黒坂真に突っ込む(2020年3月7日分)

黒坂真リツイート
 小池晃書記局長。武漢*1ウィルスが、人為的に作られたもので生物兵器だという説があります。私はそれを否定も肯定もできません。人為的に作られたものなら、治療困難となりえる。最悪の場合を想定すべきです。生物兵器説を完全否定できますか。否定できないなら、特別法制定に賛成するのが筋と考えます。

 政府、与党の「コロナ特措新法」制定論に反対する小池氏への黒坂のトンデモツイートです。
 まず第一に、黒坂はデマを垂れ流すなという話です。現時点で新型コロナについて(ボーガス注:中国軍の?)生物兵器説を裏付けるまともな根拠は何もない。「可能性が0でないならデマでない」などというのは「特定失踪者デマ」でも黒坂らウヨが持ち出す詭弁ですが。
 その理屈ならたとえば「孝明天皇薩長によって暗殺された説がある」「日航御巣鷹山事故*2(1985年)は、全日空雫石事故(1971年)、なだしお事故(1988年)のような自衛隊の過失による事故だ、にもかかわらず責任問題を恐れて自衛隊がそれを隠蔽した*3という説がある*4」などといってもOKになるでしょう。ただし普通の人間は根拠薄弱な主張、それも「パニックなど社会に悪影響をもたらしかねない主張」「特定の個人、団体に対する誹謗中傷に当たる主張」は黒坂でないので普通しない。
 第二に「生物兵器かどうか」と「治療が容易かどうか」は関係がない。たとえば「エボラ出血熱」は「有効な治療法が確立していない、致死性の高い感染症」ですが、そのことはエボラが「兵器目的に人為的につくられた細菌」であることを勿論意味しません。
 第三に「治療が容易かどうか」と「現行法では不十分でコロナ特措法の新規制定が新たに必要かどうか」も関係がない。そもそも「新型インフル特措法」にせよ「コロナ特措新法」にせよ、問題となってるのは感染予防です。
 黒坂も「コロナ新法が必要だ、共産などの反対論は間違ってる」と言うならもう少しまともなツイートをしたらどうなのか。安倍もありがた迷惑でしょう。

黒坂真
 レーニンは著書「プロレタリア背教者カウツキー*5」でカウツキーらの祖国擁護論を徹底批判しました。日本共産党、左翼知識人が自衛隊解散、日米安保廃棄を叫ぶのは祖国擁護に反対だからです。

 「アホか」ですね。カウツキー(ドイツ社民党幹部)の「祖国擁護論」とは「第一次大戦でドイツ政府の開戦決定を支持しよう。国が負けたら元も子もない」という主張であり、「祖国擁護についての一般論」を議論してるわけではない。もちろんレーニンの批判も「そう言う考えは間違いだ、この戦争は大義のない間違った戦争だから批判すべきだ」と言う話であって、祖国擁護についての一般論を全否定しているわけではない。
 つまりは「日本人として日中戦争、太平洋戦争に賛成するのかどうか(戦前日本)」「米国人としてベトナム戦争(あるいはブッシュ子のアフガン戦争やイラク戦争)に賛成するのかどうか」「ソ連人としてアフガン出兵に賛成するのかどうか」などというのと話は同じです。その場合に「愛国心があるなら祖国擁護して戦争に賛成すべきだ」などという話には勿論なりません。

*1:WHOが「武漢以外、中国以外は安全という誤解を招く(既にイタリア、イラン、韓国、日本が深刻な状況にあるとされる)」「中国人差別を助長する」として武漢云々とは呼ばず「COVID19」「新型コロナ」と呼んでおり、安倍政権もそれに従っているのに黒坂も呆れたバカです。

*2:もちろん通説は「ボーイング社の整備不良による圧力隔壁破壊説」。

*3:なお、過去において雫石事故で増原惠吉・田中内閣防衛庁長官が、なだしお事故で瓦力・竹下内閣防衛庁長官引責辞任しています。

*4:俺の作り話ではなく、実際にそう言う陰謀論はあります(角田四郎『疑惑:JAL123便墜落事故』(1993年、早稲田出版)、青山透子『日航123便墜落の新事実』(2017年、河出書房新社)、小田周二『524人の命乞い:日航123便乗客乗員怪死の謎』(2017年、文芸社)など)。勿論信憑性は皆無です。この「日航機墜落・自衛隊過失説」に限らず「ホロコースト否定論」「南京事件否定論」「慰安婦否定論」「CO2温暖化原因否定説」、そして今回の「新型コロナ・人為的細菌説」もそうですが全ての陰謀論は「世界中が陰謀に加担しているが、私とその仲間だけは陰謀に気づいた(にもかかわらず陰謀を告発しても命の危険もない)」という非常識な論理展開をせざるを得ません。

*5:一般には「プロレタリア革命と背教者カウツキー」(邦訳は大月書店・国民文庫)と呼ばれる。