新刊紹介:「前衛」8月号

「前衛」8月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。
http://www.jcp.or.jp/web_book/cat458/cat/
 以下は私が読んで面白いと思った部分のみ紹介します。(詳しくは8月号を読んでください)
 なお、「都議選についての分析」は無理としても、巻頭に「都議会に臨むに当たっての抱負」「都議選での支持者へのお礼の言葉」とか「都議選結果」について何か書いてるかと思ったのだが特になかった。残念ではある。赤旗『都民の願い実現に全力、都議選結果について、志位委員長が会見』(http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-06-24/2013062401_02_1.html)の会見内容の転載ぐらいはしてもいいと思うが期間的に無理だったのだろうか(小松論文など個別の論文に「都議選惨敗により維新の怪はみんなの党の後塵を拝し、もはや解党も間近だろう*1」などといった都議選に関する指摘はあるのだが)。


■「スターリン秘史――フランス・スペイン・中国(上)」(不破哲三*2
(内容要約)
・連載の7回目。今回はフランスとスペインが取り上げられてる。
・先ずフランス。
 1936年の国会選挙で人民戦線は376議席社会党147議席、急進社会党115議席共産党72議席)を獲得し勝利する。
 それ以前は共産党はたった10議席に過ぎず「政権入りを要求してもどうせ拒絶される」「政権入りできても10議席では思うように政治的影響力を政権に行使できず早晩、『鳩山内閣での社民党』のように政権離脱は不可避」「せいぜい閣外協力しかできない」と言う判断だった共産党だったが「72議席の大躍進」で政権入りを展望するようになる。
 しかし、スターリンが強力な圧力をかけたことによって共産党は閣外協力にとどまることになる。不破は「閣内にいればフランスの政治はいい方向にいったのではないか」「いずれにせよスターリンの圧力は無法であり、そのためフランス共産党は閣外協力方針への批判(入閣すべきだ)に対し、反論に苦しむ羽目になった」としている。
・次にスペイン。
 スペイン内戦においてスターリンは「一応共和国派を支持する」がそれは「カタロニアを拠点とする反スターリン主義左派・マルクス主義統一労働党(POUM)潰しによるスペイン共産党の政治力強化」という謀略的計画とワンセットというとんでもない代物であった。小生読んだことはないが、この「POUM潰し」をネタにした有名なルポがオーウェル*3の「カタロニア賛歌」である(ウィキペによれば、ちくま学芸文庫、ハヤカワ文庫、岩波文庫、角川文庫から邦訳がでている)。で、まあ、オーウェルが「動物農場*4とか「1984年」*5とかとセットで「共産主義批判万歳」と一部右翼から絶賛とか「オーウェルが批判したのは全体主義体制で必ずしも左派でないから全体主義的な右派までもが絶賛っておかしい」と反論があるとかいうのも割と有名だろう。
 また、これまた小生見たことはないのだが、ケン・ローチの映画『大地と自由』(1995年)も「POUM狩り」をネタにした映画らしい。

参考

ケン・ローチ(ウィキペ参照)
 イギリスの映画監督、脚本家。左翼を任じ、一貫して労働者階級や第三世界からの移民たちの日常生活をリアルに描いている。
 2003年、日本の高松宮殿下記念世界文化賞の映像・演劇部門に選ばれた。彼はこの賞のスポンサーが「反動的」メディアであるフジサンケイグループであり、中曽根康弘がバックにいる(当時、主催の日本美術協会会長は中曽根のブレーンとして知られた瀬島龍三)ことも知っていたが、敢えてこれを受けた。ローチはその賞金の一部を、日本労働運動に寄付したいと考え、人の勧めで国鉄分割民営化に反対したためにJRから閉め出された闘争団に寄付した。ローチはイギリス国鉄民営化で、労働条件の切り下げやリストラに揺れる様を描いた『ナビゲーター ある鉄道員の物語』(2001年)を発表しており、かねてから民営化反対論者であった。ローチは「ナカソネからの賞金を受け取って、そのカネをナカソネが進めた国鉄分割・民営化に反対して闘っている人にカンパするってのはなかなかいい」と発言した。


■特集「強化すすむ日本の米軍基地」
【座談会「オスプレイ配備9ヶ月・沖縄はいま」(赤嶺政賢、伊佐真次、具志堅徹、名嘉實、中村重一、知念吉男)
(内容要約)
赤旗記事の紹介で代替する。

