テレ朝・おはよう時代劇『暴れん坊将軍3』第3話「これぞ庶民の目安箱」(1988年放送の再放送)(2023年12月11日記載)

◆第3話「これぞ庶民の目安箱」(2023年12月11日再放送)
 以下の通り、記事を紹介しておきます。
 テレ朝・おはよう時代劇『暴れん坊将軍3』第1話「吉宗初暴れ!少女涙の訴え状」(1988年放送の再放送)(2023年12月7日記載)で紹介した第1話に続いてまた目安箱が「話の端緒」になります。
 今回、成敗されるのは、米穀商と癒着する「米価高騰の首魁・老中の青山下総守(北原義郎*1)」、「青山の用人・河津久太夫(原口剛)」、悪徳米穀商の顔役、中心人物「越後屋太兵衛(小松方正*2)」。

番組詳細|テレビ朝日
第3話「これぞ庶民の目安箱」
 目安箱に米問屋・三河屋の不審火の原因を調べてほしいとの訴状が投げ込まれた。最近、米の値段が急騰していることから、怒った庶民が火をつけたのではないかと忠相(横内正)は言う。この火事でただ一人生き残った三河屋の一人娘・お房(石倭裕子)に会った吉宗は、三河屋が他の米問屋に逆らい安売りしていたことを知る。さらに火事になった当日、同業の丹波屋と名乗る男*3がお房の父親総兵衛(相馬剛三)を訪ねてきて、他の店に同調して値上げするよう働きかけていたという。

暴れん坊将軍III あらすじ・評のページ -チャンバラ狂時代
第3話「これぞ庶民の目安箱」
 米の値上げに反対する米問屋が殺され、米価は暴騰。吉宗(松平健)の声がかりで商人、町人、百姓各代表*4の討議による(ボーガス注:米の値段を決める)評定が行われることになり、町人代表ふたりのうち一方には、(ボーガス注:吉宗、大岡と親しい)め組のおさい(浅茅陽子)が決まる。しかし残る各代表*5は全て利ザヤを蝕む奸賊一派の息がかかった者*6で固められ、(ボーガス注:おさい以外は奸賊の手先*7として動き)評定の結果は高値のままに。
 奸賊の首魁である老中・青山(北原義郎)が差し出したこの結果を、御側御用取次*8である田之倉のじい(船越英二)が(ボーガス注:『いかに評議結果とは言え、こんな高値のままでは評議の意味がなく、こんな評議結果は認められない』『下げ幅はともかくいくらかでも下がらねば話にならない』『上様に取り次げない』と)差し戻したため、吉宗お目見得を済ませたばかりのじいの孫・政太郎*9(岡雄大)が人質に取られ(ボーガス注:青山一味に『評議結果を取り次げ』と恫喝され)る事態となる。
※『暴れん坊将軍III』には「シリーズ内シリーズ」とも言うべき作品がある。それが野波静雄の脚本による「目安箱」シリーズだが、本作がその第一弾だ。目安箱に投じられた訴状から端を発する事件を吉宗が解決していく内容で、既にロングラン作品となっている暴将の再構築を目指すかのような意気込みが感じられる。本作は、レギュラー陣の見せ場も多数用意した作りに仕上がっている。

暴れん坊将軍 III
第3話「これぞ庶民の目安箱」
 米価吊り上げの悪辣な企み、従わぬ店を爆破するなど荒っぽい手口。値については生産・流通・消費の三者代表による評定が開かれる運びとなるが、ここにも魔手は伸びてくる。しまいに田之倉の孫をさらうという挙に出る悪党どもだが、上様に乗り込まれてしまい一巻の終わり。
※冒頭の爆破シーン、実は甲賀者の伊吹聡太郎がくぐり戸を出てきて、即ばーんと火柱、妙に納得できる画。悪い老中は北原義郎で腹心は原口剛。(ボーガス注:原口が最後の殺陣で新さん(吉宗)に向かって言うセリフ)「殿、こやつはただの素浪人として闇から闇へ」の台詞が大笑い。悪徳商人は小松方正
※庶民代表として評定に出るおさいの張り切りフレーズ「やるっきゃない*10(ボーガス注:勿論、放送当時の土井社会党委員長のセリフ)」が、(ボーガス注:社民党が見る影もなく衰退し、土井氏も故人となった)今見ると物悲しい。

