今週の週刊漫画ゴラク(2023年3/24発売)(副題:保冷剤誤食事故とM資金詐欺)

◆わたしの死に方
 「身近にある死の危険」の紹介漫画*1で、今回は「保冷剤(エチレングリコール)の誤食」による「幼児の死亡」がネタです(例えばエチレングリコール中毒 - Wikipedia参照)。
 「エチレングリコールを使った保冷剤」は既に「誤食による死亡事故の多発」で製造されなくなっていますが、「エチレングリコールを使った古い保冷剤」がそのまま冷凍庫にあって、幼児が誤食し、死亡するケースも未だに少なくないとのこと(なお、最近の保冷剤は勿論、エチレングリコールほど危険ではないものの、食べることは前提にないので『誤食していい』わけでは勿論ありません)。
 なお、エチレングリコールには甘みがあり、冷凍庫でも固まらずゼリー状なので、子どもが「ゼリーやシャーベットと間違えて食べる恐れがある」ようです。
 ちなみに「エチレングリコールに似た物質」であるジエチレングリコールは以前「エチレングリコール同様の有害物質」であるにもかかわらず「砂糖など一般的な糖類(勿論食用なので有害性はない)を入れるよりワインの風味を傷つけない」と言う理由で「ワインに甘みをつけるため」故意に混入されたことがあり、そうしたワインを日本企業(マンズワイン)も知らずに輸入していたため、幸い「死亡事故は起きなかった」ものの、大問題(回収騒動)になったことがあります。
 これについては1985年オーストリア産ワインジエチレングリコール混入事件 - Wikipedia

30年前に「有毒」判明したワインか、ヤフオクで落札:朝日新聞デジタル2018.10.20
 キッコーマンの子会社マンズワイン(東京)が1980年代に製造し、有毒成分が含まれていたとして回収対象となったとみられるワイン3本が8月、オークションサイト「ヤフオク!」に出品され、落札されていたことがわかった。キッコーマンは「当時回収されなかったワインだとすると、出品者も落札者も回収対象だったことを知らない可能性がある」として、ヤフオクを通じて確認を進めている。
 キッコーマンによると、いずれも1982~85年に販売されたが、有毒成分のジエチレングリコールが含まれていたことが85年に判明した。当時、回収対象となった計約39万本のうち、回収できたのは約4万本にとどまったが、健康被害は確認されなかったという。
 同社では、回収対象のワインだと確認でき次第、回収するという。

キッコーマンが“毒入りワイン”回収騒ぎ…33年前の問題再燃|日刊ゲンダイDIGITAL2018.10.18
 キッコーマンの子会社「マンズワイン社」が30年以上前に製造した「毒入りワイン」が、ネットオークションに出回り、落札されていたことが日刊ゲンダイの取材で分かった。
 今回、落札された毒入りワインは、今から33年前、マンズ社が販売し、大騒ぎとなったものだ。
 毒入りワインを巡っては、1985年、オーストリアや旧西ドイツ産のワインに有毒な不凍液「ジエチレングリコール」が混入していたことが発覚し、社会問題化。当時、マンズ社がブレンド用に使用していたワインにもジエチレングリコールが混入していたことが分かり、マスコミ各社が連日、取り上げ大炎上していた。
 キッコーマンによると、当時、計約39万本が消費者の手元にわたり、約4万本を回収したが、残りは「大半が消費されたとみられる」(キッコーマン・コーポレートコミュニケーション部)という。
 今回、回収漏れしたワインがネットオークションに出品されたとみられている。
 キッコーマンに問い合わせると、こう回答した。
「オークションサイトの運営者と相談し、落札者と個別にコンタクトを取った上で、回収する方針です。」

を紹介しておきます。
 なお、エチレングリコールジエチレングリコールでググったら近年も以下のような死亡事件があったとのことです。

急性腎障害で子供133人死亡 せき止めシロップ販売停止―インドネシア:時事ドットコム2022.10.22
 インドネシアで子供が急性腎障害となり、死亡するケースが急増している。地元の報道などによると、22日までに約240人が罹患、死者は133人となった。政府はせき止めシロップ薬が原因の可能性があるとみて、処方と販売を当面停止するよう指示している。
 インドネシア保健省は19日にシロップ薬の処方と販売停止を指示した。20日には患者の血液などから甘みのある「エチレングリコール」と「ジエチレングリコール」が検出されたとし、これらが原因との見方を示した。

子供用シロップで300人超死亡 使用中止へ協調訴え―WHO:時事ドットコム2023.1.24
 世界保健機関(WHO)は23日、インドの製薬会社が製造したせき止めシロップを飲んで子供300人以上が死亡したとして、医薬品のサプライチェーン(供給網)に関わる全ての当事者に「迅速かつ協調した行動」を呼び掛けた。
 WHOによると、過去4カ月間に少なくとも7カ国で被害が報告され、このうちガンビアインドネシアウズベキスタンで死者が出た。犠牲者の大半が5歳以下の子供だった。
 シロップには、高濃度の「ジエチレングリコール」や「エチレングリコール」が混入していた。WHOは、これらの液体は「工業用溶剤や不凍液に使われ、少量でも摂取すれば命に関わる。医薬品に含まれるべきではない」と警告した。


