「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」を笑おう(2019年4/24分:三浦小太郎の巻)(追記あり)

モンキー・パンチ氏、天国へ。 | 三浦小太郎BLOG Blue Moon

 漫画のルパン三世もまた、「義賊」でもなんでもない。純粋に泥棒そのものを目的とした「盗賊」。正義とか友情とか、漫画にお約束の救いをむしろ拒絶するような反逆精神に満ちている。
 そのオリジナル作品の毒をやや薄め、より受け入れやすいエンターテイメントにしたのがアニメ
 アニメでのルパン三世には、ちょっと「義賊」的なイメージが加えられ、銭形警部とのやり取りすらある種の「友情者」の要素が加味されている。でも正直、だからこそ大ヒットしたのだ。そして、自由にやらせたモンキーパンチ氏もすごい。
 アニメしか知らなかった人も、いつか原作、それも最初の60年代末のオリジナルを読んでほしい。

 まあ、三浦の言うとおりで原作を読むとアニメルパンとの違いにびっくりしますね。第1シリーズ(1971~1972年)の不振から、ファミリーに受ける性格、具体的には

・ルパンの義賊性(一番わかりやすい例ではカリオストロの城
・銭形や次元、五右衛門とルパンのある種の友情
・ルパンと不二子との恋愛関係
・女にだらしない(そして不二子以外にも言いように手玉にとられることが多い)ルパンの性格(しかし一方でカリオストロクラリスのような相手に対しては紳士的)
・銭形の善人性*1やドジなキャラクター*2など

が強まった第二シリーズ(1977~1980年)以降はもちろん、第一シリーズすら原作とは大分違います(そしてルパン音楽の担当作曲家も第一シリーズの山下毅雄*3から、第二シリーズからは大野雄二*4に変わります)。
 原作においてルパンは全く義賊ではない。従って「カリオストロの城」のような「泥棒的な意味で何のメリットもない事」は彼はやらない。基本的に原作では彼は泥棒しかしません。
 彼はもちろん「むやみやたらに殺人はしない」。
 「鬼平犯科帳の急ぎ働き*5」、つまり一家皆殺しのような無茶苦茶なことはさすがにしない。
 しかし、原作では、彼を逮捕しようとしたり、彼から美術品などを守ろうとする警官を躊躇なく殺します。
 一方アニメでは「パイカル」「百地三太夫」(アニメ第一シリーズ、1971~1972年)、「マモー」(先日日テレで放送された劇場版アニメ、1978年)のような「ルパンの命を狙う人間」でもない限りまず殺さない。それも第二シリーズ(1978~1980年)以降になるとパイカルや百地のような人間ですらまず殺さなくなる。
 「カリオストロの城(1979年)」では、カリオストロ伯爵が死にますが
1)ルパン本人ではなくクラリスを守るためというエクスキューズがある
2)しかも直接の死亡原因はルパンの射殺ではなく事故死
ですからねえ。ルパンの殺人という描かれ方はまずされなくなります。
 ルパン第五シリーズ(2018年)(ユーチューブ動画で見ました)ではルパン一味に放たれたプロの殺し屋たち「ネズミ一族」「殺し屋組織ユニオン」などをルパン一味が返り討ち(皆殺し)にしますが、アニメではそういう「ルパンの殺人」は滅多に描かれません。
 第二シリーズ以降のアニメにおいて、銭形が「ルパンはたとえ警官でもむやみに殺す奴じゃない」という趣旨の発言をする位です(ただし、第一シリーズではそこまでルパンは義賊として描かれていない)。しかし繰り返しますが原作ではルパンは躊躇なく警官を殺します。
 原作ではルパンと次元、五右衛門の間に友情は存在しない。もちろん「互いに認め合ってはいますが」、それは友情ではない。もっとドライです。
 銭形との間にはもっと友情なんか存在しない。したがって原作では銭形の方もルパンを生け捕りにしようとは全く思っておらず、場合によっては殺してもいいと思っている(そもそも原作ではルパンの方も、場合によっては銭形を殺してもいいと思っていますし)。一方、アニメでは銭形はルパンを場合によっては殺してもいいとは思っていません。
 原作では「女性にだらしなく不二子に言いようにされるルパン」「しかし一方でカリオストロクラリスのような相手に対しては紳士的」という設定ですが、むしろ「プレイボーイ・ルパンが不二子を手玉にとる」「不二子もルパンにはかなわない」という描かれ方をしてるのが原作ルパンです。原作ではルパンは「不二子に手玉にとられるほど甘くない(むしろルパンが不二子を手玉にとる方が多い)」し、「クラリスに対するような紳士性」はほとんどありません。
 ただ原作通りにやったらファミリーにはまず受けないでしょう。というかモンキーパンチ的にはあえて「大人のマンガ」としてルパンをそうしたキャラに設定したのでしょうし、連載当時はアニメ化なんて全く考えてないでしょう。
 そして最近はむしろアニメの多くは深夜に放送され「ファミリー向け」というよりもっと「マニアック」になってる気もしますが、当時のアニメは「ゴールデンタイムに放送されファミリーをターゲットにする物」だったわけです。アニメとして成功させるためには原作改変は不可避でした。

