新刊紹介:「前衛」11月号

「前衛」11月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。
http://www.jcp.or.jp/publish/teiki-zassi/zenei/zenei.html

 以下は私が読んで面白いと思った部分のみ紹介します。(詳しくは11月号を読んでください)

■対談「沖縄は何を訴え、どんな沖縄をめざすのか:普天間基地撤去、沖縄の発展の道、展望を語る」(伊波洋一*1赤嶺政賢*2
(内容要約)
・なぜ、県知事選出馬を決意したのか。どんな沖縄をめざすのかといった伊波氏の決意表明が中心。

(参考)
赤旗沖縄県知事選・伊波氏が出馬受諾、基地押しつけに反対、県民の意思示す選挙」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-08-21/2010082101_01_1.html
赤旗宜野湾市長選、安里氏が出馬を受諾、革新市政の継承に決意」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-09-04/2010090402_02_0.html
赤旗「県民が主役の県政を、沖縄知事選・イハ氏出馬表明」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-10-03/2010100301_02_1.html

■「自衛隊は60年でいかに変貌したか:日米安保改定50年・軍事同盟体制のもとで」(山根隆志)
(内容要約)
自衛隊が、数々の縛り(GNP1%枠など)をなくしてきたこ、今も「集団的自衛権は行使しない」「武器輸出三原則」などの縛りをなくし、完全な軍隊化しようとしていることを批判。

■「21世紀の世界と日本外交」(三浦一夫)
(内容要約)
アメリカは今のままの覇権主義を続けるべきではなく、日本もアメリカの副官として生きるのではなく「自主独立」の「平和外交」をめざせという話。

■「比例議席削減が議会制民主主義を劣化させる」(植松健一)
(内容要約)
・改めて菅一派が狙う比例議席削減によるミニ政党抹殺・民主党独裁計画を批判。金のムダというのなら政党助成金をなくせ、また削減するとしてもいつも比例で小選挙区は減らさないのはなぜなんだぜ、と批判。

■「円高が進行する日本経済の問題をどう見るか・賃上げこそが本当の成長戦略」(山家悠紀夫*3
(内容要約)
円高対策は必要だが、輸出に過剰に頼る日本企業の現状には問題がある。日本の不況を克服するには内需を拡大する必要がある。内需を拡大するには賃上げを行うべきであり、それがワーキングプアなどと言った社会問題の解決にも繋がるという話。

■「財政危機の現状と打開の展望」(垣内亮)
(内容要約)
・財政危機を克服するためには、「大企業や金持ち増税」「軍事費や公共事業のムダ削減」が必要である。
・大企業の税負担は諸外国と比べ決して高くはない。
社会保障は財政危機の主原因ではなく、縮減論には反対。諸外国と比べ日本の社会保障はむしろ劣っている。
・消費税増税は逆進性と景気への悪影響の観点から反対である。
・なお、ギリシャと日本は状況が大きく違うのに「ギリシャのようになっては困る」と消費税増税を正当化しよういう菅首相は悪質なデマゴーグである。

■「気候変動と生物多様性保全に問われる課題:COP10、COP16に向けた国際的取り組みと日本の対応」(佐々木勝吉)
(内容要約)
COP10、COP16での合意形成のために日本がすべきこと、(COP10,COP16から少し離れて)温暖化防止と生物多様性維持のために日本がすべきことについて説明。

■「オバマ政権20カ月と米政局・中間選挙の課題は」(西村央)
(内容要約)
・様々な問題点があるにせよ、医療保険改革法、金融規制改革法が一応成立したことなど、オバマの政治には一定の評価をしていいだろう。
中間選挙で結果がどうなるかが注目される。いわゆる茶会(ティー・パーティー)がのびればオバマも苦しい立場になるであろう。

■「教師の「苦難」から「希望」へ:教育を支える「共同関係」・再考」(久冨善之
(内容要約)
・教師に増えている精神疾患や自殺をどうするかがテーマ。
 具体的には次のようなことが上げられる。
 教委の適正な人員配置による過労の防止等(適切な教育行政の実施)
 何か教師に精神的問題が起こったときにそれを支えるシステムの構築(労組などの教員集団、保護者会や地域社会、医療機関など)。

■「臨時・非常勤の多用化と学校、教育」(今谷賢二)
(内容要約)
・臨時、非常勤教員の増加はワーキングプアの増加をもたらしている。またこうした状態の教師にまともな教育実践が出来るか疑問である。こうした状況は改められるべきである。

■「平和の力、生きる力つくるうたごえ運動」(三輪純永)
(内容要約)
・うたごえ運動の紹介。
参考
「日本のうたごえ」http://www.utagoe.gr.jp/

■対談「ハンセン病問題・差別と偏見の克服へ国の責任を問う」(神美知宏*4、谺雄二*5
(内容要約)
ハンセン病問題はまだ終わっていない、解決しなければならない問題は沢山残っているという指摘。

■論点
軍縮への流れをふみにじる「武器輸出」解禁要求(竹下岳)】
(内容要約)
軍産複合体(防衛官僚、防衛族議員、防衛産業)は武器輸出三原則の緩和を狙っているが、平和主義という観点からそのようなことは許されるべきではない。
・武器輸出三原則の歴史的経緯は次の通り(ウィキペディアを参照)。三木内閣時代までは三原則強化の流れだが中曽根内閣以降は緩和の流れと言える。なお軍産複合体は一気に武器輸出三原則を撤廃することは難しいと見て、「例外規定を増やす」→「三木答弁をなくす」→「佐藤答弁をなくす」という流れをもくろんでいるようだ。

1967年(昭和42年)4月21日:
 佐藤栄作首相の衆議院決算委員会における答弁により、以下の国・地域の場合は「武器」の輸出を認めないこととした。
 ・共産圏諸国向けの場合
 ・国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合
 ・国際紛争の当事国又はそのおそれのある国向けの場合

