「全党員に機会を」「体質問われる」自民総裁選、両院総会選出に反発 - 産経ニュース
こうしてみると安倍の病気辞任主張は、もちろん
1)「野党の追及や支持率低下で辞めたんじゃ無い」という安倍のくだらない面子による言い逃れ
2)「病人だし首相も辞めるからもう批判しないでくれ」という泣き落とし(?)
だけでなく
3)「首相が病気なのですぐに後継総裁を選ぶ必要がある→時間のかかる党員選挙ではなく議員だけで選ぶべし」として石破が有利とみられる党員選挙を否定する魂胆だったのでしょうね。
「そんなに安倍が重病なら何で首相代理を置かないんだ」て話ですが。
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世論調査の支持率では石破*1に負け、安倍*2、麻生*3、二階*4といった面子が菅*5か岸田*6を担ぐ見込みと報じられる中、「出馬しても勝てない」と判断したのでしょう。
▼急に雷が激しく鳴ることを霹靂(へきれき)といい、「青天の霹靂」とは、まったく予想外の出来事を意味する。
▼昭和の昔、当時の田中角栄*7首相が金脈問題で辞任し、後任選びは混迷を極めた。調整役を務めた自民党長老の椎名悦三郎*8が、「神に祈る気持ち」で、弱小派閥の長ながら「クリーン」を売り物にしていた三木武夫*9を指名、彼が開口一番発した言葉がこれだった。
小生が以前読んだ本(五十嵐仁*10『戦後政治の実像』(2003年、小学館))によればまず第一に「青天の霹靂」と言う三木の言葉は大嘘であり、彼は椎名による「三木指名」を事前に知っていました。それどころか、三木だけで無く、有力派閥ボス「三角大福中」全員が事前に知っていました。三木指名に反発して党内が割れることを恐れる椎名が裁定発表前に党内に根回ししていたわけです。
第二に椎名の三木指名は驚きを持って受け止められました。
というのも
◆椎名は戦前、岸信介*11の部下(岸商工相(東条*12内閣)の下で商工次官)
◆岸の誘いで政界入り。岸内閣で官房長官に就任
◆岸の弟・佐藤栄作*13が首相(自民党総裁)に就任すると佐藤内閣外相、通産相、自民党総務会長を歴任
という経歴でわかるように、椎名は明らかに「岸・佐藤人脈」であり、彼の裁定結果は「福田赳夫*14」「中曽根*15」「保利茂*16」など「岸・佐藤に考えが近いタカ派(福田や中曽根)」や「岸、佐藤の子分筋(福田や保利)」が選ばれるのでは無いかとみられていたからです。
しかしこれも五十嵐仁『戦後政治の実像』(小学館)によれば「事前に椎名が岸や佐藤と謀議を重ねて決めたこと」でした。
なぜ、タカ派の岸、佐藤があえて「ハト派の三木」の指名を画策したかと言えば
1)福田を支援する岸、佐藤兄弟にとって「前首相で党内最大派閥のボス」田中が支援する大平*17の総裁就任は絶対に避けたい。しかし、大平VS福田の総裁選となった場合、勝てる保証がない。とはいえ、椎名の裁定で「選挙なしで福田」にしては田中、大平が反発して最悪の場合、彼らが離党して新党結成に動く危険性がある。そこまで行かなくても、反主流派として公然と福田政権の足を引っ張りかねない
2)ならばワンポイントリリーフとして三木を立てるのはどうか。三木なら少数派閥なので、いざとなったら、三木おろしを仕掛けることも容易だろう
→性格が違うとは言え、今回も「菅官房長官のワンポイントリリーフ説」が浮上しています。
3)三木ならばハト派でクリーンなので野党受けもいいだろう。田中金脈疑惑で危機に陥った自民党政治のイメチェンにもなる
4)二階堂擁立工作*18のような「三木擁立工作*19」の動きが公明党、民社党にあること(その場合、三木が新自由クラブ、新生党、新党さきがけ、みんなの党などのように自民を離党して三木新党を結成する)に気づいたので先手を打ってそれを潰す
5)三木はハト派とは言え、過去に自民党政調会長(岸総裁時代)、岸内閣科学技術庁長官(経済企画庁長官兼務)、佐藤内閣通産相、外相を務めたことがあるのでそんなに岸や佐藤と対立するような無茶苦茶もしないのでは無いか