*1:1929~2022年。1948年に大映第4期ニューフェイスに選出(大映ニューフェイスによれば同期は中条静夫(1926~1994年)など)。大映倒産後の1970年代からはテレビドラマに活躍の場を移し、時代劇の悪代官や刑事ドラマの悪徳社長や悪徳弁護士等、主に悪役を演じる。また、特撮作品の博士役でもおなじみ。特撮作品では悪人を演じていないが、自身の子どもたちが幼かった頃に、子ども向け番組では悪役を演じないと決めたという。(北原義郎 - Wikipedia参照)

*2:1926~2003年。大島渚監督(1932~2013年)作品の常連俳優として、大島作品『太陽の墓場』(1960年、松竹)、『飼育』(1961年、大宝(新東宝の後継企業だが1962年に倒産))、『悦楽』(1965年、創造社(大島の独立プロ))、『白昼の通り魔』(1966年、創造社)、『絞死刑』(1968年、ATG)、『儀式』(1971年、創造社・ATG)に出演。また、いかつい風貌と低音のドスのきいた声を生かし、時代劇、刑事ドラマ等でアクの強い悪役で活躍(小松方正 - Wikipedia参照)

*3:正体は老中・青山下総守(北原義郎)の配下で甲賀忍者の望月十三郎(伊吹聡太郎)。火事は勿論望月による放火。実際の丹波屋を演じたのは山田良樹(暴れん坊将軍III -チャンバラ狂時代参照)。望月は最後の殺陣で成敗される前に、調査を開始した徳田新之介(吉宗)を襲撃したところを「吉宗配下の御庭番」によって返り討ちに遭って死亡。

*4:商人、百姓各1名、町人2名

*5:暴れん坊将軍III -チャンバラ狂時代によればお勝(山口朱美(声優としても活躍、アニメ映画『火垂るの墓』の「西宮のおばさん(主人公である清太、節子兄妹をいじめて追い出す)」など、声優でも俳優でも悪役を演じることが多い):評定の町人代表の一人。大工の女房)、源兵衛(和田昌也:評定の百姓代表)

*6:「審議会委員が役所や与党(自民、公明)の息のかかった人間で固められ結論ありき」「企業等の不祥事調査委員会が企業の息のかかった人間で固められ結論ありき」など現代日本でも通じる話です。

*7:但し、「米の売り手」である商人、百姓が高値主張するならともかく、「米の買い手(消費者)」である町人が最初から高値主張ではあまりに怪しすぎるので、お勝は当初は「安値主張」おさいに調子を合わせ、最終的に「妥協やむなし」として裏切るという設定。お勝の裏切りに「買収されたに違いない(実際そうですが)」「お勝を殺してあたしも死ぬ、このままじゃあたしの面子が立たない」とマジギレしまくるおさいと、「そんなことをするくらいなら俺が将軍様に直訴する、俺が死ねばいいんだ」となだめる辰五郎が面白い。そこに偶然やってきた「徳田新之介(吉宗)」「田之倉の爺」が「俺たちに任せろ」で片がつきます。なお、今回が「辰五郎と田之倉の爺」の初顔合わせ(吉宗の紹介によって互いの立場を知る)

*8:御側御用取次は、徳川吉宗が将軍に就任した時に紀州藩士有馬氏倫(暴れん坊将軍9(1999年)、10(2000年)、11(2001年)、12(2002年:最終シリーズ)の有馬彦右衛門(名古屋章)のモデル)、加納久通(後に若年寄暴れん坊将軍1(1978~1982年)、2(1983~1987年)の加納五郎左衛門忠久(有島一郎)のモデル)が任じられたことに始まる。その後も大岡忠光(後に若年寄、将軍家重の言葉を唯一理解できたとされる家重の側近)、田沼意次(後に老中)など御側御用取次経験者には若年寄や老中に出世した者が多い(御側御用取次 - Wikipedia参照)

*9:勿論、政太郎は無事取り戻され、米価も吉宗によって引き下げられる。また、吉宗の支援でただ一人生き残った三河屋の一人娘・お房が店を再興する。

*10:ということでわかるように、時代劇も単なるマンネリではない。