新刊紹介:「経済」2月号

「経済」2月号の詳細については以下のサイトをご覧ください。興味のある記事だけ紹介してみます。
 http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/
■巻頭言「五輪開催計画」
(内容要約)
 五輪を口実にした公共事業大盤振る舞いへの批判。

参考
赤旗『五輪名目に大型公共事業:衆院委審査会で宮本氏 「推進本部」を批判』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-11-12/2014111211_01_1.html


■随想『「慰安婦」問題へのこだわり』(吉川春子*1
(内容要約)
 参院議員時代に慰安婦問題に取組み、また慰安婦問題についての著書もある吉川氏による「河野談話否定派」安倍政権批判。

参考
赤旗『歴史を偽造するものは誰か:「河野談話」否定論と日本軍「慰安婦」問題の核心』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-09-27/2014092704_01_0.html


■コラム「狂乱物価の再来か」
(内容要約)
「狂乱物価」というのは

 1973年10月6日に勃発した第四次中東戦争に端を発した第一次オイルショックによってもたらされた、1974年の日本の物価の異常な高騰のこと(ウィキペ「狂乱物価」)

です。もちろん「アベノミクス円安による物価高騰」を「狂乱物価の再来*2ではないか」としているわけです(ただし今回は原油価格高騰はありませんが)。


■世界と日本
原油価格急落の原因】(萩村武)
(内容要約)
 原油価格急落の原因としては
1)中国やEUの成長鈍化による需要の減少
2)アメリカのいわゆるシェール革命による原油の増産
があるとみられる。しかし原油価格が低迷し続ければ、生産国が価格調整を目的に減産する可能性がある。今後もこの価格低下が続くかどうかは分からない。


【中国の「法治改革」新方針】(平井潤一)
(内容要約)
 中国共産党は10月に開催された第18期4中全会(第18期中央委員会第4回全体会議)で「法による国家統治の全面的推進における若干の問題に関する決定」を採択した。この決定は抽象的な内容であり、これが今後どのように具体化されるかが注目される。

参考
人民日報
■『四中全会、法による国家統治の総目標と重大任務を提起』
http://j.people.com.cn/n/2014/1023/c94474-8799114.html
■『四中全会閉幕、法による国家統治のアップグレード版計画発表へ』
http://j.people.com.cn/n/2014/1023/c94474-8798997.html
■『四中全会コミュニケの10大注目点 「法による国家統治」を23回使用』
http://j.people.com.cn/n/2014/1024/c94474-8799449.html
■『中国の「大国イメージ」を高める法治の厳格な実行』
http://j.people.com.cn/n/2014/1027/c94474-8800365.html
■「四中全会決定」の15の新たな注目点(1)立法分野
http://j.people.com.cn/n/2014/1030/c94474-8802294.html
■「四中全会決定」の15の新たな注目点(2)司法分野
http://j.people.com.cn/n/2014/1030/c94474-8802360.html
■「四中全会決定」の15の新たな注目点(3)行政分野
http://j.people.com.cn/n/2014/1030/c94474-8802370.html


★特集「2015年の日本経済をどう見るか」
1)2015年日本の経済展望
■『2015年の世界経済:米欧諸国の格差拡大・高失業率』(萩原伸次郎*3
(内容要約)
 欧米諸国において格差拡大、高失業率が見られることを指摘。
 その一因として新自由主義的経済施策があると指摘した上で社民主義的経済施策への転換を主張している。


■『増税不況と日本経済の行方』(工藤昌宏*4
(内容要約)
 消費税増税が明らかに経済に悪影響を与えていることを指摘、10%再増税など論外であり、また8%増税を今すぐ撤回し元の5%に戻すべきだとしている。
 なお、タイトルは「増税不況」だがアベノミクスにも一定の批判を行っている。
 まず
1)アベノミクスは消費税増税生活保護削減のような「内需縮小策」を同時に行っており、その理論には疑問がある。弱者支援という意味だけでなく「景気刺激」と言う意味でも「安倍政権の内需縮小策」は大きな間違いである。
2)第一の矢「金融緩和」について。円安は当初予定していた輸出増をほとんどもたらさず*5、一方「円安による輸入品物価高騰、及びそれに影響された諸物価の高騰*6」をもたらし「消費意欲減少→不況助長」という逆の効果をもたらしている。
3)第二の矢「公共事業」について。景気浮揚効果が認められない第一の矢、第三の矢と違い、第二の矢が一定の効果をあげていることは事実である(とはいえ公共事業による景気刺激は森内閣など過去の内閣も行っており第一の矢、第三の矢と違い新味はどこにもないが)。
 ただし、日本の産業構造において「建設業のウェイトが昔ほど大きくないこと」もあり効果は限定的である。しかも公共事業大盤振る舞いのため、国債を大量発行しているため財政への悪影響が危惧される(最近、安倍政権ほどの公共事業大盤振る舞いがされない理由は「財政への悪影響」と「効果が限定的であること」が理由である)。
 第三の矢についていえば「小泉構造改革の焼き直し」であり、それが景気浮揚に役立つ可能性はないといっていい。
 景気浮揚のためには「雇用と賃金の安定」「国民負担(税、社会保険料など)の軽減」「将来不安の解消(社会保障制度の充実など)」による内需拡大こそが不可欠である。しかし安倍政権の態度はそれとは明らかに逆行している。


