「珍右翼が巣くう会」に突っ込む・番外編(12/22分:常岡浩介と黒井文太郎と桜木武史の巻)(追記・訂正あり)(追記・訂正あり)

【最初に追記】
 id:Bill_McCrearyさん記事『産経新聞の本音(?)』https://blog.goo.ne.jp/mccreary/e/3c559bcda6e115778d148136d721c9faでこの拙記事をご紹介頂きました。いつもありがとうございます。
【追記終わり】

 常岡*1らを取り上げます。主としてロシアネタ、シリアネタ(場合によってはイラン、サウジ、トルコネタ)です。専門家ではないので素人が適当なことコメントしてるに過ぎませんが。
■常岡らのツイートにコメント

常岡浩介
 かつてソ連軍の撤退を誰もが(朝日新聞以外?)喜んだが、その後、イスラム教徒同士*2が果てしなく殺し合い、アフガニスタン全土を焼け野が原、あるいは石器時代に戻してしまった*3

 おいおいですね。「ソ連軍が撤退した後、安定した政権が出来ればいいが、かえって無政府状態になどならないだろうか?。対ソ連でとにもかくにも一枚岩だったアフガンゲリラが内紛をしないか?(残念ながら実際内紛になったといっていいのでしょうが)」と危惧する人間はいても「ソ連軍撤退を残念がる人間」なんて「よほどの親ソ連」でない限りいないでしょうよ。そしてソ連軍撤退当時の朝日は明らかにそんな親ソ連ではない(俺が指摘した「ソ連軍撤退後の危惧、不安」は「残念がる」ということとは違います)。常岡が本気で言ってるならばかだし、デマ垂れ流しなら別の意味でバカです。
 まあさすがに故意のデマでしょうね。今時、朝日に「親ソ連」なんてデマ中傷をすることなどまともな人間には到底出来ませんが常岡はまともじゃないですからね。常岡は「長崎放送退社後」一路、劣化が進んでるように思います。やはり「カネに詰まってウヨ相手の商売を始めた」つうことなんでしょうね。
 こういう常岡のような恥ずかしい生き方はしたくないもんです。
 結局「常岡だけではなく福島香織などもそうですが」、「才能のない人間は安易に独立などすべきではない」ということなんでしょうね(小生は才能がないので脱サラなどしませんが)。まあ、まともな人間なら「武士は食わねど高楊枝(カネのためにプライドを捨て下劣なまねをしたりしない)」なんですが常岡も福島もまともではなかったということですね。

常岡浩介
 対米従属だから対露、中、韓の外交に失敗したわけではない。的外れだし、一貫性もない。

 こういうことを言う常岡は安倍政権の「対米従属ぶり」をなんとも思ってないんでしょうねえ。
 いやそれどころか、安倍の米国ポチぶりを「すばらしい!」とすら思ってる疑い濃厚です。
 まあ「常岡のダチ」「自称軍事ジャーナリスト」黒井文太郎が一番わかりやすいですが常岡が付き合ってる連中ってほとんど「安倍の対米従属をなんとも思わない米国のポチ連中」ですからねえ。高世が常岡から離れた理由の一つ(それだけではないでしょうが)はそれかもしれません。
 さすがに「知人友人に左派も居るらしい高世」としては「米国ポチ」常岡と付き合うことには次第に躊躇を感じてきたのでしょう。何せ常岡は「金儲けの能力、ジャーナリストとしての能力では明らかに無能」で本もろくに出してないし、知名度もありません。「高世にとって金儲けにならない上にジャーナリストとして無能で人格も破綻していて敵が多い=常岡」では高世も「常岡からフェイドアウトしていく」のは当然でしょう。
 なお、浅井基文先生など多くの人間が指摘していますが、ロシア外交*4はともかく「安倍が対米従属だから対中、対韓国外交に失敗してる」つう面は明らかにあるでしょうね(常岡はなぜかそうした事実を否定したいようですが)。もちろん「対米従属の是非」はともかく対米従属なら当然に対中、対韓国外交に失敗するわけではない。
 ただし安倍の場合「米国にべったりなら中国や韓国ともめてもたいしたことない」「ジャイアン米国がスネ夫の自分を支持してくれさえすれば、のび太もしずかちゃんも出木杉も、とにかく米国より格下の国は自分に従う」という間違った考えによって「対米従属」が対中、対韓国関係を悪化させるわけです。
 特に中国はともかく韓国など安倍は「韓国は在韓米軍などで米国に世話になってるから頭が上がらない。俺が米国に気に入られれば韓国など米国との関係で俺に頭を下げる」と大きな勘違いをしてることは間違いないでしょう。

常岡浩介がリツイート
・KaSuehiro
 ISISを支援し、使ったのはシリアのアサド大統領だった。アサドは反政府派をテロリストに仕立てるためにISISを利用した。パルミラではアサドがISISに武器を提供し形だけの戦闘し、パルミラでISISを勝たせた。

 完全な陰謀論ですね。
 俺はシリア素人ですが、いかに反体制派が「アサドにとって最大の敵」でもIS支援なんざ、さすがにしないでしょう。そんな事実があれば日本マスコミも報道してるでしょうし。せいぜい「反体制派との戦闘を重視し、ISとの戦闘を後回し」レベルでしょう。

黒井文太郎
 日露首脳会談。(ボーガス注:日露両国政府の発表では)領土交渉進展は予想通りゼロ(ボーガス注:で問題は先送り)。予想通り、領土交渉進まずに、ロシア側に不満があった経済協力加速化を押し付けられた結果に。こんなでも「平和条約交渉加速化合意」とか新聞は書くのかなあ

 この件に限れば黒井の安倍批判、マスコミ批判に全く同感ですね。
 しかし北朝鮮や韓国も「安倍自民とその支持層は、何でロシアだけにはあんなに大甘なの?。我々には敵対的なのに?」と首をひねってることでしょう。

常岡がリツイート
原田浩司
 (ボーガス注:プーチンやラブロフ*5に対する態度って)これって、安倍*6政権ではなく鳩山*7民主党政権だったら、怒り出す人が多いんだろうな。

 別に鳩山に限定する必要もないでしょう。「多い」かどうかはともかく「ウヨにとってのプリンス安倍以外なら」橋本*8や小渕*9と言った自民党政権ですら産経や国基研などは非難してるでしょうね。
 何せ、プーチンらの過去発言が「クリル諸島はロシアの領土だと認めろ(ラブロフ)」「島を返してほしかったら在日米軍を置かないと確約しろ(プーチン)」「島のことは棚上げしてまず平和条約を結ぼう(プーチン)」ですからねえ。
 でこれらについて意見を聞かれた河野外相の態度が「次の質問どうぞ」。

常岡浩介がリツイート
・ちえぞう
 差別主義者の過去の発言に目をつぶってまで手を繋がなきゃいけない理由が1ミリも理解できない。そんなことしてただ頭数を増やしてどーすんの?
 踏みつけられてる側じゃないから言えるんだよ。

 常岡と類友のいう「差別主義者」「差別主義者と手を組む奴」が誰を意味するかは不明です(いちいち確かめる気もない)。
 また類友はまだしも「過去に問題言動だらけの常岡」にそんな偉そうなことを言う資格は全くないと思いますが、それはさておき。
 一般論としてはその通りでしょう。「もしかしたら」最近、自由党代表・小沢一郎*10や国民民主党の前原*11らと会談した「差別主義者・橋下*12」を野党共闘関係で持ち上げる輩が一部にいますからそのことですかね?。いかに安倍政権を打倒したいとは言え俺はさすがに「橋下なんぞと手を組む気」は全くありません。橋下と会談しただけでも俺的には「小沢も前原も本当にクズだな」ですね(まあ、だからといって「小沢自由党所属のデニーなんか県知事選に出るな」とか言うほど小生も狭量ではないですが)。
 そもそも嘘つき橋下の舌先三寸なんぞ真に受ける人間の気が知れません。橋下に「安倍政権を打倒しまともな政権を作る」という意味での野党共闘支持なんて考えはかけらもないでしょう。単に「前原や小沢と手を組んで俺もまた政界に復帰したい。そのためには可能な限り小沢や前原に調子を合わせておく」程度の話でしかない。
 それはともかくもちろん