 自由にやらせたモンキーパンチ氏もすごい。

 まあ、モンキーパンチも「できる限り原作通り作ってほしいが、アニメ化する場合はファミリー向けにある程度毒を薄めるのは仕方がない」とは思っていたでしょうね。まさか「当たらなくてもいいから原作通りやれ」つうほど彼も無茶苦茶ではないでしょう。
 そんなこと言ったら「じゃあ作りません」になるだけだし、そこで「作らなくていい」つう人もあまり居ないでしょう。
 ただ第一シリーズでは「モンキーパンチが要望した」のか、「アニメスタッフがモンキーパンチに配慮し可能な限り、原作に忠実に作ろうとした」のかはともかく第二シリーズ以降に比べれば、原作ルパンには忠実です。
 とはいえ第一シリーズの不振(低視聴率)で、第二シリーズではさらなる「ファミリー化」が不可避になるわけです。
 そして第二シリーズが成功したことで、ファミリー化路線が定着した。
 ただし、第二シリーズ以降が「原作ルパンの味わいを全く損ねてるか」といえばそこまでは言えないと思います。

【追記】

 「カリオストロの城」が、けっきょく「宮崎駿の作品」になっちゃったのは、やはり原作者としては複雑だったでしょうね。あれがなければ今日ほど「ルパン三世」が伝説の作品にはならなかったわけで、つまりはモンキー・パンチより宮崎駿のほうがすごい人間だったということなのかもしれません。

という指摘がid:Bill_McCrearyさんからなされていますが、実は「カリオストロの城(1979年)」どころか、「ルパン第1シリーズ(1971~1972年)」から宮崎駿高畑勲が「低視聴率による番組打ち切り」という非常事態をなんとか挽回するために途中から協力しています。

ルパン三世(TVアニメ第1シリーズ)(ウィキペディア参照)
・初めに演出のオファーを受けたのは芝山努だったが、当時『天才バカボン』(日本テレビ)の製作に加わっていたため、『TV第1シリーズ』に先んじて製作されたパイロットフィルム版の制作のみに留まる。代わって大隅正秋に演出が依頼される。製作会社東京ムービーの当時の社長藤岡豊が、大隅の演出した『オバケのQ太郎』(TBS)のオープニングを気に入っていたからである。
・藤岡より「初の大人向けのアニメを作ろう」と言われた大隅は意気投合し、「中学生以下の視聴層は全くターゲットにしていなかった」と当時語っている。原作のアダルトな雰囲気が強く出た作風に、当初アニメ化に難色を示していた原作者モンキー・パンチにも、パイロットフィルムを見た後に「ぜひやってくれ」と言わしめたという。
大隅は絵が描けないため、作画監督として芝山努の元同僚、大塚康生が抜擢される。
・こうして大人向けに製作され、そして新聞広告にも大人向けとして広告されたそれまでにないアニメとしてスタートしたが、視聴率は厳しいものとなる。当時、アニメは作ればたいていの場合はある程度の視聴率が取れると考えられていた時代(例えば、同じ東京ムービー作品の「巨人の星」は20%を超えていた)だったが、初回6%、その後も3%といった桁違いに低い視聴率をとり、即打ち切りとなっても仕方ない状況だった。一つの原因としては、大人向けと広告したのが、1970年代の家庭での倫理観にそぐわず、意識的に子どもに見せまいとした親側の圧力などが考えられていた。
・第3話の視聴率が出ると、よみうりテレビやスポンサーは、東京ムービー社長藤岡と大隅を大阪に急遽呼び「この低視聴率はどういうことだ」「子どもに人気が無い」と問いただした。大隅は「大人向けのアニメを作ったまで」と率直に答えたが、対照的に藤岡は「今後は子ども向けに改善して立て直す」と約束した。
 その帰りに藤岡が大隅に「今後、子ども向けの内容でやってくれないか?」と依頼したが、大隅は「子ども向けにやって、人気が出る確証はあるんですか?」と反論し「それでは自分は降ろさせてもらう」と番組を降板した。
・苦しい立場に立たされた大塚康生は、東映で一緒に子ども向けアニメを作っていた後輩の高畑勲宮崎駿の2人に演出を依頼した。
・高畑と宮崎は原作の影響の強いハードボイルド・タッチの作風を中盤以降、徐々にファミリー向け、子ども向けに軌道修正していく。
・高畑・宮崎コンビ演出のルパンは、視聴率は9%程度と序盤よりは安定していたものの、約半年後の全23話で放送が打ち切りとなった。

