森本防衛相誕生の衝撃(追記・訂正あり)

 まあ、衝撃というと少し大げさかもしれないが。田中氏の後任は無難に選ぶと思いきや「初の民間防衛大臣防衛庁長官時代を含めても初)」として森本かよという感想だ(ただし森本は今は大学教授だが、元防衛官僚)。民間人大臣と言うから五百旗頭真・元防衛大学校長とか小泉内閣で大臣になった面子(少子化男女共同参画担当相を務めた国際法学者の猪口邦子氏とか。ただし大臣就任時の猪口氏は議員だったが)でも大臣になったのかと思ったら(極右の森本よりは彼らの方がマシだろう)。もしかしたら、「民間人大臣(例:川口外相、竹中経済財政担当相)」を売りにした小泉のマネで人気向上などと考えているのか?
 ウィキペ「森本敏」を見ればわかるように森本は、2004年に「第20回正論大賞(勿論産経グループの賞)」を受賞するような立派な産経文化人である。
 当然、沖縄基地問題についても県外移設の立場になど立ってないし、改憲して集団的自衛権を認めるべしと主張するようなタカ派である。
 また、福島原発事故後に『それでも日本は原発を止められない』(産経新聞出版社)なる題名だけでも原発推進本とわかる本を出した御仁でもある。
 要するにこの人事、明らかに自民党に対する抱きつき戦術の一環だろう。「産経文化人でタカ派原発推進派の森本」なら自民も批判しにくいはず、うまくいけば森本をパイプに事実上の大連立ということだろう。菅第2次改造内閣が与謝野を経済財政担当大臣にしたのと同じ目的だろう。野党時代には批判していたはずの人間に大臣就任を頼む菅や野田も酷いが、与謝野も森本もよく大臣を引き受けたと思う。
 だが、野田のもくろみがうまくいくかどうかはわからない。
 自民党からすれば、野田がここまですり寄ってくるならば「もっと強く押せばいくらでも野田は屈服する」と強気に出てくる可能性もある。
 そしてこの人事が「沖縄基地県外移設派」や「脱原発派」を「民主党は第2自民党か」と改めて失望させたであろうことは言うまでもない。
 タカ派・産経文化人を防衛相にするなんて日中、日韓関係が微妙な時期にやるべき人事でもないだろう(中国や韓国のメディアがどう報じるか興味深い)。
 また実は今は「6月10日投票」の沖縄県議選の真っ最中である(俺のように本土にいるとなかなか気付かないが。ついさっき気付いた。野田は沖縄県議選への影響をはたして考慮したのか)。森本防衛相は確実に「民主党沖縄県議候補」にとって逆風になるだろう。選挙戦で絶対に他党(特に共産のような左翼・革新系)は「タカ派の森本氏を大臣にするような沖縄を踏みつけにする民主党を信じてはいけません。この選挙で民主党に沖縄の意思を見せようではありませんか」云々と選挙宣伝するだろうし、沖縄の民主党候補も野田の今回の人事には「もっとマシな人材はいなかったのか」と頭を抱えているだろう。沖縄民主党は、県内移設の立場ではないのだから。
 沖縄県議選で民主党がダメージを受けたら野田とてそれを無視することは難しいだろう。まあ「一地方の選挙」だの何だの言って逃げようとするのだろうが。
 もしかしたら例の「沖縄防衛局長講話問題」発覚後の名護市長選挙で一応、保守系候補が勝利したことで野田は沖縄をなめてるのかもしれないがなめるにも程があるだろう。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-05-31/2012053101_08_0.html
赤旗「平和願う「沖縄の心」 共産党へ、沖縄県議選あす告示 志位委員長駆け巡る」
「戦争と戦争につながる一切を拒否し、平和を願うたぎるような心―『沖縄の心』。これを託せるのは日本共産党です」。沖縄県議選の告示(6月1日告示、10日投票)を目前に控えた5月30日、沖縄入りしていた日本共産党志位和夫委員長は、前日に続き県内4カ所を駆け巡りました。