参考
赤旗
主張『オスプレイの訓練、本土への拡散では解決しない』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-06-09/2013060902_04_1.html
『米軍ヘリパッドいらない、高江座り込み6周年、沖縄』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-07-01/2013070115_01_1.html


【激しい低空飛行が続くエリア567(向瀬慎一)】
(内容要約)
赤旗記事の紹介で代替する。

参考
赤旗
『広島・島根ルポ 米軍低空飛行の現場、地響き 泣く園児』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-07-04/2012070401_01_1.html
『米軍機 自衛隊空域を自由勝手、井上議員への資料で判明』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-03-10/2013031002_04_0.html


【近畿・京都に初めての米軍専用基地、Xバンドレーダー配備反対のたたかい(田中邦生)】
(内容要約)
赤旗記事の紹介で代替する。

参考
赤旗
『米軍「Xバンドレーダー」配備問題、強力電波 漁業に心配、井上議員ら京都・京丹後調査 3自治体と懇談』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-04-02/2013040215_01_1.html


オスプレイ拠点化「侵略力」強化する神奈川(斉田道夫)】
(内容要約)
赤旗記事の紹介で代替する。オスプレイ配備自体は沖縄に限らず、神奈川厚木基地などどこの米軍基地でもあり得るという話。

参考
赤旗
オスプレイ配備・訓練に反対、自治体と共同広げよう、安保破棄中実委首都圏交流集会』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-19/2013051915_02_1.html


【パラシュート訓練など急変貌する横田基地高橋美枝子)】
(内容要約)
赤旗記事の紹介で代替する。

参考
赤旗
『座り込み50回、横田基地撤去求め住民』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-20/2013052015_02_1.html


■「露呈するアベノミクスの危険、賃上げ・雇用の拡大で内需拡大してこそ」(大門実紀史
■「アベノミクスの『空騒ぎ』からの脱却」(工藤昌宏)
(内容要約)
 『新刊紹介:「経済」8月号』(http://d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/20130715/5421309876)に書いた事とだいぶ、内容がかぶるので省略。一言だけ書けばアベノミクスが「景気回復してから賃上げ」と主張してるのに対しタイトルでもわかるように共産党は「話は逆であり、賃上げしないから内需が生まれず、内需が生まれないから不況が深刻化する」「大体アベノミクスには企業の収益向上策はあってもそれが賃金アップにつながる政策は何もないではないか」と批判するわけである。


■「第二次安倍政権と日本の政治・政党状況を考える(下):自民党型政治との対決軸がない共産党以外の諸党」(小松公生)
(内容要約)
 タイトルで出落ちという観がないでもない。まあ、ほとんどの野党(民主、維新、みんな、生活)に自民からの離党組がいるんだから当然ではある。赤旗記事の紹介で代替する。

赤旗参院選争点にみる“自共対決”」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-07-06/2013070605_01_0.html 


■「TPP問題と『攻めの農業』論を検証する」(橋本正一)
(内容要約)
 「攻めの農業」って口先で言うだけなら誰も苦労しないよね、と言う批判。大体、TPPに参加しないって衆院選で言ったのはどこの誰なんだよ、何でいつの間に「TPP参加しても攻めの農業で安心」って話に変わってるんだよという話でもある。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-26/2013052601_05_1.html
主張『農業成長戦略、TPP参加の暴走を正当化』
 安倍首相は、TPP参加でこうした影響があっても、「攻めの農政」で農業所得を倍増させることができるというのです。何をすれば農業が活性化し、農業所得が倍増するというのでしょうか?
 あげられているのは、農林水産物の輸出を4500億円から1兆円に増やす、農家や生産組織が加工や流通に乗り出す農業の取り分を増やす(6次産業化)、経営規模が小さいので農地を集積して20〜50ヘクタールの大規模経営が大部分を占めるようにする(構造政策)とともに、農業の多面的機能を生かすための直接支払いを創設するというものです。
 どれもこれまで政府が自由化や価格政策の放棄とあわせて強調してきた内容で、新しさはありません。

「農林水産物の輸出を4500億円から1兆円に増やす」
夢みたいな話だなあ(苦笑)。「夢を政策にしない」んじゃなかったの?
「直接支払いを創設」
おいおい、直接支払いってどういうことやねん。民主党が同じ事言ったときばらまき言ったのはあんたらと違うのか。


