今日の産経ニュースほか(10/3分)

■ちきゅう座『プーチン訪日前のロシア情勢(3)』<塩原俊彦:高知大学准教授>
http://chikyuza.net/archives/66854

「ロシア経済は底を打った」というのがUMJロシアファンドの大坪祐介マネージング・パートナーのみたてである。筆者も基本的に同じ意見である。

 つまりはロシアを舐めると「北朝鮮は経済で困ってる、制裁すれば日本に対して泣きが入って拉致が解決する」といって失敗したのと同じ目にあうと言うことです。
 勿論ロシアはウクライナ問題で欧米に制裁されて厳しい立場です。とはいえそれでも「北朝鮮に比べれば」ロシアは経済的に有利な立場に勿論あります(わざわざ言うのもバカバカしいほど明白な話ですが)。ロシアは安保理常任理事国だし、上海協力機構の盟主的存在です。
 欧米の制裁は国連制裁ではないし、EUの中からは「ロシアの石油、天然ガスが欲しい」という立場からの制裁解除論も出ている。北朝鮮以上にロシアは「日本に必要以上に媚びる必要はない」わけです。もちろん北朝鮮同様に中国との経済的つきあいもロシアにはある。塩原氏の言うように「ロシア経済は最悪の状態を脱した」のならなおさら日本に媚びる理由がない。
 「ロシアは苦しい立場にあるから日本が金を出せばすぐに島が帰ってくる」なんて保障はどこにもないわけです。

 (ボーガス注:いわゆるノンキャリアはともかく)日本の(ボーガス注:いわゆるキャリア)官僚は中国の(ボーガス注:キャリア)官僚に比べてお粗末であるとの強い印象を(ボーガス注:彼らとつきあった筆者(塩原氏)の経験から)もっている。中国の官僚はロシアの政治家や官僚に対して、居丈高な姿勢を見せない。むしろ、ロシア側への敬意を常に忘れず、みごとなまでにロシア側を不快にさせることがない。これに対して、日本の官僚は親米という虎の威を借りて、ロシア側に上から目線で露骨に見下す輩が多い。これが筆者の直感的な印象である。

 あくまでも塩原氏の印象論にすぎません。実際どうか知りませんが事実なら確かにお粗末な話です。

 民進党共産党もロシア経済分野協力担当相の仕事ぶりを批判したいのであれば、似非ではない専門家に尋ねる姿勢を忘れてはならない。

 平たく言えば、『俺、塩原が専門家と認識しているロシア研究家(塩原氏本人を含む)に接触をとらない政府や与党・自民党公明党民進党共産党にも困ったもんだ』と言う嘆きですが、ロシア素人の小生は何とも評価できない(苦笑)ので塩原氏の言葉を紹介するだけにします。
 「外務官僚に全てお任せ(専門家からの意見聴取は官僚がやる)」の可能性もある政府与党はともかく、野党は党幹部がそれなりに専門家(それが塩原氏の言う『真の専門家』かどうかはともかく)に意見を聞いてるんじゃないかとは思いますが。


■ちきゅう座『プーチン*1訪日前のロシア情勢』<塩原俊彦*2高知大学准教授>
http://chikyuza.net/archives/66818

 12月の日ロ首脳会談では、うまくすれば「2島返還プラスアルファ」が決まることになるだろう。その中身までは予測不能だが、日本政府が4島一括返還を断念し、現実路線に舵を切ることは確実*3であろう。プラスアルファ部分として、国後・択捉の共同利用や、島に属する領海・排他的経済水域の線引きの工夫が考えられる(詳しくは岩下明裕*4著『北方領土問題』*5)。(ボーガス注:プーチン訪日後に衆院を解散し)衆院選に打って出ることで4島返還論者をねじ伏せようとしているかにみえる。しかし、悲観的な予測をすれば、4島への日本の潜在的主権があることを確認する程度でお茶を濁す*6だけだろう。

 まあそういうことになるでしょう。何処まで安倍が解散する気か分かりませんが下村辺りが「来年早々の解散もありうる」と吹いてるのはそう言うことです。ただ実際プーチン訪日がどういう結果になるか、それに対してマスコミや与野党右翼団体などがどう反応するか、は今の段階ではまるで読めません。「四島返還はまずないだろう」つう事だけはほぼ確実でしょうが。

 2016年8月、盟友セルゲイ・イワノフ*7大統領府長官が辞意をプーチンに伝え、プーチンはこれを認めざるをえなかった。2014年11月、息子アレクサンドルがアラブ首相国連邦で溺死して以来、すっかり精神的にまいったイワノフはついに大統領府長官の要職を手放すことにしたわけである。これが意味しているのは、プーチンソ連国家保安局(KGB)時代からの盟友を失ったことであり、それはプーチンの孤独に拍車をかけたことになる。

