新刊紹介:「経済」5月号

「経済」5月号の詳細については以下のサイトをご覧ください。興味のある記事だけ紹介してみます。
http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/
■随想「なぜ今、教育委員会「改革」か」(中嶋哲彦*1
(内容要約)
 安倍の教育委員会制度「改革」に対する批判として赤旗の記事を紹介しておく。「なぜ教育委員会制度『改革』か」と言えば「トップダウン型の『改革』をやりたいから」であろう。「民主的な教育制度運営」を面倒臭いと考えるならば、「トップダウン型、独裁型の手法」しか手法はない。

参考
赤旗
『政治権力による教育支配への大改悪:安倍政権の「教育委制度改革」について、志位委員長が会見』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-02-21/2014022101_02_1.html
教育委員会が首長の下請けに、自公「改革」案、際限のない支配・介入に道』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-03-14/2014031402_04_1.html
『教育の独立性を破壊、教委「改革」法案を閣議決定
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-04-05/2014040501_03_1.html


特集「マルクス経済学のすすめ2014」
■「日本経済分析と『資本論』」(鶴田満彦*2
(内容要約)
・1990年以降の日本では新自由主義が猛威を振るい、資本主義の害悪が顕在化している。その克服が求められる。克服の処方箋については各人各論があるが自分は「資本論」に重要性を認めるという話。


■「世界的危機と『資本論』」(今宮謙二*3
(内容要約) 
リーマンショックなどの「世界的経済危機」の根源にあるのは新自由主義であり、その克服が求められる。克服の処方箋については各人各論があるが自分は「資本論」に重要性を認めるという話。


■「マルクス経済学の基礎と貧困・自己責任論」(関野秀明*4
(内容要約)
・第1部「マルクス経済学入門:マルクス剰余価値論とは」、第2部「『資本論』を基礎に貧困・格差を考える」から成り立っている。
・細部は無視して筆者の一番言いたいことを指摘するならば
1)貧困や失業を自己責任とする自己責任論は間違っている
2)貧困や失業は資本主義というシステムにおいては必然である
3)である以上、「資本主義というシステムに対する何らかの改革」が必要である
4)そうした指摘を行っているのが資本論でありマルクスが提案した解決策が社会主義
といったところだろう。もちろんマルクス主義の立場に立ったとしても「一気に社会主義を目指す」というのはあまりに現実性に乏しいので、少なくとも当面の策としては「最低賃金の引き上げ」「失業支援の充実」といった福祉国家的な策を目指すことになるが。


■「非正規化と大量解雇の中で君はどうする」(中田進)
(内容要約)
「どうする」の結論であるが、結論としては予想通り「労働組合運動や政治運動などで社会を変える」という話になるわけである。もちろんそれは楽なことではないが「一部のエリート」しか可能ではない「エリート化による生き残り策」よりはむしろ現実的と言えるかも知れない。


■「経済学の学びのすすめ」
【自由を考えよう(有井行夫*5)】
(内容要約)
マルクスを考える際に重要な物は「マルクスの自由論」「マルクスの自由概念」だと言うお話。


環境経済学への誘い(植田和弘*6)】
(内容要約)
福島原発事故にどう対応するかという問題を今、日本の経済学はつきつけられてるのではないか。その回答作業の一つとして筆者としては、『緑のエネルギー原論』(2013年、岩波書店)を世に問うたという話。


【資本主義の発展法則をつかむ(大西広*7)】
(内容要約)
1)「資本主義」とは歴史的な産物であり、古くからあった物でもなければ、未来永劫続いていくわけでもないこと
2)また「資本主義」に限らず「各時代の生産様式」が「各時代の技術と生産力のあり方」に規定されること
マルクス主義の重要な要素(史的唯物論)である。
 資本主義について言えば「産業革命による機械の登場」により大量生産が可能になったことが資本主義の誕生をもたらしたと言える。


【雇われて働くとはどういうことか(角田修一*8)】
(内容要約)
「雇われて働く(賃金労働)」というものをどう考えるかということがマルクス主義の重要テーマだという話。