6)これから体勢を立て直してポスト三木での「福田の総裁選勝利を目指そう」
などという岸らの思惑があったわけです。五十嵐氏は「あえて三木を擁立した岸、佐藤兄弟」を「敵ながらなかなかの知恵者」として評価しています。
その後、福田は「三木おろし」によって「当初の思惑通り(?)」自民党総裁となりますが、総裁再選は大平に阻止されます。
総裁再選を目指した福田は、「党員予備選挙では勝てるが、決選投票の議員選挙では(議員の大多数が田中派と大平派なので)勝てない」と思って「予備選挙で1位の人間が議員選挙なしで総裁になるべきだ」と言う趣旨の言葉を吐きますが、これに「馬鹿にするな」と発憤した「大平の盟友」田中によって、党員予備選挙時点で大平が1位。今更発言を撤回するわけにも行かず、福田は決選投票を断念します。その時に言った福田の有名な負け惜しみが「民の声は天の声というが、天の声にも変な声(福田の党員予備選挙敗北のこと)もたまにはあるな、と、こう思いますね。まあ、いいでしょう! きょうは敗軍の将、兵を語らずでいきますから。へい、へい、へい」というユーモラスなものです(福田赳夫 - Wikipedia参照)。
その大平も後に急病死。福田や大平の「長期政権」と言う夢はライバル(福田の場合)や病(大平の場合)によって挫折します。
辞任会見で、正直に病状を明かしたのも驚いた。
「首相辞任を決意するほど病状が重いのに、首相臨時代理は立てない」という意味不明な態度のどこが「正直に病状を明かした」なのか。
前も書きましたが、それこそ仮病の疑い濃厚な安倍と違い、「右翼テロで瀕死の重傷(浜口*20首相)」「脳卒中(石橋*21首相)」で臨時首相代理(幣原*22外相や岸外相)を置かざるを得なくなり、結局は辞任した「過去の総理(濱口に至っては体調が回復せず死去)」に対して失礼というもんでしょう。
舌先三寸で「無念」といっただけで許してしまうんだから安倍に大甘ですね。
「桜を見る会」をめぐる今となっては、どうでもいいようなスキャンダルでも新聞やテレビで連日とりあげられ、国会で叩(たた)かれれば、誰だってストレスがたまる。
政治私物化、それも犯罪に該当する疑い濃厚で、森友に至っては「精神的苦悩から自殺者まで出てる」のによくもふざけたことがいえたもんです。
しかし、さすがの産経も「桜を見る会」しか具体的な前を出せないんですかね。モリカケ、布マスク、電通給付金、甘利*23のUR疑惑、菅原前経産相(不起訴処分)、河井前法相夫妻(逮捕起訴)の公選法違反疑惑については一言も触れられません。もちろん「桜を見る会」だってどうでもいい話ではありませんが。
「どうでもいい話」というなら産経が蓮舫氏*24にしていた言いがかり「二重国籍」云々の方がよほど「どうでもいい話」です。
まあ、過去にも「昭和電工疑惑での芦田*25首相辞任」「金脈疑惑での田中首相辞任」「リクルート疑惑での竹下*26首相辞任」「佐川疑惑での細川*27首相辞任(細川氏の場合、それプラス国民福祉税騒動での社会党、新党さきがけの政権離脱ですが)」「故人献金疑惑、小沢*28幹事長・西松疑惑での鳩山首相辞任(鳩山氏の場合、それプラス沖縄基地問題での福島*29少子化等担当大臣(社民党党首)更迭と社民党の政権離脱ですが)」等、不祥事(主として金銭疑惑)による首相辞任がありますがそれらの一つに「モリカケ、桜を見る会、アベノマスク、給付金疑惑などによる安倍辞任」が加わっただけの話です。
▼ことに誰もが想像し得なかった中国・武漢発の新型コロナウイルス禍への昼夜をわかたぬ対応が、持病を再発させた主因であるのは間違いない。
いやいや、「ダイヤモンドプリンセス号が横浜に来たとき」に「大丈夫なのか?」と危惧する声に「心配しないで下さい、対応はちゃんとしています」と言ったのが安倍なのに何が「想像し得なかった」なのか。
「ダイヤモンドプリンセス号が横浜に来たとき」なら全然「蔓延してなかった」し、蔓延したら「厄介なことになること」は当時から分かっていたでしょうに。予想もしてなかったなんてのは苦しい言い訳です。