◆白竜HADOU
 説明が面倒なので「白竜HADOUを読んだ人」にしか分からない「意味不明な感想」になりますが、「怪しい謎の団体」が「巨額融資話(しかも無担保や低金利など一般の銀行融資より格段に条件がいい)」を大企業に持ち込むとはどう見ても、いわゆる「M資金詐欺」です。
 M資金詐欺に登場人物が騙されるのか、騙されずに済むのか、主人公「白竜」こと白川竜也(暴力団・黒須組若頭)が今後どう関わるのかが問題ですね。
 今後、話が展開しないと分かりませんが「全日空の大庭社長失脚(後任社長となった若狭副社長が黒幕と疑われている)」のようにこの漫画は「単なる詐欺」ではなく「社内抗争」が背景にある設定かもしれない。
 ちなみに今回の白竜HADOUで「M資金詐欺」が持ち込まれた企業は「M&Aで業績を拡大してきた大手外食企業」と言う設定であり、明らかに元ネタは後で紹介する「コロワイド*2会長が騙されたM資金詐欺」です。
 「全日空の大庭社長(元運輸省キャリア官僚)」や

コロワイド会長が30億円騙された「M資金詐欺」、その驚きの手口を公開! | 倒産のニューノーマル | ダイヤモンド・オンライン
 蔵人会長と言えば実質的に一代でコロワイドグループを築いた立志伝中の人物である。日大藤沢高校卒業後、父親が経営していた逗子市の「甘太郎食堂」の経営を引き継ぎ、瞬く間に有力チェーンに育て上げた。「かっぱ寿司」「牛角」など積極的な買収で成長を加速させてきた「超ヤリ手」であることは疑問の余地がない。

等といった大企業経営者が「そんなのに騙されるもんなんかねえ?」感はあります。
参考

M資金 - Wikipedia参照
 1969年、元自由党衆院議員・鈴木明良*3が、全日空社長大庭哲夫*4を訪ねた。彼は自民党衆院議員の大石武一*5原田憲*6の紹介状と共に「大蔵省特殊資金運用委員会」という名刺を差し出しM資金融資について語った。
 融資額は3000億円、返済期限は30年、年利4.5%という破格の条件であり、大庭は乗せられてしまい、融資申込書や念書を何通も振り出してしまった。それら書類の一部は右翼・児玉誉士夫の手に渡り、児玉はこれをネタに翌年の株主総会で大庭を失脚させた。
 全日空の大型機導入をめぐり、マクドネル・ダグラスDC10をロッキード・トライスターへと機種決定を変更させようとする若狭得治*7副社長の動きに大庭は反対していたこと、大庭失脚後、若狭が社長に就任し、ロッキードに機種変更されたこと、大庭を攻撃した右翼・児玉が「ロッキード社の秘密代理人」であったことから、このM資金詐欺話は大庭失脚を狙った謀略とみられる。

コロワイド会長が30億円騙された「M資金詐欺」、その驚きの手口を公開! | 倒産のニューノーマル | ダイヤモンド・オンライン2020.7.22

「M資金」詐欺 GHQ? 被害額30億 時代を超える手口|NHK事件記者取材note2021.3.9(なお、この事件もコロワイドのM資金詐欺被害です)
 「手口はいわゆる『M資金』と呼ばれるものです」。
 深夜に開かれた記者レクで、神奈川県警の幹部が口にしたこの言葉。
 「M資金って何?」
 私は正直、知りませんでした。(横浜放送局記者・寺島光海)
 2020年6月11日の午後10時半。
 神奈川県警察本部で詐欺事件の容疑者逮捕を発表する記者レクが開かれ、本部を担当している私は、他社の記者とともに出席しました。
「手口は基幹産業育成資金、いわゆる『M資金』を2800億円提供すると持ちかけたもの。ほかにもおよそ30億円をだまし取られた可能性がある」
 そもそも「M資金」とは何なのか。
 文献などを手がかりに調べてみると諸説あるものの、おおむね以下のような説明に集約できました。
『第2次世界大戦での敗戦後、GHQが接収した日本の金銀などを原資として作った秘密資金で、現在も極秘裏に運用され続けているとされる。GHQの経済科学局長を務めたウィリアム・マーカット少将の頭文字をとって『M資金*8』と呼ばれる』
 さらに、これまでもたびたび表舞台に登場していたこともわかりました。
 当時の新聞記事によりますと、1981年には、大手都市銀行の偽の証書を使って、中小企業の経営者から3000万円以上をだまし取ったとして逮捕された男が、「M資金」の詐欺グループと関わっていたとされました。
 また1982年から2001年ごろにかけては、「M資金」の提供を持ちかけられた大企業の役員クラスが次々に詐欺の被害に遭ったとして、7つの事件が摘発されました。
 被害総額は46億円に上ったということです。
 今回、神奈川県警が摘発した事件はどうだったのか。
 「敗戦時に海外に持ち出された日本の金銀を財源にしている」
 警察によりますと、詐欺グループ側は「M資金」についてこう説明し、資金管理を行うイギリスの団体との交渉費などの名目で、金を出すよう持ちかけていたということです。
 財務省のホームページには、今も次のような注意喚起の文章が載っています。
「『基幹産業育成資金』と称した資金提供を財務省から受けられる、という不審な勧誘等があったとの情報提供がありました。上記のような勧誘等を受けた場合は、安易に信用することなく財務省の担当部署を確認するなど、詐欺等の被害に遭わないようご注意ください」

