高世仁に突っ込む(2020年2/19日分)

みかんを作る周防大島の出版人 - 高世仁の「諸悪莫作」日記
 高世の記事から連想したことをいくつか書いておきます。
1)小生的には最近

山田朗昭和天皇の軍事思想と戦略』(2002年)
山田朗『近代日本軍事力の研究』(2015年)
・吉田裕『現代歴史学軍事史研究』(2012年) 

など日本史書籍の版元である「校倉書房が廃業した(廃業自体は2018年7月)」ということを知って驚くとともにがっかりしています。
 月刊歴史評論(もともとは歴史科学者協議会が編集し、校倉書房が刊行)の版元から「校倉書房」の文字が消えたことが気にはなっていたのですが。
 なお、校倉書房の在庫は歴史科学者協議会の方で販売するようです。  
2)小生的に興味がある面白い出版社として以下を紹介しておきます。
◆ミステリ珍本全集の戎光祥出版
 珍本なので当然マイナー作家が多いし、必ずしも面白くもないのですが

山田風太郎*1忍法相伝73
・大阪圭吉*2『死の快走船』

など「著名作家(山田風太郎)のマイナー作品」「近年、再評価が始まった作家(大阪圭吉)の作品」などもあり、そういうのはそれなりに面白いかと思います。
◆『こぶし文庫 戦後日本思想の原点』のこぶし書房
 宇野弘蔵*3、古在由重*4三枝博音*5、戸坂潤*6三木清*7など「過去においてはそれなりに知られており、大手出版社からも書籍が出るなどしていた」のに今はそうでもない著者の本を刊行している点が興味深いですね。
 革マル派幹部だった黒田寛一の著書を多数刊行しており明らかに革マル派系ですが、「革マルと全く関係ない書籍」も出してるわけです。
◆論創ミステリ叢書の論創社
 ここもマイナー作家が多いし、必ずしも面白くもないのですが

「有名ミステリ作家である鮎川哲也*8高木彬光*9横溝正史*10のマイナー作品」
「「丹下左膳*11」シリーズの作者として知られる林不忘のミステリ小説(捕物帖小説)」

といった「珍しい作品」や

◆1945年に『新月*12』で第1回探偵作家クラブ賞(日本推理作家協会賞の前身)短篇賞を受賞した木々高太郎(1897~1969年、本名・林髞(はやし・たかし)。本業は大脳生理学で慶応義塾大学名誉教授)
◆1962年に『細い赤い糸』*13で第15回日本探偵作家クラブ賞(日本推理作家協会賞の前身)を受賞した飛鳥高

など「世間的には比較的マイナーだが定評のある作家」の作品もあって面白い企画です。

*1:1922~2001年。雑誌『宝石』の短編懸賞に応募したミステリ小説『達磨峠の事件』(現在は『達磨峠の事件』(光文社文庫)に収録)が入選(1947年1月号に掲載)したことで作家デビュー。1958年(昭和33年)に発表した『甲賀忍法帖』(現在は角川文庫、講談社文庫)を皮切りとする忍法帖もので流行作家となる。1963年(昭和38年)から講談社より発売された『山田風太郎忍法全集』は累計で300万部を売り上げるベストセラーとなった。1949年に 『眼中の悪魔(現在は『山田風太郎ミステリー傑作選〈1〉』(光文社文庫)や『日本推理作家協会賞受賞作全集(2):短篇集』(双葉文庫)に収録)』、『虚像淫楽(現在は『日本推理作家協会賞受賞作全集(2):短篇集』(双葉文庫)に収録)』により第2回探偵作家クラブ賞(日本推理作家協会賞の前身)短編賞を受賞。1997年に菊池寛賞を、2000年に日本ミステリー文学大賞を受賞。『くノ一忍法帖』(原作は角川文庫、講談社文庫。1964年、東映)、『忍法忠臣蔵』(原作は角川文庫、講談社文庫。1965年、東映)、『棺の中の悦楽』(原作は『山田風太郎ミステリー傑作選〈4〉』(光文社文庫)に収録。1965年に『悦楽』の題名で大島渚が監督)、『魔界転生』(原作は角川文庫、講談社文庫。1981年、角川映画)などが映画化されている(ウィキペディア山田風太郎』参照)。

