新刊紹介:「経済」1月号

「経済」1月号の詳細については以下のサイトをご覧ください。興味のある記事だけ紹介してみます。
http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/


■随想「秘密保護法と歴史の教訓」(山田善二郎*1
(内容要約)
 「軍機保護法」による戦前の弾圧事件「レーン・宮沢事件(宮沢・レーン事件)」を紹介。ああした事件をうむ危険性のある特定秘密保護法案の廃案を訴えている(原稿執筆時点では審議中だったため「廃案」主張になっている)。
 今後は「抜本的改正ないし廃止」を目指す戦いが始まるわけである。

参考
毎日新聞『秘密保護法案:レーン・宮沢事件遺族 過ち繰り返さないで』
http://mainichi.jp/select/news/20131118k0000m040127000c.html
社民党コラム『宮澤・レーン事件と特定秘密保護法案』(照屋寛徳*2
http://www5.sdp.or.jp/special/kenpo/121teruya.htm


■世界と日本
【米財政、デフォルト回避(森史朗)】
(内容要約)
 共和党オバマケアを潰すために仕掛けた「予算人質戦術」による「デフォルトの危機」は与野党間に妥協が成り立ったことで回避された。この件での最大の敗者は「ティーパーティー(共和党タカ派)」といえる。
オバマは妥協したとは言えオバマケアを潰さずに済んだし、一方共和党執行部も「オバマケアは潰せなかったが、一定の妥協をオバマにさせたこと」によって面子は何とか保てた。
・そのためオバマ共和党執行部も「オバマは屈服するはず」「仮に屈服しないでデフォルトが起こっても仕方がない」などとして「オバマケア潰し」を叫んでいたのに実現できなかったティーパーティーほどにはダメージはなかった。
オバマケア支持者は無論、反対派でも穏健派からは「デフォルトの危機を作り出すとは何を考えているのか?。反対戦術なら何でも許されると思ってるのか?」というティーパーティーへの批判が強まり、民主党サイドも批判世論に支えられて強気の姿勢をとった。
 一方、共和党内からも「ティーパーティー批判」が高まり「予算人質戦術の失敗」を認めざるを得なくなった共和党執行部は「ティーパーティー」を切り捨ててオバマとの妥協に動いた。


【イタリア労組が統一スト(宮前忠夫*3)】
(内容要約)
イタリア緊縮施策に対する労組の批判運動の紹介。

参考
赤旗南欧 労組反撃:イタリア 仕事は基本的な権利、ポルトガル 内閣の総辞職を要求』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-10-21/2013102107_01_1.html


【進む韓国農村の危機:新自由主義的な農業政策の結果(洪相鉉)】
(内容要約)
 まず前半で『農業人口の減少』『農業従事者の高齢化』『農家所得の減少』『農家負債の増加』が統計データを元に指摘される。
 後半ではこうした深刻な状況の原因として「農産物市場開放」など行きすぎた新自由主義化が原因ではないかとし、そうした新自由主義化は金大中盧武鉉時代にはある程度修正されたが、李明博、朴クネ政権に至っては再度、新自由主義傾向が強まっていると分析される。


特集「世界経済の動向2014」
■「日・米の金融緩和政策の比較検討」(建部正義*4
(内容要約)
バーナンキ*5FRB議長が推進する米国の金融政策(量的緩和策)を評価するにしてもそれは、日本のアベノミクスにおける金融政策とは考え方がだいぶ違う、日本の金融政策は前例もない*6し、理論的にも成功の保障がないという批判が大筋の内容。
・筆者はそうした「アベノミクス派は自らの金融政策の正当性の根拠にバーナンキを持ち出すことが少なくないが、仮にバーナンキが正しいとしてもバーナンキと黒田日銀とは違う」「相対的な近さに過ぎないがむしろ白川日銀の方がバーナンキに近い」とする見解として翁邦雄*7日本銀行』(2013年、ちくま新書)を上げている。
 またバーナンキ連邦準備制度金融危機』(2012年、一灯社)も、「バーナンキと黒田日銀は違う」とする翁のバーナンキ理解に合致していると筆者は見なしている。小生も素人なのでさすがにバーナンキの専門書を読む気はないが翁のちくま新書なら後で読んでもいいかなと思っている。
・なお、筆者の理解では池尾和人慶應義塾大学教授の『連続講義・デフレと経済政策:アベノミクスの経済分析』(2013年、日経BP社)も「アベノミクスの金融政策」には批判的なそうなので機会があったら読もうか、どうしようかと思ってる。この『経済』建部論文だけ読んでも今ひとつよくわからないので。
 なお、池尾本のアマゾンレビューは以下の通り。

