新刊紹介:「経済」7月号(追記・訂正あり)

■「世界と日本」
BRICS*1の首脳会談(金子豊弘)】
(内容要約)
 4月にBRICS首脳会談が開催された。この首脳会談が新たな政治グループとして何らかの政治力を発揮するのか、その場合、どのような路線をめざすのかが注目される。

参考(BRICS首脳会談でググったらヒットした記事)
産経「BRICS首脳会議」
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110425/erp11042507470001-n1.htm
 産経らしいワンパターンな中国叩き乙。


日テレ「BRICS首脳会議 原発「引き続き重要」」
http://www.news24.jp/articles/2011/04/15/10180971.html
 日テレ(つうか「原子力の父」正力御大のご意志を受け継ぐ読売グループ)らしい原発万歳脳乙。


CNN「BRICS首脳会議が閉幕 リビア空爆に反対表明」
http://www.cnn.co.jp/world/30002449.html


ロイター「BRICs首脳会議、迅速な国際金融機関改革求める」
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14857020100416


【住民本位の震災復興へ(藤田宏)】
(内容要約)
筆者は労働総研事務局次長。総研の発表した緊急提言「雇用と就業の確保を基軸にした、住民本位の復興:東日本大震災の被災者に勇気と展望を」(http://www.yuiyuidori.net/soken/ape/2011/2011_0425_01.html)を簡単に説明。


■特集「原発からの撤退へ:エネルギー転換」
原子力依存のエネルギー政策の転換を(大島堅一*2)】
(内容要約)
原子力は低コストと言われてきたがそれは「事故防止のコスト」「事故発生時の賠償金コスト」、「放射性廃棄物の処理コスト」などを無視した偽りの低コストであった。
 もはや新規の原発を造ることは不可能になったと見て良いだろう。今後行うべき事は、脱原子力の方向にエネルギー政策を転換させることである。そのためにはまず原子力を重要エネルギーとして組み込んでいる「エネルギー基本計画」を改定する必要がある。

【追記】

五十嵐仁の転成仁語「原発震災と政治の責任−再生可能な豊かな日本の自然エネルギー(上)」より一部引用
http://igajin.blog.so-net.ne.jp/2011-07-28
原発の発電コストは安上がりというのは誤魔化し
 電気事業連合会電事連)が出している発電コストの比較では、1KW当たり原子力5・3円、火力6・2円、水力11・9円で、原子力が一番安いとされている。
立命館大大島教授による試算
 立命館大の大島堅一教授は有価証券報告書を元に、原発に払ってきた総コストを発電実績で割り、それに電源開発促進税(1KWにつき37・5銭。東京電力管内で毎月約108円:国民負担)等の税金(税金投入が多いのが原子力!)を入れて計算した。その結果、発電単価は原子力が10.68円、火力9.9円、水力7.26円で、一番高いのが原子力発電だった。
立地や開発の費用、使用済み燃料の再処理費用だけでも11兆円かかる。電事連の計算では、原発に注ぎ込まれている税金が入っていない。
 1974年に電源3法(電源開発促進税法、電源開発促進対策特別会計法、発電用施設周辺地域整備法)が制定された。2010年度には、標準的な原発(130万kw)1つで、運転開始前10年間に約450億円、開始後35年間に約1240億円の交付金が出されている。
いわば、原発建設のための国家的な賄賂のようなもの。周辺自治体は、これに買収されているようなものだ。
②本来のコストから除外されているコスト
 高レベル核廃棄物の最終処分のためのコストも計算に入っていない。今回のような原発事故が勃発した場合のコストも「想定外」だった。いずれも膨大なものだが、コストとしては計算されていない。
原発の発電コストが安上がりというのは、「安全神話」と同様に大きなごまかしだった。原発建設のための税金の支出、核廃棄物の最終処分のための費用、大事故に際しての対策費や賠償金なども含めて考えれば、原発のコストは初めから高かったのだ。

原発過酷事故と原子力災害(青柳長紀)】
(内容要約)
今回の事故を機に原子力安全・保安院経済産業省から完全に独立した機関にすべきである。

【ドイツで進む再生可能エネルギー普及(和田武*3)】
(内容要約)
ドイツは原発大国から、脱原子力の道へ進んだという点で日本がこれから脱原子力の道を進むに当たって参考となる材料があると思われる。

【「計画停電」の実態:電力会社の社会的責任(木島勲)】
(内容要約)
・夏場の電力は計画停電を行うのではなく、大口需要の削減(ただし病院などへの特別な配慮は必要)、既存発電所の有効運用でカバーすべきである。

■座談会「アメリカの景気回復・新成長戦略とTPP」(萩原伸次郎*4・夏目啓二*5・中本悟*6
アメリカの景気対策においてTPPは大きな位置づけにある。しかしTPPは日本農業に大打撃を与える恐れがあるなどの問題点があり、日本が参加するか否か、参加する場合もどのような形で参加するかを十分何議論を行う必要がある。拙速な参加はすべきではない。

■特集「農のいきづく日本へ2」
【農業・農地の継承と「担い手」問題(東山寛)】
(内容要約)
農業センサスによれば、農家数は減少しているが、一方で集落営農の増がみられる。集落営農増が農家数減の原因であるならば農家数減は必ずしも問題ではない。集落営農の現状を分析し、適切な政策を打つことが必要であろう。


■「統計でみる「構造改革」と国民生活1:雇用・失業構造の変化とワーキングプア」(福島利夫)
(内容要約)
・統計データから、以下のことを読み取ることができる。
1)正規雇用の減と非正規雇用の増
2)非正規雇用ほど賃金が低い
3)女性に非正規雇用が多い

■「所得分配構造の変化と租税負担:法人税VS消費税」(福田泰雄*7
(内容要約)
租税負担においては応能負担の原則に立ち、逆進性の強い消費税増税ではなく、法人税所得税増税を基本とすべきである。

■「立ち上がって「ブラック会社」変えた」
【バイトへの変形労働時間制適用止める:「洋麺屋五右衛門」裁判(西田穣)】
(内容要約)
・「洋麺屋五右衛門」裁判の簡単な紹介。
参考
赤旗
洋麺屋五右衛門に残業代支払い命令、東京地裁 バイトの働かせ方悪質」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-04-08/2010040801_02_1.html
洋麺屋五右衛門の元アルバイト、残業代請求で勝利和解」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-08-26/2010082601_02_1.html
「残業代不払いに悪用、変形労働時間制を廃止、洋麺屋五右衛門 全パートに朗報」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2011-03-01/2011030115_01_1.html

【“働くために生きてるんじゃない”:にいがた青年ユニオン(山崎武央)】
(内容要約)
・にいがた青年ユニオン(http://www.niigataseinenunion.org/)の取り組みについての紹介。

*1:ブラジル、ロシア、中国、インド、南アフリカの5カ国

*2:著書『再生可能エネルギーの政治経済学』(東洋経済新報社

*3:著書『飛躍するドイツの再生可能エネルギー』(世界思想社

*4:著書『米国はいかにして世界経済を支配したか』(青灯社)、『ワシントン発の経済「改革」』(新日本出版社)、『世界経済と企業行動―現代アメリカ経済分析序説』(大月書店)、『アメリカ経済政策史』(有斐閣

*5:著書『アメリカの企業社会』(八千代出版)、『現代アメリカ企業の経営戦略』(ミネルヴァ書房

*6:著書『現代アメリカの通商政策』(有斐閣

*7:著書『現代日本の分配構造』(青木書店)