初めのリービッヒの著作に影響を受け、栄養素の収奪、すなわち再生を保証しないという意味での資本主義的「搾取」への体系的批判を土壌に関して展開しなければならなかった。


マルクス資本論』と農業問題研究(田代洋一*4
(内容紹介)
 農業経済学者の筆者が「農業問題とマルクス」という観点からマルクスについて論じていますが、小生の無能さから詳細な紹介は省略します。


エッセイ「私と『資本論
◆「恐慌」と戦後資本主義の解明(井村喜代子)
(内容紹介)
 『恐慌・産業循環の理論』(1973年、有斐閣)、『「資本論」の理論的展開』(1984年、有斐閣)、『現代日本経済論(新版)』(2000年、有斐閣)、『日本経済』(2005年、勁草書房)、『世界的金融危機の構図』(2010年、勁草書房)などの著書を持つ筆者(慶應義塾大学名誉教授)が自らの研究人生を振り返っていますが詳細は省略します。


ジェンダー問題解決の「切り口」を発見(土橋理香)
(内容紹介)
 大学三年生だそうですので、「中学→現役入学で高校→現役入学で大学」ならまだ20歳で全然若いですね。
 もちろん「フェミニズムマルクス主義」ではありませんが、マルクス主義の流れをくむフェミニズムを当然あり、そうした興味関心からのマルクスへの思いが語られていますが詳細は省略します。


◆「当たり前」を問い直す(葛西洋平*5
(内容紹介)
 別に「マルクス経済学」に限った話ではないですが、筆者にとっての「学問の大きな意義」とは「当たり前」と思われてることを「問い直すこと」だという話です。


◆『貧乏物語』から『資本論』へ(藤田安一*6
(内容紹介)
 タイトルの

『貧乏物語』から『資本論

へというのは分かる方には「すぐに分かる」でしょうが河上肇のことで、河上肇について「共感的に」簡単に述べられています。

河上肇 - Wikipedia
 1916年(大正5年)9月11日から12月26日まで『東京朝日新聞』に『貧乏物語』を連載し、翌1917年3月に出版。大正デモクラシーの風潮の中、貧困というテーマに経済学的に取り組んだ書はベストセラーになった。河上は『貧乏物語』の中で「貧乏人が生まれるのは、富裕層が贅沢をして、社会が貧者の生活必需品を作らないからである」という批判を行い、社会全体が贅沢を止め、質素倹約をすれば貧困の問題は解消されると論じた。 

というわけですが、こうした主張には「ただの精神論で現実的でない」「貧困問題はそう言う個人の心がけで解決する問題では無く、社会制度の改革が必要だ」という批判が勿論出てきます。
 それに河上なりに誠実に対応した結果が「マルクス経済学研究」だったわけです。


◆5Gをめぐる米中技術覇権競争(佐藤拓也
(内容紹介)
 トランプ政権が仕掛け、今のところバイデン政権もそれを継承しているファーウェイ潰しについて「ファーウェイなど中国通信企業は欧米社会に深く浸透しており、そうした米国の画策は失敗するだろう」と見ていますが小生も同感ですね。

参考

米国がファーウェイ叩きをさらにエスカレート--人民網日本語版--人民日報2020.8.19
 米商務省が華為技術(ファーウェイ)への制限措置の強化を発表したことについて、外交部(外務省)の趙立堅報道官は18日の定例記者会見で「ファーウェイなど中国企業に対する米側の意図的なイメージ毀損と抑圧に中国側は断固として反対する。米側の行為は、米側の一貫して標榜する市場経済と公正な競争の原則が『隠れ蓑』であることを完全に露呈した。これは露骨な覇権的行為だ」と述べた。

*1:共青団共産主義青年団)中央書記処第一書記、河南省長、党委員会書記、遼寧省党委員会書記、第一副首相などを経て首相(党中央政治局常務委員兼務)

*2:一橋大学名誉教授。著書『マルクスの構想力:疎外論の射程』(2010年、社会評論社)など

*3:著書『破壊されゆく地球:エコロジーの経済史』(2001年、こぶし書房)、『マルクスエコロジー』(2004年、こぶし書房)、『裸の帝国主義アメリカによる世界支配の追求』(2009年、こぶし書房)

*4:横浜国立大学名誉教授。著書『WTOと日本農業』(2004年、筑波書房ブックレット)、『食料自給率を考える』(2009年、筑波書房ブックレット)、『農業・食料問題入門』(2012年、大月書店)、『農協・農委「解体」攻撃をめぐる7つの論点』(2014年、筑波書房ブックレット)、『官邸農政の矛盾:TPP・農協・基本計画』 (2015年、筑波書房ブックレット)、『地域農業の持続システム』(2016年、農山漁村文化協会)、『農協「改革」・ポストTPP・地域』(2017年、筑波書房)、『農協改革と平成合併』(2018年、筑波書房)、『コロナ危機下の農政時論』(2020年、筑波書房)など

*5:島根大学講師

*6:鳥取大学名誉教授