 塩原氏は一般的な「プーチンによるイワノフ更迭」説(イワノフが力を持ちすぎることの予防)をとらないわけですが真偽の程は素人には分かりません。

 メドヴェージェフ*8は決してプーチンの操り人形ではなかったのである。それを決定的に示したのが、リビア空爆を認める国連決議をメドヴェージェフ大統領(当時)が認めたことだった。首相だったプーチンは自分に外交権限がないことを承知のうえで、この政策が誤りであることをあえてテレビ画面を通じて厳しく非難した。プーチンが懸念したとおり、カダフィ*9大佐は空爆を機に追い詰められ、ついには2011年10月、殺害されるに至る。

 一般には「プーチンの操り人形」扱いされるメドベージェフですが、塩原氏に寄れば話はそんなに単純ではないようです。

 こうした経緯からみて、(ボーガス注:大統領)プーチンが(ボーガス注:首相)メドヴェージェフを見限るのは時間の問題とみられている。幸か不幸か、後任はアレクセイ・クドリン*10が有力視されている。彼は、2011年9月、メドヴェージェフ首相誕生後の内閣では働けないとの発言をし、副首相兼財務相を辞めた。メドヴェージェフと対峙する姿勢を鮮明に示し、いったんはプーチンとの関係も冷え込んだとみられていた。しかし、2016年1月、プーチンはマスメディア幹部との秘密会合で、「クドリンと毎日のように電話で話している」と語り、二人の関係修復がなされていることが明らかになった。同年4月、彼は大統領付属経済会議副議長に任命され、公的地位も復活した。孤高を深めるプーチンにとって、クドリンが救いになるのかもしれない。

 クドリンとやらが今後重用されるのではないかとの見方です。


【ここから産経です】
■【櫻井よしこ 美しき勁き国へ】日本の敵は日本人なのか このままでは慰安婦関連資料もユネスコ記憶遺産に登録される
http://www.sankei.com/premium/news/161003/prm1610030006-n1.html
 個人的には「ぜひ登録されて欲しい」とは別に思いませんが、ただし「登録したい」という被害者の気持ちは人として「それなりにわかる」つもりです。かつ日本の公式見解は河野談話です。
 よほど信憑性の怪しい資料でない限り「登録されること」には「本来は何の問題もないはずの話」です。


■【主張】性犯罪の厳罰化 卑劣許さぬ国の意志示せ
http://www.sankei.com/column/news/161003/clm1610030001-n1.html

 現行の強姦罪や強制わいせつ罪は、被害者の告訴を必要とする親告罪とされている。答申はこれを撤廃し、告訴がなくても起訴できるようになるとしている。
 「犯人の処罰を被害者が決めるのは(ボーガス注:精神的な)負担が重い」といった声にこたえるもので、これも妥当だ。

 まあここだけ取り出せば正論だと思いますけどね。「慰安婦は何故すぐに被害を訴えなかったのか」とかぬかしてる新聞が産経だと知ってれば苦笑せざるを得ません。慰安婦がすぐに訴えなかった理由も当然ながらこういう理由だからです。
 しかし「厳罰論」と言う意味ではこうした方向性は極右・安倍政権にマッチするのでしょうが、「民主党政権時代の千葉法相」ではなく、安倍政権においてこうした「フェミニズム運動が求めていた物」が実現するのは何とも複雑な気がします。
 もちろんそこには
1)厳罰論と言う意味では「非親告罪化」は安倍政権にマッチする
2)仮にこうした方針がウヨ(産経や日本会議)の望まない物でも野党ではなく安倍のやることでは批判しづらいし、ウヨにとって「九条改憲」などと比べ正直、それほど重要な話でもない
3)「安倍政権は女性の味方だ」という人気取り(アベノミクスも限界が見えてきた)
などさまざまな要素があるでしょうが。この「強姦罪等についての検討」ですが、ウィキペ「松島みどり」によれば

2014年9月3日、法務大臣就任後初の記者会見において、刑法の強姦致死傷罪の量刑が「無期または5年以上の懲役」であるのに対し、強盗致傷罪の「無期または6年以上の懲役」の方が最低刑が重い点を指摘した上で「これは絶対に逆転するように議論を進めてもらいたい」と述べ、性犯罪に対する厳罰化を検討する意向を表明した。