参考
赤旗
■主張『消費税10%の増税、先送りでなくきっぱり中止を』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-11-19/2014111901_05_1.html
■『データでみるアベノミクス、格差拡大はっきり、資産100億円増100人 働く貧困層1120万人』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-11-30/2014113006_02_0.html


■『大企業の高収益と増える内部留保』(谷江武士*7
■『変容する大企業の付加価値配分と搾取強化の新段階:労働分配率を入り口にして』(藤田宏)
(内容要約)
 谷江論文、藤田論文ともに大企業の内部留保が過去最大となっているが、賃金上昇がほとんど見られないことを指摘。内部留保の取り崩しによる賃金上昇が求められるとしている。

参考
赤旗
■『大企業内部留保 最高の285兆円、月2万円賃上げ可能 労働総研調べ、実質賃金減 経済に打撃』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-12-29/2014122901_02_1.html
■『内部留保 増やすのやめれば、月11万円超賃上げ可、労働総研春闘提言』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2015-01-08/2015010801_03_1.html


2)いっせい地方選*8・地方再生を問う
■『安倍「成長戦略」の先に地方再生はない』(藤田安一)
(内容要約)
 安倍『地方創生』への批判。赤旗記事の紹介で代替。

参考
赤旗
■『「地方創生」法案 衆院審議入り、人口減 自民政治が元凶 塩川議員批判』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-10-15/2014101501_02_1.html
■『「地方創生」関連法案、塩川議員の質問、衆院本会議』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-10-15/2014101504_05_0.html
■主張『「地方創生」議論、「反省なき国策」で地域壊すな』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-10-17/2014101701_05_1.html
■『「地方創生」関連法案が可決、「小規模自治体疎外する」、衆院特別委で塩川氏が反対』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-11-06/2014110602_04_1.html
■『「地方創生」関連法案可決、衆院本会議 共産党は反対、「一極集中聖域」 塩川氏が批判』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-11-07/2014110707_01_1.html
■『反省なき安倍政権「地方創生」、衰退させているのは誰なのか』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2015-01-05/2015010502_01_1.html


■『国の責任を地方に転嫁する国保改革』(長友薫輝*9
(内容要約)
 赤旗の記事などの紹介で代替。

参考
赤旗国保料上げ徴収強める、都道府県への運営移管』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-12-28/2014122802_01_1.html
日本共産党福岡県委員会『市町村国保の広域化は住民に何をもたらすか』
http://www.fjcp.jp/social-security/400/


■『「子ども・子育て支援新制度」直前の大混乱と運動』(高橋光幸*10
(内容要約)
 赤旗の記事紹介で代替。

参考
赤旗
■『子ども子育て新制度、「多様化」いうが格差拡大』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-01-27/2014012702_03_1.html
■『保育新制度 矛盾が露呈、補助金減る認定こども園も、幼稚園児の争奪起こる恐れ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-08-18/2014081802_02_1.html
■『子育て新制度 幼稚園8割(注:認定こども園に)移行せず、説明不十分 財源に不安、認定こども園の「認定」返上も』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-09-26/2014092601_03_1.html
■『子育て新制度 安全な保育の保障を、基準引き上げへ 共産党 地方議会で奮闘』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-10-26/2014102602_03_1.html
■『待機児童解消せず、新制度 事業計画で判明 安倍路線行き詰まり』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-11-29/2014112902_01_1.html
■『首相、「子育て支援」強調するが、待機児ゼロ実現できず、公約の17年度でも4.6万人分不足』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-12-08/2014120802_05_1.html
■『子育て支援のはずが…、来年4月の新制度開始を前に保育料値上げ続々』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-12-22/2014122201_03_1.html


