新刊紹介:「前衛」12月号・その2(慰安婦問題と橋下)

「前衛」12月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。慰安婦問題だけ別途書くことにしてみる。
http://www.jcp.or.jp/web_book/cat458/cat/
■『「強制はなかった」という主張で問われるもの:日本軍「慰安婦」への二重加害*1を断罪する』(小松公生)
(内容要約)
 一人二役でもろにわざとらしいが対話調で書いてみる。実は単純な要約ではなくかなりオレ流のデフォルメつうか小松氏が言ってない内容を勝手に入れてる(すぐにわかると思うがたとえば『ネット記事を見て下さい』ってのは明らかに小松氏が言うわけがない)。
モノホンの小松論文が読みたい人は図書館で読むなり買うなりすればよろしい。



「小松さんは、前衛9月〜11月号で(上)(中)(下)と3回に分けて橋下批判を書いてましたが今回は慰安婦問題で橋下批判ですか?*2
小松氏
「まあ、当たらずと言えども遠からずですね。前回の記事を読んだ方から『橋下の慰安婦への暴言は許し難いと思うがどう反論していいか不勉強なので今ひとつわからない、是非前衛で改めて慰安婦問題を取り上げて欲しい』『橋下だけでなく、安倍や平沼、石原、松原仁、小沢新党の外山斎、森ゆう子*3と言った極右政治家まで橋下の後追いで慰安婦を誹謗し、それを産経など極右マスコミがアシスト、赤旗以外、まともに批判しないという惨状を何とかして欲しい』『このままでは日韓関係は戦後最悪になる』とかご意見をいただきましてね。慰安婦問題は橋下批判に限定されないという意味では前回記事とは関係ないですが、前回記事の読者のご要望に応えてと言う意味では関係がありますね。」

「では早速、お話しして下さい」
小松氏
「ではここでは彼らの詐術のうち、主要な二つを取り上げて批判を加えたいと思います。ただ私も歴史学の素人ですので詳しいことは、以下のような本やホームページで勉強していただければと思います。まず本はたくさんありますけれど、やはり入手が容易で定評がある本と言えば、吉見義明『従軍慰安婦』(岩波新書)でしょう。他の文献についてはたとえばシートン俗物記『慰安婦なんかウソ』(http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20120831/1346422324)が参考になるでしょう。次にネット上の指摘なんですがこれもたくさんありますがここでは1)『橋下批判サイト』と2)『プロの歴史学者のサイト』をあげてみましょう。」

「橋下批判サイトってどんなのがありますか?」
小松氏
「たとえば、法華狼の日記『橋下徹大阪市長はデマを根拠に従軍慰安婦問題へ言及していたことが確定』(http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20120824/1345826092)はタイトルからしてそのものずばりですね。続いて歴史学者のサイトをあげてみましょう。」

「中央大の吉見先生ですか?」
小松氏
「いやあ、吉見先生にはサイトはないようでしてね。ここであげるのは以下のお二人です。
林博史氏(関東学院大学教授)
『日本の現代史と戦争責任についてのホームページ』(http://www.geocities.jp/hhhirofumi/
・永井和氏(京都大学教授)
『日本軍の慰安所政策について』(http://nagaikazu.la.coocan.jp/works/guniansyo.html
『永井和の日記(従軍慰安婦問題を論じる )』(http://ianhu.g.hatena.ne.jp/nagaikazu/)」
 特に林先生は慰安婦だけでなく沖縄戦BC級戦犯問題など慰安婦に限定されない「戦争犯罪問題研究」をされ『BC級戦犯裁判』(岩波新書)、『シンガポール華僑粛清:日本軍はシンガポールで何をしたのか』(高文研)、『沖縄戦:強制された「集団自決」』(吉川弘文館)といった著書もあるので林先生の名を知らないで、ああだこうだいうネトウヨなんてまさに潜りと言っていいでしょうね。また手前味噌になりますがインターネット版赤旗の次の記事も是非お読み下さい。
Q&A:日本共産党 知りたい・聞きたい
『日本軍「慰安婦」に強制はなかったとは?』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2010-02-27/20100227faq12_01_0.html
終戦直後、米進駐軍慰安婦を政府が募集したって本当?』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-04-29/2006042912_01faq_0.html
女性国際戦犯法廷昭和天皇有罪の根拠は?』
http://www.jcp.or.jp/faq_box/2002/2002-0110-faq.html
従軍慰安婦は強制でなかったか?』
http://www.jcp.or.jp/faq_box/002/2001-06-14faq.html
従軍慰安婦問題での下関判決とは?』
http://www.jcp.or.jp/faq_box/002/200807_simonoseki.html
 最初の記事はタイトルだけ見ると「共産党が橋下と同意見であるかのように誤解されかねない恐れがあって」タイトルの付け方が失敗じゃないかと思いますが、もちろん内容は橋下批判です。
さて情報紹介はこの程度にして早速、詐術を順番に紹介しましょう。まず一つ目の詐術は『河野談話安倍内閣閣議決定で修正された』という嘘です」