・著者の池尾和人氏は、『現代の金融入門(新版)』(2010年、ちくま新書)を上梓するなど金融分野の大家として知られる。
 この本は、ビジネス本売上ランキング(丸善エコノミスト誌調べ)の上位に位置しており、人々の「異次元の金融緩和」に対する関心の高さが伺える。
結論として、筆者はアベノミクスの行方を以下のように予想する。
1)景気回復を伴う形で物価上昇率2%を達成する確率が10〜20%
2)財政破綻等、金融危機が起こる確率が10〜20%
3)(注:大成功や大失敗のような目立ったことは)特に何も起こらない確率が70%
 つまりは、筆者は現在のアベノミクスのブームを「大山鳴動して鼠一匹出ず」とクールに諦観しているようである。
 にも関わらず、本書を上梓したのには、「金融緩和さえすれば、どうにかなる」とする向きに、金融の専門家としてクギを刺したかったのだろう。
 本書は、生徒が先生(池尾氏)に質問するという、経済書としては珍しいスタイルをとっているが、これはこれで読みやすい。
 ただし、読みやすいとはいえ、内容的にはかなり骨太で、よほどこの分野に精通している人でなければ、一読しただけで内容を理解できるというわけにはいかないだろう。
 重要と思われるところをノートに書き出し、思考の咀嚼をしながら読み進めると理解が深まる。

 相当内容が難しそうで「ちょっとなあ」という感じ。いずれにせよマスコミも「アベノミクス扇動」ばかりするのではなく池尾や翁のような異議申し立てもちゃんと扱うべきだろう。
 ウィキペディア「池尾和人」の記述も引用しておく。まあ、アベノミクスの金融政策に批判的ならそりゃそうなんだろうなという記述だが。

池尾和人(ウィキペ参照)
 日本銀行について「政治が目標を決め、日銀(中央銀行)には目標達成の手段だけ独立性を持たせ、あとは日銀の責任だ、というのでは政治の責任を日銀に転嫁するご都合主義ではないか。中央銀行に高望みをしてはいけない。政治家の尻ぬぐいを全部やって経済を良くする奇跡を起こせる存在だとは全く思わない」「日銀が折に触れて主張してきていることと、私自身の考えのあいだには大きな違いがあるとは思わない」と述べている。


■「G20の5年間:到達点と課題」(藤野保史
(内容要約)
G20とはG8(サミット)を引き継いで1999年より始まったものである。「G8は欧米先進国中心のグループに過ぎない」という批判からG8に、「中国、韓国、インド、インドネシアサウジアラビア、トルコ(アジア)」「メキシコ、ブラジル、アルゼンチン(南米)」、「南アフリカ(アフリカ)」などといったグループが参加している。
・筆者はG20について「G8(米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、ロシア、カナダ、日本)がどの国を新たにメンバーに入れるかを決め間口を広げた物に過ぎず」国連非常任理事国などのように選挙で選ばれたわけではなくその点をどうするかという問題があるとしている(選挙などの民主制を取り入れるのかどうか)
・またG20に「タックスヘイブン課税」や「投機マネー規制」「雇用規制(労働者保護)」などの民主的規制においてリーダーシップを発揮することを筆者は期待している。


■「日本が目指すべき環境経済戦略」(上園昌武*8
(内容要約)
・日本政府はいまだ原発固執しているが「東日本大震災で明白になった事故の危険性」「放射性廃棄物の処理問題(どこに捨てるかはいまだ未定)」「原発労働者の被爆問題」を考えれば「どのような撤退計画を立てるか」はともかく原発からの撤退の方向に動くべきである。
・その上で再生可能エネルギーを推進することは、単に環境保護と言うだけではなく、この分野を日本企業の「儲けの場に出来る」という意味でも有意義である。


■「世界の労働運動から:インドネシア、ドイツ、アメリカ」(岡田則男*9
(内容要約)
世界各国で「程度の差はあれ」*10新自由主義政策による労働者切り捨てが進んでるとの認識のもと、インドネシア、ドイツ、米国の労働運動の現状を紹介。
 できれば「何故この3国を取り上げたのか(例えば緊縮財政路線のギリシャなどでもいいのではないか)」明確な説明があれば良かったが、ない点が残念。