■『「自治体消滅」・道州制論との対決点』(角田英昭*11
(内容要約)
 赤旗の記事紹介で代替。

参考
赤旗
■『道州制導入に反対、笠井氏「地方自治徹底を」、衆院憲法審』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-04-29/2013042904_01_1.html
■主張『「道州制」法案、“国の姿”を壊す仕掛けづくり』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-04-30/2013043001_05_1.html
■『地方自治 地方に財源が必要、参院調査会 倉林氏、道州制批判』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-11-12/2014111204_04_1.html


■『人間らしい生活が日本経済を救う:2015春闘の可能性』(牧野富夫*12
(内容要約)
 安倍政権の労働法改悪や財界の「賃金引き下げ論」に対抗する労組の奮闘の必要性を指摘。


■「年金積立金の運用とアベノミクス:減らない積立金と増大する政治リスク」(河村健吉*13
(内容要約)
 政府による「年金積立金の運用(株式投資など)」について危険きわまりないとして批判。国債による運用が安全で適切としている。

参考
赤旗
■『年金株運用広げるな、小池氏「積立金が危ない」、参院厚労委』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-11-01/2014110102_02_1.html
■『年金積立金の株式運用 自民党は自慢するが…、金融業界は大もうけ、国民には支給削減・保険料引き上げ押しつけ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-12-13/2014121305_02_1.html


■「日本社会政策学の形成と展開(2):明治・大正時代の社会政策主義の展開」(相澤與一*14
(内容要約)
 いわゆる大正デモクラシー期の「社会政策学」について、「大正デモクラシー」を反映して労使協調路線を採用したと評価。
 大正11年に「健康保険法」が成立するなど、社会政策について一定の進展が見られたが
1)戦前にはついに労働組合法が成立しなかった
2)治安維持法が制定され昭和期の政治弾圧に活用された
などの限界があったことを指摘。


■データで見る日本経済16「都道府県・地域別の人口移動」
(内容要約)
 統計データからは関東圏(東京圏)、近畿圏(大阪圏)、東海圏(名古屋圏)といった大都市圏への人口集中が進んでいること、特に関東圏(特に東京)への人口集中が進んでいることを指摘。
 地方経済へのてこ入れが必要としている。

参考
赤旗『一極集中拡大を批判、塩川氏“競争力強化に弊害”、衆地方創生特』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-11-01/2014110102_01_1.html

*1:日本共産党参院議員。著書『アジアの花たちへ:「慰安婦」問題と格闘した国会議員の記録』(2008年、かもがわ出版

*2:もちろん「少なくとも」現時点では「1974年の狂乱物価ほどすさまじいことにはなってないこと」は「経済」コラムも認めています。

*3:著書『アメリカ経済政策史』(1996年、有斐閣)、『通商産業政策』(2003年、日本経済評論社)、『米国はいかにして世界経済を支配したか』(2008年、青灯社)、『日本の構造「改革」とTPP』(2011年、新日本出版社)、『TPP:第3の構造改革』(2011年、かもがわブックレット)、『TPPと労働者、労働組合』(2012年、本の泉社労働総研ブックレット)など

*4:著書『日本海運業の展開と企業集団』(1991年、文眞堂

*5:海外での生産が増えていることが理由と思われる

*6:ただしアベノミクス自体は当初から「物価の高騰」を目標としていたのでその意味では「問題はない」と言えるかも知れない(いわゆるインフレターゲット論)。しかし、「アベノミクスが主張したサラリーマン給与上昇」が実現していない以上、物価高騰は不況助長要因にしかならない

*7:著書『事例でわかるグループ企業の経営分析』(2014年、中央経済社)など

*8:いわゆる統一地方選のこと。

*9:著書『長友先生、国保って何ですか』(共著、2013年、自治体研究社)、『安倍政権の医療・介護戦略を問う』(共著、2014年、あけび書房)

*10:著書『保育新制度 子どもを守る自治体の責任』(共著、2014年、自治体研究社)など

*11:著書『道州制で府県が消える』(共著、2013年、自治体研究社)など

*12:著書『構造改革は国民をどこへ導くか』(2003年、新日本出版社)、『“小さな政府”論とはなにか』(2007年、公人の友社)、『労働ビッグバン:これ以上、使い捨てにされていいのか』(共著、2007年、新日本出版社)など

*13:著書『娘に語る年金の話』(2001年、中公新書)、『企業年金の教室・実践編』(2003年、中央公論新社)など

*14:著書『日本社会保険の成立』(2003年、山川出版社日本史リブレット)、『医療費窓口負担と後期高齢者医療制度の全廃を:医療保障のルネッサンス』(2010年、創風社)など