・ナチドイツを倒すためとはいえスターリンとは手を組めない!(いやそれじゃヒトラーが倒せないだろ?)
ウイグルを差別してるらしい中国と国交なんか結べない!
・どんな理由があれ、過去に橋下の支援を受けていた竹山*13堺市長なんか我々共産党は選挙で支持できない!(今は橋下からは離れたし、橋下一派に勝利されるよりはましだろ?)
・過去に自民党員として太田*14知事(当時)と敵対していた翁長氏*15など我々共産党は選挙で(以下略)

とかそういう非現実なわけにもいきません。場合によっては一定の妥協は必要です。
 たとえば実際「共産党は竹山氏や翁長氏を支持しており」、一定の妥協をしているわけですが、「ダライ猊下高須クリニックなどウヨ(差別主義者にして歴史修正主義者)と野合して何が悪い(Mukke)」とか言うのは全く論外だと思いますね。
 id:Mukkeがそういうことをいうのは『常岡と類友』風に言えば、「ダライが踏みつけにしてる側(ウヨが誹謗中傷する中韓の戦争被害者)」に対する「同情の念も何もMukkeにはない」「ダライさえ良ければMukkeにとってはそれでいい」と自白してるようなもんです。まあ、『常岡と類友』風に言えば、「(チベット支持を自称する連中の)ただ頭数を増やしてどーすんの?」であって「ウヨなんて何の頼りにもならない奴」とつきあってもむしろ「『中国に侵略されたチベットを見れば分かるように九条改憲は必要だ』などとウヨに勝手な政治利用されるわ」、「ウヨ以外からは距離を置かれるわ」でダライにとってもデメリットだと俺は思いますが。

黒井文太郎*16
 金英哲*17ということは、またあれかな。対米最強兵器の「トランプ個人をひたすら褒めまくる親書」投下作戦?

 反北朝鮮のウヨ・黒井らしいですが「やれやれ」ですね。なんでこう米朝交渉の意義をおとしめるようなツイートしか出来ないのか。


■日経『北方領土決着前の条約「結んでもいい」42%、「結ぶべきではない」46% 本社世論調査
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40538970X20C19A1PE8000/
 ということで「結ぶべきでない46%」の上に「結んでもいい42%」には「島が一島でも返還されるならば結んでもいい」がかなり含まれるでしょう。
 つまりは「結ぶべきでない」が事実上ほとんどだろうという話です。安倍政権下において「島が一島でも返還される」なんてあり得そうな話ではありませんからね。
 なお、安倍対ロシア外交の評価は「野党支持層の方がやはり低い」とはいえ自民支持層ですら、過半数以上が「今後進展があるか疑問」と回答しており、安倍対ロシア外交を手放しで支持する人間は与党支持層ですらほとんどいません。


■浅井基文ブログ『安倍外交批判(中国専門家分析)その一:日ロ平和条約交渉』
http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2019/1087.html

 私は、安倍外交(中略)は(中略)成果ゼロ(安倍外交で何か成果があったと指摘できる人はいるでしょうか?)であるにとどまらず、日本の対外的イメージそのものを損なっている惨憺たる内容、深刻なマイナス評価に値すると考えています。最近の極めつけは国際捕鯨条約からの脱退です。しかし、本質的にもっとも深刻なのは対米関係です。トランプ政権に対しておもねることしか考えていない安倍外交の哀れなまでの卑屈さ(膨大な税金を使った対米先進兵器購入はその集中的表れ)に関しては、イラン核合意から脱退し、対イラン全面制裁に乗り出したトランプ政権に対し、SPV(特別目的装置 special purpose vehicle)を作ることで欧州企業がイランと取引する金融的担保制度を作り、イラン核合意(JCPOA)を守ろうとしているEU(独仏英も積極的に参加)、また、トランプの露骨を極めるアメリカ・ファースト政策に対して欧州独自の安全保障政策(欧州軍創立を含む)に向かって共同歩調をとろうとしている独仏首脳の動き(その実現性はともかくとして)と比較するだけでも歴然としたものがあります。
 中国の日本問題専門家が安倍外交に関して最近特に注目しているのは日露関係と日韓関係です。その分析は正に「傍目八目」です。政府の垂れ流し情報をそのまま記事にするだけの日本のマス・メディアのこれまた惨憺たる実情を見るにつけても、中国の専門家の鋭い分析は際立ちます。日露関係及び日韓関係について2回に分けて中国専門家の文章を紹介しておこうと思い立った次第です。
 今回はまず日露関係特に日ロ平和条約交渉に関して。
 1月23日付の中国網所掲の周永生(外交学院国際関係研究所教授)署名文章「北方4島交渉:ロシアの頭のキレにはかなうはずもない日本のワン・パターン」が安倍外交に対してもっとも辛辣です。

■周永生「北方4島交渉:ロシアの頭のキレにはかなうはずもない日本のワン・パターン」
・日本はロシアとの領土交渉の中で毎回中国を取り上げる。
・安倍政権の高官*18は、ロシアと平和条約を結ぶのは中国を牽制するためだと言及している
・しかし疑問の余地がないところだが、ロシアの(ボーガス注:頭の)キレは安倍のソロバン勘定を上回っている。ロシアは、自分たちの主要な敵はアメリカであり、中国はロシアの全面的な戦略パートナーであって、このようなもっとも基本的な国際関係のパラダイムに関わる問題についてロシアは百も承知であり、日本にだまされることはあり得ないだけではなく、ロシアの戦略的考慮と日本の領土要求との間には深淵が横たわっている。ロシアは主として領土問題交渉を餌にして、一方ではロシア国内に対する日本の投資を誘い入れてその技術と資金を獲得するとともに日米関係を分裂させ、他方ではチャンスを捕らえて極東地域で南下し、北海道で自由に活動しようとしている。
・ロシアは国際関係及び外交条理において百戦錬磨の老練国家であり、海千山千と形容しても良く、日本の浅はかな交渉力がどうしてたぶらかすことができようか。
プーチンが敷いた罠によって日本はすでに完全にわけが分からなくなっている。罠に引っかかった北海道のヒグマのごとく、むやみやたらに暴れ回るだけだ。

 浅井先生および彼が紹介する中国の外交評論家の言う様に「ロシアを中国包囲網に参加させる(安倍)」などと言うことはまず第一に「ロシアにそんな気がない(むしろ中国の投資をロシアに呼び込もうとしている)」という意味で、第二に「ロシアンゲート(ロシアは無実を主張)やクリミア問題(ロシアはクリミアはすでに合法的にロシア領になったと主張)でロシアが米国に妥協しない限り、米国がロシアと友好的関係にはなり得ない」という意味であり得ない話でしょう。
 そもそもロシア以外の国だってそんな「中国包囲網」に参加したがる国がどれほどあるか疑問ですが。
 またプーチンがその言動から北方領土を一島ですら返還する気があるかも疑わしいところでしょう。島の返還をネタに日本による投資を引っ張ろうとしているだけと見るべきでしょう。
 つまり北方領土返還や「対中国包囲網」という意味では完全に安倍の対ロシア外交は失敗しているという話です。


■産経『北方領土 ロシアは強欲を捨てよ』
https://special.sankei.com/f/naniwa/article/20190126/0001.html

 ロシアの作家、トルストイに民話「人にはどれほどの土地がいるか」がある。農夫が土地への欲に捕らわれる。手に入れてもより広い土地がほしくなって、また探す。日が沈むまでの1日で歩いて回った分だけ手に入れられる、という話に出合った。歩き始めたが欲を出して…。
▼日露首脳会談は今週の大きなニュースだった。北方領土で具体的な進展はなかったようだ。日本がポツダム宣言を受諾した後、わが国のこの固有領土を奪ったのは旧ソ連の強欲である。返還して当然。日本は北方領土を取り戻し国家の主権を守るという原則で臨むべきだ。ロシアは強欲を続けてはいけない。
▼民話の農夫はどうなったか。欲張って少しでも広い土地を取ろうとし、日没までに出発点に戻れそうになくなった。ふらふらになりながら走った。なんとか戻り土地を自分のものにしたが、そこで死んでしまう。欲を出しすぎてはいけない。ロシアもこの民話に学んだらどうだ。