【『資本論』のかじり方(福島利夫)】
(内容要約)
資本論に挑戦するヒントがいくつか紹介されている。
1)資本論の入門として似た問題を扱った、そして資本論より薄いマルクスの著書『賃労働と資本』『賃金・価格・利潤』を読んでみる。
→充分、『賃労働と資本』だって難しいと思うが。
2)「資本論の歴史的記述」を読んでみる。
→確かに「歴史的記述」はややこしい理論的記述よりはとっつきやすいかもしれないが「理論に対する理解」という点ではどうだろう。
3)『ここがロードス島だ、ここで跳べ』など、文学作品からマルクスがネタを持ってきたものについて元ネタを読んでみる
マルクスに親近感はわくかも知れないが「理論に対する理解」という点ではどうだろう。


【「1%対99%」の仕組みを解く(福田泰雄*9)】
(内容要約)
・この文章での「1%対99%」とは「ウォール街占拠デモ」でのスローガン「我々は99%だ」を意味している。
つまり「1%対99%」とは「格差拡大」のことであり、それを生み出すメカニズムの分析と、その解決方法を問うているのがマルクス主義だという話。


【『資本論』のすすめ(谷野勝明*10))】
(内容要約)
 一回読んで資本論がわからないからといってがっかりする必要はない。
1)世の中、そんな天才だらけではないし、
2)資本論アダム・スミスリカードら先行学者の理論を元に話を展開してるので、真に資本論を理解するには、先行学者の理論もある程度理解できないと行けないし、
3)マルクス生前に出版された資本論1部はともかく、2部、3部はマルクスの遺稿を盟友エンゲルスが試行錯誤の結果まとめたものでまとめ方については実は異論がある
のだから、と言う話。


■「新メガ第4部とその魅力:第18巻の編集にかかわって」(天野光則)
(内容要約)
・メガとは「マルクス・エンゲルス全集」の略称。「新」がつくのは「1930年代に計画されたものの挫折した全集」が以前にあるからでありこれを「旧メガ」という(新といっても事業が開始されたのは今から約40年前の1975年だが)。
・新メガはソ連の国家的事業だったため、ソ連・東欧崩壊がもろに事業を直撃する。編集スタッフの数が縮小されるなど、紆余曲折ありながらも現在も事業は継続されている。現在「ベルリン・ブランデンブルグ科学アカデミー」から予算が付いているが予算は「2015年まで」なので残念ながらその後の事業については未確定である。
・なお、「新メガの編集作業」「マルクス遺稿の歴史」については以下の著書が参考になる。
 平子友長、大谷禎之介*11編『マルクス抜粋ノートからマルクスを読む:MEGA第4部門の編集と所収ノートの研究』(2013年、桜井書店)
 佐藤金三郎『マルクス遺稿物語』(1989年、岩波新書


■「原発問題と経営学の課題:電力独占とエネルギー転換」(丸山惠也*12
(内容要約)
原発の危険性が福島事故で明白になった今、目指すべきは地熱、太陽光、風力等の再生可能エネルギーへの転換が必要だろう。その際、いわゆる発送電の分離が不可欠である。

参考
赤旗『発送電完全分離が必要、電気事業法改定案が可決、塩川議員』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-11-03/2013110304_02_1.html


■「原発推進勢力は誰か:財界・大企業の原発固執姿勢を批判する」(小松公生*13
(内容要約)
 政府が原発推進に力を入れているのは、日本財界主流が原発を儲け口とする原発利益共同体であるからだという指摘。


■「靖国神社とは何か」(山科三郎*14
(内容要約)
靖国神社は「天皇のために戦死した人間を英雄として祀り、戦争を正当化すること」を目的とした施設であり、決して「追悼施設ではない」点に注意が必要。
 従って「天皇サイドで闘った軍人、軍属以外は祀っていない」、つまりは「明治の士族反乱軍の兵士」や「戦死者でも一般戦死者(東京大空襲など)」は祀っていない。
靖国神社のそうした「戦争正当化」と言う性格がわかりやすいのが「A級戦犯合祀」と「附属博物館・遊就館」である。
・だからこそ安倍の靖国参拝については各方面から批判が寄せられ、同盟国のはずの米国も「失望」を表明するに至ったのである。

