普通に考えてルーズベルト陰謀論はおかしい(2023年3月1日記載)

【最初に追記】
 妙な陰謀論やトンデモ科学にはまると、なかなか逃れられない(ルーズヴェルト陰謀論についての入門書を読んで勉強したい) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)の追記で拙記事をご紹介頂きました。いつもありがとうございます。
【追記終わり】
 妙な陰謀論やトンデモ科学にはまると、なかなか逃れられない(ルーズヴェルト陰謀論についての入門書を読んで勉強したい) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)を読んでの感想です。
 勿論「そもそも証拠がない」「そんな巨大な陰謀がいつまでもばれないわけがない」というのもありますが、普通に考えて「ルーズベルトにとって連合艦隊を返り討ちにして、「可能なら山本五十六*1連合艦隊司令長官をあの時点で戦死させる」のがベストですからね。
 何も米国艦隊が壊滅的打撃を受けなくても、「日本が侵攻してきた」と言う事実だけで米国では「日本許すまじ!」の反日感情が爆発したでしょう。
 そこで返り討ちで連合艦隊を壊滅し、山本も死亡させればルーズベルトの人気は高まり、また「戦意は高揚」し「連合艦隊を壊滅した今、もはや日本恐れるに足りず、このまま日本に報復する」という流れになったでしょう。
 そうなれば日本としても「もはやこれまで」と厭戦論が台頭し、早期終戦したかもしれない。
 これは山下奉文*2のマレー作戦も同じです。返り討ちで、「可能ならあの時点で山下を戦死させること」がベストなわけです。
 まあ、陰謀論というのは勿論「理屈じゃない」わけですが。
 「日本は悪くない」と言いたいからこういうことを言うのであって、理屈とか整合性とか最初から無視している。大事なのは「自分にとって心地よい話」です(追記:つまりは本多氏にとって「ルーズベルト陰謀論は心地よい」のでしょうが、戦前日本の対米開戦を擁護したいのならともかく、そうとは思えない本多氏が「心地よい」と思う理由が理解できません)。
 これは

孝明天皇暗殺説(通説は病死説)
薩長は酷い連中だ!
※まあ幕府を挑発して開戦の方向に持って行くために江戸で御用盗などをやらかしていた薩長は確かに「酷い連中」ではありますが。
 そうした薩長の謀略は江戸薩摩藩邸の焼討事件 - Wikipediaと言う形で成功します。
関東大震災朝鮮人虐殺否定論、張作霖暗殺・ソ連犯行論、南京事件否定論河野談話否定論、731部隊「人体実験」否定論
→日本は悪くない!
昭和天皇「平和主義者」説
→あの戦争について天皇は悪くない!。悪いのは陸軍だ!
ホロコースト否定論
→ドイツは悪くない!
源義経・チンギスハン説
義経は衣川で死んでない、それどころかチンギスハンというモンゴルの英雄になった

など他の陰謀論、デマも同じです(他にも陰謀論、デマはありますが俺の知ってるものをあげました)。
 だからルーズベルト陰謀論を唱えるウヨが一方ではそれと整合性があるとは思えない「太平洋戦争・アジア解放聖戦論」「太平洋戦争・ソ連陰謀論」を唱えたりする。
 昭和天皇「平和主義者」説(その立場上、あの戦争を批判してるはず)を主張するウヨが一方で「真珠湾攻撃」を日本の義挙として美化したり「太平洋戦争・アジア解放聖戦論」を主張したりする。
 しかし、本多氏が「ルーズベルト陰謀論」にはまった理由って何でしょうか?
 いかに米国帝国主義に批判的とはいえ、本多『南京への道』(朝日文庫)で南京事件否定論を批判した彼に「日本は悪くない!」という動機があるとも思えない。
 自他共に認める「日米安保廃止派」「米国帝国主義批判」日本共産党はこんな陰謀論ではないでしょうし(例は「米国批判派」なら日本共産党でなくてもいいですが)。