 いやいやそんなこと言ってロシアが従う様なら誰も苦労しないんですが。ちなみに個人的にはトルストイの『人は何で生きるか』(岩波文庫など)が好きです。もちろん「あまりにも善人しかいない非現実的ストーリー」ではありますが。
 なお、この「人にはどれほどの土地がいるか」で個人的に思うのは、北方領土なんかより、むしろ「ビル・ゲイツとかあんなに稼いで何が嬉しいんだろうな。人間の欲には限界がないのかねえ」ですね。
 あるいは「この農民の様に欲を出してかえって滅びた」といえば戦前の日本がむしろ典型でしょうね。「台湾と朝鮮だけじゃいやだ、満州も俺のもんだ→満州国だけじゃ嫌だ、中国全土植民地化したい→こうなったら、東南アジアも全部俺のもんだ」で英米に無謀な戦争を挑み、結局滅びたわけです。

https://yarinokoshi.blog.so-net.ne.jp/2013-01-01
■「人にはどれほどの土地がいるか」
 パホームという小作人が、土地を買い増していき、パシキールという土地で、上のような話に出会い、遠くまで歩いて行くのですが、日没に間に合うように、必死で戻ったせいか、帰るなり、血を吐いて死んでしまいます。
 下男は、穴を掘って彼を埋葬。
 その穴の大きさだけの土地が、彼に必要な土地のすべてだったという落ちで終わります。

http://www5b.biglobe.ne.jp/~shu-sato/lds/nandeikiru.htm
■『人は何で生きるか』
 神様は天使に、一人の死にそうな女の魂を天国に連れて来るよう命じます。しかし、その女は生まれたばかりの双子の女の子を抱えており、しかも夫は死んでいました。今自分が死ぬと誰もこの子たちを育てる者がいないので、天使に魂を取らないでと嘆願します。天使はかわいそうになって魂をとらずに天国に帰ってしまいます。すると、神様は怒り、その天使に、次の3つの言葉の意味が分かるまで天に帰ってくるなと言います。
「人の中には何があるか。」
「人には何が与えられていないか。」
「人は何によって生きるか。」
 女の魂は神様の所に行ってしまい、天使は翼が取れて地面に落ちてしまいました。天使は冬の寒い中、裸で凍え、飢え、死ぬ寸前でした。そこに、貧しい靴屋がそばを通りかかります。通り過ぎようとしましたが、かわいそうになり、靴屋はこの男にコートを着せて、自分の家に連れ帰りました。靴屋の妻は、食うや食わずの生活の中、夫が見ず知らずの男を連れてきて、初めは怒っていましたがやがて気を取り直して、男をもてなします。天使は、この夫妻に神様が宿っているのを見て取り、最初の言葉の意味がわかります。
 「人の中に愛がある」
 天使はそれから靴屋の家に住み込んで働いていました。1年経ったある日、地主の男が来て、1年たってもゆがまず、破れない長靴を依頼しに来ました。しかし、その男の背後には仲間の天使がいて、今晩にも魂が召されることが天使にわかりましたが、人にはそのことがわからないのです。そして、天使は2つめの言葉の意味がわかりました。
 「人には自分には何が必要なのか知る力が与えられていない」
 6年目に双子の女の子が一人の女とともにやった来ました。その女の子たちは6年前に死んだ、あの女の子供たちだったのです。近所の女が、その女の子を引き取り育てていたのです。そして、その女が他人の子供を見ながら胸いっぱいになって、涙をこぼしたとき、天使はその女の中に生きた神を見つけて、最後の言葉の意味を理解しました。
 「人はだれでも自分自身のことを思いわずらうことによってではなく、愛によって生きる。」
 「死んだ母親は自分の子供たちにはなにが必要なのかを知る力が与えられていなかった。金持ちは長靴がもう必要ないことを知ることができなかった。人間にされた自分が生き残ることができたのは自分で自分のことを考えたからでなく、通りすがりの人とその妻に愛があったからだ。みなしごが生き残ったのは、その子たちのことを考えたからでなく、他人の女の心に愛があって、女の子たちをあわれんだからだ。どんな人でも、生きているのは、自分で自分のことを考えるからでなく、人々の中に愛があるからなのだ。神は人間がはなればなれで生きることを望んでおられない。だから、一人一人の人間が自分のためにはなにが必要なのかを、神は人間に教えてくださらなかった。神が望んでおられるのは、人間が一緒に生きることだ。人間が生きているのは、自分のことに心を配っているからだというのは、ただ人間がそう思い込んでいるだけに過ぎない。人間はただ愛によってのみ生きるのだ。愛の中にいるものは、神の中におり、神がその中にいる。なぜなら、神は愛に他ならないからだ。」
 天使はそういいながら天にのぼっていきました。

http://higurasi101.hatenablog.com/entry/2012/08/19/191212
■「人はなんで生きるか」
 トルストイの晩年の民話の中に「人はなんで生きるか」という民話があります。この民話は、天使ミハイルが、神さまの「ひとりの女の魂を抜いてくるように」といういいつけをやぶって人間界に下ろされて人生とは何かを悟ってくる物語です。
 「神さまからひとりの女の魂を抜いてくるように」といういいつけを受けて下界に行くと、女の双子を産んだばかりのひとりの妻が病気で寝ていました。母親は、子どもを乳房に抱き寄せる力もなく、天使を見つけて「天使さま、夫は死んで埋められたばかりです。姉妹もおばさんもありません。この子たちを育ててくれる人がありません。わたしの魂を連れていかないでください」と懇願したのです。天使ミハイルはそれでその母親から魂を取ってくることができず、天に戻ったのです。
 すると、神さまは、(ボーガス注:彼を天使から、ただの人間にする罰を下し)(中略)「人間の中にあるものは何か、人間に与えられていないものは何か、人間はなんで生きるか、(中略)それがわかったら、天に戻ってくるがいい」といわれたのです。
 天使ミハイルはひとりきりで素っ裸で野の中に残されました。急に人間になったので、ひもじくもなれば、凍えてもきました。ふと見ると、礼拝堂が建っていたので、礼拝堂の傍に身を寄せたのです。やがて日が暮れてすっかり弱ってしまいました。そこへ、靴職人のセミョーンが通りかかり、ミハイルに着物を着せて自分の家に連れて行ってくれたのです。家に着くと、奥さんのマトリョーナが、ぶつぶつ文句を言いながらも最後には面倒を見てくれました。
 その時わたしは神さまの第一の言葉「人間の中にあるあるもの」−それは愛であることを悟りました。
 靴職人として修行して1年が経ったある日、死の天使の影を背負った一人の裕福なお客が形も崩れなければ縫い目もほころばない長靴を作ってくれと注文に来ました。この時、神さまの第二の言葉を悟ったのです。
 「この人は一年先のことまで用意しているが、この夕方までも生きていられないことを知らないのだ」。
 その時、神さまの第二の言葉、「人間に与えられていないものは何か」、それは「人間には自分の肉体のためになくてならぬものを知ることが与えられていない」ということが分かりました。(肉体の維持のために必要な分限がわからない。必要以上に物へこだわり、富へこだわることになっている。)
 靴職人として働いて6年目、双子の女の子がひとりの女の人と一緒に来ました。その子どもたちは、ミハイルが魂を抜いた母親の子どもたちでした。その子どもたちは、死なないで生きていたのです。子どもたちは、隣りの乳飲み子を抱えた婦人が乳をくれてこのとおり大きくなったのです。婦人は、「我が子は、二つの時に亡くなり、それきり子どもは授かりませんが、財産は増え、今はこの二人がかわいくて仕方ありません」と語りました。
 その婦人が感動して泣き出した時に、その婦人の中に生きた神様を見て、神さまの第三の言葉「人はなんで生きるものであるか」を悟りました。
「わたしは、すべての人は自分のことを考える心だけでなく、愛によって生きるのだということを知りました。神さまは、人々が離ればなれに生きてゆくことを望んではいらっしゃらないで、みんなが心を合わせて一つになって生きていくことを望んでいらっしゃる。ひとが自分で自分のことを考える心づかいによって生きているように思うのは、ただ人間がそう思うだけにすぎなくて、じっさいはただ、愛の力だけによって生きているのだということがわかりました。愛によって生きているものは、神さまの中に生きているのです。つまり神さまは、その人の中にいらっしゃるのです。なぜなら、神さまは愛なのですから。」


