新刊紹介:「前衛」1月号

「前衛」1月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。

http://www.jcp.or.jp/publish/teiki-zassi/zenei/zenei.html

 以下は私が読んで面白いと思った部分のみ紹介します。(詳しくは1月号を読んでください)

■「日本共産党の役割発揮し いっせい地方選*1へ」(中井作太郎)
(内容要約)
 特集「いっせい地方選挙でどう勝利するか」の総論的文章。民主党政権の支持率は下がっており、国民は現政権に強く失望している。これに対しどう共産の意義を訴えていくか、ただし参院選では苦戦しておりそれが楽でないことは党中央も認識していると言う問題の指摘。
 また、国政選挙ではないので各地域ごとの課題への取り組みも地方選では大事という指摘。

■特集「いっせい地方選挙でどう勝利するか」
【北海道:道民に犠牲おしつける道政の転換(西野敏郭)】
(内容要約)
・北海道ではやっぱりTPP問題が重要らしい。まあ農産物が重要産業だからね。牛乳とか。

【青森:青森市議選の教訓生かし前進めざす(吉俣洋)】
(内容要約)
青森市議選では共産は6議席を獲得し、最大野党に躍進した(与党の自民が12議席。従来最大野党だった社民が2議席減らし4議席)。
 市議選での勝利が単純に県議選勝利に結びつくほど甘い物ではないが、市議選勝利は工夫次第によっては躍進が可能なことを示したと思う。市議選で得た教訓を上手く県議選勝利に結びつけたい。

【大阪:「橋下新党」の地方自治破壊許さず府民本位の大阪へ(柳利昭)】
(内容要約)
・今回の選挙では関西マスコミ・財界を味方につけて「革新」を偽装する橋下党(維新の会)との闘いが最大の焦点である。関西マスコミ・財界をバックにした橋下党は、大阪市市議補欠選挙で当選者を出しておりいささかも甘く見ることは出来ない。
 橋下党は政策といい候補者(自民からの離党者が多い)といい大阪自民の看板の掛け替えに過ぎないことをアピールし勝利を勝ち取りたい。

【熊本:党議席回復し、くらし・福祉まもる(久保山啓介)】
(内容要約)
・熊本は現在、県議空白県であり、何としても議席を奪還したい。

■特集「若者のいま(2)――雇用・就職の不安定のもとで」
【高校生の就職問題は日本社会に何を提起しているか(佐古田博)】
(内容要約)
・高校生の就職難について現状報告と筆者が考える改善策の提案。

■「「米海兵隊=抑止力」論批判とその方法」(小沢隆一)
(内容要約)
海兵隊はいわゆる海外遠征隊であり日本防衛軍ではない。尖閣防衛などに投入されることはまずありえない。ただこの点「だけ」を指摘すると「台湾有事対応」「北朝鮮有事対応」という言い訳をされるので注意が必要である(ぶっちゃけ「台湾有事対応」「北朝鮮有事対応」って嘘だと思うが)。
・抑止力論が日本政府によって強く唱えられるのは「日本人がさすがに抑止ではない侵略は許さない」と言う問題もあるが、ある種、抑止力論にカルトの教えと似たところがあるからである。
 カルトでは成功すると、あなた(信者)の信心のおかげとなり、失敗するとあなたの信心が足りないからとなる。信心そのものの是非が問われることはまずない。
 抑止力論も似たところがある。抑止が成功すると抑止力(軍事力)のおかげとなり、失敗すると抑止力が足りないからとなるのである。抑止力そのものが問われることはまずない。
・現在、アルカイダなどのテロ集団の存在により抑止力論はリアリティを実は失いつつある。国と違いテロ集団ははっきりした形がなく抑止力論を適用しがたいからである。
・なお、アメリカの抑止力論はいわゆる「先制攻撃や予防攻撃」(北朝鮮がミサイル発射する前に発射するか分からなくても見切りで基地を先に叩こうみたいな話)を認めることによって限りなく攻撃力に近づいていることに注意が必要である。

■対談「なぜ衆院比例定数削減を許してはいけないのか」(上脇博之、仁比聡平)
(内容要約)
・仁比氏は前・党参議院議員。上脇氏は憲法学者で市民団体役員としても活動。
民主党の比例削減の狙いをミニ政党を潰すことによる、多数派支配が目的だと批判。
・国会議員の数が多いという主張を国際的に見れば多いどころか少ないと批判。
・また、金の節約なら政党助成金を廃止すべきだし、百歩譲って議員数の削減が必要だとしてもそれを比例に限るのはおかしいと批判。