■「TPP参加交渉と日本の医療のゆくえ」(芝田英昭)
(内容要約)
赤旗記事の紹介で代替する。

参考
赤旗
『TPP、公的医療が揺らぐ、日本医師会会長が表明』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-02-28/2013022801_02_1.html
主張『公的医療とTPP:「名ばかり皆保険」になる危険』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-03-23/2013032301_05_1.html
『TPP 医療人はノー、医団連が撤回求め国会集会』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-04-05/2013040514_01_1.html


■「改憲、秘密保全法制定策動のなか、自衛隊情報保全隊の危険な役割」(森近茂樹)
(内容要約)
 赤旗の記事紹介で代替する。

情報保全隊のスパイ活動】
赤旗
情報保全隊の新文書公表、国民監視差し止め訴訟 原告・弁護団ら会見』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-12-04/2012120404_02_1.html
『国民監視の危険告発、情報保全隊訴訟勝利へ集会、仙台』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-06-09/2013060914_01_1.html

【秘密保全法】
赤旗
『秘密保全法許さない、井上議員あいさつ 国会内で集会』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-02-14/2013021414_01_1.html
『秘密保全法で日弁連が集会』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-02-20/2013022014_01_1.html


■「すべての水俣病被害者救済のために:ノーモア・ミナマタ第2次国賠訴訟はじまる」(寺内大介)
(内容要約)
 赤旗記事の紹介で代替する。

赤旗
水俣病 新訴訟へ、熊本 全被害者救済求める、不知火患者会
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-03-04/2013030415_02_1.html
水俣病新資料検討を、市田氏、線引き見直し要求、参院環境委』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-06-18/2013061804_01_1.html
『締め切り後 初の提訴 水俣病「救済外」の48人、2億円余賠償請求、熊本地裁
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-06-21/2013062114_01_1.html
東京新聞水俣患者、家族、苦しみ、暮らす 譲れない 47人新たに提訴』
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2013070802000144.html


■論点「『科学の街』を襲う大リストラ:つくば市での公務員宿舎廃止計画が意味するもの」(朝永振二)
(内容要約)
 赤旗記事の紹介で代替する。

赤旗
『公務員宿舎削減見直しを、茨城・つくば 塩川・紙議員ら申し入れ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-01/2013050104_01_1.html


■暮らしの焦点「レッツダンス『風営法』からダンス規制の撤廃を求めて」(神原郁己)
(内容要約)
 赤旗の記事紹介で代替する。

赤旗
『穀田氏「ダンスは自由だ!」、政府答弁書 不当立ち入りないよう県警指導』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-06-18/2012061802_05_1.html
『「ダンス規制」削除ぜひ、風営法改正 署名推進委が国会要請』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-02-21/2013022114_01_1.html
『ダンス文化議連発足』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-21/2013052114_02_1.html


■文化の話題
【演劇:劇団青年座・意欲的な連続公演を見る(鈴木太郎)】
(内容要約)
青年座http://seinenza.com/index.html)の「横濱短編ホテル」「闇の花道」「白雲を望む」「崩れゆくセールスマン」の紹介。
・「闇の花道」
 浅田次郎『天切り松 闇がたり1:闇の花道』(集英社文庫)の舞台化。
・「白雲を望む」
 桂小五郎木戸孝允)の評伝劇
・「崩れゆくセールスマン」
 劇団「パラドックス定数」(http://www.pdx-c.com/)主宰・野木萌葱の脚本。豊田商事事件を題材にしている。


【映画:魂を揺さぶる映画に命をかけて:高野悦子さん*6を偲ぶ(児玉由紀恵)】
(内容要約)
 今年2月に亡くなられた高野氏の追悼文。


【音楽:オペラ演出のモダン化は諸刃の剣(宮沢昭男)】
(内容要約)
二期会の「マクベス」と新国立劇場ナブッコ」「コジ・ファン・トゥッテ」の「モダンな演出」が取り上げられている。まあ、「機関銃」「ラジカセ」(マクベス)、「ショッピングセンター」「エスカレーター」(ナブッコ)、「夏のキャンプ場」(コジ・ファン・トゥッテ)と斬新らしいことはググってわかった(原作に忠実につくる限り、機関銃だのショッピングセンターだの夏のキャンプ場だの本来あるわけがない)。「マクベスではブーイングが飛んだ」らしいが、斬新な演出がいいのかどうか、何で斬新な演出になったのかは見ないとわからない。見てもわからない気もするが。

