今日の産経ニュース(11/25分)ほか(追記・修正あり)

毎日新聞『不正輸出、暗視カメラ、中国へ ネット落札 留学生を書類送検 外為法違反容疑』
https://mainichi.jp/articles/20171125/ddm/041/040/105000c

・暗視カメラは搭載されていた国土交通省の防災ヘリコプターから取り外され、廃棄される予定だったが、インターネットのオークションサイトに流出。
・暗視カメラは元々、国交省が2006年に米国から輸入したヘリ「愛らんど号」に搭載されていた。同省は15年9月、三菱電機に別のカメラとの交換と廃棄処分を発注したが、下請け業者が勝手に転売し、複数の業者を経てオークションサイトに出品されたという。
・軍事利用が可能なため、このカメラの輸出入には国際武器取引規則に基づく米国の許可が必要になる。また日本の外為法でも輸出に経済産業相の許可が必要な「リスト規制」の対象品とされている。ただオークションサイトへの出品を規制する法律はないという。
 オークションサイトにカメラが流出したことを受け、国交省は6月、三菱電機を2週間の指名停止措置にした。また警視庁は、三菱電機に廃棄処分したと虚偽の報告をしたとして、下請け業者を廃棄物処理法違反容疑で書類送検した。

というのだから非難されるべきは留学生よりもきちんと廃棄しなかった国交省三菱電機の方でしょう。留学生が記事のタイトルになるなんて日本のマスコミは全くとんちんかんです。そんなに国交省三菱電機が怖いのか。


【ここから産経です】
■【歴史戦】上海に「東京裁判記念館」 大学が建設計画 中国、愛国教育の拠点化 “戦勝国”の立場アピール
http://www.sankei.com/world/news/171125/wor1711250027-n1.html
 もちろん記念館に「学問上、適切な資料とは認めがたい資料」が展示されるなどの問題がない限り、何の問題もありません。そして産経は「こうした記念館を作ること自体が反日」なんて馬鹿ウヨですから話になりません。
 産経の主張は

ホロコースト資料館は反ドイツだ
原爆資料館原爆ドームは反米だ
・シベリア抑留記念館は反ロシアだ

レベルの与太でしかありません。


■中印の間で揺れる小国ネパール 26日に下院選、親中政権誕生の可能性
http://www.sankei.com/world/news/171125/wor1711250022-n1.html

 (ボーガス注:第2党で最大野党の)統一共産党と第3党のネパール共産党毛沢東主義派(毛派)が「左派同盟」を結成すると発表した。

 元々極左過激派で、ネパール国軍相手にゲリラ戦争もやっていた毛派が穏健左派の統一共産党と「野党共闘」するほど現実主義化するとは驚きました。

 統一共産党のイシュクル・ポカレル書記長は「党名は『リベラル』という意味でとらえてほしい」とくぎを刺すが、「中国寄り」(地元ジャーナリスト)との声は強く、同盟側が勝利なら親中政権誕生は避けられない。
 対するシェール・デウバ首相率いる第1党・ネパール会議派(NCP)は親インド住民「マデシ」の取り込みを狙う。

 「党名はリベラルという意味」かどうかはともかく、まあ今時スターリン主義ではないわけです。
 しかし産経を信じれば「親インドか親中国か」というのが選挙戦の一つの争点のようです。

 5月、中国が進める現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」に協力することで合意。中国の鉄道をカトマンズ*1まで延伸する計画も持ち上がる。4月にはネパール軍と中国人民解放軍が初の合同訓練も行うなど接近は誰の目にも顕著だ。
「中国人の観光客も圧倒的に増えた。インド人より中国人に稼がせてもらっている」と話すのは、カトマンズで土産物屋を経営する男性(65)だ。仏像や絵画を手当たり次第、“爆買い”していくので店の売り上げは3年前の3〜4倍になったという。

 つまりは産経が「左派同盟」に比べ、親インドで「中国から距離を置いてる」と評価する現与党・ネパール会議派も、産経ほどの反中国ではないわけです。

 市民にとっては平均所得が年間800ドル(約9万円)という経済問題の方が深刻だ。候補者の遊説を見ていた主婦、ラムケシャリ・シェスタさん(60)は、4人の孫が誰も学校に通えていないという。「何党でも中国でもインドでもいい。生活を楽にしてほしい」とつぶやいた。

 まあそういうことですね。

【追記】
■人民日報『中国とネパール 「シルクロード」観光協力を模索』
http://j.people.com.cn/n3/2017/0424/c94476-9206799.html