参考
赤旗
インドネシア
インドネシア 賃上げ求めゼネスト、国民の4割 1日2ドルの生活』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-11-02/2013110207_01_1.html
『最賃11%上げ表明、ゼネスト受け首都知事インドネシア
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-11-03/2013110306_03_1.html
ドイツ
『独労働者 賃上げスト/“ブラック企業”米アマゾン/産別労働協約に従いなさい』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-07-26/2013072607_01_1.html
『全国一律 最低賃金制導入へ―ドイツ 連立政権協定に明記』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-11-29/2013112907_01_1.html
米国
『賃上げ要求、米45都市で、ファストフード・小売店労働者』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-07-29/2013072907_01_1.html
『米国 介護労働者に最低賃金適用へ、200万人対象 9割女性』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-09-20/2013092007_02_1.html
『米ファストフード低賃金、労働者の半数、公的支援頼み、年間6860億円、税で穴埋め』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-10-22/2013102207_01_1.html
『米ファストフード労働者 一斉に、最低賃金倍増求めスト、“労組結成権も認めて”、100都市』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-12-08/2013120801_05_1.html


■「新自由主義と途上国経済の現状」(吉川久治)
(内容要約)
新自由主義は1980年代のレーガン政権、サッチャー政権、中曽根政権によって本格的に推進された。
新自由主義を「市場の自由に任せる主義」「何よりも自由を尊ぶ主義」と考えることは現実に照らして間違いである。
 ハーヴェイ『新自由主義』(2007年、作品社)が指摘するように現実の新自由主義とは『エリート権力維持が最大の目的』であり『新自由主義原理の導入がその目的に反する場合』は『そうした原理は放棄される』のである(たとえば労組運動への規制など)。
・では新自由主義政策は成功したと言えるのか?。ハーヴェイ『新自由主義』が指摘するように「新自由主義が景気回復に役立った」といえる証拠は何もない。経済成長率は新自由主義政策導入前と大して変わらないか、「変わった場合でも新自由主義政策が原因か疑わしい」ケースがほとんどである。
 にも関わらず新自由主義政策が推進される理由としては
1)新自由主義政策をエリート権力が望んでいるから
2)景気回復に効果がある絶対的な経済政策がいまだ存在しないから、であろう。
・こうした新自由主義政策に対してはリーマンショック以降、批判的運動が強まっている。こうした運動によってどう「反新自由主義」の成果を上げるかが課題である(ただし発展途上国を含むG20の誕生や、南米左派政権の誕生、「オバマケア」など一定の社民的政策を実施するオバマ政権の誕生などは「過大評価は出来ない」ものの、現時点でもそうした一定の成果と評価できると考える。)。


■「「改革の全面的深化」と中国経済のゆくえ」(井手啓二*11
(内容要約)
 中国経済は現在、いわゆる『中所得国の罠』という状態にあると見られる。この『中所得国の罠』脱却をどう図っていくかが今後の中国経済の問題である。
 中国共産党新執行部は18期3中全会において『改革の全面的深化の重要問題に関する決定』を発表した。この発表からは中国政府が「中所得国の罠」を脱するために大胆な改革を目指していることが読み取れる。現時点では具体性に欠けるため、評価は困難だが、改革方針を打ち出したことそれ自体は評価できる。


■データで見る日本経済7「人口減と高い相対的貧困率
(内容要約)
 日本の相対的貧困率の高さとその是正の必要性が指摘される。ただし「人口減」を取り上げた意味が今ひとつわからない。


■「国土強靱化と公共事業」(森裕之*12
(内容要約)
安倍内閣が進めようとする「国土強靱化」への批判。
・1980年代までは増加傾向にあった公共事業費も、1990年代以降は「財政悪化の表面化」「ゼネコン汚職の発覚(中村喜四郎・宮沢内閣建設相、竹内藤男茨城県知事、本間俊太郎宮城県知事、石井亨仙台市長らが起訴))」により公共事業への批判が高まったことにより減少傾向にあった。
 これを逆転させたのが「安倍内閣の国土強靱化計画」でありその理由とされたのが「東日本大震災を理由とした国土強靱化(防災、減災)」「不況克服(アベノミクス)の一手段」であった。
・ばらまき、焼け太りであるという批判を避けるため、いわゆる国土強靱化法には「行政改革」「環境との調和」に配慮するという文言が書き込まれているが実際の公共事業が本当にそのようなものになるかは不明である。