■産経『性急な対露交渉は禍根を残す』新潟県立大学教授・袴田茂樹
https://special.sankei.com/f/seiron/article/20190125/0001.html

 深夜にテレビ放送された共同記者発表の様子を見ただけで、拍子抜けするほど成果らしきものは感じられなかった。
 安倍晋三首相の発言や表情からは、困難な交渉で確実に成果をあげたという満足感や高揚感、喜びの感情はくみ取れなかった。
 ただ私は率直に言うと、今の両国の交渉状況の下では、変な「成果」をあげるよりも、成果らしきものが何もなかったことは、却(かえ)って良かったとさえ思っている。その理由は、安倍首相の平和条約締結に対する、歴代のどの首相よりも強い熱意には大いに敬意を払うものの、今の官邸の対露政策は、露ペースに巻き込まれ過ぎていると懸念するからだ。

 袴田が肉親のこともあってアンチロシアだと言うことを割り引いても彼の言うとおりだと思います。
 それにしても「安倍万歳」産経だと袴田も「心にもない安倍への敬意」を語るわけです。

 1998年11月の日露のモスクワ宣言のときもエリツィン大統領と小渕恵三首相は「国境画定委員会」を設立した。また、プーチン政権下の2002年3月にイワノフ*19外相は下院で、日露間には国際法的に認められた国境が存在しないことを認めていた。これらも、領土問題が未解決であることを露側が認めていたことを示す。プーチン氏はこれら日露両国がともに認めていた事実を、05年に否定した。
 1月14日の河野太郎外相とラブロフ外相の会談で後者が「第二次大戦の結果、南クリール諸島は露領になったことを日本が認めない限り、領土交渉の進展は期待できない」との強硬発言をした。これはプーチン氏による歴史の修正を忠実になぞるものである。ラブロフ氏が柔軟なプーチン路線に反して、対日強硬路線を遂行しているというのは明らかに誤解である。
 私が露ペースと呼んだ事態、つまり日ソ共同宣言のみを基礎にして平和条約交渉を加速させるという露との合意に首相官邸は合意したが、これはこれまでの日本政府の長年の血の滲(にじ)むような対露交渉の成果を自ら否定するものではないか。私が、成果らしきものが何もなかったのは却って良かったとさえ思っている、と述べた意味も読者にはご理解頂けると思う。
 私は2島返還さえもプーチン政権下では極めて可能性が小さいと判断している。したがって「2島プラスα」論とか「2島プラス継続協議」論でさえも、これまでのプーチン発言から考えると、現実性はないと考えている。

 この袴田の文章は「領土返還という意味では安倍はむしろ事態を悪化させた。何もしない方がましだった」としか理解できないでしょう。

 日ソ共同宣言だけ認める人の多くは、国後、択捉の返還は全く現実性がないからだと述べる。私もプーチン政権下では現実性はないと考える。しかしそれは現状を基礎とした発想だ。激動する国際情勢の中において20年、50年、100年先もこの問題に関する情勢が変化しないと誰が言い得るのか。

 安倍を批判する袴田が「プーチン政権下では返還はない」として「(プーチンの政治的影響力が弱まるであろう)10年以上先を見よう」としているのが興味深い。つまりは安倍政権での島の返還などない、と袴田は理解していると言うことです。


■朝日『「北方領土」を口にしない安倍首相、ロシアの優位あらわ』
https://www.asahi.com/articles/ASM1R050NM1QUTFK026.html
■読売『成果急ぐ日本、余裕あるプーチン氏…任期に差』
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20190124-OYT1T50011.html
■ウェッジ『ロシアは石ころ1つ返さぬ、「2島返還」コケにされた日本』樫山幸夫(産經新聞論説委員長)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15182
 確かに「島の返還」という意味では何の進展もなかったわけですが「ロシア優位(朝日)」「余裕のプーチン(読売)」「こけにされた(樫山・元産経論説委員長)」とはっきり書くとは驚きです。産経など一部を除き、「もはやマスコミ各社も他の問題はともかく、島の返還などどう見ても望み薄な対ロシア外交ではさすがに安倍に距離を置きつつある」んでしょうか。
 なお、「任期」という要素がないとは言いませんが、それより大きいのは「実効支配」でしょう。
 今時「戦争して奪い返す」なんて出来る話ではない以上、実効支配している方が立場は強くなります。
 そういう意味では尖閣問題においては中国より「実効支配する」日本が有利だし、竹島問題では日本より「実効支配する」韓国が有利なわけです。


■産経『安倍首相、日露平和条約は「極東の平和にプラス」』
https://www.sankei.com/politics/news/190123/plt1901230054-n1.html
 そんなことをいうならそれこそ「拉致で進展がなくても」、「極東の平和のため」に日朝国交正常化を実現すべきでしょう。
 なお「極東の平和」などと安倍が言い出したのは「島の返還について進展がないこと」をごまかすためでしょうね。


■産経『「中露が手を組む事態だけは避けねば」 安倍首相が目指す日露新時代とは』
https://www.sankei.com/politics/news/190123/plt1901230010-n1.html

「中露が緊密に手を組む事態だけは避けなければならない」
 首相は周囲にこう語った。
 首相のこの判断は筋が通っており、平和条約締結はその大きな推進力となり得る。

 「BRICS*20首脳会議(中国とロシアがメンバー)」「BRICS銀行(BRICS首脳会議で設立が決定)」「上海協力機構(中国とロシアがメンバー*21)」「ボストーク2018(2018年に行われたロシアの軍事演習。中国軍*22が参加した)」「中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利70周年記念式典へのプーチンの参加(なお、安倍は参加せず)」を考慮すればどう見ても「中露関係は日露関係よりも緊密」でしょうに、なんでこういうロシア認識が出来るのか本当に謎です。 
 「中国軍を自国の軍事演習に参加させる国ロシア」がなんで「日本のために中国を牽制してくれる」と思えるのか。
 しかし産経内部も完全に混乱していますね。この記事は安倍ロシア外交支持ですが、一方で産経には袴田茂樹*23の安倍対ロシア外交批判などものるわけです。
 あるいは

https://www.sankei.com/column/news/190124/clm1901240001-n1.html
 中露が米国と対抗している点や中露国境の長さ*24なども踏まえれば、日露提携による対中包囲網の構築は、日本側の一方的な願望に終わるだろう。

なんて社説を産経は発表するわけです。
 この社説は明らかにこの記事とは矛盾しています。
■安倍対露外交に好意的な勢力
「安倍万歳、アンチ野党のウヨ(この件で安倍批判して野党と同意見になりたくない)」
「ロシアへの経済進出を歓迎する日本財界」
■安倍対露外交に批判的な勢力
「安倍の対露外交に批判的な米国」
「四島返還を訴え続けてきた産経を含むウヨ」の双方にいい顔をしようとしてもそれができないことの表れでしょう。


■産経『日露首脳記者発表詳報(2)安倍首相、平和条約締結「やり遂げなければならない』
https://www.sankei.com/politics/news/190123/plt1901230013-n1.html
 ただただ不快感を感じる安倍の発言です。

■安倍
「2023年にはお互いの訪問者数をそれぞれ、少なくとも20万人とし、合計40万人までに倍増させるという目標を掲げました。経済関係をより緊密にし、観光はもとより、地方交流や大学交流などさまざまな交流を増やし、この目標をともに達成していきたいと思います。

 「この目標」とはもちろん「2023年までに40万」云々ですがそれが最終的に目標としているのは少なくとも建前では「島の返還」でしょう。
 なぜ拉致問題については「日朝の経済関係をより緊密にし、観光はもとより、地方交流や大学交流などさまざまな交流を増やし、この目標(拉致解決)をともに達成していきたいと思います」にならないのか。正直、それ以外に拉致解決の現実的道はないでしょう。