 中国国家観光局とネパール中国工商会は19日、ネパールの首都カトマンズで「シルクロード」をテーマにした観光交流会を行い、双方は「一帯一路」(the belt and road)の呼びかけの下で両国間の観光協力をよりよく推進するにはどうするかを掘り下げて話し合った。
 ネパールの文化・観光・民間航空大臣、中国の于紅・駐ネパール大使らの政府関係者があいさつの中で、「中国とネパールは文化観光資源が非常に豊富であり、両国の観光協力のさらなる深化の潜在力は大きい」と述べた。
 中国国家観光局カトマンズ事務所の責任者・央宗氏は、「『一帯一路』(the belt and road)は両国が観光を加速的に発展させるチャンスであり、ネパール観光産業が中国の呼びかけから多くの利益を獲得することを確信する」と述べた。
 ネパール中国工商会の代表は、「定期航空便の不足、航空券価格の高さといった要因が両国の人々のより多くの相互訪問の機会を奪っている。カトマンズから広州への直行便のチケットは、カトマンズからタイのバンコクを経由して広州に行くチケットよりもかなり高い」と述べ、カトマンズから上海、北京への直行便をできるだけ早く開通させるよう呼びかけた。
 現在、中国国際航空中国南方航空中国東方航空、四川航空が大陸部の都市とカトマンズを結ぶ直行便を運航している。ネパール唯一の国際空港のトリブバン国際空港は容量制限などさまざまな理由から、現在は大陸部への直行便は広州*2成都*3、拉薩(ラサ)*4昆明*5の4都市にしか就航していない。
 ネパールの公式データによると、2016年にはネパールを訪れた中国人観光客は約10万4千人に上り、前年の50%以上増加したという。


■現代ビジネス『中国共産党が「ネパール乗っ取り」を目論んでいるこれだけの証拠』長谷川まり子*6
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53535
 ネパールに経済進出している程度の話をこういう反中国デマ記事にするのは本当にやめてほしいですね。
 くだらない反中国デマはオミットして「中国のネパールにおける存在感の増加」について触れた客観的記述のみ紹介しておきます。

・中国からの旅行者が急増中のネパール。2013年の12万3000人から約6倍の伸びを見せ、2016年には73万人に達した。
・中国は、ネパールに対し、インフラ・道路交通・医療衛生・教育文化・エネルギー・農業・防災・情報通信・文物古跡の修復など、さまざまな分野で援助を続けていった。なかでも大きな話題になったのは、ネパール鉄道計画だ。
 中国は、2006年、中国西部の青海省西寧*7チベット自治区首府ラサを結ぶ青蔵鉄道を開通させた。2014年には、その先シガツェまでの253キロが完成し、さらにはネパール国境まで延伸するという計画である。
 ネパールには、鉄道がない。正確にいえば、ジャナクプルに狭軌鉄道が走ってはいるが、全長51キロと短く、人や物資の輸送にそれほど役立っているとは思えない。長距離移動はバスか飛行機を利用するほかないのだが、国内線は運賃が異常に高く、庶民には手の届かない代物だ。
 バスの方も、三度、四度と使いまわされた中古車であるため、故障による立ち往生も日常茶飯事である。鉄道が通りさえすれば移動の便は格段によくなるはずと、皆、期待に胸を膨らませているのだ。
・教育の分野でも、破格の援助が行なわれている。(中略)以前から奨学制度はあったのだが、近年、その数は急増。毎年約100人に中国政府が奨学金を提供し、中国在住のネパール留学生の総数は、5000人に達したといわれているのである。
・今年上半期、中国・ネパール両国の貿易額は4.5億ドルに達し、前年同期比で18.3パーセントの増加を見せた。しかも、中国がネパール第一の貿易相手国となったという。
・ネパール政府の統計データによると、2015〜2016年の財政年度において、中国のネパールに対する投資額とプロジェクトの数は第1位とのことである。こうした一連の流れを受け、最近、聞かれるのはこんな声だ。
「中国はネパールのためにいろいろしてくれるから好き」
「ネパールは、ずっとインドに寄りかかっていたけれど、これからは中国と仲良くした方がいい」
・急増する中国人観光客を当て込み、ホテルやレストランを開業するため、ネパールに移り住む中国人が増え続けているのだ。


■【産経抄】11月25日
http://www.sankei.com/column/news/171125/clm1711250003-n1.html
 予想の範囲内ですが森友・加計疑惑を「朝日新聞など安倍批判メディアによる安倍総理への風評被害」と言い切っちまうのだから産経も全く正気ではないですね。