 かえって野田にとってマイナスの人事となるかもしれない。
 それはともかく「産経文化人」森本の大臣就任を明日の産経と赤旗がどう評価するか楽しみではある。

【追記】
1)紙媒体はともかくインターネット赤旗は特に森本氏に的を絞った批判はやっていないようだ。もっぱら消費税増税批判をしているようだがもう少し森本批判をしてもいいのではないか。今後するのではあろうが少し意外ではあった。
2)一部マスコミ報道によれば、世論調査では「前の田中氏が酷すぎた」ということで評価する人が多いそうですが、日本は大丈夫なんですかね。うかつにも森本氏の右翼ぶりに気付いてないのか、気付いた上で容認する気なのか。気付いていないのであって、気付けば状況も変わるとだと思いたいところですが。
3)俺の愛読してる諸氏のブログを見てみる。

http://igajin.blog.so-net.ne.jp/2012-06-04
五十嵐仁の転成仁語
6月4日(月) 内閣改造で咽に刺さった「小骨」を取り除きはしたけれど
(前略) 
 野田首相は、問責決議を受けた田中直紀防衛相の後任に元防衛相補佐官*1森本敏拓殖大大学院教授を起用しました。防衛担当閣僚に民間人が就任するのは防衛庁時代も含め初めてになります。
(中略)
 確かに、防衛・安全保障問題の専門家ではありますが、日米同盟や自衛隊の強化、集団的自衛権(注:といったタカ派路線)については確信犯であり、国会で(注:「集団的自衛権違憲」「徴兵制は違憲」などの)これまでの政府見解を踏み越える答弁を行う可能性が大きく、田中さんとは別の意味で、野田さんにとっては「躓きの石」になるかもしれません。
 今回の内閣改造についての説明がどうあれ、消費増税法案の成立のための改造であることは明瞭です。今、野田首相のやっていることの全ては消費増税を実現するためなのです。
 その意味では、まさに「政治生命を賭け」ているわけですが、そんなことに「生命」を賭けている場合なのでしょうか。
(中略)
 今日の『朝日新聞』の「天声人語」は、「片や経済は、ユーロ危機の再燃、中国経済の減速、米景気の不安と風雲急を告げ、同時株安が止まらない。大きな財政赤字を抱えながら、日本は通貨だけが消去法で買われる『ほめ殺し円高』の苦境だ」と書いています。「このようなときに消費税を引き上げたら、一体、国民生活はどうなるのか」と、これまでの『朝日新聞*2なら、そう書いたことでしょう。
 ところが、『朝日新聞』の「主張」は、「それでも、社会保障と税の一体改革関連法案の成立に向け、野田首相がようやく自民党との協調*3にカジを切る覚悟を鮮明にしたことを歓迎したい」と書くのです。 野田首相のめざしているところと同じであり、国民生活の苦境など眼中にありません。
 野田首相も『朝日新聞』も、大震災と原発事故によって呻吟している被災者や国民が、消費増税による新たな負担増やTPPによる市場開放に耐えられるのかという問題意識さえないように見えます。今日の『毎日新聞』には、消費増税法案に反対が57%もあるという世論調査の結果が報じられていますが、野田さんや『朝日新聞』の目には、このような「世論」は目に入らないようです。
 国会は停滞し、「決められない政治」が批判されています。しかし問題は、決めて欲しくないという願いを踏みにじって、民意に反する政策を決めようと無理をしているところにあるのです。
 消費増税、TPPへの参加、大飯原発の再稼働、米軍普天間基地辺野古移設など、野田政権が決めて実行しようとしていることは、どれも国民や(注:沖縄)県民が強く反対していることばかりではありませんか。これらを撤回して民意に添う政策を掲げさえすれば、「決められない政治」からの脱却は容易だということが、どうして分からないのでしょうか。

http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20120604/1338811629
kojitakenの日記
「野ダメ」改造内閣森本敏防衛相」にぞっとする
 「野ダメ」野田佳彦が極右体質をむき出しにしてきた。さすがは橋下に「評価された」だけのことはある。
(中略)
 「野ダメ」なら何をやらかしても不思議はないとは思っていたが、その私でさえこの人事には驚いた、というよりぞっとした。
 「野ダメよ、お前は安倍晋三か」と思ったね。こんな内閣には早晩潰れてもらうほかない。

*1:麻生内閣の浜田防衛大臣が任命した

*2:これまでというか「今よりまともだった頃の昔の朝日」だろう。既に朝日はそう言う新聞ではない

*3:野合じゃねえか、ふざけるな、朝日