■安倍
 元島民の方々のお墓参りのための人道的措置は、平和条約締結に向けた両国国民間の信頼醸成に大きな役割を果たしています。

 そういうことを言うなら「1945年以前に今の北朝鮮に住んでいた人々のための墓参り」を、つまり彼らの訪朝をなぜ認めないのか。なぜロシアと北朝鮮で扱いが違うのか。

■安倍
 日本国民とロシア国民が互いの信頼関係、友人としての関係をさらに増進し、そして、相互に受け入れ可能な解決策を見いだすための共同作業を私とプーチン大統領のリーダーシップのもとで力強く進めていく。

 だったら拉致問題や徴用工問題でもそうしろという話です。何で「相互に受け入れ可能な解決策」を目指さずただただ韓国や北朝鮮に悪口するのか。


■産経『日露首脳記者発表詳報(1)プーチン大統領「解決策は見いだせる」』
https://www.sankei.com/politics/news/190123/plt1901230012-n1.html

プーチン
『日本の皆さんはサンクトペテルブルク国際経済フォーラムにも、ウラジオストク東方経済フォーラムにも大変積極的に参加していただいています。エネルギー分野でも、ガスプロム、そして三井(ボーガス注:物産)、三菱(ボーガス注:商事)、サハリン2のLNG第3トレインを作るプロジェクトで協力をしています。全体として、経済、貿易環境においてロシアと日本の関係は順調に発展しつつあるということができるでしょう。しかし、私と安倍首相が同意したところですが、十分なポテンシャルを持っているにもかかわらず、活用されていないという認識で一致しました。そのため、さらに野心的なプロジェクトを策定することで合意しました。投資、技術分野における協力に関してのプロジェクトです。今後数年間にロシアと日本の間の貿易高を1・5倍、300億ドル、少なくとも300億ドルを目指そうという認識で合意しました。
 人的交流も活発に行われています。昨年5月に私と安倍首相はロシア交流年のオープニングイベントに参加しました。この枠内で400以上のイベントが両国で行われました。ロシアと日本は国際演劇オリンピックをサンクトペテルブルクと富山で開催します。第三国の参加も予定されています。
 強調しておきたいことですが、相互が受け入れ可能な解決策を目指したいと考えています。そのためにはロシアと日本の多面的、全面的な関係の発展が必要です。そうすることで両国の国民が受け入れ可能な解決策を見いだせるものと考えています。国民によって支えられた解決策となることでしょう」
 「この問題に関連し、南クリルの島々での共同経済活動について話し合いました。これは海産物の養殖、風力発電、ゴミの減量、温室野菜栽培の開発などです。』

 プーチン曰く「北方領土問題解決*25のためにはまず日露友好関係の構築が必要です。まずは日露経済交流を進めましょう。島の問題は経済交流が進めば自然と解決するでしょう(俺の要約)」 
 結局「島の返還」という意味では何の進展もないわけです。
 しかしこういうプーチンの主張に賛同するならそれこそ「拉致解決のためには日朝友好関係の構築が必要です。まずは日朝経済交流を進めましょう。拉致の問題は経済交流が進めば自然と解決するでしょう」になんでならないのか。
 つうかどう見てもプーチンは帰す気があるようには見えません。
 トウ小平の「(尖閣問題は)我々の後の世代が解決するでしょう(つまり棚上げ)」みたいなことをそのうち言い出すんじゃないか。


■ハフィントンポスト日本版【断言】北方領土と平和条約交渉の行方、日ロ首脳会談でも専門家は「進展しない」
https://www.huffingtonpost.jp/2019/01/21/akihiro-iwashita_a_23648880/