安倍が(そしてもしかしたら厚労省も?)「対応を間違って蔓延させただけ」じゃないですか。韓国や台湾などは日本よりずっと「好成績」ですからねえ。
むしろ「予想してなかった」というなら「村山政権時の阪神大震災」「菅政権時の東日本大震災と福島原発事故」のほうが何の予兆も無かったわけで、安倍のコロナより「ずっと対応は大変だった」でしょうよ。
にもかかわらず、村山氏*30、菅氏*31に産経は無茶苦茶な悪口をしたし、一方、村山氏、菅氏は安倍ほどみっともない言い訳もしなかった。
安倍レベルで「大変だ」というなどまったくふざけています。安倍が「東日本大震災当時の首相ならどうなったか」と思うと背筋が寒くなります。
後世の教科書は、「コロナ禍によって7年8カ月続いた第2次安倍政権は終焉(しゅうえん)した」と記すだろう。
産経は「コロナは自然現象だから仕方が無い」と強弁したいようですが当初から適切な対応をしていれば蔓延しないで済んだのだから詭弁でしか無い。
かつ安倍の場合、コロナだけで無く「モリカケ、桜を見る会などの政治私物化」などの数々の無法も「安倍が政権運営を諦めた理由」でしょうに。
在任中一度しか参拝されなかった靖国神社を詣でていただきたい。
安倍が靖国参拝をネグり続けたことをよほど不快に思ってるようです。ただし産経や靖国神社などウヨが求めてるのも、欧米や中韓が批判してるのも「首相靖国参拝」なので退任後の安倍が参拝しても余り意味がありません。
まだ65歳。健康さえ回復すれば、(ボーガス注:第三次まで内閣を組閣した)郷里の大先輩、桂太郎*32の如(ごと)く3度目もある。
さすがに本気では無いでしょうが絶句しますね。そもそも「病気辞任」という発表自体が「にもかかわらず臨時総理を置かない」という不自然さから見て嘘ですし、いずれにせよ、さすがに「安倍ごときを三度も登板させるほど自民党も日本社会もダメダメ」ではないでしょう。まあ再登板させたあげく7年の長期政権という現状でも充分「ダメダメ」ではありますが。
ちなみに桂(安倍以前の通算最長内閣)に対抗して当時の野党が共闘し、第三次桂内閣を崩壊に追い込んだのが「第一次憲政擁護運動(第一次護憲運動)」です(その後、桂は復権すること無く失意の内に病死)。
今回の安倍退陣も、(桂内閣時代とは意味合いが違うが)護憲を野党共闘のスローガンとしていたことでは「第一次護憲運動」との共通点があると言えます。
在任中「日露戦争勝利」「韓国併合」の事績がある桂内閣(桂首相)すら「第一次護憲運動」でのネガティブイメージがたたって知名度は低いのですから、「モリカケ」「桜を見る会」の安倍などなおさら「単に長いだけ」としか評価されないでしょう。
*1:小泉内閣防衛庁長官、福田内閣防衛相、麻生内閣農水相、自民党政調会長(谷垣総裁時代)、幹事長(第二次安倍総裁時代)、第三次安倍内閣地方創生担当相など歴任
*2:自民党幹事長(小泉総裁時代)、小泉内閣官房長官を経て首相
*3:橋本内閣経済企画庁長官、森内閣経済財政担当相、小泉内閣総務相、外相、第一次安倍内閣外相、自民党幹事長(福田総裁時代)を経て首相。現在、第二~四次安倍内閣副総理・財務相
*4:小渕、森内閣運輸相、小泉、福田、麻生内閣経産相、自民党総務会長(第二次安倍総裁時代)を経て幹事長
*6:第一次安倍、福田内閣沖縄・北方等担当相、第二、第三次安倍内閣外相を経て自民党政調会長
*7:岸内閣郵政相、池田内閣蔵相、佐藤内閣通産相、自民党政調会長(池田総裁時代)、幹事長(佐藤総裁時代)などを経て首相(田中角栄 - Wikipedia参照)
*8:戦前、岸信介商工相の下で商工次官。戦後、岸の誘いで政界入り。岸内閣官房長官、自民党政調会長(池田総裁時代)、池田内閣通産相、外相、自民党総務会長(佐藤総裁時代)、佐藤内閣外相、通産相、自民党副総裁(田中、三木総裁時代)など歴任(椎名悦三郎 - Wikipedia参照)