http://blogs.yahoo.co.jp/shimabunbun6944/32105454.html
ヴェルディマクベス」、二期会公演
 3幕の幕切れマクベスマクベス夫人の2重唱、いかにもイタリアオペラといった2重唱で聴かせどころだと思うが、なんと二人は機関銃で難民を撃ち殺しながら歌う。その機関銃の音で音楽がかき消されてしまう。これで音楽尊重と云えるのか?
 もう一例、4幕の幕切れはマクダフ、マルコムと合唱による勝利の凱歌であるが、最初は全員舞台前方に並んで、「マクベスはどこ!」と歌いだす、しかし盛り上がるところあたりから、舞台後方に引き下がる、そして代わりに魔女たちが登場しテーブルにラジカセを置く。そしてこの最後の部分をラジカセで流しながら幕。その間指揮者は立ったまま、オーケストラも音を出さない。
(中略)
カーテンコールでコンヴィチュニーが登場した途端、盛大な「ブー」が飛んできた。これだけ激しいのは珍しい。

まあ、斬新なのやるとブーイング飛ぶことあるよね。しかし「従来通りやる」と「マンネリ」とかいうから困る。まあ、客からすれば「マンネリはやめろとは言ったが、誰が原作を破壊しろと言った」というところかもしれないが。

http://blog.livedoor.jp/enbublog-forecast/archives/51870623.html
斬新で衝撃的、現代へと通底するオペラ。新国立劇場ナブッコ
 まずオープニングから舞台美術に目を惹きつけられる。客入れ時にすでに幕が上がっている舞台は、ソロモン神殿ならぬ現代のショッピングセンターの内部で、上手側には長いエスカレーターがある。
(中略)
次回公演は『コジ・ファン・トゥッテ
(中略)
近年世界再注目の演出家となったミキエレットは、現代の若者が集まる夏のキャンプ場に舞台を設定


■スポーツ最前線「女性アスリートの身体的特徴に着目した支援体制を」(呉紗穂)
(内容要約)
 女性アスリートには「男性に比べて骨粗鬆症になりやすい」「月経異常」と言った問題があることが最近、問題にされるようになっている。
 女性アスリートの健康を維持した上での、競技力向上が望まれる。つうことで残念ながら安藤美姫の出産には触れられていません。時期的に入れようがなかったんでしょう。


■メディア時評
【政府の宣伝機関に成り下がった全国紙(金光奎)】
【第二次安倍政権のメディア戦略(沢木啓三)】
(内容要約)
赤旗の記事紹介で代替。なお、沢木氏は「赤旗が報じた首相との会食について何ら後ろめたいところがないなら何を話したのか、普段情報公開を各方面に求めているのだから、マスコミ人は自ら公開したらどうか。それとも表に出せないようなことを話していたのか」と言う趣旨の言葉で皮肉っている(まあ、「どうせやれないだろ、マスゴミ。本当にお前ら屑だな」と言う皮肉だろうが)。

赤旗
『これでいいのか大手メディア、首相と会食 とまらない、社長に続き政治部長論説委員長らも』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-04-11/2013041101_01_1.html
『テレビがおかしいぞ!、首相と癒着 異常な持ち上げ、会食・懇談が止まらない』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-21/2013052101_01_1.html
『いまメディアで、財界・自民いいなりに、「ねじれ解消」だけが争点か』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-07-06/2013070604_01_1.html

*1:まあ、このままいけばそうでしょうね。みんなの党に勝てなければ大挙して面子がみんなの党に逃げだそうとするでしょうしその可能性が高いでしょうね

*2:著書『スターリン大国主義』(1982年、新日本新書)

*3:当時、国際義勇軍の一員として共和国派に参加していた。『誰がために鐘は鳴る』(邦訳・新潮文庫)の作者・ヘミングウェイも参加者の一人。

*4:一応角川文庫版を読んだことはある、岩波文庫からも邦訳が出ている

*5:読んでない。ハヤカワ文庫から邦訳がでている。

*6:岩波ホール総支配人、映画プロデューサー。著書『女性が映画をつくるということ』(2000年、朝日文庫)、『私のシネマライフ』(2010年、岩波現代文庫)、『岩波ホールと〈映画の仲間〉』(2012年、岩波書店