/新日本出版社/一般書/分野別/政治・社会・経済/政治・社会/日本共産党/日本共産党国会議員団│議員│日本共産党中央委員会参照
【著者名順:改めて多くの党幹部が著書を刊行していることを確認】
役職については中央委員会の機構と人事(第28回党大会)|党紹介│日本共産党中央委員会日本共産党国会議員団│議員│日本共産党中央委員会参照
市田忠義*3日本共産党の規約と党建設・教室』(2022年)
上田耕一郎*4『戦争・憲法常備軍』(2001年)、『憲法改悪反対・九条を守る』(2005年)、『人生の同行者:上田耕一郎×小柴昌俊鶴見俊輔小田実対談』(2006年)など
◆緒方靖夫*5日本共産党の野党外交』(2002年)、『イスラム世界を行く』(2003年)、『つながる9条の絆:多喜二、魯迅ロマン・ロランから今日へ』(2014年)
◆面川誠*6『変わる韓国』(2004年)
◆垣内亮*7『消費税が日本をダメにする』(2012年)、『「安倍増税」は日本を壊す:消費税に頼らない道はここに』(2019年)
笠井亮*8『政治は温暖化に何をすべきか』(2008年)
◆紙智子*9高橋千鶴*10『食の安全よりアメリカが大事?:牛肉輸入再開に異議あり!』(2006年)
◆川田忠明*11『名作の戦争論』(2008年)、『市民とジェンダーの核軍縮』(2020年)、『アート×ジェンダー×世界』(2022年)
◆工藤晃*12『現代帝国主義研究』(1998年)、『マルクスは信用問題について何を論じたか』(2002年)、『経済学をいかに学ぶか』(2006年)、『資本主義の変容と経済危機』(2009年)、『マルクス資本論」とアリストテレスヘーゲル』(2011年)、『現代帝国主義と日米関係』(2013年)
◆小泉親司*13『日米軍事同盟史研究』(2002年)
小池晃*14『これからどうする!介護と医療』(2001年)、『どうする日本の年金』(2004年)、『対話集・政治に希望はある』(2019年)
◆坂井希*15『就職難に気が重いあなたへ』(2004年)
佐々木憲昭*16『変貌する財界:日本経団連の分析』(2007年)、『財界支配:日本経団連の実相』(2016年)、『日本の支配者』(2019年)
志位和夫*17『韓国・パキスタンを訪問して』、『教育基本法改定のどこが問題か』(以上、2006年)、『日本共産党とはどんな党か』、『ベトナム 友好と連帯の旅』(以上、2007年)、『アメリカを訪問して』(2010年)、『領土問題をどう解決するか:尖閣竹島、千島』(2012年)、『改定綱領が開いた「新たな視野」』(2020年)、『新・綱領教室』(2022年)など
◆新原昭治*18『「核兵器使用計画」を読み解く』(2002年)、『日米「密約」外交と人民のたたかい:米解禁文書から見る安保体制の裏側』(2011年)など
大門実紀史*19『「属国ニッポン」経済版』(2003年)、『新自由主義の犯罪』(2007年)、『ルールある経済って、なに?』(2010年)、『カジノミクス』(2018年)、『やさしく強い経済学』(2022年)
◆浜野忠夫*20『民主連合政府をめざして』(2015年)
◆広井暢子*21『女性革命家たちの生涯』(1989年)、『男女平等の社会へ』(2013年)
◆藤森毅*22『いじめ解決の政治学』(2013年)、『教育委員会改革の展望』(2015年)、『教師増員論』(2021年)
不破哲三*23史的唯物論研究』(1994年)、『千島問題と平和条約』(1998年)、『日米核密約』(2000年)、『科学的社会主義を学ぶ』(2001年)、『北京の五日間』(2002年)、『チュニジアの七日間』(2004年)、『憲法対決の全体像』(2007年)、『小林多喜二・時代への挑戦』(2008年)、『「資本論」はどのようにして形成されたか』(2012年)、『「資本論」のなかの未来社会論』(2019年)、『「資本論」完成の道程を探る』、『マルクス弁証法観の進化を探る』(以上、2020年)など
宮本顕治*24日本共産党の党員像』(1995年)
◆森原公敏*25NATOはどこへゆくか』(2000年、新日本新書)、『戦争と領土拡大:ウクライナと国際秩序の行方』(2022年)
山口富男*26『新しい世紀に日本共産党を語る』(2003年)
◆吉井英勝*27原発抜き・地域再生の温暖化対策へ』(2010年)