 また第二シリーズ(1977~1980年)でも宮崎は第145話「死の翼アルバトロス」、第155話(第二シリーズ最終話)「さらば愛しきルパンよ」の脚本を担当しています(ウィキペディア参照)。
 なお、この「さらば愛しきルパンよ」は

■さらば愛しきルパンよ(ウィキペディア参照)
 作品としては、ロボット兵が登場し、ヒロインの声が島本須美であるなど、宮崎の代表作『風の谷のナウシカ(ヒロインの声が島本)』や『天空の城ラピュタ(ロボット兵が登場)』の原型となる特色が強い。
■あらすじ
 1981年の東京。謎のロボットが突如上空に現れ、宝石店を襲撃する。去り際にロボットが残したのは、ルパンの犯行声明カードであった。
 ロボットの正体は、国防軍の依頼で永田重工で開発され輸送中に何者かによって強奪されていた装甲ロボット兵「ラムダ」だった。テレビ局にルパンのメッセージビデオが届くに至り、日本政府は非常事態宣言を発令し、ラムダの破壊を決定。日本に帰国した銭形警部(納谷悟朗)は「ルパンがこんなことをするはずがない、あれは偽者だ」と主張するが、警視総監(上田敏也)は聞く耳を持たず、街中には出動した国防軍の操る戦車部隊が展開される。
 そして再び出現したラムダに対し国防軍は、血気に逸るあまり、市民が避難する前に攻撃を開始し、戦車隊の発砲で街は大パニックに陥る。だがその混乱の中、銭形はラムダが逃げ遅れた人々をかばう姿を見た。追跡の末、銭形はルパンのアジトを突き止めるが、ルパン一味に捕らわれてしまう。
 拘束された銭形の前に、ラムダを操縦していた娘が姿を見せる。彼女はロボット科学者・小山田博士の娘である小山田真希(島本須美)。永田重工の資金援助で装甲ロボット兵を開発した小山田博士は、その危険性を感じて開発を中止しようとしたが、研究データ全てを永田重工に奪われて、失意の内に亡くなっていた。真希は父の遺志を継ごうとするも、軍事機密の壁に阻まれて明かす事が出来ず、そんな所をルパン一味に唆されてロボットを操り、犯罪を行うことでロボット兵の危険性を世間に訴えようとしていたのだった。
 ところがルパン一味は真っ赤な偽者であり、ロボット兵の危険性を訴えるどころか、むしろロボット兵を量産し儲けようと企む永田重工の手先だった。一連の騒ぎでロボット兵の有効性は十分にデモンストレーションでき、国防会議による量産型ロボット兵の大量発注も決まったとほくそ笑む偽ルパン一味は、用済みになった真希を縛り上げてラムダに乗せ、国防軍に撃墜させて証拠隠滅を図ろうとする。
 しかしアジトが爆破され、ラムダが飛び立った時、脱出した銭形がラムダに飛び乗った。変装を取った顔を見て真希は驚く。なんと銭形に変装していたのは本物のルパン(山田康雄)だったのだ。ルパンは、真希を救出し、偽ルパン一味およびその黒幕である永田重工社長(大宮悌二)と決着をつけるべく、真希の操縦するラムダと共に、川越にある本社工場へ向かう。
 これを報道で知った社長と偽ルパン一味は逃亡を図るが、既にラムダは到着しており、偽ルパン一味も「本物」によって成敗される。逃げ場を失った社長は、同じく装甲ロボット兵の「シグマ」にルパンを始末させようとするが、既に制御プログラムを真希によって改変されていたシグマは、工場を破壊し始める。こうして永田重工の野望は全て水泡に帰した。
 明け方、燃えさかる工場の前には機動隊と本物の銭形がいた。偽ルパン一味を抱えたラムダとともに銭形の前に立ち、「全てをお話しします」と告げる真希。そして本物のルパン達は、晴れやかな笑顔と共に何処かへと去ってゆくのだった。

