「経済」1月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。
http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/
以下は私が読んで面白いと思った部分のみ紹介します。(詳しくは1月号を読んでください)
■世界と日本
【「米国経済は回復するか」(合田寛)】
(内容要約)
・米国経済は最近回復の兆しを見せているが不安要因もある。
・一つは、失業率が高止まりしていること、もう一つは、金融機関の深刻な経営状況である。オバマ政権の今後の経済政策が注目される。
【「すすむEUの政治的統合」(宮前忠夫)】
(内容要約)
・ニース条約に変わるリスボン条約がついに発効。大統領(欧州委員会常任議長)、外相(外交・安全保障政策上級代表)も選ばれEUの政治的統合はいっそう進んだ。
■特集「世界と日本が問われている」
【笠井亮さんに聞く「2010年、世界の流れと日本の課題:沖縄基地、核兵器廃絶、雇用問題に見る」】
(内容要約)
・笠井氏は共産党衆議院議員。著書に「政治は温暖化に何をすべきか」(新日本出版社)がある。
・沖縄基地問題での民主党の態度(県内移設もあり得る)を「公約違反」と批判。
・核廃絶問題について。民主党の核密約追及をひとまず見守りたい。
・雇用問題について。ただちに失業者支援の緊急措置を行うべきである。また今こそ派遣法改正を行わなければならない。
【対談「いま、新しい国のかたちを問う」(品川正治、渡辺治)】
(内容要約)
・渡辺氏は政治学者(一橋大学教授)。品川氏は経済同友会終身幹事。
・自公敗北は良かったが、その思いが民主党に集中したことが怖い(共産、社民は現状維持、国民新にいたって議席減)。ミニ政党が力をつけて多党制になることが望ましい。(渡辺氏)
・財界(特に日本経団連)は御手洗体制の元、自民べったりで、今回の選挙結果に混乱状態にあるが早晩、民主とのパイプをつくり政治支配を狙うであろう。その場合、御手洗氏ら親自民財界人の地盤沈下+民主系財界人(イオン創業者である岡田外相の実父、小沢氏に近いと言われる京セラ創業者など)の地位上昇があり得る。(渡辺氏)
・民主党には3つのグループが存在する。1つは親自由主義グループ(小泉路線続行)で鳩山由紀夫首相、岡田克也外相、藤井裕久財務相がその典型である。2つ目は小泉改革で痛めつけられた地方の利益団体に足場を置こうとするグループ(「古き良き自民党」「田中角栄型路線」とも言える)で小沢一郎幹事長がその典型である。3つ目は左派・社民グループである。この3グループの力関係がどう動くかで政治の動向は決まるのであり民主政権を単純に「反小泉」「親小泉」などと見なすことは妥当でない。(渡辺氏)
・行政刷新会議に対するマスコミ報道は小泉政権礼賛報道とどこが違うのか?。行政刷新会議や国家戦略局は本当に経済財政諮問会議と違うのか?(渡辺氏)
・民主の「官邸主導」には小泉的な恐怖を感じざるを得ない。小泉も「官邸主導」をスローガンにしていた。(渡辺氏)
・民主の比例削減は民意無視の主張である。また、市町村合併を推し進めるとしているが自公政権下での合併推進がバラ色だったと思っているのか?(渡辺氏)
・参院選で民主が大勝したら怖い。小沢氏は政局だけで政治をやる人なので改憲論を打ち出しかねない。(品川氏)
・オバマが経済閣僚をウォールストリート出身(経済顧問のサマーズ等)で固めていることには疑問を感じる。(品川氏)
全体的に、対談はかなり民主に厳しいかな?
【英吉利さん*1に聞く「焦点・ドル基軸の国際通貨体制のゆくえ」】
(内容要約)
・いわゆるポンド体制が崩壊するのにもかなりの時間がかかった。当面、ドル体制が早期に崩壊することはないであろう。
・しかし現状のまま、ドル体制が永久に続くとは言えない(続くべきかも疑問)。何らかの対応が必要だろう。将来的にはSDR(特別引出権)やユーロ、円や人民元といったドル以外の通貨が台頭するのではないか(台頭させるべきではないか)。
【小倉将志郎「金融危機は米国金融を変えたのか」】
(内容要約)
・今回の金融危機で米国金融が大きく変わったようには見受けられない(金融業界の政治家と長年の太いパイプのせいで本格的な金融改革は着手されていない)。このままでは、米国金融業界はまた同じ轍(バブルの発生と崩壊)を踏むことになるのではないか。本格的な金融改革が望まれる。
【前田恵理子「日本のODAの現状とラテンアメリカ」】
(内容要約)
・日本のODA(政府開発援助)は近年、財政再建を理由に削減傾向にあるが、外交上、それが適切かは疑問である(額自体は少なくはないようだが)。
・日本のODAの問題点として贈与比率とグラント・エレメントの低さがある(グラント・エレメントは、援助条件の緩やかさを示す指標。贈与がグラント・エレメント100%。金利や返済期間など条件が緩くなればなるほどグラント・エレメントは高くなる)。
【友寄英隆「日本経済を支配する巨大企業の研究」】
(内容要約)
・現在、「日本経済を支配する巨大企業」はほとんどが、多国籍企業である。(東京電力やJR各社など国内中心企業もあるが)
・多国籍企業化に伴い、日本の企業方針はいわゆる日本的経営から米国型経営へと転換することになった。日産自動車のゴーン氏社長就任はその典型であろう。
■鎌田隆「ベトナム・ナウ!:09年夏の経済探訪記」
(内容要約)
・ベトナムも世界金融危機の影響を受け成長率が鈍化している。しかし、日本ほどの落ち込みは見られず、基本的には、今後も順調な伸びを示すモノと思われる。
・なお、経済の発展に伴い、農業の軽視、格差の拡大など、日本が過去に踏んだ轍をベトナムは踏みはしないかという危惧を筆者は表明している。
■暉峻衆三「17年ぶりのモスクワ」
(内容要約)
・17年ぶりにモスクワを訪問した筆者の感想。17年前より経済的豊かさや、自由を感じたと言う。もちろん、今のロシアは外貨を資源(天然ガスや石油)でもっぱら稼いでいるという問題があること、プーチンの政治に批判的な人間は消される恐れすらあること(未だにアンナ・ポリトコフスカヤ記者やアレクサンドル・リトビネンコを暗殺した犯人は不明)も筆者は指摘しているが。
■座談会「日本の歴史的展開とマスメディア」(桂敬一、清田義昭、須藤春夫、司会:金光奎)
(内容要約)
・内容は多岐にわたっているのでうまくまとまらなかったが、政治が変わろうとしているのにマスコミの方が旧態依然ではないかという指摘には同感。
■戸崎賢二「NHKと政治権力:『ETV2001改変事件』の教訓から」
(内容要約)
・NHKが権力に弱いのは事実だが、ではこの事件の発生する以前でも以後でも日本の民放は従軍慰安婦問題を番組にしたのかという筆者の指摘には同感。個人的にはNHKの方が政府批判では民放キー局より頑張っていると思う。NHKに問題があることは事実だが、極端な話、NHKがダメでも他マスコミが頑張れば問題はあまりないはずだ。
・今回の新政権でNHKと政府の関係が少しでもマトモになることを期待したい(望み薄か?)。