今日のロシアニュース(2023年11月30日分)

上月駐ロシア大使 離任前に会見「平和条約締結の方針堅持へ」 | NHK | ロシア
 立場上、こう言わざるを得ないのでしょうが、「ウクライナ戦争が終戦か停戦しない限り」欧米各国(米英仏独伊)が日露平和条約の締結を容認するとも思えないし、欧米各国の「反対」を無視して締結に動くことは岸田にはできないでしょう。


ウクライナ国防省の情報部門トップ “ロシアが妻に毒物使用” | NHK | ウクライナ情勢
 勿論「ロシアの犯行の可能性」は当然ありますが、今後の報道待ちですね。現時点では「ロシアの犯行」と断定できる決定的証拠はなさそうです。


ゼレンスキー大統領、反転攻勢で「期待通りの結果得られず」 | 毎日新聞

 ゼレンスキー大統領は11月30日、6月に始めた反転攻勢について「期待通りの結果を得られなかった」と語った。AP通信のインタビューに答えた。
 ゼレンスキー氏は、「要望した兵器のすべてを受けられなかった」と述べ、米欧の軍事支援が追いつかず、地上部隊が不利な状況に置かれたとの認識を示した。反転攻勢は大きな戦果が見られず、戦争終結の見通しも立たない。ゼレンスキー氏は「戦争は新たな局面に入っている。それは事実だ」と語り、本格的な冬の到来を受けて、反転攻勢が一区切りを迎えたとの見方を示した。
 一方で「諦めたり、降参したりする必要はない」とも強調した。

1)「欧米の武器支援が足りないからだ*1」と責任転嫁
2)「(昨年2月の大規模侵攻前からロシアが支配するクリミアも含む?)全土奪還を絶対に諦めない」と今までの態度を保持
とはいえ、今まで反転攻勢の停滞を認めたがらなかったゼレンスキーが「渋々」だとしても、ついに欧米メディア相手に認めたことが興味深い。

 支援不足でウクライナが抗戦に失敗すれば、ロシアは(ボーガス注:ウクライナやロシアの隣国である)北大西洋条約機構NATO)諸国に侵攻すると主張し、「米国の子供たちが戦うことになる*2」と語った。

 これはまずありえません。そもそも抗戦に失敗してもそれは「ロシアのクリミアや4州支配(現状)の固定化」でしかない。もはやロシアが首都キーウを陥落させゼレンスキー政権を崩壊させ、傀儡政権を樹立し「ウクライナ全土支配」をすることは無理でしょう。その状況で「ウクライナ以外への侵攻」はありえない。
 「無理だと思いますが」仮に百歩譲って今後ロシア軍が「怒濤の快進撃」で「全土支配」できたとしても、それは当然に「ウクライナの隣国(スロバキアハンガリー*3ルーマニア)」「ロシアの隣国(スターリン時代に実際に軍事侵攻したフィンランドポーランド、軍事恫喝で併合したバルト三国)」であるNATO諸国への侵攻を意味しない。
 こんな「非現実的なこと」を言わないと米国の支援が期待できないのか?、とむしろロシアを喜ばせるのではないか。そしてこんな発言は米国共和党等の「支援消極派」には何ら影響しないでしょう。


ウクライナ国防相“戦いは計画どおり” ロシア軍 兵士17万増へ | NHK | ウクライナ情勢
 上で紹介したゼレンスキー発言と矛盾するので「?」ですね。


[深層NEWS]ロシアの情報工作、「ウクライナ人の分断を狙っている」…政権求心力の変化に注目 : 読売新聞
 勿論ロシアが「戦争長期化によるウクライナ国内の厭戦ムード」を高めたいと思ってることは事実でしょうが、こうした読売グループや「広瀬*4慶応義塾大学教授」ら有識者(?)の言動はそれに留まらず「ロシアを利してはならない!」「ゼレンスキーを批判するな!」という「挙国一致ムード」の構築ではないか。
 むしろ「ウクライナの国内状況の深刻さ」を窺わせます。


「ウクライナのゼレンスキー大統領と同国軍に確執」の報道 背後にロシアか - 産経ニュース
 いつもながら産経には呆れます。
 一部の報道には「ロシアの情報戦」もあるかもしれない。しかし不協和音報道には「CNN」等「ロシア批判派の欧米メディア」もあるのに「不協和音報道は全てロシアの情報戦」というのは無理がありすぎる。
 そして実際に不協和音は存在するでしょう。

*1:勿論苦戦の主たる理由が果たしてそうなのかは議論の余地があるでしょう。また仮にそうだとしてもこのような発言が「軍事支援強化→戦局好転」につながる保証も勿論ありません。

*2:この発言は裏返せば「ロシアの軍事行為がNATO非加盟国であるウクライナ侵攻に留まるなら米国の子供達は今後も戦わない(米軍がロシア軍と戦うことはない)、米国の行為は武器支援に留まる」とゼレンスキーが認識してると見ていいのではないか。

*3:ハンガリー動乱では実際にソ連軍が侵攻しナジ首相をソ連に連行し処刑

*4:著書『強権と不安の超大国・ロシア』(2008年、光文社新書)、『コーカサス:国際関係の十字路』(2008年、集英社新書)、『ロシア・苦悩する大国、多極化する世界』(2011年、アスキー新書)、『ロシアと中国:反米の戦略』(2018年、ちくま新書)、『ハイブリッド戦争:ロシアの新しい国家戦略』(2021年、講談社現代新書)等