今週の週刊漫画ゴラク(2023年10/20記載)(副題:マツタケ、メイチダイ、世界珍食紀行)(追記あり)

 読まないと理解できない感想が多いですがご容赦ください。

鬼ゴロシ@河部真道

 「犯人の銃弾によって頭の上半分が吹き飛んで、顔の判別ができない」なんて遺体はさすがに肉親でも見たくないですね。
 というか、「ノワール」なのでそういう設定が出てくるだけで、さすがに警察もそんなモンは遺族に見せないんじゃないか。

 酒のほそ道*1@ラズウェル細木

 今回は「国産マツタケと輸入マツタケ」がネタで「前者の方が香りが良いし、瑞々しくパサパサしてない」とされていますがどんなもんなんですかね?(マツタケなどまず食べないのでよく知らない)

国内産まつたけと外国産まつたけの見分け方 - 株式会社まつたけ村
 日本では【植物防疫法】という、法律上、外国の土がついたまま植物は輸入できないことになっています。
 そのためきれいに土も落とされたものしか輸入できないため、見た目は良いですが、食べたとき味も、食感も、香りもしないものが多いです。

だそうですが。

第3回 中国のマツタケ――日本向け輸出への打撃と国内需要への期待《新型コロナと中国国境貿易:溜まるアジアの『生もの』たち》(山田七絵) - アジア経済研究所(山田七絵*2)2021年1月
 20世紀初頭までマツタケは比較的ありふれた食材であったが、戦後の森林伐採薪炭材需要の減少などによってマツタケが宿主とするアカマツ等の生育する里山が衰退したことから(ボーガス注:国産の)収穫量が大幅に減り、1941年の1万2000トンをピークに近年は平均50トン程度で推移している*3。他のキノコと異なりいまだに人工的に栽培できず*4、収穫後2、3日で風味が落ちることから、高級食材の代表格として確固たる地位を築いた。
 需給のギャップを埋めるため、1980年代半ば以降世界各地からマツタケが輸入されるようになった。
 (ボーガス注:輸入は)ここ数年は1000トン前後で推移していた。
 国産品の生産量は近年50トン程度であることから、国内消費の大半は輸入品でまかなわれている
 国内産の価格(生鮮)が1キロ数万円を下らないのに対し、輸入物は近年シーズン平均で1キロあたり2000円台(トルコ産)から5000円台(中国産、カナダ産、アメリカ産)と手ごろである(2018年)。国産マツタケは高級料亭やデパートで扱われるのに対し、輸入物はスーパーや外食チェーン、冷凍品や加工品として販売されることが多い。

ということで今や国産は高級食材です。
 今回の漫画では、国産が「焼きマツタケ」で、輸入が「バター醤油炒め」「土瓶蒸し」「フライ」で食べられます。

 江戸前の旬@九十九森×さとう輝

 今回は「メイチダイ*5」なる「謎の魚(関西ではよく食べられるそうだが関東ではそれほどでもない)」が名前だけ登場。
 どんな魚なのかは次回明らかになります。
 どうも「美味しいが、処理の仕方を間違えると磯臭くてとても食べられない魚」、つまり「鯉こく(鯉の味噌煮)、鯉の洗いなどで親しまれているが苦玉と呼ばれる胆嚢を誤って潰すと苦くなってとても食べられない鯉のような厄介な魚」のようですが。

【追記】

読んだ本 - 情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明
 メイチダイ後編。野締めと神経締めで味が変わるっての、どういう原理なんだろうな。