■「避けて通れない小沢政治資金問題の真相解明」(藤沢忠明)
(内容要約)
 小沢とその信者の小沢西松疑惑についてのふざけた言い訳を改めて一刀両断。天に恥じるところがないなら偽証罪付きの証人喚問にまず応じろよ、嘘つくつもりだから偽証罪適用が怖くて応じないんじゃないのかと批判。

■「いま問われる地方自治と民主主義・名古屋における住民の試練」(小林武)
(内容要約)
・河村が市長専制体制を確立しようと画策していることを批判(なお、筆者がこの文章を執筆した時点では議会リコール請求の失敗による河村の辞任再出馬や、河村一派が県知事として大村を擁立しようとすることはまだ明らかになっていなかった)。
・河村がこうした方策にある程度成功したことについて筆者は「オール与党のなれ合い政治に対する市民の不満」「一部マスコミが視聴率等目当てで河村を持ち上げたこと(名古屋版・小泉劇場)」を上げ、オール与党のなれあいと不見識なマスコミを批判している。
・今後名古屋市政が如何なる形になろうとも河村の暴挙を少しでも食い止めることが必要と指摘。

■「派遣・有期労働の規制強化をめぐる対決軸」(日野徹子)
(内容要約)
・菅政権の派遣規制法案がザルであることを改めて批判。
・筆者は前衛2010年・5月号(http://d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/20100409/1270459333)でも同様の批判をしており実は批判内容がかなりかぶる。
・そのザルですら国会に提出しなかったことも批判。

■「福祉国家型公共の拡充をめぐる現代の対決点・菅政権「強い財政・経済・社会保障」と消費税増税路線の本質」(二宮厚美)
(内容要約)
参院選で小泉流ネオリベ政党・みんなの党が躍進し、反ネオリベの立場に立つ党(共産、社民・国民新党)が不振な結果だったことは今後の不安材料であり、改めてみんなの党に代表されるネオリベの反庶民的かつデマゴギーな性格を徹底的に批判する必要がある。
みんなの党は公務員数削減を主張するが、日本の公務員は諸外国に比べ決して多くはない。また人件費もその額は歳出全体からすれば微々たるもので、そもそも赤字財政の原因ではないし削減したからといって財政危機が克服できるような巨額なものではない。下手に削減すれば官製ワーキングプアすら生み出しかねないのである。
・日本における財政赤字の主原因は、度を超した法人税減税である。これによって税収が極端な不足に陥ったことが問題であり、少なくともヨーロッパの福祉国家なみにそれなりの法人税を徴収すべきである。
法人税を上げると企業の競争力を阻害する、企業の海外流出を招くという議論の間違いは、現にヨーロッパの福祉国家がそれなりの税を企業に課していることや、競争力や海外進出は税負担だけで決まるわけではないこと、実際、税負担軽減が競争力をアップし、海外流出を防止しているという効果をもたらしていることが証明されていないことから明白であろう。
・なお菅政権に接近を強めており、第二の竹中平蔵になる危険がある人物として筆者は学習院大の鈴木亘に警戒が必要だとしている。筆者は神野直彦を評価しているが、菅政権を社民主義的な場所に固定するまでの政治力はないと見なしており、遅かれ早かれ、神野が菅政権を見捨てるか、神野が「自民よりマシ」と妥協するかのどちらかになると見ているようだ。

■「「平和の共同体」を模索するアフリカ:「アフリカの年」*250周年にあたって」(高林敏之
(内容要約)
AUアフリカ連合)が誕生したことは良かった。しかしいろいろな問題がある。
スーダンの独裁は俺聞いたことはあるよ。
・西側の新植民地主義を象徴する言葉として「フランサフリック」(フランスのアフリカ支配)と言う言葉があるのか。ふむ。
 ちなみに下の共同通信記事みたいなのがフランサフリックなんだろう。政治的に不当以前に犯罪の気がするが。
共同通信「フランス大統領らに不正資金か ガボン*3前大統領」
http://www.47news.jp/CN/201012/CN2010123001000569.html
 ウィキペによると前大統領は41年間、大統領をつとめ、次の大統領(現大統領)はその息子だって。事実上、独裁じゃねえのか?。で、ウィキリークス信じるならば、それを上手く回すためにフランスの保守政治家に金ばらまいてたと。
・モロッコ西サハラ不当占拠問題(この問題でAUがモロッコを支持しないことを理由にモロッコAU未加入)というのがあるのか、ふむ。(なお、ウィキペに寄れば亡命政権サハラ・アラブ民主共和国AUに加盟している。欧米諸国や日本がモロッコとの関係悪化を恐れ政府承認していないため国連への加盟は果たされていない)
・このように世界には独裁的国家があふれており、その問題解決は容易ではないわけだが、世の中には、北朝鮮だけが独裁国家であるかのようにいい、北朝鮮の難民をひきうければ、北朝鮮即時崩壊みたいな寝言いうid:noharraみたいな輩もいるわけである。