 首脳会談の行方などについて、九州大の岩下明裕*26教授(ロシア外交)に見解を聞いた。
■記者
北方領土交渉について、安倍晋三首相は2018年11月、それまで日本政府が主張していた「4島一括返還」から事実上の「2島先行返還」へと方針転換しました。』
■岩下
『安倍首相がいよいよ「地獄の1丁目」に立ったな、という印象です。安倍首相は昨年、プーチン大統領シンガポールで会談し、1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速すると合意しました。
 共同宣言には平和条約を結んだのち、色丹、歯舞を日本に引き渡すと書いてあります。択捉、国後の取り扱いについては書いていません。
 日本は長らく、4島は日本の「固有の領土」だと国内外に説明し、ロシアに対しては4島返還による決着を主張してきました。
 プーチン氏の「誘い」に乗るということは、事実上、択捉、国後をあきらめることを意味します。当然、国会や国民から追及されるでしょう。これに安倍首相が耐える覚悟があるのかどうか。
 もし安倍首相が我慢しきれずに、再び「4島は日本固有の領土だ」とでも言えば、今度はロシア側がたちまち態度を硬化させるでしょう。
 さらに問題なのは、共同宣言を交渉の基礎にしたからと言っても、色丹、歯舞がすんなり返ってくる保証はありません。
 プーチン大統領は共同宣言の有効性は認めながらも、色丹、歯舞の引き渡しについて「主権が引き渡されるとは書いていない」と述べています。つまり、この2島さえも無条件では返さないと値が釣り上げられている状態なのです。まさに「地獄」の道です。』
■記者
『ロシア側は日本に対し、「北方領土は第2次大戦の結果、合法的にロシアに移ったことを認める」ことを強く要求しています。先日、河野太郎外相と会談したロシアのラブロフ外相も改めてそう述べました。』
■岩下
『ラブロフ外相はこれまでも度々同じことを言っていますから、驚きはありませんね。ただ、これは日本にとって大変困難なハードルです。
 つまり、ロシアの要求通り、北方領土におけるロシアの主権を認めれば、日本が領土の返還を主張する根拠がなくなるわけです。これまで「不法占拠」と言ってきたわけですから。
 日本政府は戦後長らく、国民にも北方領土は「固有の領土」で、ソ連(ロシア)が「不法占拠」したと説明してきたわけでしょう。それをどうやって今さら撤回するんでしょうか。
 ロシアの要求を認めれば、島の引き渡しは完全にロシアの「善意」にすがることになるわけです。そうなると、返ってくる島の数もロシア次第。2島ではなく、例えば歯舞のみの1島、悪ければ主権の引き渡しなどまったくない、ということにもなりかねません。
 島の数よりも深刻なのは、日本の歴史認識や過去に対する責任の問題が問われているということです。
 もし「戦争の結果」うんぬんを日本が認めれば、韓国も「独島(竹島の韓国側呼称)は元々韓国のものだったのに日本に奪われ、第2次大戦の結果、韓国に戻ったのだ」と言うでしょうね。
 従って、ロシアのこの要求を受け入れることは、戻ってくる島の数以上に大きな問題です。様々な禍根を残すことになると同時に、わが国の「根幹」が破壊されるような気がしてなりません。
 こんな屈辱的なことはありません。そういう意味で「地獄」は2丁目も3丁目もあるのです。』
■記者
『ただ、河野外相をはじめ、(ボーガス注:ロシアに配慮して最近は)政府は北方領土を「固有の領土」という言い方を「封印」しているように見えます。ロシア側の要求を受け入れるつもりでしょうか。』
■岩下
『河野外相が会談前、ラブロフ氏の同様の発言についての受け止めを日本人記者から問われた時、「次の方どうぞ」などと言って、4回連続で無視して話題になりましたよね。
 これまでなら「北方領土は日本固有の領土だ」と切り返したのでしょうが、それを言ったが最後、ロシア側が反発するのは目に見えてる(苦笑)。
 実は私としては、そもそも「固有の領土」という言葉は使わないほうがいいと思っているんですよ。これは意味のない概念だし、世界では通用しない言葉です。単に日本の領土と言えばいいんです。
 なぜなら(ボーガス注:アメリカのロシアからのアラスカ購入などで分かるように)領土というのは歴史の中で広がったり縮んだり、変わっていくものだからです。日本の領土だって、前近現代史的にいえば、(ボーガス注:明治以降に日本領土化した北海道や沖縄などは入らず)広く取ったって南東北から中九州までですよ。
 大切なのは「固有の領土」という言説を生み出して、現在の係争地はすべて自国のものだというフィクションをつくりだすことではないんです。領土というのは大きくなったり小さくなったりするという前提で、主権意識を持つことなんです。
 国がしっかりしてないと領土が狭められたり、主権が獲られたりしますよ、と。だから領土と主権を守るという意識を持ちましょうね、ということです。
 ただ、「固有の領土」の撤回は慎重にやらないといけません。ロシア側から要求されたから撤回するというのであれば、国民の反発を買うでしょうし、先程も言ったように(ボーガス注:尖閣竹島も日本が侵略で我が国から奪ったのだという)中韓からの圧力に勢いを与えることになるでしょう。
■記者
『それにしても「2島先行返還」への方針転換は、唐突な印象を受けました。』
■岩下
『唐突でも何でもありません。実はプーチン大統領が前回来日した2016年の段階で、安倍首相は「2島プラスα」という方針を決めていたのだと思います。
 皆さん忘れているかもしれませんが、あの時、日本政府が「2島先行返還」を交渉方針にすると決めたようだ、と読売新聞が報じ、日経新聞は日本とロシアの共同統治について書いているでしょう。
 政権側から得た情報で書いているでしょうから、報道は真実だったと思うんですよね。
 2島プラスαというのは、色丹、歯舞に加え、択捉、国後に関わる何かをプラスαとしようとしたんでしょう。例えば、島とか周辺の海域とか。
 だけど、プーチン大統領日本テレビと読売新聞の共同インタビューで「領土問題は存在しない」と述べました。択捉、国後は論外であり、歯舞、色丹も無条件ではないと。
 だから会談では、平和条約や領土問題の交渉なんてやれなかったんです。2島の引き渡しさえも危ない状況に追い込まれましたから。
 そこで安倍政権は、北方領土における共同経済活動という「変化球」を繰り出したのです。共同経済活動が平和条約交渉に資すると国民には見せようとしたんですね。
 共同声明が出せなかったので、会談が失敗だったと言われないようにプレス声明を出し、元島民の手紙を「サプライズ」として演出したと。そうでもしないと会談は失敗だったと言われてしまうんで。』
■記者
『あれから2年がすぎました。共同経済活動は平和条約交渉に役立ったのでしょうか。』
■岩下
『役立ったどころか、(ボーガス注:島の返還という意味だけでなく経済活動としても)何の成果も公開できないでしょう。
 最初から分かっていたことですが、共同経済活動で何をやるんだという話は進みます。例えばウニの養殖やイチゴの温室栽培を国後でやるとかね。でもどのようにやるかが全然進まない。
 どのようにやるか、というのは要するに、人と物の島の出入りの話です。例えばですよ、物を移動させるときに、ロシアの税関でチェックされる。日本はそれを認めた瞬間、島でのロシアの主権を認めることになるわけです。
 人の出入りについては、ロシア側が「ビザなし」をこれ以上広げたくないという考えでしょう。そういう行き詰まりがはっきりしてきたんです。つまり、共同経済活動という変化球が効いていない、と。
 だいたい経済活動で主権の問題が動かせると考えるほうが間違っていますよ。主権の問題と経済活動は別。むしろ主権の問題が片付けば、いくらでも経済活動はできます。
 で、この変化球がまったく効果がないから、業を煮やしたロシア側から「直球」投げてこい、って言われたんです。
 昨年9月、安倍首相は、ウラジオストクで開かれた「東方経済フォーラム」で、プーチン大統領を目の前にして、平和条約締結を「今やらないで、いつやるのか」と「挑発」しましたよね。これに対する切り返しが、ロシアの「直球」でした。しかも、ビーンボール(反則球)まがいの。
 プーチン大統領は「いま思いついた」と前置きしつつ、「年末までに前提条件なしで平和条約を結ぼう」と言いました。内容を今、思いついたとは、考えられません。ずっとタイミングを計っていた。首相が挑発してきたので、今、これを言おうというのを思いついたのでしょうね。
 多くはプーチン大統領側が集めた聴衆ですから、それはそれは大きな拍手になりました。こうして首相の挑発は切り返されたわけです。いつものプーチン氏ならではのやり方だと思います。
 前提条件なしですから、色丹、歯舞引き渡しの議論もなしということですよ。そもそも、共同宣言には「平和条約を締結後、引き渡しをする」ってあるわけですから。安倍首相は苦笑するしかなかった。「地獄」ですね(笑)
■記者
『それにしても、択捉、国後は厳しいと2016年の段階で考えていたのなら、なぜあの時、(ボーガス注:安倍政権は)はっきりそういう態度で交渉に臨まず、(ボーガス注:日露共同経済活動という)変化球を投じたのでしょう。』
■岩下
『そうは言っても、(ボーガス注:安倍政権は)あのころはまだ択捉、国後に色気があったんでしょう。あるいはあきらめていたんだけど、あの時点で、はっきり言う勇気がなかった。
 それに色丹、歯舞も交渉次第とはとんでもない話でしょう。で、変化球を投げたんだけど全然効いていないと。
 だから今回、主権に関しては「国後、択捉はない」というところから、本当にスタートしているとすれば、これは新鮮味があります。
■記者
プーチン氏はかつて、この問題は日ロ双方とも勝者でも敗者でもない「引き分け」でしか決着できないと述べました。今のところ、ロシアが勝ちっ放しというふうに見えますが。
■岩下
『4島一括返還を主張してきた日本側からすれば、4島を基準に考えているので、「引き分け」と言ったら2島とか、3島とかになるんでしょうが、実はスタートの時点でそもそも、択捉、国後はないということなんです。これが今回もまたはっきりしたんです。
 そしていまだに「2島プラスα」を言う専門家もいるのですが、色丹、歯舞が日本のものになるという根拠は何も言わないでしょう。
 ロシア側は色丹、歯舞すら、「引き渡す」なんてこれっぽっちも言ってないですよね。でも、専門家の中には「表向き言っているだけだ」「真意は違うんだ」「ブラフ(はったり)だ」と言う人がいます。でも、それって日本人の本音と建前的な考えに引きづられすぎた、単なる思い込み、深読みでしかありません。
 私はこれを「希望の外交」、つまり、相手の言っていることを自分の都合のいいように解釈してそれを前提に対応を組み立てる外交と名付けています。』
■記者
『岩下さんはこれまで、「4島一括返還」を譲る形の解決案をいくつか提示してきました。日本が今取ることができる解決案はどんなものでしょう。』
■岩下
『私は最初、ロシアと妥協し合う「フィフティ・フィフティ」の理念のもと、色丹と歯舞に国後などを加える「2島プラスα」を提案しました。
 その後、さらに踏み込んで、2つのパターンを示しました。1つは「2島+海、フリーポート・ゾーン」、すなわち色丹、歯舞に国後の周辺海域を加え、国後の西端にある村の港、北海道標津町に近い場所を「フリーポート・ゾーン」にする案です。
 もう1つは歯舞と国後の西半分です。でも今となっては、この2つの最大公約数的なものしか実現し得ないでしょうね。
 すなわち、1島プラスαですよ。歯舞と国後の周辺海域とフリーポート・ゾーンです。色丹はロシアに残る。これが今の「引き分け」です。
 私はこの1島プラスαでいいと思うんです。元島民たちも、団体としては表向き「4島一括返還」を訴えていますが、国が決めたら従うと言っているわけで。
 それに、北方領土に近い北海道・根室では元々、1島でいいと思っているわけです。漁業関係者にとっては(ボーガス注:島よりも)海が重要なので。
 いずれにしろ、もはや共同宣言に明記されている歯舞と色丹の交渉に限定し、できるだけいい条件を引き出すことでしかないでしょう。平和条約には「お互いの領土要求を放棄する」と盛り込む。これを択捉、国後に適用します。
 それに加えて、「残された問題について真摯(しんし)に解決する」との条項を入れることです。これはつまり、ロシアが中国との国境問題を解決した手法です。あとは色丹、歯舞の取り扱いを補足協定で定める。
 ロシアは中国とは、まず善隣友好協力条約を結び、相互に領土要求を放棄することを決めました。これによって法的には領土問題はなくなりました。その上で、国境に関する協議をしました。日ロもこれと似たような形に持っていくんです。
 あるいは、100年先になるのを覚悟で、「4島一括」をあくまで主張するというやり方もあります。
 もちろん、返還の可能性は低くなるし、(ボーガス注:漁業の利益など)国益や地元・根室の利益を考えると、本当にいい選択かどうか、また今の世論や元島民団体の状況を考えるといまさら「4島」に立ち戻れるかは難しい問題もあります。
 ただ、先ほど言ったように、少なくともロシアの「善意」にすがって島の引き渡しを受ける、というのはやめたほうがいいですね。
 別に今、戦争で負けたわけでもないのに、国の領土に関わることを突然変えるなんてありえないことです。それでは国家の体をなしてないですよ。』
■記者
『モスクワ中心部で1月20日北方領土を日本に引き渡すことに反対するロシア人たちの集会がありました。22日には安倍首相がロシアを訪問し、プーチン大統領と交渉します。影響はありますか。』
■岩下
『ロシアの場合、集会には当局の理解が必要でしょう。今回は多くの場合、当局が許しています。プーチン大統領がその気になれば、集会をストップさせることはできるはずですから。でもそうはしていない。あえてやらせているふしがある。
 ここから推測するのは、交渉が本当に進んでいて妥協する気がプーチン側にあるのなら、こんなことは絶対にやらないということです。
 でも、いざ首脳会談ではプーチン大統領は安倍首相に対し、にこにこ「いい顔」をするのでしょう。「ロシアも国内情勢が色々厳しくてね」と言って交渉を引き延ばしつつ、日本側の譲歩を引き出そうとする。
 一方で、国内向けには「私は島を譲らない」という「愛国者」のポーズを取り、低下した支持率の回復に努める。ラブロフ外相は常に厳しいことを言う「バッドコップ(悪い警官)」なら、プーチン大統領は「グッドコップ(いい警官)」ですよ。』
■記者
『ということは、22日の首脳会談で交渉は進展しない、と。』
■岩下
『実質的な進展はないでしょうね。おそらくロシア側は日本に「第2次大戦の結果を認めよ」と突きつけるでしょう。認めるわけにはいかない日本としては、領土要求を両国がいったん互いに放棄した上で国境線を決める「国境確定論」で応じるしかないですね。
 すると、今度はロシアが「うちの話を前提にしないのであれば、話はできませんね」ってことで結局終わるんじゃないでしょうか。
 でも引き続き交渉は続けるということで、日本のメンツはつぶさないでしょう。日本がロシアにすり寄ってきてくれるのは、世界で孤立状況にもあるプーチン氏にとってはありがたいことですから。
 何も与えず、この状況を続けることはロシアにとっても利益のあることです。日本側はきっと例の決まり文句、「交渉を加速化させることで合意した」と言い、「G20サミットでなんらかの進展を目指して引き続き交渉する」とかいって世論の慰撫(いぶ)に努めることでしょう。』
■記者
『安倍首相はここにきて、北方領土問題の解決を急いでいるように見えます。』
■岩下
『自分の任期中でレガシー(遺産)をつくりたいということなんだと思います。当初は憲法改正でそれを考えたのでしょうが、これについては連立政権を組む公明党の説得が厳しいでしょう。でも、日ロ交渉では公明は支持すると思うんです。
 かつて公明党参院議員で高野博師さんという方がいて、2006年に北方領土を面積で折半する「フィフティ・フィフティ」の発想を国会で披露しました。
 彼は「3.25島論」と言ったんです。つまり面積折半は択捉が大きいから、3.25島(国後、色丹、歯舞の3島と択捉の一部)返還になるんです。要するに、この頃から公明党は「4島返還」にあまりこだわっていないと思うんです。』