*9:国民協同党書記長、委員長、片山内閣逓信相、改進党幹事長(重光総裁時代)、鳩山内閣運輸相、自民党幹事長(石橋総裁時代)、政調会長(岸総裁時代)、岸内閣科学技術庁長官(経済企画庁長官兼務)、池田内閣経済企画庁長官、自民党政調会長、幹事長(池田総裁時代)、佐藤内閣通産相、外相、田中内閣副総理・環境庁長官などを経て首相(三木武夫 - Wikipedia参照)
*10:法政大学名誉教授。全国革新懇代表世話人。著書『徹底検証 政治改革神話』(1997年、労働旬報社)、『政党政治と労働組合運動』(1998年、御茶の水書房)、『この目で見てきた世界のレイバー・アーカイヴス』(2005年、法律文化社)、『労働再規制』(2008年、ちくま新書)、『労働政策』(2008年、日本経済評論社)、『対決 安倍政権:暴走阻止のために』(2015年、学習の友社)、『活路は共闘にあり:社会運動の力と「勝利の方程式」』(2017年、学習の友社)、『打倒安倍政権:9条改憲阻止のために』(2018年、学習の友社)など。個人ブログ五十嵐仁の転成仁語:SSブログ
*11:戦前、満州国総務庁次長、商工次官、東条内閣商工相を歴任。戦後、日本民主党幹事長、自民党幹事長(鳩山総裁時代)、石橋内閣外相を経て首相(岸信介 - Wikipedia参照)
*12:関東憲兵隊司令官、関東軍参謀長、陸軍次官、陸軍航空総監、第二次、第三次近衛内閣陸軍大臣、首相を歴任。戦後、死刑判決。後に靖国神社に合祀。(東條英機 - Wikipedia参照)
*13:運輸次官から政界入り。吉田内閣郵政相、建設相、岸内閣蔵相、自民党総務会長(岸総裁時代)、池田内閣通産相、科学技術庁長官などを経て首相(佐藤栄作 - Wikipedia参照)
*14:大蔵省主計局長から政界入り。岸内閣農林相、自民党幹事長(岸、佐藤総裁時代)、政調会長(池田総裁時代)、佐藤内閣蔵相、外相、田中内閣行政管理庁長官、蔵相、三木内閣副総理・経済企画庁長官などを経て首相(福田赳夫 - Wikipedia参照)
*15:岸内閣科学技術庁長官、佐藤内閣運輸相、防衛庁長官、田中内閣通産相、自民党幹事長(三木総裁時代)、総務会長(福田総裁時代)、鈴木内閣行政管理庁長官などを経て首相(中曽根康弘 - Wikipedia参照)
*16:吉田内閣労働相、官房長官、農林相、自民党総務会長(池田総裁時代)、幹事長(佐藤総裁時代)、佐藤内閣建設相、官房長官、田中内閣行政管理庁長官、衆院議長など歴任(保利茂 - Wikipedia参照)
*17:池田内閣官房長官、外相、佐藤内閣通産相、田中内閣外相、蔵相、三木内閣蔵相、自民党幹事長(福田総裁時代)などを経て首相(大平正芳 - Wikipedia参照)
*18:二階堂工作はずっと後の話ですが
*19:五十嵐本に寄ればそう言う動きがあったんだそうです。
*20:加藤高明、第1次若槻内閣蔵相、第1次若槻内閣内務相を経て首相(濱口雄幸 - Wikipedia参照)
*22:戦前、加藤高明、第1次若槻、濱口、第2次若槻内閣外相を歴任。戦後、首相、吉田内閣副総理、衆院議長を歴任(幣原喜重郎 - Wikipedia参照)
*23:小渕内閣労働相、第一次安倍、福田内閣経産相、麻生内閣行革等担当相、自民党政調会長(第二次安倍総裁時代)、第二次、第三次安倍内閣経済財政担当相、自民党選対委員長などを経て現在、自民党税制調査会長(甘利明 - Wikipedia参照)
*24:菅、野田内閣行政刷新担当相、民主党代表代行(岡田代表時代)を経て民進党代表(蓮舫 - Wikipedia参照)
*25:幣原内閣厚生相、片山内閣副総理・外相、首相など歴任(芦田均 - Wikipedia参照)
*26:佐藤、田中内閣官房長官、三木内閣建設相、大平、中曽根内閣蔵相、自民党幹事長(中曽根総裁時代)などを経て首相
*28:中曽根内閣自治相・国家公安委員長、新生党代表幹事、新進党党首、自由党代表、民主党幹事長など歴任
*29:社民党幹事長、鳩山内閣少子化等担当相、社民党副党首などを経て党首