「M資金」詐欺、男に懲役8年 コロワイド会長から31億円―横浜地裁:時事ドットコム2023.3.22

「M資金」詐欺 消えぬ「伝説」 被害なぜ :東京新聞 TOKYO Web2023.3.23
 「M資金」の提供をかたり、約三十一億円をだまし取ったとして詐欺罪に問われた武藤薫被告(68)に、横浜地裁は二十二日、懲役八年の判決を言い渡した。
 今回の事件の始まりは二〇一三年。証人尋問によると、被害者で外食大手「コロワイド」の蔵人金男会長(75)は知人の大学教授の紹介で被告と知り合った。「戦勝国が管理する資金の英国分を担当している」と語り、過去には同国の情報機関「MI6」に所属していたと明かす被告から二千八百億円の資金提供を持ち掛けられた。
 蔵人会長は過去にも似た話を持ち掛けられてきたが、「誇大妄想」と相手にしなかった。しかし、この時は「社会的信頼のある」知人を信用した。資金提供を進めるわいろ名目で被告に現金を振り込んだが、連絡は途絶えた。
 M資金を巡る詐欺は連綿と続く。一九七〇年には、全日空社長が三千億円の融資を受ける念書を作っていたことが発覚。
 立正大の西田公昭*9教授(社会心理学)は「自信のある成功者はだまされることを想定できない。伝説のような話でも『自分になら回ってくるかもしれない』と思ってしまう」と分析する。弁護側は公判で「資金は実在する」と主張。一方、判決で小泉満理子裁判長は「荒唐無稽」と断じた。

*1:今後も気が向いたらこの漫画を紹介予定です。

*2:1977年に炉端焼き居酒屋「手作り居酒屋・甘太郎」として開業したのが始まり。現在はM&A(企業買収)により事業範囲を急速に拡大、アトム(回転寿司「にぎりの徳兵衛」、とんかつ店「かつ時」、ステーキレストラン「ステーキ宮」)、カッパ・クリエイト(回転寿司「かっぱ寿司」)、レインズインターナショナル焼肉店牛角」、しゃぶしゃぶ店「しゃぶしゃぶ温野菜」、居酒屋「土間土間」「かまどか」)、ハンバーガーチェーン「フレッシュネスバーガー」、定食屋「大戸屋ごはん処」などを傘下に持つ(コロワイド - Wikipedia参照)

*3:1909~1985年。1946年、第22回衆院総選挙で初当選し、その後、1948年の第24回総選挙まで連続3回当選。1952年の第25回衆院総選挙で落選。1960年、詐欺で逮捕されたが、起訴猶予。1964年に破産宣告を受けた。1968年、3500万円の手形詐欺を働き、1969年、逮捕。1973年、最高裁で懲役2年の実刑が確定。病気を理由に何度も刑執行停止で刑務所の外に出るが、交番で寸借詐欺を働いたこともあった。1985年9月6日、収監中の八王子医療刑務所で死去(鈴木明良 - Wikipedia参照)。

*4:1903~1979年。元運輸官僚。航空庁長官で退官後、日本航空常務、全日空副社長、社長を歴任

*5:1909~2003年。佐藤内閣環境庁長官、三木内閣農林相を歴任

*6:1919~1997年。佐藤内閣運輸相、田中内閣郵政相、竹下内閣経済企画庁長官を歴任

*7:1914~2005年。元運輸事務次官。退官後、全日空副社長、社長、会長を歴任。ロッキード事件では外国為替管理法違反、議院証言法違反の罪に問われ1992年、最高裁で懲役3年、執行猶予5年の刑が確定。なお、有罪確定後も全日空の役職(名誉会長、相談役など)に留まった

*8:もともとはそうですが、現在は『表に出せない巨額資金=M資金』であり必ずしもGHQとは関係がない。

*9:著書『だましの手口』(2009年、PHP新書)など