 長くなりますが「安倍の対ロシア外交は失敗してる」という岩下主張には全く同感なので紹介しておきます。


時事通信『安倍政権、2島決着案を検討:北方4島返還「非現実的」』
https://this.kiji.is/459764773200102497
 予想の範囲内ですが安倍支持層ってこれでいいんですかね?。歴代自民党政権の主張とも、当初の安倍の主張とも明らかに違うんですが。
 「安倍のやることなら何でもOK」なのか。
 とはいえ、こうした路線でも果たして「平和条約が結べるかは疑問符がつく」でしょう。何せプーチンは「返還した島に米軍を置かないと確約しろ」ですから。2島すら帰るかは疑問です。
 下手すりゃ「島がかえらないが平和条約」になりかねません。
 それにしてもこうした現実路線を是非「拉致問題(全員帰国「非現実的」、一部帰国で決着案を検討、など)」など他の方面でやってほしいもんです。


時事通信『安倍首相、双方受け入れ可能な解決を=ロシア通信社とインタビュー』
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019012000538&g=pol
 ロシアだけにはなぜか大甘な安倍です。
 「お互いが受け入れられる解決」云々つうなら、「北朝鮮相手の拉致」にせよ、「韓国相手の慰安婦や徴用工」にせよ話は同じですが、南北朝鮮相手にはなぜか敵対的な安倍です。
 

■産経『北方領土問題 日露双方に高いハードル 22日に日露首脳会談』
https://www.sankei.com/politics/news/190120/plt1901200011-n1.html

 北方四島は不法占拠された。この歴史的事実を曲げるロシアの主張を受け入れれば、国際社会で「法の支配」を重視してきた日本の信頼は失墜する。尖閣諸島沖縄県石垣市)を自国の領土と主張する中国を利することにもなる。

 ロシアの主張を受け入れるべきだとは個人的には思いません。ただし「北方領土問題」と「尖閣問題」には何の関係性もありません。
 ロシアの主張を受け入れようが、尖閣問題には何の影響もありません。

 ロシアは在日米軍が島に展開する可能性も強く警戒する。米政府は「現時点で米国が(北方領土に)戦力を置く計画はない」(在日米軍トップのマルティネス司令官)が、日米安全保障条約は日本の施政権が及ぶ地域に米軍活動を認めるとしている。日本政府高官も「(ボーガス注:マルチネス発言は個人の発言に過ぎないので)米国が嫌がらせで置くかもしれない」と話す。

 おいおいですね。それが事実ならそれこそプーチン*27は「米軍を置かないことについて事前確約を求める俺の主張には問題はない」というでしょうが、産経はそのあたりどういう考えでこういう記事を書くのか。

 安倍首相は、北方四島に約1万8千人のロシア人が住むことを踏まえ「実際に島を持っているのはロシアであり、島を返すことになれば2島でも大変だ。それでも四島一括返還というなら、戦争で勝たない限り不可能だ」と周囲に語る。

 四島一括にこだわらないという男が拉致では「全員一括」を主張する救う会や家族会に賛同する。
 これは「拉致問題を解決する気が安倍にはないこと」を意味してると俺は理解しています。まあ、そもそも当事者のはずの家族会にすら拉致問題を解決する気があるか疑問ですが。


■産経【日曜に書く】ソ連に振り回された共同宣言 論説委員・河村直哉
https://www.sankei.com/column/news/190120/clm1901200003-n1.html

 抑留者はいわば人質に取られたわけである。

 もちろん抑留の問題もありますがそれだけでなく国連加盟問題がありますね。安保理常任理事国ソ連の賛同なくして国連加盟なんかあり得ないわけです。そのためにも国交正常化は必要でした。