「えっ、そんなデマあるんですか?。不勉強なんで知りませんでしたが」
小松氏
「ええ。最近も岡田副総理に極右のフリージャーナリストがそうしたデマに基づいたこんな酷い質問をしています。元外相で副総理とは言え、今は外相でもない岡田氏にそういうことを聞くこと自体が変ですが、失言してくれたらめっけものということでしょうか。こういう歴史捏造主義者こそ本当の意味での『国賊売国奴』と言っていいと思います。
『岡田副総理記者会見要旨・平成24年11月6日』(http://www.cao.go.jp/minister/1201_k_okada/kaiken/2012/1106kaiken.html)を見て下さい。」

フリーランスの安積です。
(中略)
慰安婦の碑についてお伺いいたします。
 現在2つ全米で慰安婦の碑が建っておりまして、今3つ目が建つ予定だというふうな報道が先月あったわけなのですけれども、この慰安婦の碑の根拠となっている河野談話についてなのですが、河野談話慰安婦の軍の関与、強制性について規定したというふうな解釈で、これによって韓国がいろいろな謝罪を求めたり、また慰安婦の碑とか、慰安婦の名前のついた通りが、通りが慰安婦の名前に変えられるというようなことが起こっているのですけれども、平成19年に安倍内閣のときに辻元清美さんの質問主意書に対しての答弁書で、軍の関与というか、強制性はなかったというふうな答弁書閣議決定されているのですけれども、いまだにそれとは矛盾している内容の河野談話のほうが言ったら動いているというか、生きているというような状態なのですが。副総理は、河野談話、これは閣議決定されてないのですが、閣議決定されていない河野談話閣議決定されている安倍政権のときの答弁書とどちらを優先すべきだというふうにお考えでしょうか。


「酷いですねえ。何ですか、この安積って男は。いや櫻井よしこみたいな女なのかな。で、岡田副総理はなんと答えたんですか」
小松氏
「あとで岡田氏の答弁を紹介しますがこうしたデマ主張には岡田氏はもちろん、きちんと反論しています。反論として十分かどうかは議論が分かれるでしょうが突然の質問に資料無しで答えたことを考慮すればまあ100点満点とは言えないまでも合格点はつくのではないでしょうか。
 岡田氏は保守、それも河野洋平氏などと比べたらかなりのタカ派で、我々共産党とは対立する立場ですが、さすがに橋下、石原、安倍ほどの恥知らずとは違うわけです。
 もちろん安倍内閣閣議決定で修正されたなんて事実はないし、そもそもこの閣議決定河野談話は矛盾しません。矛盾してたら、安倍が河野談話を踏襲できるわけがないでしょう。河野談話は『強制性を示す公文書は見つからなかったが、慰安婦証言などから強制性を認定することができる』としたものです。これに対し『強制性を示す公文書は見つからなかった』とだけ言ってるのが、閣議決定です。要するに汚い印象操作してるだけでさすがの安倍も公然と『河野談話は間違い』なんて閣議決定していないのです。第二に官房長官談話の方が閣議決定より格下なんて事もありません。そもそも河野談話が歴代内閣に踏襲されてるのに対し、安倍の閣議決定など踏襲されてません。それにこんなことを言えば『日本は酷い嘘つきだ、こうなったら河野談話閣議決定してもらうしかないな』と韓国に言われても仕方がないでしょう。私個人は閣議決定可能ならした方がいいと思いますが。これについては誰かの妄想・はてな版『5年前の歴史すら修正する従軍慰安婦否定論者』(http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20120604/1338823791)が参考になると思います。
では最後に岡田氏の反論を紹介しましょう。なお、河野洋平氏は韓国マスコミ「朝鮮日報」の取材に対し明確に「河野談話に問題はない」と語っていますし、10月8日の読売朝刊「時代の証言者・河野洋平」の中でも同様の意見を述べていることを指摘しておきます。」