*2:1912~1945年。「デパートの絞刑吏」を『新青年』1932年10月号に発表して作家デビュー。太平洋戦争に従軍しルソン島で病死。長い間忘れ去られた存在だったが、近年、大阪『銀座幽霊』、『とむらい機関車』(以上、2001年、創元推理文庫)、『大阪圭吉探偵小説選』(2010年、論創ミステリ叢書)、『死の快走船』(2014年、戎光祥出版ミステリ珍本全集)、『花嫁と仮髪:大阪圭吉単行本未収録作品集1』(2018年、書肆盛林堂)、『マレーの虎:大阪圭吉単行本未収録作品集2』、『沙漠の伏魔殿:大阪圭吉単行本未収録作品集3』(以上、2019年、書肆盛林堂)が刊行され再評価されている(ウィキペディア『大阪圭吉』参照)。

*3:1897~1977年。東大名誉教授(マルクス経済学)。著書『恐慌論』(岩波文庫)、『価値論』,『増補・農業問題序論』(以上、こぶし文庫)、『資本論に学ぶ』、『社会科学としての経済学』(以上、ちくま学芸文庫)など(ウィキペディア宇野弘蔵』参照)

*4:1901~1990年。著書『古在由重の哲学』(こぶし文庫)など(ウィキペディア『古在由重』参照)

*5:1892~1963年。明治大学教授、横浜市立大学教授を歴任。著書『技術の哲学』(岩波全書セレクション)、『技術思想の探究』、『ヘーゲル・大論理学』(以上、こぶし文庫)など(ウィキペディア三枝博音』参照)

*6:1900~1945年。元法政大学教授。1932年に設立された唯物論研究会の創始者の一人であり、治安維持法によって検挙され、敗戦の直前(8月9日)に長野刑務所で獄死した。著書『日本イデオロギー論』(岩波文庫)、『戸坂潤の哲学』(こぶし文庫)(ウィキペディア『戸坂潤』参照)。

*7:1897~1945年。元法政大学教授。終戦直後(9月26日)に豊多摩刑務所で獄死した。著書『パスカルにおける人間の研究』(岩波文庫)、『人生論ノート』(角川ソフィア文庫新潮文庫)、『三木清エッセンス』、『三木清・東亜協同体論集』(以上、こぶし文庫)、『哲学ノート』(中公文庫)など(ウィキペディア『戸坂潤』参照)。

*8:1919~2002年。1960年に、『憎悪の化石』(現在は光文社文庫創元推理文庫双葉文庫)、『黒い白鳥』(現在は光文社文庫創元推理文庫双葉文庫)により、第13回日本探偵作家クラブ賞(日本推理作家協会賞の前身)を受賞。1990年に、東京創元社主催の長編推理小説新人賞として鮎川哲也賞が創設された。2001年に、本格推理小説への貢献を評価され、第1回本格ミステリ大賞特別賞を受賞。代表作として鬼貫警部シリーズなど(ウィキペディア鮎川哲也』参照)

*9:1920~1995年。1950年に『能面殺人事件』(現在は角川文庫、双葉文庫)で第3回探偵作家クラブ賞を受賞。代表作として、名探偵・神津恭介シリーズ、百谷泉一郎弁護士シリーズ、霧島三郎検事シリーズなど(ウィキペディア高木彬光』参照)。

*10:1902~1981年。1948年に『本陣殺人事件』(現在は角川文庫)により第1回探偵作家クラブ賞(日本推理作家協会賞の前身)を受賞。『犬神家の一族』(現在は角川文庫)を皮切りとした1976年の石坂浩二主演による映画化(「石坂浩二金田一耕助シリーズ」)、1977年の古谷一行主演による毎日放送(TBS系列)でのドラマ化(「古谷一行金田一耕助シリーズ」)により、推理小説ファン以外にも広く知られるようになる(ウィキペディア横溝正史』参照)

*11:現在は光文社文庫新潮文庫で入手可能。大河内傳次郎(『丹下左膳余話 百萬両の壺』(1935年、日活))、大友柳太朗(『丹下左膳』(1958年、東映))、阪東妻三郎(『丹下左膳』(1952年、松竹))などといった人気時代劇スターが主演し、人気を博した。

*12:現在は『日本推理作家協会賞受賞作全集(2):短篇集』(1995年、双葉文庫)に収録

*13:現在は『日本推理作家協会賞受賞作全集 (15)』(1995年、双葉文庫)。また2020年2月に論創社からも刊行予定。