参考
赤旗
『トンネル事故 問われる公共事業、歴代政権 道路・港湾づくり熱中、維持・更新は後回しに』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-12-09/2012120902_02_1.html
共産党 命・安全守る事業に転換『自民が4.7億円献金請求、日建連にアベノミクス推進掲げ、「赤旗」日曜版 文書を入手』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-07-04/2013070401_02_1.html
主張『大型公共事業拡大、大増税とムダ肥大化は許せぬ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-07-07/2012070702_02_1.html
主張『大型公共事業の復活、財界奉仕と大増税の一体改革』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-07-29/2012072902_01_1.html
アベノミクスで何が 現場に見る:国土強靱化の名で巨費、「世界の阿蘇」壊すダム、熊本・立野ダム』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-09-04/2013090404_02_0.html
『建設業界 自民に献金攻勢、ばらまき公共事業に期待、2011年 突出目立つ 6600万円』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-12-11/2012121115_01_1.html


■「巨大防潮堤は何を守るのか」(川崎健*13
(内容要約)
 東日本大震災を機に「巨大防潮堤計画」が国、宮城県によって推進されているが
1)「コストパフォーマンスの点で適切かどうかが十分検討されておらず」
2)「地元住民の意見も聞かれていない」
と言う認識から計画を批判。十分な検討による「津波対策立案」を主張している。

参考
赤旗『宮城・気仙沼 防潮堤3.2メートルで整備へ、住民“7メートルは養殖に困る”』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-12-19/2012121901_07_1.html


■「若者の弱みにつけ込むインターンシップ契約:地域労組おおさか青年部の事例から」(北出茂)
(内容要約)
インターンシップとは「学生が職場で就業体験を行う制度」のことだが、近年ブラック企業が悪用するケースが増えている。筆者は地域労組おおさか青年部書記長であり、現場からの報告である。
 ウィキペ「インターンシップ」の記述を引用してみよう。