 そこは俺も気になったところですね。

【参考:世界珍食紀行

第3回 ラオス――カブトムシは食べ物だった《続・世界珍食紀行》(山田紀彦) - アジア経済研究所(山田紀彦*6)2018年7月
 小学生の頃、毎年夏になると近所の雑木林によくカブトムシを捕りに行った。カブトムシは夏に捕まえ、飼育する昆虫であり、まさか自分が大人になりカブトムシを食べるとは夢にも思わなかった。大人になってからも、ラオスに来るまではカブトムシが食べ物だという認識はなかった。
 現在の赴任先であるラオスでは、お昼ご飯のお弁当、村での食事、飲み屋などで、昆虫食が当たり前のように出てくる。初めてラオスに赴任した2003年当時、最初に食べた昆虫はコオロギだった。その時は嫌々食べた記憶がある。しかし今ではコブミカンの葉、レモングラス、ニンニクとともに揚げたコオロギはビールに最適なおつまみと思うようになった。日本の居酒屋にある川エビのから揚げに似ている。今ではバッタ、芋虫、幼虫、タケムシ、カメムシ、アリ、タガメなどが食べられるようになった。というよりも、テーブルに並んでいると自然と手が出るまでにレベルアップした。昆虫以外にも、リス、ネズミ、トカゲ、ヘビ、赤アリとその卵なども食べる。チャンパーサック県で食べた赤アリとヘビのスープは忘れることができないほど絶品だった。市場で生きているヘビを購入し、直接炭火であぶりウロコを取り、ぶつ切りにして酸味が出る赤アリと塩などで煮るだけのシンプルなスープだが、本当においしかった。このようにラオスに来てからさまざまな昆虫や動物を食べたが、もっとも不味かったのがカブトムシの成虫である。首都ヴィエンチャン郊外には野生動物や昆虫を豊富に取り揃えるドンマカーイ市場がある。そこで友人がカブトムシの雄の成虫を購入し職場に持ってきた。カブトムシの羽はむしられ油で素揚げされており、塩コショウをつけて胴体部分のみを食べるという。さすがにカブトムシの成虫が出されたときには躊躇した。子供の頃に捕まえていたカブトムシを食べ物とは思っていなかったからである。ラオスでもカブトムシが一般的に食べられているわけではないが、出されたものはとりあえず口に入れるという考えの私は、角をつまみ、胴体部分を恐る恐る食べてみた。口に含み噛んでみると、胴体部分からジュワーと油のような液が出てきた。とりあえず何回か噛み飲み込んでみるとえらく不味い。一応食感はあるが古い油を吸い取った何かの塊を食べているようである。これ以降カブトムシは食べていない。というよりも、もう食べなくてよい。
 しかし今では夏にカブトムシをみると、昆虫採集の対象とともに食べ物として見るようになった。そして息子は友達に、「俺のお父さん、カブトムシ食べるんだぜ!」と言わなくてよいことを自慢げに言うようになってしまった。ただし子供たちはカブトムシが食べられるわけはないと思っており、おじさんがカブトムシを食べたことを信じていない。

第6回 台湾――臭豆腐の香り《続・世界珍食紀行》(熊倉 潤) - アジア経済研究所(熊倉潤*7)2018年11月
 今、台湾旅行が人気だ。読者諸兄姉の中にも台湾で夜市を歩いたことがある方も多いだろう。そんな夜市でひときわ「異臭」を放っているのが、臭豆腐である。「異臭」と書いたが、失礼を承知で言うならば、筆者には大便の匂いに感じられる(個人の見解であって所属組織を代表するものではありません)。もちろん台湾の方々は、糞便臭だなんて全く思っていない。彼ら彼女らは本当にいい香りだと言う。また台湾の人で臭豆腐が苦手な人はおよそ聞いたことがないとも言う。臭豆腐は、台湾人のソウルフードと言っても過言ではないかもしれない。この臭豆腐、台湾だけでなく、中国南部、香港等でも食すことができる。もともとは江南から華南一帯で発達した豆腐食品、発酵食品の一類型である。中国では、浙江省湖南省臭豆腐が有名と聞く。特に湖南省省都長沙の名前を冠した「長沙臭豆腐」の屋台は、ほぼ中国全土の漢人地域で比較的簡単に見つけることができる。屋台では、注文が入るとサイコロサイズの臭豆腐を油で素揚げして、辛いソースをかけて、そのカリッとした食感を楽しむ。サイコロサイズの臭豆腐を素揚げするやり方は、台湾にも多い。台湾ではその場合、盛り付けた後に、酸っぱい白菜漬けが添えられるだろう。味付けに関しては、中国では辛いソースをかけることが多いのに対し、台湾では甘みのあるソースが一般的という違いがある。
 もちろん、臭豆腐はいつも必ず素揚げして食べるとは限らない。実は油で揚げる場合、例の「異臭」は口に入れるとそれほど匂わない。素揚げではなく、煮たり、はたまた蒸したりすると、匂いはたちまち素揚げの場合の5倍くらい(当社比?)に強まり、かぐわしい「異臭」が店の外まで漂っていくことになる。筆者は一時期、北京に住んでいたことがあった。その頃、「長沙臭豆腐」の屋台で素揚げの臭豆腐をつまんだことがあったが、そのときは1カップ食べても平気だった。
 しかし、のちに台湾に移住して、台湾人の妻(当時はまだ結婚していなかった)に小籠包の店に連れていかれた。小籠包だけでなく、彼女の好物である臭豆腐を蒸して出すことが売りの店だった。何も知らずに連れてこられた可哀想な日本人は、店内に入り、強烈な糞便臭に襲われた。それでも筆者は、おそらく店の奥のトイレが盛大に故障しているのだろうくらいに思っていた。彼女が注文票を書いたとき、筆者は彼女が臭豆腐の欄にしっかり「一」と書くのを見落としていたのだ。
 それから三年余り経って、筆者は臭豆腐を少しずつ食べられるようになった。日本では、乗客が持ち込んだ臭豆腐の匂いが原因で、電車が止まるという珍事件も発生したが、筆者は感覚が着実に麻痺していった。とはいえ、さすがに蒸した、最もかぐわしいものはご免こうむりたい。美食の島、台湾の「臭豆腐」、ぜひ皆さんもお試しあれ。