岡田氏の反論
 歴代内閣総理大臣は、その河野談話を引用して、それについて認めてきたというか、ということでありますので、安倍総理のときの閣議決定一つをもって、閣議決定というか、質問主意書ですか、それに対する答え一つをもって、その趣旨が変わっているということはないと思います。
 安倍さん御自身も、たしかアメリカに行かれたときでしたか、河野談話については、これは認めるというふうにたしか言われたはずで、何かまたこの前の総裁選挙でそれを取り消すようなことも言われたように聞いておりますが、そんなことは私はあり得ないというふうに思っております。改めて安倍さんの御意見を聞いてみたい気はしますけれども、御自身でこれは認めるというふうにたしか言われたはずではなかったかと思います。

http://japanese.donga.com/srv/service.php3?biid=2012100997118
「時代の証言者・河野洋平」に触れた東亜日報の記事を一部引用
 1993年のいわゆる「河野談話」を通じて、日本軍慰安婦の動員の強制性を認めて謝罪した河野洋平官房長官が、「日本が慰安婦問題を否定すれば、国家信用を失う恐れがある」と警告した。河野氏は8日、読売新聞の連載「時代の証言者」のインタビューで、談話発表の過程を説明し、このように明らかにした。日本の保守政治家たちが河野談話の修正を取り上げて以降、河野氏が直接見解を明らかにしたのは初めて。以下はインタビューの主な内容。
(中略)
『証言を読んだ宮沢喜一首相は衝撃を受けていた。私が発表した談話は、日本と韓国だけでなく米国の国立公文書館などの資料も慎重に検討したものだった。宮沢内閣が責任で決めた「内閣の意志」だ。閣議決定はしなかったが、その後の全ての自民党政権民主党政権も踏襲してきた。
 にもかかわらず、紙の証拠がないからといって戦後半世紀が超えて今も苦しむ女性の存在や戦争中の悲劇までなかったと言わんばかりの主張には、悲しみさえ覚える。アジアのみならず欧米諸国からも日本の人権意識が疑われ、国家の信用を失いかねない』


「『時代の証言者』ってあれでしょ、不破同志がでた奴ですね、機会があったら読んでみたいですね」
小松氏
「是非一読をおすすめします。河野氏のような方は、保守とは言え我々も一定の評価をせざるを得ませんね。彼のような政治家が首相になれず、安倍が首相になったことは本当に不幸だったと思います。では二つ目、『狭義の強制連行はなかったから無問題』説を取り上げてみましょう。これを取り上げて私の説明は終わりですが」

「ああ、それは俺も知ってますよ。恐縮ですが俺に説明させてくれませんか」
小松氏
「そうですか、ではどうぞ」

「まず第一に、『狭義の強制連行はなかった』と言うのがそもそも嘘です。全てが奴隷狩り的連行だったと言ったら嘘になりますが、そうした連行が一つもないなんて事はありません。
第二に、『狭義の強制連行でなければ無問題』『文書証拠がないから日本政府の行為かわからない』なら橋下、安倍、石原ら右翼が困った立場になります。その理屈なら『暴力的に連行された横田めぐみさんは拉致だが、そうではない有本恵子さんは拉致じゃない』『北朝鮮政府の命令書が出ない限り、北朝鮮の言う「冒険主義者の行為」、つまり末端の暴走で、政府中央は知らなかったのかもしれない』ということになるからです。だまされたとはいえ、有本さんは自分からすすんで北朝鮮に行ってますからね。
 話はずれますが、慰安婦問題では狭義の強制連行以外無問題という、巣くう会の荒木や西岡が、北朝鮮帰国事業について『だまされたのだから帰国した在日は拉致扱いして当然』『北朝鮮からの出国の自由がないのも拉致のようなもの』と言うのには呆れますね。どれほど酷いダブルスタンダードなんでしょうか。
 第三に慰安婦の違法性は連行の仕方だけじゃありません。慰安婦労働に違法性があれば十分問題です。橋下らは『連行の仕方が合法でありさえすればどんな働かせ方を慰安婦にさせようと構わない』とでも思ってるんでしょうか?」
小松氏
「まあ、私の言いたいことをおおむね言ってくれたようですので結構です。しかし既にアメリカやカナダ、オランダで日本批判決議が可決され、国連でもクマラスワミ報告、マクドガル報告がでて、最近の国連の審査でも複数の国から慰安婦問題でのコメントがあったというのに彼ら歴史捏造主義右翼はどれほどバカで恥知らずなんでしょうか。」

*1:いわゆるセカンドレイプのこと

*2:この種のわざとらしいやりとりがずっと続くがご容赦を

*3:参考:kojitakenの日記「従軍慰安婦問題で河野洋平氏の参考人招致を求めた右翼政党「国民の生活が第一」が衆院選社民党と連携か」(http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20120827/1346072581)、「「国民の生活が第一」の花形議員・森ゆうこ森裕子)も河野洋平氏の参考人招致を求めていた(呆)」(http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20120901