東条英機がコミンテルンの手先ねえ?(苦笑)

id:Bill_McCrearyさん記事『あしかがフラワーパークでの写真(ほかに社会時評部分あり)』
で拙記事
http://d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/20080819/1307052595
をご紹介頂きました。ありがとうございます。
 さて、拙記事(http://d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/20080819/1307052595)及びid:Bill_McCrearyさん記事では「二階*1自民党幹事長を中国の手先呼ばわりしながら、安倍は非難しないデタラメ右翼」が批判されていますが、戦前、この「二階氏・中国の手先呼ばわり」に匹敵するトンデモ主張「陸軍統制派・コミンテルンの手先」説が存在しました。このトンデモ主張については拙記事(http://d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/20080819/1307052595)でも実は簡単に取り上げています。
 家村なるトンデモ右翼が

コミンテルンに操られた統制派の陰謀により真崎*2大将は弾圧され、二・二六事件の黒幕にでっち上げられて今日に至っている。

と主張したのを簡単に突っ込んでいます。
 この家村トンデモ説の一つのルーツ、根拠となってるのが「近衛上奏文」で主張された「統制派・コミンテルンの手先説*3」です。なお、「近衛上奏文」の頃の「統制派の中心人物」は東条英機*4元首相ですから、これは「東条・コミンテルンの手先」つうことになります(他にも有名な統制派の人間としては、皇道派の相沢三郎中佐に暗殺された永田鉄山陸軍省軍務局長、戦後、東条と共にA級戦犯として死刑になった武藤章*5・元陸軍省軍務局長などがいます)。
 まあ、近衛元首相は本気ではなかったと思いますが、それにしても「一寸信じがたいことであって」、歴史学者の説明でもほしいところですが、彼は「東条左翼説」が東条攻撃として意味があるとは思っていたわけです。なにせ「私的な文章」ではなく「公的な上奏文」ですからね。昭和天皇相手に出す文書にこういう事を書いたわけですから。「近衛って晩年精神を病んでたのかしら?」「戦後自殺したのもそれが一因かしら?」と思いたくなります(ただし昭和天皇はさすがにそうした東条攻撃を相手にしなかった)。
 「自分の政敵に無茶苦茶なレッテルを貼って攻撃する」つう近衛のメンタリティは今のトンデモ右翼連中に酷似してる気がします。
 いずれにせよこうした近衛の統制派陰謀論はその後の「日本の戦争はソ連にはめられたモノ」とする陰謀論の一つのルーツと成っていきます。
 なお、近衛がこうした攻撃を東条にすることでわかるように戦前日本に置いて東条は政財官界から圧倒的支持を得ていたわけでもない。ウィキペ「東条内閣」でも分かりますが、岡田啓介*6元首相、米内光政*7元首相、若槻禮次郎*8元首相らいわゆる重臣グループや岸信介・東条内閣商工相(戦後首相)などは東条内閣末期において東条内閣打倒工作で動いていました。
 にもかかわらずA級戦犯で死刑になると「東条英機は悲劇の英雄」として靖国に祭ってしまうんだからまあ日本ウヨ連中もいい加減です。
 酷いのになると、家村のように「東条左翼説」を唱えながら、「東条の靖国合祀に反対しない」なんてのもいますし。

*1:小渕、森内閣運輸相、小泉、福田、麻生内閣経産相自民党総務会長(第二次安倍総裁時代)など歴任

*2:台湾軍司令官、参謀次長、陸軍教育総監など歴任

*3:ただし統制派は「統制経済は有効であるという意味」ではソ連をそれなりに評価していました。また企画院事件や満鉄調査部事件(いずれもでっち上げですが)でわかるように統制派は有能で信用がおけると見なした人間なら「過去に左翼活動の前歴がある人間」でも登用しています。この辺りが「統制派左翼説」の理由でしょう。

*4:関東憲兵隊司令官、関東軍参謀長、陸軍次官、近衛内閣陸軍大臣などを経て首相

*5:支那方面軍参謀副長、北支那方面軍参謀副長、陸軍省軍務局長、近衛師団長、第14方面軍(フィリピン)参謀長など歴任

*6:田中義一、斎藤内閣海軍大臣、首相など歴任

*7:林、近衛、平沼、小磯、鈴木内閣海軍大臣、首相など歴任

*8:桂、大隈内閣蔵相、加藤高明内閣内務相などを経て首相