■浅井基文ブログ『日ロ平和条約問題:ロシア側発言の重要な対日メッセージ』
http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2019/1085.html
 浅井先生が問題にしてること、それは「返還後の北方領土に米軍を置かない」という要望に安倍がまともに応じてないことです。
 プーチンのあの要望が「返還要求を拒絶するために安倍が飲めないと思ってる要求」を出したにせよ、「飲めるか飲めないかは関係ない、返してもいいがとにかくあの条件がのめないのでは話にならない」、つまり「それなりに返還意思があるにせよ」、プーチンの要望にまともに応じない安倍にプーチン側はいらだちを募らせてるわけです。
 これで島がかえってくるわけもないでしょう。
 なお、浅井先生は「日本の領土主張は国連憲章違反」「日本の領土主張は第二次大戦の政治的結果を否定してる」というロシアの主張に対して我々日本人が「見落としがちな重要な指摘」をしていると思います。
 それは「靖国問題」「慰安婦問題や南京事件問題」「尖閣竹島問題」での中韓の主張と「ロシアの主張」を併せて考える必要があると言うことです。
 率直に言って小生はロシアの「国連憲章違反」云々を正当とは思いません。
 ただし中韓
1)「靖国問題」「慰安婦問題や南京事件問題」「尖閣竹島問題」での安倍の態度を「日本の主張は第二次大戦の政治的結果を否定している」と批判していること
2)領土問題はともかく、「靖国問題」「慰安婦問題や南京事件問題」での安倍の態度は東京裁判などで日本も受け入れた「第二次大戦の政治的結果」を否定していること
は事実です。
 つまり「第二次大戦の政治的結果(南京事件慰安婦など日本の戦争犯罪が断罪されたこと)」について無理に否定しようとし、中韓の正当な批判をあびる安倍が首相だからこそロシアは「安倍がそういう人間であるからこそ、我々ロシアが『安倍の領土主張はA級戦犯が合祀された靖国に参拝するのと同じくらい無法な行為だ』『安倍の領土主張は南京事件否定論河野談話否定論並みのデマだ』と主張した場合、国際社会は我々ロシアの主張を安倍の他の歴史修正主義主張(慰安婦南京事件)に対する正当な批判と同一視し、容認するかもしれない」と思ってああいう主張をしている可能性があるということです。
 であるならば、浅井先生が言うように「安倍が首相であり続ける限り」、北方領土の領有権主張は南京事件慰安婦靖国問題での安倍の歴史修正主義主張と同様のデマだと受け取られ、領土返還交渉にも支障を来す恐れがあると言うことです。
 しかし残念ながら安倍にそう指摘しても奴は「南京事件慰安婦などでの歴史修正主義主張」をやめたりはしないでしょう。
 結局、北方領土交渉という意味でも安倍を引きずり下ろす必要があると言うことです。
 こうした問題を朝日や毎日と言った一般にリベラルとされるメディアですら指摘せず、ただただロシア批判ばかりしていることについて浅井先生は呆れています。
 また、浅井先生はトランプが近年「ミサイル防衛計画(イージスアショア)」がロシアをターゲットにしていると受け取れる言動をしていることにも注意を促しています。
 今までイージスアショアについて、あまり指摘してこなかったロシアが、トランプの言動を理由に「そんなシステムを日本に配備するなら島なんか返せない」と言い出す可能性が出てきたと言うことです。
 ただし「返還した島に米軍配備するな」だけでも安倍にとってはおそらく「難題」であり、イージスアショアに対するロシアによる指摘の有無は結果的には返還問題にあまり関係ないのでしょうが。
 なお、プーチンはほとんど触れませんが「今、北方領土に住むロシア人をどうするのか。日系ロシア人として受け入れるのか。それとも日本も費用を出してロシア本土に移住してもらうのか」つう難問も別にあります。


■シリア北部マンビジュ市で米軍兵士・国防総省職員4人が死亡した自爆攻撃をめぐる情報の「揺れ」(青山弘之*28
https://news.yahoo.co.jp/byline/aoyamahiroyuki/20190117-00111420/
 誰がこのテロを実行したのかは今のところ不明です。
 ただ「ホニャララがテロの容疑者だろう」つう言説はすでにあり、それが「興味深い」「今後こうした言説がどうシリア情勢に影響するか注目したい」とする青山氏です。
 一番有力な言説は「IS犯行説」です。これはISが犯行声明を出してること、IS以外に米国に公然とテロを仕掛ける勢力はいないのではないかというう事を根拠にしています。
 一方トルコのエルドアン大統領*29は「もはやISにそんな力はない」「これは米国の撤退を望まないクルドテロリストによる謀略だ」と主張してるようです。こうした言説がシリア情勢にどう影響するか、米国の撤退がどうなるのか、エルドアンの対クルド政策がどうなるのかが、注目されるところでしょう。


■読売新聞『駐日ロシア公使「平和条約交渉、進展ないはず」』
https://www.yomiuri.co.jp/world/20190119-OYT1T50000.html

 ビリチェーフスキー駐日ロシア公使と、新潟県立大学袴田茂樹*30教授が18日、BS日テレの「深層NEWS」に出演し、22日に行われる日露首脳会談の行方について議論した。北方領土問題を含む日露平和条約交渉について、ビリチェーフスキー氏は「(ボーガス注:クリル諸島北方領土)がロシア領になったという)第2次大戦の結果を(日本が)認めないと交渉はうまくいかない。会談で大きな進展はないと思う」と話した。

 ここまでロシアに言われても何一つまともに抗議しないのだから安倍政権にも本当に呆れます。

*1:著書『ロシア 語られない戦争:チェチェンゲリラ従軍記』(2011年、アスキー新書)、『イスラム国とは何か』(2015年、旬報社

*2:「ゲリラ同士」と書かないあたりが常岡らしいですね。

*3:「焼け野原」はともかく「石器時代」つう表現には俺は賛同できません(常岡の他にもこういう表現をする人は居ますが)。アフガンであれ、どこであれ、いかに焼け野原になってもそれは「石器時代では当然あり得ない」からです(そもそも石器時代に銃器(焼け野原の原因)などない)。もちろん比喩だなんて事は分かりますが、そういう比喩に何の意味があるのかさっぱり分かりません。したがって「比喩に対する揚げ足取り」をしている気はありません。

*4:さすがに安倍も米国と親密なら対ロシア外交がうまくいくとは思ってないでしょう。

*5:外務次官、国連大使などを経て外相

*6:自民党幹事長(小泉総裁時代)小泉内閣官房長官を経て首相

*7:細川内閣官房副長官新党さきがけ代表幹事、民主党幹事長などを経て首相

*8:大平内閣厚生相、中曽根内閣運輸相、海部内閣蔵相、自民党政調会長(河野総裁時代)、村山内閣通産相などを経て首相

*9:竹下内閣官房長官自民党副総裁(河野総裁時代)、橋本内閣外相などを経て首相

*10:中曽根内閣自治相・国家公安委員長自民党幹事長(海部総裁時代)、新生党代表幹事、新進党党首、民主党幹事長などを経て自由党代表

*11:鳩山内閣国交相菅内閣外相、民主党政調会長(野田代表時代)、野田内閣国家戦略担当相、民進党代表など歴任

*12:大阪府知事大阪市長を歴任

*13:大阪府商工労働部長、政策企画部長などを経て堺市長

*14:沖縄県知事参院議員(社民党)を歴任。琉球大学名誉教授。著書『沖縄の帝王 高等弁務官』(1996年、朝日文庫)、『沖縄 平和の礎』(1996年、岩波新書)、『醜い日本人:日本の沖縄意識』(2000年、岩波現代文庫)、『沖縄、基地なき島への道標』(2000年、集英社新書)など

*15:那覇市議、沖縄県議、那覇市長を経て沖縄県知事。著書『戦う民意』(2015年、角川書店

*16:著書『世界のテロリスト』(2002年、講談社プラスアルファ文庫)、『北朝鮮に備える軍事学』(2006年、講談社プラスアルファ新書)、『ビンラディン抹殺指令』(2011年、洋泉社新書y)、『イスラム国の正体』(2014年、ベスト新書)、『イスラム国「世界同時テロ」』(2016年、ベスト新書)など

*17:朝鮮人民軍偵察総局長、朝鮮労働党統一戦線部長などを経て北朝鮮国務委員会委員、朝鮮労働党副委員長、党中央軍事委員会委員

*18:河井克行自民党総裁特別補佐(外交担当)のこと

*19:外相、安全保障会議書記を歴任

*20:ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ

*21:中国、ロシア以外では、カザフスタンキルギスタジキスタンウズベキスタン、インド、パキスタンがメンバー。

*22:なお、モンゴル軍も参加しています

*23:著書『現代ロシアを読み解く』(2002年、ちくま新書)など

*24:つまり国境の長さを考えれば中国と対立することは安保上リスキーすぎると言うこと。

*25:「島の返還」とはプーチンが一言も言ってない点に注意しましょう。

*26:著書『中・ロ国境4000キロ』(2003年、角川選書)、『北方領土問題』(2005年、中公新書)、『北方領土竹島尖閣、これが解決策』(2013年、朝日新書)、『入門 国境学』(2016年、中公新書)など

*27:エリツィン政権大統領府第一副長官、連邦保安庁長官、第一副首相、首相を経て大統領

*28:著書『混迷するシリア』(2012年、岩波書店)、『シリア情勢』(2017年、岩波新書)など

*29:イスタンブル市長、首相を経て大統領

*30:著書『現代ロシアを読み解く』(2002年、ちくま新書)など