だそうです。小生もこの作品を日テレの再放送で「脚本が宮崎だ」という予備知識を持ってみましたが、確かにヒロインの声は島本だし、ロボット兵「ラムダ」はラピュタのロボット兵に似ていましたね。
 さてウィキペディアルパン三世」にはなかなか面白い記述があります。

ルパン三世
 パイロットフィルムでのルパンの声は、過去に野沢那智広川太一郎が演じていたが、野沢・広川ともにスケジュールの都合上、出演が難しく、新たにテレビ用の声優を選ぶことになった。

 ということでウィキペディアを信じれば、スケジュールの都合さえつけばルパンの声は「山田康雄」ではなく「野沢那智広川太一郎」になったわけです。
 まあ、野沢は「山田康雄の没後、声が似ていると言うことで、山田が吹替を担当していたクリント・イーストウッドを引き継いでいる(ウィキペディア野沢那智」)」ので野沢ルパンでもイメージはあまり変わらない気がしますが、広川だと大分イメージが変わるかと思います。

*1:原作において銭形は悪人ではもちろんないものの、アニメのような「人情刑事」という印象はほとんどありません。

*2:ただし第一シリーズではそれほど銭形はドジなキャラクターとしては描かれていません。

*3:1930~2005年。代表作として、日本テレビ・アニメ『ルパン三世(第一シリーズ)』、『ガンバの冒険』、TBSドラマ『七人の刑事』、『時間ですよ』、『大岡越前』、テレビ朝日クイズタイムショック』、大阪ABC(テレ朝系列)『パネルクイズ アタック25』、『霊感ヤマカン第六感』の音楽など。口笛の名手であり、作曲にあたっては、スキャット伊集加代子によるものが多い)や自らの口笛・声を曲に多く取り入れ、同一の旋律の繰り返しを多用する技法で親しみやすい曲作りに努めた。『大岡越前』、『霊感ヤマカン第六感』、『パネルクイズアタック25』の主題曲の口笛、『クイズタイムショック』の主題曲の「ショック!!」や『パネルクイズアタック25』の主題曲の「アタック!!」の声は本人のものである。『探偵!ナイトスクープ』でトミーズ雅が調査した時には、雅の依頼に応え、電話口で「アタック!!」、「タイムショック!!」、『七人の刑事』の口笛を披露していた。また、テレビ朝日『完全特捜宣言!あなたに逢いたい!』(司会:笑福亭鶴瓶)にも出演、チャーリー・コーセイが歌う『ルパン三世(第1シリーズ)』主題歌に合わせて口笛を吹いている(ウィキペディア山下毅雄』参照)。

*4:1941年生まれ。代表作としてNHK『小さな旅(当初は関東甲信越小さな旅)』、日本テレビ・ドラマ『パパと呼ばないで』(石立鉄男杉田かおる主演)、日本テレビ・アニメ『ルパン三世(第二シリーズ以降)』、映画『犬神家の一族』、『人間の証明』、『野性の証明』、『この子の七つのお祝いに』の音楽など(ウィキペディア『大野雄二』参照)。

*5:これは池波正太郎が考え出した造語のようですが。