今日のロシアニュース(2023年12月24日分)

50万人動員「要請せず」 軍トップ、大統領と食い違い―ウクライナ:時事ドットコム

 ウクライナ軍トップのザルジニー総司令官は26日、(中略)「軍が45万~50万人の追加動員を提案した」とするゼレンスキー大統領の発言について「軍として人数を挙げて要請した事実はない」と否定した。

 ウクライナの迷走が深刻なようです。


◆マリンカから退却したウクライナ
ウクライナ軍、東部マリインカ陥落認める 「来年は戦局好転」 - 産経ニュース
ウクライナ軍総司令官、初の記者会見で東部防衛拠点から撤退を認める…露軍に主導権移ったか : 読売新聞
 当初撤退を否定したものの、結局認めざるを得なくなったウクライナです。

ロシア軍、ウクライナ防衛拠点マリンカの大部分を制圧か…国防相「完全に解放した」 : 読売新聞
 英BBCロシア語版によると、ウクライナ政府は25日、軍の動員対象とする年齢の下限を27歳から25歳に引き下げる法案をウクライナ最高会議(議会)に提出した。兵役や動員逃れに対する罰則も強化する方針だ。

 「年齢引き下げ」も「ウクライナの苦戦」の一例でしょう。


ウクライナ戦争の「終わらせ方」(浅井基文)

 キーウ社会学国際研究所が12月14日に発表した世論調査結果によれば、領土と平和の交換によって戦争を終結することを支持するものはなお少数派ながら、5月の10%から12月には19%まで増えています*1
 徹底抗戦を対外的に訴えてきたクレバ外相も、12月のフォリン・アフェアズ誌に発表された文章の中で、ウクライナの反転攻勢でロシア軍が壊滅する可能性を疑問視した見方が正しかったとし、戦争の行方に対する悲観論が西側で増大していることを実感している、と認めざるを得ませんでした。
 キーウ社会学国際研究所が12月18日に明らかにした世論調査結果はゼレンスキー政権にとってますます厳しいものとなっています。

 世論調査結果はウクライナのメディアに対する信頼が劇的に落ち込んでいることを示した。一年前は57%の回答者がメディアを信頼していると答えたが、今回はほぼ半分の29%に過ぎなかった。ゼレンスキーに対する信頼度は、昨年の84%から本年は62%まで下がっている。政府に対する信頼度の落ち込みはもっと激しく52%から26%に、議会に対する信頼度に至っては35%から15%まで落ち込んでいる。裁判所については25%から12%へ、検察に対しては21%から9%である。
 軍はウクライナの諸機関の中で唯一高い支持を保っており、96%という圧倒的に高い支持率は前年と同じレベルである。なお、今回初めて質問されたザルジュヌイ*2に対する信頼度は約86パーセントという高い数字だった*3

 ウクライナ諜報機関・主要情報総局のブダノフ長官は、反転攻勢は計画通りには進行していないと、ウクラインスカヤ・プラウダ紙(10月12日付け)とのインタビューで認めたという報道もあります。したがって、ザルジュヌイがエコノミスト誌に語った「膠着状態」発言は必ずしも突出したものではないことを窺わせます。
 12月4日付けの『ウクラインスカヤ・プラウダ』紙は、キーウ指導部に近い筋を引用して、ゼレンスキーがザルジュヌイを通さずに直接命令を司令官たちに与えていると報じました。この報道は、ザルジュヌイは軍が何をしているのかについて部下から聞いて初めて理解することもあると指摘しています。こうした軋轢の背景として同報道は、最近の世論調査の結果、現時点で選挙が行われる場合には、ゼレンスキーは決選投票でザルジュヌイに敗れるという数字が出たことを挙げています

 浅井先生の「ロシアへの甘さ」には失礼ながら、げんなりしますが、一方で「戦争は長期化し、何時終わるか全く分からない」「ロシア、ウクライナ共に相当の打撃を受けている」「ウクライナでは戦争の長期化から内紛が表面化している」「もはやお互いに妥協し停戦する『朝鮮戦争ケース』しかないのでは?」と言う指摘には同感です。


ロシア軍が制圧地域拡大か、米紙「戦場の大半で主導権」…ウクライナ議会幹部「米国の砲弾がない」 : 読売新聞
 一時期の楽観論と違い「ウクライナの敗北」という悲観論が台頭するウクライナ戦争です。
 こうした悲観論は「全くの虚構では無い」とは言え、1)反転攻勢が明らかに当初の宣伝ほどには成果を上げてない、2)米国でウクライナ支援予算が通過しないことの反映でしょう。
 2)が解決すればまた「楽観論」が台頭するかもしれない。もちろん2)が解決しなければ悲観論も長引くでしょうが。

*1:これについては例えばウクライナ世論調査「領土諦めてもよい」19%、昨年5月からほぼ倍増…厭戦ムード少しずつ拡大か : 読売新聞参照

*2:ウクライナ軍総司令官。一般的にはザルジニーと呼ばれる

*3:浅井先生が危惧するように「軍への高い信頼」は「軍の暴走の危険性」と言う意味で警戒が必要でしょう。