ウィキペ「インターンシップ
 インターンシップ制度の趣旨を理解しない、あるいはこれを悪用する企業の事例が、社会問題とされている。
 2010年9月、東京新聞が「ただ働き」「名ばかりインターン」と評して社会問題を提起する報道( 『東京新聞』2010年9月21日朝刊23面 「にっぽんの就活2010 名ばかりインターン 売店、ソフト開発…まるでバイト 半年ただ働きの例も」)を行った。インターンシップ制度を利用した企業(ホテル)が、接客対応の体験を希望したインターンシップ参加学生に対して、アルバイトと同様に売り子や清掃係をさせ、これをインターンシップとしたものであった。アルバイトと同様の業務であったにもかかわらず、インターンシップであるとして無給であった。同記事では雇用政策の専門家として諏訪康雄法政大学教授、労働政策審議会長のコメントを掲載し、インターンシップ制度の本旨に沿わない企業の問題などを指摘している。さらに翌10月には参議院厚生労働委員会福島瑞穂社民党党首がこれを「名ばかりインターン」として取り上げ、追及を行っている。
 また2013年には、日本の数ヵ所の宿泊施設が、インターンシップで入国した韓国人大学生に対し、無報酬で従業員と同様な業務を行わせていたことが、 読売新聞の報道(2013年11月19日記事『 ビザなし無給労働、摘発困難…韓国人インターン』)で判明している。入管難民法に抵触する可能性もあるが、入管当局の立入検査で無報酬であると判明した場合、不法就労と判断することが困難であることも明らかとなっており、法の盲点を突いていて、新たな問題となっている。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/176/0062/17610210062002a.html
福島氏の「名ばかりインターン」問題についての質問
福島みずほ
 (注:経済産業省の)新卒者就職応援プロジェクトについてお聞きをいたします。
 (中略)
 (注:インターン期間の)この六か月間、このインターンの人たちは労働者ではないですね。
 (中略)
 中国人研修生とちょっと似ていて、労働者のように働いている場面がありながら労働法が適用されない、労働者でないというところが問題となり得るというふうに思うんですね。
 インターンシップを隠れみのに若年層を労働者として扱っていたケース、クレームなどはありますか。実態調査はするおつもりはありますか。
○政府参考人(高原一郎君)
 現在までのところ、そういう形で毎月調査をいたしておりまして、この過程で私ども(注:経産省は)厚生労働省にも相談をし御助言いただいておりますけれども、問題の事例というのは私どもはまだ認識をいたしておりません。
 以上でございます。
福島みずほ
 作業中負傷した場合、労災保険の適用はありますか。
○政府参考人(高原一郎君)
 ただいま申し上げましたとおり、こういう形で実習をいたしておりますので、御指摘の問題も含めて、労働法規の適用は受けないというふうに認識をいたしております。
 以上でございます。
福島みずほ
 (前略)
 働いてというかインターンしているわけですから労災は起こり得るわけですね。ですから、労災の適用がないということだと、やっぱりそれは問題になり得ると。例えば、通勤途上、交通事故に遭った場合、労災の適用もないですね。
○政府参考人(高原一郎君)
 いわゆる労働法規の適用はございませんけど、民間保険には入っていただいております。
 以上でございます。
福島みずほ
 同じように、インターンシップは(注:経産省だけでなく)厚労省でも、この場合は最長一か月ということでやるわけですが、この場合、労働法の適用、労災の適用、その点についてはいかがですか。
○政府参考人(金子順一君)
 ただいまの御指摘は、いわゆる労働基準法の労働者性の判断の問題に帰着すると思います。
 委員御案内のとおり、労働者に該当するかどうかは、労務の提供が使用者の指揮監督下において行われているかどうか、労務の対象として報酬が払われているかどうか、こういう観点から個別に判断されることになります。
 中小企業庁からは、先ほど(注:高原一郎)長官から話がありましたようなことで、雇用関係にならない形で運用をするということでお話を伺っているところでございます。ただ、こうした制度的な仕組みを前提といたしましても、先ほど申し上げましたように、実態に個別に判断することになりますので、使用者の指揮監督下に置かれて労働の実態があるということになれば労働関係法令が適用されることになります。
(中略)
福島みずほ
 私は雇用や若者の雇用を応援するのは本当に賛成なんですが、これだけのお金を使い、三分の一は業者やいろんなところに払って、本当にこれが六か月インターンやって、しかも実はそこで働くわけですね、実質的には。これを本当に妥当かどうかという検証は本当に必要だというふうに思っております。インターンだったら一か月とかでもいいんですよ、分かるから、それで。六か月間拘束してお金を払い、業者に三分の一払い、しかも全部で予備費も入れて何百億使うわけじゃないですか。この妥当性については私はきちっと検証すべきだというふうに思っております。しかも、労災保険の適用もない、労働者じゃないというわけですから、問題が起こり得るというふうに思っています。
(中略)  
 名ばかりインターンのことを今日お聞きしましたけれども、実際この新聞、東京新聞の記事によっても、「半年ただ働きの例も」などあります。それで、労政審の座長の諏訪先生もやはりこれについては問題もあるんじゃないかというふうにコメントを新聞記事に出しておりますが、この名ばかりインターンについて、厚生労働省としての取組やそれについてお聞かせください。
○政府参考人(金子順一君)
 このプロジェクトにつきましては、中小企業庁の御担当の方から私ども説明を受けたときに、雇用形態にならないように関係の事業者、実施機関に徹底するようにお願いをしたところでございます。そういうことでございますので、中小企業庁においてまず適切に運営していただくことが大事だろうと思います。その上で、実習生の方が仮に指揮監督下で働いているというような実態があるというようなことであれば、(注:労働基準)監督署の方に御相談いただければと思っております。


■「生活保護改悪と「安倍社会保障改革」」(後藤道夫*14
(内容要約)
安倍内閣による社会保障改悪(特に生活保護改悪)への批判。改悪の具体的内容とそれへの批判は赤旗記事の紹介で代替する。
赤旗
主張『生活保護の改悪、“違法の合法化”は絶対ダメだ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-11-14/2013111401_05_1.html
主張『社会保障改悪強行、生活破壊の法案 廃案しかない』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-12-04/2013120401_05_1.html
生活保護改悪案を採決、高橋議員反対 「社会保障を解体」』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-12-05/2013120502_02_1.html
衆院厚労委『プログラム法、国保税高騰に拍車、参院厚労委で小池氏』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-12-06/2013120605_02_0.html
生活保護法改悪が成立、衆院本会議 共産党は反対』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-12-07/2013120702_03_1.html
社会保障プログラム法成立、国民に「自助」強制、参院本会議小池氏反対』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-12-07/2013120702_02_1.html
社会保障プログラム法案、小池議員の反対討論、参院本会議』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-12-07/2013120706_01_0.html