第7回 カンボジア――こじらせ系女子が食べてきた珍食《続・世界珍食紀行》(初鹿野 直美) - アジア経済研究所2018年12月
 3つの珍食グルメについて紹介したい。
 プノンペンから小一時間ほどのところにある街スクンはタランチュラ(蜘蛛、現地ではアーピン)で有名である。付近に止まる観光バスには、売り子たちがこぞって蜘蛛を売りにくる。2007年頃、一緒にドライブ旅行を楽しんでいた現地の友人の都会育ちの妹(当時中学生)が「食べたい」とねだるものだから、一緒に食べてみた。悪くはなかったけれど、これを好きだという人たちがもっとも美味しい部分だと評する蜘蛛のお尻の丸い部分のモサモサとした食感がどうにも好きになれなかった。もう一度食べる機会があったが、やはり理解できず、その後一度も食べていない。
 同じく2007年頃、プノンペンでお世話になっていたメイドさんが、「今日のご飯は特別よ」と笑顔で出してくれたのが、山盛りの蟻とハーブの炒めものだったときは、一瞬たじろいだ。動揺は隠して満面の笑みで「ありがとう」と言いつつ、多めのご飯に蟻数匹とハーブとを載せてかきこんだ。米とハーブの味と、プチッという食感しか覚えていない。もう一度、蟻の味を実感しながら食べてもいいとは思っているが、あんなにたっぷりの蟻料理にはその後出くわしていない。当時の日記には、現地の友人から「そんなに頻繁に食べるものではないけれど、半年に1回くらいは食べる」「コンポンチナン州に行ったとき、ほとんど毎日蟻だった」という証言を得たとあったので、その気になれば「次」があったのかもしれない。しかし、こちらもまた、10年以上食べていない。
 孵化直前のアヒル卵は、唯一「おいしい」と人に勧めることができる。フィリピンやベトナム*8でも食されていて、カンボジアではポンティアコンと呼ばれる。夕方になると「熱々のポンティアコンだよー」という声が聞こえてくる。卵のてっぺんをコンコンとノックしながら小さな穴をあけ、スプーンで少しずつ中身をいただく。たっぷりのハーブと、塩コショウにライムを絞ったものをあわせる。羽になりかけの物体が見えたりすると、食べにくいかもしれない。しかし、卵と肉の中間のような味なので、おいしくない理由がない。初めて食べたとき、一気に5個平らげてしまったことを覚えている。しかし、この卵ですら、最近めっきり食べる機会が減ってしまった。

 上記の内「ラオスカンボジア」は昆虫食の紹介です。まあ、長野県(本多氏の出身)なんかは昆虫食があることは、本多勝一本多勝一はこんなものを食べてきた』(2004年、七つ森書館)に描かれていたかと思います。
 また、今後は「国連が昆虫食を推奨してる(肉食は穀物を大量使用しエコでないため)」ので昆虫を食べる機会も増えるかもしれない。


【参考:臭豆腐

日本の電車が臭豆腐が原因で一時運転見合わせ--人民網日本語版--人民日報2016.2.15
 2月7日、日本の三重県桑名市と愛知県名古屋市を結ぶJR関西線の普通列車(2両編成)が愛知県弥富駅に停車中に、乗客から「車内がアンモニア臭い」と報告があり、すぐに20人の乗客全員を同駅に降ろした。杭州日報が伝えた。
 愛知県警の中村署から消防員が出動し、防護服に身を包んで現場に乗り込んだが、結果として発見された異臭元はなんと「臭豆腐」だった。駅のごみ箱の中から臭豆腐のパッケージが見つかり、列車の1両目後方の座席と床にも液体の一部がこぼれているのが発見された。
 この影響で約2時間運転を見合わせ、約4750人の乗客に影響が出た。警察によると、避難した乗客20人に異臭で気分が悪くなったりなどの異常はなかった。

