「悪液質」で手塚治虫「ブラックジャック」を思い出す(追記あり)

【追記】
 森永卓郎氏は、「悪液質」という状況だと思う(非常によろしくない) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)でこの記事を紹介頂きました。いつもありがとうございます。
【追記終わり】

森永卓郎氏は、「悪液質」という状況だと思う(非常によろしくない) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
 1988年、死の前年の手塚治虫です。彼は胃がんで亡くなりました。それにしてもどの人も、たかだか数年で、ここまで痩せるかと驚きます。ともかく悪液質になると非常によろしくないということになります。

を読んで思いだしたのでメモしておきます。
 該当する手塚マンガについては以下の記事を紹介しておきます。

手塚治虫「ブラック・ジャック(119)」 | ロロモ文庫
◆きたるべきチャンス
 ブラックジャックのところにある女性がやってくる。
 BJ「で、病名は」
 綿引の妹「食道ガンです」
 BJ「何かやっかいな合併症でも起きましたか」
 綿引の妹「ほとんど食べ物が飲めこめません。だからやせてカヘキシー*1になっています」
 BJ「カヘシキーという言葉を知っているところを見るとあなたも医者ですね」
 綿引の妹「ええ。私、兄と病院をやっていますの。食道ガンになったのは私の兄なんです」
 BJ「ほお」
 立派な病院につくブラックジャック
 BJ「患者も医者も看護婦もいないじゃないか」
 綿引の妹「ええ。休ませてます」
 レントゲンを見るブラックジャック
 BJ「なるほど。こいつは厄介な代物だ。でも、解せないな。これだけの病院だ。ほかの医者もいたでしょう。なぜ、すぐに手術しなかったんです。ということは兄上は何か他の医者にガンであることを知られたくなかったんですね。その秘密を世間に漏らしたくない。その点、私なら安心というわけだ。私は金しだいで秘密を守りますからね」
 綿引の妹「ええそうです。でも兄にも内緒なんです」
 BJ「ほう。とにかく口止め料はかなり高いですよ。あなたに払えるかな。ふふふ。とにかく兄上のところに案内してください」
 女の兄を診察するブラックジャック
 BJ「あと10日持たないな。1000万円頂くぜ」
 綿引の妹「10万クローナでは」
 BJ「クローナ?それはスウェーデンの金だ。なんでそんな金を言うんです」
 綿引の妹「10万クローナではどうなんですか」
 BJ「10万クローナといえば700万円だ。ちょいと足りないな。せめて15万クローナ払いなさい。そうしたら明日にでもオペをしてあげますよ」
 女の兄は非難する。
 綿引「どうしてあんな奴に手術を頼んだ」
 綿引の妹「だって、兄さんの名誉を失いたくないからよ」
 綿引「あいつは評判の悪い無免許医だ。たかられるのがオチだ」
 綿引の妹「兄さん。お願い。手術して」
 患者の顔に見覚えがあると昔の新聞記事を探すブラックジャック
 BJ「これだ。この男。綿引博士。そうだ。ガンの特効薬ポリサチニンを開発したことで、ノーベル賞をもらった若い科学者だ。ガンの特効薬でノーベル賞を取った人間が、ガンに犯されているわけか。なるほどね」
 綿引はブラックジャックの手術を受けることを断固拒否する。
 綿引「今更手術を受けられるものか。新聞はなんて書く。ガンの特効薬なんていい加減なものだった。綿引先生は自分のガンを治せないじゃないか。私は笑いものになるんだ」
 綿引の妹「やせ我慢して、死んでしまえばおしまいなのよ。兄さん」
 綿引「とにかくブラックジャックは断わってくれ」
(以下略)

手塚治虫「ブラック・ジャック(169)」 | ロロモ文庫
◆二人目がいた
 (ボーガス注:ブラックジャックの母が死に、彼が重傷を負う原因を作った敵の一人)姥本琢三の家を訪ねるブラックジャック。応対に出る娘。
 娘「父はいますが、病気で臥せっております」
 BJ「何だって」
 寝ている姥本を複雑な表情で見つめるブラックジャック
 BJ「この人が、姥本さんなのですか」
 娘「あのお、どちら様でしょうか」
 BJ「私が誰だろうと関係ない。悪液質だ。どこのガンです」
 娘「はい。肺とか食道とか。あちこちに」
 BJ「手術はしたんですか」
 娘「ええ。でもお医者様に見離されましたの」
 BJ「ふん」
 娘「あのお。あなたもお医者様なのですか」
 BJ「そうです。でも関係ないことです」
 (何てこった。やっとめぐりあえた本人がこのザマか)
 落胆したブラックジャックは出ようとする。
 娘「あなたは父とはどういう関係なんですか」
 BJ「あなたには無関係です。お大事に」
 娘「待ってください。あなたはお医者様なのでしょう。レントゲン写真くらい見てくださいな」
 BJ「すさまじい転移だ。これじゃいくら手術をしても無理だ。私がやれば別だが、やる気がない」
 娘「父をお探しになった理由をお話になって」
 BJ「あなたには無関係です」
 娘「先生。先生は本当に父を治せるんですか。さっき『私がやれば別だ』と言いましたが」
 BJ「失敬なことを言うな。私には治せる*2。だが(ボーガス注:姥本に恨みがある)私には治すいわれがないんだ」
 娘「なぜ?父に恨みでもあるの」
(以下略)

*1:悪液質のこと

*2:マジレスすれば「治せる話」ではないでしょう