ということで松島法相時代からの話のようです。
 松島の例の金銭疑惑(法相辞任に追い込まれた)や松島の極右反動性を批判した上での話ですが「松島の動機が何であれ」それとは関係なくこの件では松島を「一応」評価します。
 小生も自民党関係者なら何でもかんでも批判してる訳ではないです。そう言う意味で「小泉訪朝」も「彼のした他の行為(例:靖国参拝イラクへの自衛隊派兵など)」に関係なく「小泉首相は良くやった!」と評価する(まあ、そうした自民党への是々非々の態度は社民党共産党なども同じですが)。
 とはいえid:noharraの「安倍さんのおかげでウイグル人が釈放された!」なんて与太は論外です(苦笑)。

 被害者を女性とする現行法の性差もなくし、改正刑法では(ボーガス注:強姦罪は)男女とも対象となる見通しだ。性交に準じた行為*11も処罰の対象となる。

 下世話な話になりますが、強姦罪というのは「男性が女性の膣にペニスを無理矢理挿入する行為」ですから
1)女性が男性に「ペニスの膣挿入」を強要する行為
2)男性が女性に強要する「ペニスの膣挿入以外の性的行為(例:肛門へのペニスの挿入(いわゆるアナルセックス)、フェラチオなど)」
は現行法では強姦ではなく強制わいせつになります。要するに「女性の望まない妊娠の危険性」が現行法では重視されてるのでしょう。1)なら望んでるし、2)なら妊娠の危険性がないわけです。
 そして現行法では強制わいせつの方が強姦より軽いわけです。「男性が女性の体に服の上から触った」という痴漢行為レベルなら軽くていいでしょうが、「強制アナルセックスは妊娠の恐れがないから軽くていい」とは一寸言い難いでしょう。被害者の精神的ダメージは「ペニスの膣挿入であろうとなかろうと」決して小さくはない。
 とはいえ、この辺り法改正がどうなるのか気になるところです。「強制わいせつと強姦の区別をなくし、強制わいせつや強姦に当たる性犯罪は『わいせつな行為を他人に強要したものは処罰する*12』のような形で今後は一つの条文で処罰する(法定刑の幅を広げ、悪質なものを厳罰に、軽微なものを軽い罪で処罰する)」つうのが一番わかりやすいかなと個人的には思います。

*1:エリツィン政権大統領府第一副長官、連邦保安庁長官、第一副首相、首相を経て大統領

*2:著書『現代ロシアの政治・経済分析』(1998年、丸善ブックス)、『ロシアの「新興財閥」』(2001年、東洋書店ユーラシア・ブックレット)、『ロシアの軍需産業』(2003年、岩波新書)、『現代ロシアの経済構造』(2004年、慶應義塾大学出版会)、『ロシア経済の真実』(2005年、東洋経済新報社)、『ネオKGB帝国』(2008年、東洋書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(2009年、岩波書店)、『ミクロ分析・経済危機下のロシア』 (2010年、東洋書店ユーラシア・ブックレット)、『プーチン2.0』(2012年、東洋書店)、『プーチン露大統領とその仲間たち』(2016年、社会評論社)など

*3:安倍が「2島返還にシフトを切った」と言えるかは「自民党政権が長年、4島返還を譲れない話としてきたこと」「現時点ではそうした4島返還の立場を安倍が公式には変更していないこと」を考えればはっきり言って疑問でしょう。

*4:著書『「ソビエト外交パラダイム」の研究』(1999年、国際書院)、『中・ロ国境4000キロ』(2003年、角川選書)、『北方領土竹島尖閣、これが解決策』(2013年、朝日新書)、『入門国境学』(2016年、中公新書) など

*5:2005年、中公新書

*6:個人的にはこの可能性の方が高いと見ます。

*7:プーチン政権下で安全保障会議書記、国防相、第一副首相、大統領府長官を歴任。メドベージェフ(当時、第一副首相)がワンポイントリリーフ大統領に指名されるまでは、イワノフ(当時、第一副首相)が「ワンポイントリリーフ大統領になる」と予想する見方も少なくなかった。

*8:プーチン政権下で大統領府長官、第一副首相、首相を歴任

*9:首相、革命指導評議会議長、全国人民会議書記長を歴任

*10:レニングラード(後にサンクトペテルブルグ)市長のアナトリー・サプチャークのもとで市財政局長、副市長などを務める。プーチン(当時、サプチャークの側近の一人として副市長などを務めた)との関係もこの頃形成された。

*11:ここで言う「性交」とは「膣へのペニス挿入」でしょう。

*12:この辺りはプロである法務官僚がきちんとした条文をつくるでしょう。