新刊紹介:「経済」8月号

「経済」8月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。
http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/

 以下は私が読んで面白いと思った部分のみ紹介します。(詳しくは8月号を読んでください)

■巻頭言「原発ゼロへのプログラム」
(内容要約)
原発ゼロをめざす国内外の様々な運動の紹介。

参考)
赤旗
「世界で広がる 原発撤退、民自公は逆流の動き」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-06-21/2011062103_01_1.html
原発ゼロをめざす 7・2緊急行動 東京・明治公園」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-06-30/2011063001_01_0.html


vanacoralの日記「 「原発ゼロをめざす7.2緊急行動」に参加しました 」
http://d.hatena.ne.jp/vanacoral/20110702


共産党原発からのすみやかな撤退、自然エネルギーの本格的導入を国民的討論と合意をよびかけます」
http://www.jcp.or.jp/seisaku/2011/20110612_genpatsu_teigen.html


社民党脱原発アクションプログラム「2020年までに原発ゼロ」
http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/energy/data/energy2011.pdf


■世界と日本
【イタリアの国民投票(宮前忠夫)】
(内容要約)
イタリアの原発国民投票で、脱原発派が勝利した!(もちろん福島事故が追い風になった)。イヤッホウ!。日本も続け!


【ペルーのウマーラ新政権(新藤通弘*1)】
(内容要約)
左派のウマーラ候補が右派のケイコ・フジモリ候補(フジモリ元大統領の娘)に勝利し、ペルーに左派政権が誕生した。しかしウマーラは議会では単独過半数を得ることが出来ず難しい政権運営が予想される。

参考
赤旗
「ペルー大統領にウマラ氏、新自由主義転換訴え 左派政権誕生へ」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-06-07/2011060701_03_1.html
「ウマラ氏勝利宣言 成長、生活改善に、南米ペルー 左派に支持」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-06-07/2011060707_01_1.html


【中国の10年ぶり国勢調査(平井潤一)】
(内容要約)
国勢調査結果から中国のいわゆる「一人っ子政策」が「深刻な少子化」や「無戸籍者の存在」という重大な社会矛盾を生んでる疑いが判明した。


【電力会社の官・業癒着(山下唯志)】
(内容要約)
・電力会社への天下りを早急に禁止すべきである。福島事故は天下りの弊害を最悪の形で証明した。

参考
赤旗
経産省から電力会社に天下り、東電など6社に在職 塩川議員調査」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-04-18/2011041814_01_1.html
原発推進団体に天下りゾロゾロ、1900万円報酬も」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-05-05/2011050501_02_1.html


■特集「東日本復興・その対決点」
【座談会:被災者が求める生活・地域の再建(井上博夫、坂庭国晴、中村八郎*2、森靖雄)】
(内容要約)
・主張は多方面にわたっておりまとめづらいが、「緊急性が高いもの(例:仮設住宅)は早急な対応が求められる」が、「まちづくりのような時間がかかるものは住民の意見を聞き出来る限り着実にすすめていくべき」という考えであることはわかった。


【復旧・復興と国のあり方を考える:新自由主義型復興か新福祉国家型復興か(二宮厚美)】
(内容要約)
震災復興は環境保護、雇用保障、社会福祉の充実など、福祉国家型の復興を目指すべきである。
しかし菅政権は脱原発を除けば、震災を口実にした特区の推進や、TPPの推進、消費税増税をもくろんでおり、新自由主義型復興とでも呼ぶべきものである。
こうした菅の動きに呼応し、住民無視で暴走してるのが村井・岩手県知事である。


【復興の「2つの道」と中小業者(藤田信好)】
(内容要約)
宮城県岩手県を比較し、岩手県はある程度住民の声を聞く姿勢を見せているのに対し、宮城県は村井県知事が(特に水産特区で)「俺の言うことを聞け」と暴走していると批判。小沢の子分(達増岩手県知事)でも評価すべきところは評価するのが言うまでもなく、我らが共産である。(いいぞ、もっと村井たたきをやれ)


【東北農業再生への課題と論点(冬木勝仁*3)】
(内容要約)
・東北農業再生においては実態を把握することが何よりも大切である。その点、野村総研に再生プランを丸投げしたとしか思えない村井宮城県知事は論外である。(いやあ、共産の皆さんは村井が本当に嫌いなんだね、俺も嫌いだが)


原発からのすみやかな撤退を 日本共産党の提言(佐藤洋)】
(内容要約)
共産党原発からのすみやかな撤退、自然エネルギーの本格的導入を国民的討論と合意をよびかけます」
http://www.jcp.or.jp/seisaku/2011/20110612_genpatsu_teigen.html
について党担当者へのインタビュー。
 我らが共産は原発には否定的だったが、(俺の理解では)残念ながら今まで、明確な廃絶プランを示したことはなく今回はっきりと「5〜10年以内の原発ゼロを目指す」としたことは党史に残る大きな一歩と言えよう。まさに「3.11」は共産にとってもショックだったわけである。