・筆者の指摘で興味深かったのは「生活保護改悪を容認することはいわゆるブラック企業を助長することになる」という指摘である。生活保護が不十分ではいかに酷いブラック企業でもそうそう辞められない。
・「日本において最近ブラック企業批判が高まりつつあること(まだ不十分だが)」を考えれば、そこを糸口に「生活保護バッシング」批判をすることは一定の効果があるのではないかと筆者が見ていることは興味深い。
 生活保護バッシング派には「ワタミさんは偉大だ」という「ブラック企業に好意的人間」ももいろんいるがおそらく全てがそうではなく、「ブラック企業で苦しんでる人間もいるのに生活保護で楽をしやがって」という「ブラック企業には批判的なのに何故か生活保護バッシングに荷担する人間」もいるからである。
 そうした人間に「そうした認識は誤りであることを伝えていくこと」が重要だろう。


■コラム「初の日曜営業」
(内容要約)
 従来、キリスト教の影響で日曜日を休業日としていたギリシャ規制緩和がされ「大型商業施設の日曜営業が認められた」という話(ただしギリシャ正教会や労組からは批判が出ている)。
 日本では日曜日営業が認められているので時代錯誤な感があるし、少なくとも日本では「日曜営業禁止」など今更実行できないだろうが、一方で「深夜営業が当然の如く行われてる」日本も明らかに異常だろう。


■コラム「米誌が選んだ74人」
(内容要約)
 フォーブズ誌が発表した「2013年世界で最も影響力がある人々」がネタ。1位「プーチン*15・ロシア大統領」、3位「習近平*16・中国国家主席」、14位「李克強*17・中国首相」、39位「黒田東彦*18日銀総裁」、57位「安倍晋三首相」である事を指摘。
 もちろん「フォーブス誌の認識が正しい」「フォーブス誌の認識が国際社会の認識」という保障はどこにもないが、ここからは「アベノミクス」に対する国際社会の評価は安倍政権が言うほど、あまり高くなく、むしろ「ロシアや中国」の経済動向が注目されているとみなすことができるのではないか。

*1:著書『決断:謀略・鹿地事件とわたし、そして国民救援会』(2000年、光陽出版社)、『人権の未来:警察と裁判の現在を問う』(2003年、本の泉社)

*2:衆議院議員社会民主党国会対策委員長

*3:著書『人間らしく働くルール:ヨーロッパの挑戦』(2001年、学習の友社)

*4:著書『貨幣・金融論の現代的課題』(1997年、大月書店)、『金融危機下の日銀の金融政策』(2010年、中央大学出版部)、『21世紀型世界経済危機と金融政策』(2013年、新日本出版社

*5:2006年よりFRB議長。著書『リフレと金融政策』(2004年、日本経済新聞社)、『大恐慌論』(2013年、日本経済新聞出版社

*6:その意味で黒田総裁が自らの金融緩和を「異次元」と表現する事それ自体は正しいと筆者は見る

*7:1974年、日本銀行入行。日銀金融研究所所長、中央大学教授などを経て現在、京都大学教授。著書『ポスト・マネタリズムの金融政策』(2011年、日本経済新聞出版社)、『金融政策のフロンティア:国際的潮流と非伝統的政策』(2013年、日本評論社

*8:著書『環境の政治経済学』(共著、2010年、ミネルヴァ書房)、『先進例から学ぶ再生可能エネルギーの普及政策』(編著、2013年、本の泉社)

*9:著書『フランス、イギリス、 働くルールと生活保障の最新事情:日本が学ぶことを探す旅』(2011年、本の泉社労働総研ブックレット)

*10:福祉国家北欧3国、ドイツ、フランスとかは割と社民寄りでしょう。一方アメリカ、イギリス、日本なんか新自由主義の度が強いわけです

*11:著書『中国社会主義と経済改革』(1988年、法律文化社

*12:著書『公共事業改革論:長野県モデルの検証』(2008年、有斐閣

*13:著書『イワシと気候変動:漁業の未来を考える』(2009年、岩波新書

*14:著書『反「構造改革」』(2002年、青木書店)、『戦後思想ヘゲモニーの終焉と新福祉国家構想』(2006年、旬報社)、『ワーキングプア原論:大転換と若者』(2011年、花伝社)

*15:ロシア大統領府第一副長官、ロシア連邦保安庁長官、ロシア第一副首相、首相(以上、エリツィン大統領時代)を経て大統領

*16:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席などを経て現在、国家主席、党総書記、国家中央軍事委員会主席、党中央軍事委員会主席

*17:河南省党委員会書記、遼寧省党委員会書記、第一副首相などを経て現在、首相

*18:小泉内閣内閣官房参与アジア開発銀行総裁などを経て現在、日銀総裁。著書『財政金融政策の成功と失敗』(2005年、日本評論社)、『世界を見る目・危機を見る目』(2013年、日経BP社)