参考
赤旗
『これが靖国神社遊就館」の実態だ:徹底ルポ”靖国史観”の現場をゆく、A級戦犯を「神」と展示』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-06-15/26_01_0.html
靖国神社って何? 「参拝」何が問題?、首相は「国に殉じた人に尊崇の念を」言うが』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-01-11/2014011103_01_1.html
『安倍首相の靖国参拝 米国の苦言やまず、「戦前の行為を正当化する象徴なのだ」、“アジア戦略・同盟強化に影”』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-02-07/2014020701_03_1.html
『米誌 靖国遊就館」展示批判、「信じられないほど偏向した解釈」』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-01-04/2014010402_02_1.html


■「安倍政権の歴史認識と「教育再生」政策」(石山久男*15
(内容要約)
 安倍の教育政策の問題点は「戦前美化」「歴史修正主義南京事件慰安婦、沖縄集団自決など)」に限定されるものではないが、それが重要な要素であることは確かだろう。安倍一味の歴史認識の問題については赤旗記事を紹介しておく。

参考
赤旗
『“「慰安婦」制度どこでも”は本当か 籾井NHK会長の暴言、軍の組織的管理 日独だけ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-03-03/2014030303_01_1.html
『これが歴史の真実 成り立たない「靖国」派の言い分、南京大虐殺は「なかった」 百田発言は世界の非常識』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-03-06/2014030601_03_1.html
『歴史の偽造は許されない:「河野談話」と日本軍「慰安婦」問題の真実』(日本共産党幹部会委員長・志位和夫
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-03-15/2014031504_01_0.html
『首相言明否定する「河野談話」見直し発言、自民総裁補佐 山下書記局長が批判』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-03-25/2014032501_04_1.html
文科相教育勅語」を美化、軍国教育の柱を「中身まっとう」』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-04-09/2014040901_04_1.html

*1:著書『教育の自由と自治の破壊は許しません:大阪の「教育改革」を超え、どの子も排除しない教育をつくる』(2013年、かもがわブックレット)

*2:著書『グローバル資本主義と日本経済』(2009年、桜井書店)

*3:著書『国際金融の歴史』(1992年、新日本新書)、『投機マネー』(2000年、新日本新書)、『動乱時代の経済と金融』(2005年、新日本出版社

*4:著書『現代の政治課題と「資本論」:自己責任論批判の経済学』(2013年、学習の友社)

*5:著書『マルクスの社会システム理論』(1987年、有斐閣)、『マルクスはいかに考えたか:資本の現象学』(2010年、桜井書店)、『株式会社の正当性と所有理論(新版)』(2011年、桜井書店)

*6:著書『環境経済学』(1996年、岩波書店)、『環境経済学への招待』(2002年、丸善ライブラリー)、『緑のエネルギー原論』(2013年、岩波書店)など

*7:著書『チベット問題とは何か:“現場”からの中国少数民族問題』(2008年、かもがわ出版)、『現場からの中国論:社会主義に向かう資本主義』(2009年、大月書店)、『マルクス経済学』(2012年、慶應義塾大学出版会)、『中国に主張すべきは何か:西方化、中国化、毛沢東回帰の間で揺れる中国』(2012年、かもがわ出版)など

*8:著書『生活様式の経済学』(1992年、青木書店)、『「資本」の方法とヘーゲル論理学』(2005年、大月書店)

*9:著書『現代市場経済とインフレーション』(1992年、同文館出版)、『現代日本の分配構造:生活貧困化の経済理論』(2002年、青木書店)、『コーポレート・グローバリゼーションと地域主権』(2010年、桜井書店)

*10:著書『経済科学の生成』(1991年、時潮社)

*11:著書『図解・社会経済学:資本主義とはどのような社会システムか』(2001年、桜井書店)、『マルクスに拠ってマルクスを編む:久留間鮫造と「マルクス経済学レキシコン」』(2003年、大月書店)、『マルクスのアソシエーション論:未来社会は資本主義のなかに見えている』(2011年、桜井書店)

*12:著書『現代日本多国籍企業』(2012年、編著、新日本出版社

*13:著書『原発にしがみつく人びとの群れ:原発利益共同体の秘密に迫る』(2012年、新日本出版社

*14:著書『人間発達の哲学』(1986年、青木書店)、『自由時間の哲学』(1993年、青木書店)

*15:著書『近現代史と教科書問題』(1998年、新興出版社)、『日の丸・君が代:国旗・国歌を考える』(1999年、学習の友社)、『教科書検定沖縄戦「集団自決」問題から考える』(2008年、岩波ブックレット