■【正論12月号】米大統領から頼りにされる指導者 兄・安倍晋三の外交戦略が日本を守る 岸信夫
http://www.sankei.com/premium/news/171125/prm1711250010-n1.html
・正直「トランプにそれなりの苦言を呈するEU諸国」の方が対等に評価されてて、へいこらしかしない安倍なんか「都合のいい子分」扱いでしょうねえ。
・安倍の実弟にして、第二次安倍内閣外務副大臣という岸信夫が「安倍外交は世界に評価されてる」と自画自賛したところで説得力はありません。
 その上

 米軍関係者の高い評価を受け話題にされていたのが、安倍首相が2012年、国際NPO団体「PROJECT SYNDICATE」に発表した英文の論文「アジアの民主的セキュリティ・ダイヤモンド構想」についてでした。  
 「セキュリティ・ダイヤモンド構想」というのは日米同盟を元手にこれを面的に広げて東南アジアやオーストラリア、さらにはインドに至るまでの連携網を構築しようという構想です。シーレーンの安定的な確保や東シナ海南シナ海の平和維持、そのために中国を封じ込める包囲網を築くことを狙った構想です。 
 日本ではあまり採り上げられていませんが、実際に論文を見ると非常に強いメッセージが伝わってきます。外交における表現というのは通常、回りくどい表現をあえて使うことがあるのですが、安倍首相の論文はそうではありません。中国の軍拡などを踏まえて例えば南シナ海の現状を「北京の湖」といった表現で警鐘を鳴らしています。こうした端的な表現は英語だからこうなった面がありますが、中国の脅威を現実に感じる国々にとってみれば、非常に強く共感できるメッセージとなります。
(中略)
 フィリピンは経済的に中国の影響を受けていますが、一方で南シナ海の問題を抱えていて、ドゥテルテ*8大統領はアメリカや米軍基地を非難するなど微妙な問題を抱えています。同じく中国との間で南シナ海の問題を抱えているベトナムもそうです。アメリカはベトナム戦争があってわだかまりを抱えています。安倍首相が「セキュリティ・ダイヤモンド構想」を掲げてこうした国との関係構築を積極的に図ることで、結果としてアメリカのプレゼンスがアジアで円滑に維持されている面があるわけです。  

ですからねえ。こうして中国を敵視する一方で、この岸の駄文には「日中友好」という言葉は全く出てこないのですから唖然とします。
 とはいえ実際の安倍外交は少なくとも岸がこの駄文で宣伝するほどには反中国ではないでしょう。

 トランプ大統領と安倍首相がゴルフを一緒に楽しんだ話は皆さん、ご記憶かと思います。 
 実は祖父の岸信介*9アイゼンハワー*10大統領とゴルフをして信頼関係を築いて安保改定にこぎつけました。

 「岸&アイゼンハワー」と「トランプ&安倍」を一緒にするとはねえ。格が違いすぎるでしょう。

「大統領や首相になると、嫌なやつとも笑いながら話をしなければならない。ところがゴルフだけは好きな相手でなければ一緒にやれないものだ」。これがアイゼンハワー氏がラウンド後に語った言葉だと言われています。 

 まあただのリップサービスですよねえ。

安倍首相が相手の心をつかむことに実に卓越している点を指摘したいと思います。  

 習*11主席や文*12大統領を激怒させてる男のどこが「相手の心をつかむことに実に卓越している」んでしょうか。

夕食を取りながら懇談をしたある米軍幹部OBはこんなことを言っていました。
 「北朝鮮が東京にミサイル攻撃を行ったり、中国軍が九州に上陸したら米軍は間違いなく反撃をするだろう。」

「中国軍が九州に上陸」て本気でそんな事態があると思ってるんでしょうか?

*1:ネパールの首都

*2:広東省省都

*3:四川省省都

*4:チベット自治区省都

*5:雲南省省都

*6:著書『少女売買:インドに売られたネパールの少女たち』(2014年、光文社知恵の森文庫)、『アジア「女子旅」の達人:プチ・ゴージャス気分の味わい方から、リスク回避術まで』(2016年、光文社知恵の森文庫)

*7:青海省省都

*8:ダバオ市長を経て大統領

*9:戦前、満州国総務庁次長、商工次官、東条内閣商工相を歴任。戦後、自民党幹事長(鳩山総裁時代)、石橋内閣外相を経て首相

*10:陸軍参謀総長NATO軍最高司令官などを経て大統領

*11:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*12:盧武鉉政権大統領秘書室長、「共に民主党」代表を経て大統領