等を刊行し共産党に近い新日本出版社(とは言え、共産党そのものではないですが)から出ている本多『本多勝一戦争論』(2011年)、『本多勝一の日本論:ロシア、アメリカとの関係を問う』(2012年)も(俺は未読ですが)さすがに「ルーズベルト陰謀論」ではないのではないか。
 まあ、ルーズベルト陰謀論が仮に新日本出版社の本多本に書いてあったとしても新刊紹介:「前衛」2月号(追記あり) - bogus-simotukareのブログで紹介した安倍礼賛の「水谷尚子」論文みたいなもん(他の部分を評価しあえて載せた)でしょう。さすがに外部筆者の寄稿とは言え前衛であんなものを読まされるとは思ってもみませんでしたが。

*1:海軍航空本部長、海軍次官連合艦隊司令長官を歴任

*2:陸軍省軍事調査部長、歩兵第40旅団長(皇道派だったため事件後左遷された)、支那駐屯混成旅団長、北支那方面軍参謀長、陸軍航空総監兼航空本部長、第25軍司令官(マレーシア)、第1方面軍司令官(満州)、第14方面軍司令官(フィリピン)など歴任。戦後、マニラ虐殺事件を理由に死刑判決。後に靖国に合祀

*3:参院議員。日本共産党書記局長を経て党筆頭副委員長

*4:1927~2008年。元参院議員。日本共産党宣伝局長、政策委員長、副委員長などを歴任。著書『国会議員』(1999年、平凡社新書

*5:参院議員。現在、日本共産党国際委員会責任者(副委員長兼務)。著書『フランス左翼の実験』(1987年、大月書店)

*6:日本共産党国際委員会委員

*7:日本共産党経済・社会保障政策委員会責任者

*8:衆院議員。日本共産党国際委員会副責任者(党常任幹部会委員兼務)

*9:日本共産党参院議員団長。党先住民(アイヌ)の権利委員会責任者、農林・漁民局長(党常任幹部会委員兼務)

*10:日本共産党衆院国対副委員長。党副委員長(党人権委員会責任者、党ジェンダー平等委員会責任者、党障害者の権利委員会責任者兼務)

*11:日本共産党平和運動局長(党中央委員兼務)

*12:衆院議員。日本共産党名誉役員。著書『今日の世界資本主義と「資本論」の視点』(2014年、本の泉社)、『マルクス資本論」の視点で21世紀世界経済危機の深部を探る』(2017年、かもがわ出版)、『マルクス資本論」の方法と大混迷の世界経済』(2018年、かもがわ出版)、『リーマン危機10年後の世界経済とアベノミクス』(2019年、本の泉社)

*13:参院議員。日本共産党基地対策委員会責任者。著書『今日の「日米同盟」を問う』(2019年、学習の友社)

*14:参院議員。日本共産党政策委員長、副委員長などを経て書記局長

*15:日本共産党人権委員会事務局長、ジェンダー平等委員会事務局長(党幹部会委員兼務)

*16:衆院議員。日本共産党名誉役員

*17:衆院議員。日本共産党書記局長を経て委員長

*18:日本共産党名誉役員。著書『密約の戦後史』(2021年、創元社

*19:参院議員。日本共産党中央委員

*20:日本共産党副委員長(党人事局長兼務)

*21:日本共産党監査委員会責任者(党常任幹部会委員兼務)

*22:日本共産党文教委員会責任者(中央委員兼務)

*23:衆院議員。日本共産党書記局長、委員長、議長を歴任。現在、党常任幹部会委員(党付属社会科学研究所長兼務)。著書『歴史教科書と日本の戦争』(2002年、小学館)、『私の戦後六〇年』(2005年、新潮社)、『マルクスは生きている』(2009年、平凡社新書)、『不破哲三・時代の証言』(2011年、中央公論新社)、『私の南アルプス』(2011年、ヤマケイ文庫)

*24:1908~2007年。元参院議員。日本共産党書記長、委員長、議長を歴任

*25:日本共産党国際委員会副責任者(党幹部会委員兼務)

*26:衆院議員。日本共産党常任幹部会委員(党付属社会科学研究副所長兼務)。著書『マルクス資本論」のすすめ』(2021年、学習の友社)

*27:衆院議員。日本共産党名誉役員。著書『国会の警告無視で福島原発事故』(2015年、東洋書店)、『3・11から10年とコロナ禍の今、ポスト原発を読む』(2021年、あけび書房)