■「貧困半減を掲げた国連開発目標の達成状況と課題」(夏目雅至)
(内容要約)
ミレニアム開発目標の達成状況と今後の課題の説明。

■論点
【岩国・愛宕山に米軍基地・住宅はいらない(久米慶典)】
(内容要約)
 米軍再編見直しを総選挙で掲げながら裏切り、岩国・愛宕山に米軍基地・住宅建設を強行しようとする菅政権とそれに同調する山口県知事への批判。

【奈良・纒向遺跡 党県委員会が提言(鎌野祥二)】
(内容要約)
 共産党奈良県委員会が発表した「纒向遺跡保全と継承について見解と提言」(http://narakengi.jcp-web.net/?p=539)の紹介。

■暮らしの焦点
【認められた外国人実習生の権利侵害(小野寺信勝)】
(内容要約)
・まず筆者(弁護士)が関わった外国人実習生裁判(原告である実習生勝訴)の事例報告。
・外国人実習制度は今や奴隷労働化しており、「アメリ国務省人身売買報告書」(アメリカ的には人身売買の一種扱いと言うことだろう)や「国連人権規約委員会」から、抜本的な制度改善をしろとだめ出しをされるようなものになっている。

参考)
筆者の関わった裁判についての赤旗記事
「外国人実習制度廃止を、中国人元研修生ら入管局長に要請、仁比議員が同席」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2010-02-11/2010021105_02_1.html

「裁判勝利にふさわしい補償を、中国人原告と党議員団懇談、縫製技能実習生裁判」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-10-07/2010100715_01_1.html


アメリ国務省人身売買報告書2010」
http://tokyo.usembassy.gov/j/p/tpj-20100614-76.html

■文化の話題
【音楽:オペラの映像配信をめぐって(小村公次)】
(内容要約)
・METライブビューイング(http://www.shochiku.co.jp/met/)の紹介。

【写真:“生き方への問い”二作品(関次男)】
(内容要約)
筆者が今年注目した二つの作品、名取洋之助写真賞2010受賞作「オーガニック アメリカンズ」と写真集「土の塾」の紹介。

参考)
名取洋之助写真賞2010」
http://www.jps.gr.jp/events/natori/outline.php

【美術:作品を見る人の創造性(朽木一)】
(内容要約)
・映画「ハーブ&ドロシー」を紹介し、美術は見る側が育てるものだと指摘。

参考)
「ハーブ&ドロシー」
http://www.herbanddorothy.com/jp/

■メディア時評
【新聞:TPP報道にみる新聞の現状(金光奎)】
(内容要約)
・TPPについては北海道新聞河北新報など一部を除き、全国紙も地方紙も農業切り捨ての議論であった。日本の新聞の劣化は深刻である。

【テレビ:沖縄靖国訴訟を追うドキュメント(沢木啓三)】
(内容要約)
・沖縄靖国訴訟を追うドキュメント「英霊か犬死にか:沖縄から問う靖国裁判」の紹介。

参考)
琉球朝日放送報道部「英霊か犬死か「靖国」を考える」
http://www.qab.co.jp/news/2010090221117.html

Apes! Not Monkeys! はてな別館「「英霊か犬死にか」ほか」
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20100827/p1

なごなぐ雑記「英霊か犬死か」
http://miyagi.no-blog.jp/nago/2010/08/post_3b90.html

■スポーツ最前線
「記録*4更新に挑んだ横綱白鵬のめざすもの」(和泉民郎)
(内容要約)
白鵬の紹介。彼の座右の銘は「山が高いからと言って引き返してはならない。行けば必ず越えられる」だそうだ。

■グラビア
「アジアの児童労働」(谷本美加)
(内容要約)
 アジアでは未だに児童労働が深刻な問題かと思うとつらいものがあった。

*1:いわゆる統一地方選のこと

*2:1960年はアフリカ諸国の独立が相次いだためアフリカの年と呼ばれた

*3:ガボンはフランス植民地だったのでフランスとの関係が深い

*4:双葉山の連勝記録69連勝。しかし白鵬の連勝は63でストップ