【日本の原発報道を検証する 極論すれば「失敗に次ぐ失敗」だった(柴田鉄治*4)】
(内容要約)
・1950〜60年代のマスコミ原発報道は「バラ色」であった。それは次のような出来事でも明白だ。
1)1955年の新聞週間の標語が「新聞は世界平和の原子力」だったこと。
2)1969年の原子力船むつ進水式では当時の皇太子妃(つまり今の皇后)が出席し、お祝いのシャンパンをあけている。
3)1970年の大阪万博ではわざわざ敦賀原発から会場に電気を送り、文明の象徴として祝っている。
一方で「第五福竜丸事件」による反核運動の盛り上がりがあるという奇妙な状態であった。当時、多くの日本人は「核兵器は悪だが核の平和利用は善」という理解をしていたといえる。もちろんこうしたマスコミ状況に、「初代科学技術庁長官」で「原発の父」と呼ばれた正力松太郎(読売・日テレグループ総帥)が大きな影響を与えたことは言うまでもない。
・1970年代から状況は変わる(公害対策基本法が成立したいわゆる「公害国会」は1970年)。原発に限らず、日本において近代化の弊害に注目がやっと集まりだしたのである。しかしこの時、メディアはまともな反原発脱原発論を展開することをしなかった。
 原発推進派の宣伝を結局鵜呑みにしたのである。
 1979年のスリーマイル事故、1986年のチェルノブイリ事故後もこうした状況に大筋では変化はなかった。
・感想。柴田氏の言は今一つ、他人事のような気がしないでもない。また柴田氏は問題があったと指摘するだけでその問題がどうして生まれたのか(明らかに電力会社というスポンサータブーの問題もあるだろうが、柴田氏は科学リテラシーの問題としか考えてないように読めた。勿論科学リテラシーも大事だろうが)やどう克服すべきかに触れない点も隔靴掻痒である(また柴田氏が「反原発脱原発」なのか「安全な原発派」なのかがよくわからなかった点も不満だ。「未だにそう言うあいまいな文章かよ」と呆れた)。なお、id:kojitaken氏ならばこの論文に「大熊由紀子氏」の名前が出てこないことに、「しがらみがいまだにあるのか」とあきれるかもしれない。


【対談:大震災と子どもたち、教育行政の貧困(三輪定宣、宮本岳志)】
(内容要約)
震災では子どもたちも大きな被害を受けており、経済的、精神的なケアが必要である。
・にもかかわらず、震災復興を口実に高校無償化や子供手当を潰そうとする自公には怒りを感じる、「死ねばいいのに」。大事なことだからもう一度。「子どもの敵・自公は死ねばいいのに」。アホなことぬかす前に、お前らが分捕ってる政党助成金というつかみ金を廃止しろよ。
日本教育環境は先進国では最悪の部類であり、もっと資金投下が必要。
・いいかげん国際人権規約13条「高等教育の無償化」を批准し、その方向に歩むべき。いつまで留保してれば気が済むのか(批准国で留保は日本以外、マダガスカルのみ)。
・学生支援機構の奨学金が高額ローン化してることは許せない。しかも民主党事業仕分けは「もっとローン化しろ」と言ったのである。教育は社会の共通財産という認識がなさすぎだ(民主党も「死ねばいいのに」。もう共産が21世紀の早い段階で政権とらないと日本は本当にダメだろ)


■「グローバル経済とアラブ民主革命」(西海敏夫)
(内容要約)
・アラブ民主革命の大きな要因となったのはグローバリズムの進展による貧富の格差の拡大であった。これに対しアラブの独裁的国家は適切な対応はとらないどころか、自分たちにのみ富を集中させる行動に動いたことが革命の引き金になった。
・こうしたアラブ民主化に危機意識を抱いたオバマ米国大統領は、5月19日イスラエルに一定の譲歩を求める演説をしたが、これはアラブ諸国ではほとんど評価されていない。もちろん、「エジプト革命にあわてて発表した」という「動機が不純」ということもあるだろうがなぜアラブ諸国が評価しないかについては
パレスチナ情報センター「オバマ米大統領のカイロ演説をどう評価するか」
http://palestine-heiwa.org/note2/200906081906.htm
を参照してほしい。大体、議会が親イスラエル共和党に支配されてる状態でオバマに大胆な政策ができると期待するほど、アラブ側もお人好しではないだろう。アメリカのアラブへの影響力は着実に減退しているとみられる。
リビアには軍事力をためらわず投入するが、シリアやバーレーン、イエメンにはそこまでしないアメリカの態度はご都合主義と言って差し支えあるまい(ただし今後の状況によっては、エジプトのムバラクを見捨てたように、シリアのアサドなどを見捨てる可能性もある。サウジアラビアに事実上亡命したイエメンのサレハは「見捨てられた」とみていいのだろう)。
・今後のエジプト選挙ではイスラム政治集団「ムスリム同胞団」が最大勢力になるとみられるが、同胞団がどのような政策を打ち出して行くのかが注目される。


■「農のいきづく日本へ・その3:世界食料不安時代の到来と食料主権(上)」(久野秀二*5
(内容要約)
・近年の食糧価格の高騰は天候不純による減産や、新興国の需要の高まりもあるが人為的要素もある。
人為的要素としてまず挙げられるのが投機である。今後は一定の投機マネーの規制が必要であろう。
バイオエタノール燃料用作物(トウモロコシやサトウキビなど)の増産も人為的理由の一つである。バイオエタノール燃料用作物の増産によって食糧不足が生じているのであればそうした作物の生産促進策には一定の見直しが必要だろう。


■「統計でみる「構造改革」と国民生活2:医療保険制度『改革』と医療保障の変化」(鳴海清人
(内容要約)
小泉医療保険制度『改革』は患者の負担増による深刻な受診抑制を招いた。保険制度立て直しを理由とした安易な利用者負担増はやめるべきである。

*1:著書『現代キューバ経済史』(2000年、大村書店)、『革命のベネズエラ紀行』(2006年、新日本出版社

*2:著書『これからの自治体防災計画』(2005年、自治体研究社)

*3:著書『グローバリゼーション下のコメ・ビジネス』(2003年、日本経済評論社

*4:元朝日新聞社科学部長。著書『科学事件』(2000年、岩波新書

*5:著書『アグリビジネスと遺伝子組換え作物』(2002年、日本経済評論社