<海外便り>本場の臭豆腐…臭いあっての味わい? 中国・湖南省長沙:東京新聞 TOKYO Web
 湖南省の料理は辛いことで知られるが、もうひとつ有名なのが「臭豆腐」という料理だ。野菜などを発酵させた液につけた豆腐を揚げたもので、くさやを思い起こさせる独特の臭いが特徴だ。北京でも屋台で見かけるが、臭いに尻込みして食べたことがなかった。
 しかし出張で訪れた長沙は臭豆腐の本場だけに、食べないわけにはいかないと初挑戦した。揚げ上がった臭豆腐は真っ黒で、意外にも臭みがあまり感じられない。一方で肝心の味はいまひとつで、たれの辛さを除けば日本の揚げ豆腐とそれほど違いを感じなかった。
 なぜだろうと考えて思い出したのが、伊豆大島で食べたくさやだ。料理店で注文したくさやは臭いがキツかったものの、その味わい深さに舌鼓を打った。しかし土産用に買った瓶詰は臭いがあまりしない分、味わい深さは欠けていた。
 長沙で食べた臭豆腐も観光客向けに臭いを抑えていたのかもしれないが、やはりあの臭いがあってこその味なのだろう。そう考えると北京で食べ直そうかと思うが、あの臭いをかぐたびにやはり尻込みしてしまう。

毛沢東も愛した臭い豆腐、黒い長沙臭豆腐 | スマイル中国語教室のブログ
 中国全国各地で食べられている臭豆腐ですが、湖南省が発祥と言われており、その省都の長沙がその本場です。長沙市内を見渡すと、街中の至る所で臭豆腐が売られています。特に長沙臭豆腐は、黒い豆腐でカリッと揚げた豆腐の真ん中に穴をあけ、大蒜が効いた酸味のある辛いタレを入れて食べます。
 実はこの黒い長沙臭豆腐毛沢東が大好きな料理の一つであったそうです。毛沢東湖南省の出身ですが、故郷の村から湖南省省都、長沙に出てきた学生時代、この味にハマってしまい、「闻起来臭,吃起来香!(嗅げばクサいが食べるとウマい)」と大絶賛したそうです。
 因みに臭豆腐は、豆腐を植物性の発酵汁(タケノコや冬瓜等)で発酵させ、灰汁に漬け込んだものです。豆腐の植物性タンパク質が、発行汁によってアミノ酸に変化し、独特の風味と強烈な匂いを発するそうです。ですので腐ったものではなく、旨味のあるアミノ酸に変化しているので臭豆腐が美味しくなるのだそうです。

*1:タイトルに反し、実はこの漫画、酒よりもむしろ「今回のマツタケ」のように「酒のつまみ」にウェイトがあります。

*2:日本貿易振興機構ジェトロ)アジア経済研究所研究員。著書『現代中国の農村発展と資源管理』(2020年、東京大学出版会)、『世界珍食紀行』(編著、2022年、文春新書)

*3:アナ・チン『マツタケ』(2019年、みすず書房)によれば、戦後里山が衰退した主な原因は二つある。第一に大規模な森林伐採とスギなどの人工林が造成されたこと、第二に化石燃料の普及により薪炭材の需要が減り、放置された里山が本来の植生へと遷移したことである。日本の高度経済成長と里山の衰退はほぼ同時期に進行し、きわめて希少で高価になったマツタケが高級な贈答品や接待向けの食材として珍重されるようになった。

*4:2018年11月、兵庫県の化学肥料メーカー多木化学マツタケによく似た近縁種バカマツタケの完全人工栽培に成功したことを発表したが現時点では生産技術やコストなどの理由から商品化には至っていない。

*5:甘鯛、石鯛、イボダイ、イトヨリダイ、金目鯛等と同じいわゆる「あやかり鯛」で実際は鯛ではない。

*6:日本貿易振興機構ジェトロ)アジア経済研究所研究員。著書『ラオスの基礎知識』(2018年、めこん)

*7:日本貿易振興機構ジェトロ)アジア経済研究所研究員等を経て法政大学教授。著書『民族自決と民族団結:ソ連と中国の民族エリート』(2020年、東京大学出版会)、『新疆ウイグル自治区』(2022年、中公新書

*8:漫画「美味しんぼ」で「孵化直前のアヒル卵(ホビロン)」が「美味」として登場した事がありますね。