1976年(昭和51年)2月27日:
 三木武夫首相の衆議院予算委員会における答弁により、佐藤首相の三原則にいくつかの項目が加えられた。 
 ・三原則対象地域以外の地域についても憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」の輸出を慎むものとする。
 ・武器製造関連設備の輸出については、「武器」に準じて取り扱うものとする。

1983年(昭和58年)1月14日:
 中曽根康弘内閣の後藤田正晴官房長官による談話で以下の解釈が付け加えられた。
 ・日米安全保障条約の観点から米軍向けの武器技術供与は武器輸出三原則の例外とする。

1993年(平成5年)3月31日:
 宮沢喜一内閣の河野洋平官房長官参議院予算委員会における答弁により、以下の解釈が付け加えられた。
 ・いわゆる汎用品(民間利用も出来る物品)は武器輸出三原則の例外とする。

2004年(平成16年)12月10日:
 小泉内閣福田康夫官房長官による談話で以下の解釈が付け加えられた。
 ・MDシステムは武器輸出三原則の例外とする。


【被害者への救済・補償を求める全国空襲連の結成(川田博子)】
(内容要約)
・第2次世界大戦の空襲被害者を救済、補償する「空襲被害者等援護法」の制定を求め、結成された「全国空襲被害者連絡協議会」(略称・全国空襲連)の紹介。

参考
赤旗「空襲被害・初の全国組織、日本政府に援護法求める」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-08-15/2010081501_02_1.html

■暮らしの焦点
消費者庁・消費者委員会発足から一年:何が課題となっているのか(吉田信雄)】
(内容要約)
消費者庁の様々な課題(事務局の人員が少ないなど)についての指摘。

■文化の話題
【映画:映画人と学生たちの「京都太秦物語」(児玉由紀恵)】
(内容要約)
 映画「京都太秦物語」の紹介。(公式サイト:http://www.ritsumei.ac.jp/eizo/kyotostory/

【演劇:戦後自立演劇運動から生まれた「島」(関きよし)】
(内容要約)
秋田雨雀・土方与志記念青年劇場の9月公演「島」の紹介。
(参考)
「季刊・青年劇場№150」http://www.seinengekijo.co.jp/news/150/sima.html

■メディア時評
【新聞:菅再選で問われる新聞のあり方(金光奎)】
(内容要約)
・全国紙各紙が「政治とカネ」問題で小沢を叩いたことを菅再選の流れをつくろうとしていたのではないかと批判(小沢を「政治とカネ」で批判するなと小沢信者のようなことを言ってるのではなく「過去に小沢を野党の証人喚問要求からかばった以上、菅も同罪」「沖縄問題、消費税問題での裏切りなど、菅の問題点をスルーするってどういう事だ!」と言いたいようだ)。また菅再選後は菅の政策が全て支持されたかのように、消費税増税を煽ったことを批判。
・地方紙が菅批判をしたことを評価。

(例)
東京新聞
「菅氏が積極的に支持されたというのは早計だ」

沖縄タイムス
「党員・サポーター票は県内4選挙区全てで小沢氏が菅氏を上回っていた。(中略)名護市議選の結果と今回の(注:沖縄での)代表選の結果を軽く見てはならない」

琉球新報
「(注:代表選で)菅氏は「世の不条理と闘うのが民主党の原点だ」と述べた。(中略)沖縄にばかり(注:米軍基地と言う)痛みを押しつけようとすることこそ「不条理」の最たるものだろう」

【テレビ:取材者の事故をめぐって(沢木啓三)】
(内容要約)
 日本テレビの記者2人が埼玉県の山中で事故死したことがテーマ。警察から自粛要請が出たから入山しないでは取材は成り立たず二人が入山しただけでは責められない、雲仙普賢岳事故*6のようなケースもあるではないかと筆者は主張する(そもそも二人の遺体が見つかった場所は一応、取材自粛要請区域外であり、自粛要請に対し、二人が一定の配慮をしていた可能性がある)。
 無責任な被害者叩きでも、安易な被害者免罪でもない冷静な調査・分析が再発防止に繋がるとしている。
 この問題について当事者である日本テレビの動きがまるで見えないことを筆者は責任逃れではないのかと批判している(事故発生は7月31日。なお、この文章執筆は9月中旬とのこと)。

■スポーツ最前線
「大日岳事故からの再生はなったのか」(斉藤義孝)
(内容要約)
・いわゆる大日岳事故訴訟後の動向の報告。裁判和解条件に基づき「安全検討会」が設置され「報告書」が作成されたことに一定の評価をしている。また登山事故を防ぐため国は登山研修所に相応の人と予算をつけるよう主張。また筆者が理事長を務める労山(日本勤労者山岳連盟)も事故防止のため取り組みを強める旨の決意表明。

*1:宜野湾市長。次の沖縄県知事選に共産、社民、沖縄社大党の統一候補として立候補を表明。宜野湾市長選には副市長の安里猛氏が伊波市政継承をかかげ出馬予定

*2:沖縄県委員長、衆議院議員

*3:著書『「構造改革」という幻想』(2001年、岩波書店)、『「痛み」はもうたくさんだ!―脱「構造改革」宣言』(2007年、かもがわ書店)、『暮らしに思いを馳せる経済学』(2008年、新日本出版社))

*4:全国ハンセン病療養所入所者協議会(全療協)会長

*5:ハンセン病違憲国賠訴訟全国原告団協議会(全原協)会長

*6:死者、行方不明者43名を出した大惨事。マスコミだけではなく火山学者や消防関係者まで死亡してるので少なくとも当時においてはマスコミの取材が無謀だったとは言えないだろう。