新刊紹介:「前衛」9月号

「前衛」9月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。
http://www.jcp.or.jp/web_book/cat458/cat/
 以下は私が読んで面白いと思った部分のみ紹介します。(詳しくは9月号を読んでください)

■インタビュー「安倍政権打倒の一大国民的運動を:集団的自衛権にみる安倍暴走政治が露呈した矛盾と日本共産党」(井上哲士
(内容要約)
 安倍政権批判であるが、内容は副題で分かるように「集団的自衛権」及び「それに関連する右翼的な政策(武器輸出三原則の廃棄、特定秘密保護法の制定、尖閣防衛を口実とする軍拡等)」への批判である。
 消費税増税原発再稼働と言った問題は取り上げられていない。

参考
赤旗
『安倍政権打倒の国民的大運動を:日本共産党創立92周年記念講演会、「亡国の政治」と決別し、未来に責任を負う新しい政治を、志位委員長が講演』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-16/2014071601_01_1.html 
日本共産党創立92周年記念講演会『「亡国の政治」と決別し、未来に責任を負う新しい政治を』(志位委員長の講演)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-17/2014071707_01_0.html


■「スターリン*1秘史:ユーゴスラヴィア解放戦争(上)」(不破哲三*2
(内容要約)
・連載の第20回目。
・チトー*3によるユーゴスラヴィア解放戦争の説明(なお以下の記述は、不破の文章及び、ウィキペ「パルチザン (ユーゴスラビア)」「チェトニック」を参照)。
ナチスドイツのユーゴ支配時代、ユーゴには3つの大きな勢力が存在した。「侵略者のナチスドイツ」「セルビア系で王党派のチェトニック」「チトーのパルチザン(ユーゴ共産党)」である。
 なお、ウィキペ「チェトニック」「パルチザン (ユーゴスラビア)」によればチェトニックは「セルビア第一主義」の立場から親ナチでなくても「イスラム系、クロアチア系」へのテロを公然と実行しており、そのため、チェトニックへのユーゴ国民の支持は次第に衰退し、テロを非難するパルチザン支持が増える結果となったと言う。
・「王党派でセルビア系」のチェトニックと「共産党(反王党主義)で民族融和主義」のパルチザンとは当初から険悪な関係であった。チェトニックによるパルチザン攻撃すらあったが、それでも当初、スターリンソ連はチェトニックを支持した。
 不破はこうしたスターリンの態度について
1)英米やロンドンの亡命ユーゴ政府(王党政府)がチェトニックを支持している*4以上、もめたくない。もめるとソ連ポーランド支配に支障が出かねない
2)チトーはたたき上げの人間であり、ソ連留学経験もないのでスターリンにとってコントロールしづらい。そういう人間に出しゃばられたくない
 2)について言えば実際に戦後、ソ連への反発*5からチトーは「非同盟運動」を展開するのでスターリンの危惧は正しかったとは言える。
・今回の(上)ではソ連を含む連合国がチェトニックを支持し、チトーが対応に苦しむところで終わっているが、次号の(下)ではチトーがチェトニックに政治的に勝利する当たりが説明されるのだろう。


■「安倍自公政権の「九条壊憲」閣議決定に立ち向かう」(森英樹*6など)
(内容要約)
 安倍政権による「集団的自衛権容認論」への批判。筆者は集団的自衛権についてはいかなる形でも認めない立場だが、そうした自らの立場を明らかにした上で安倍政権の「制約条件」は何ら制約になっておらず、「国民だまし」でしかなく、無制限の行使が可能だし、実際、安倍政権は国内外の批判が弱いと考えればいくらでも行使する気だろうと見ている。


■「株価対策最優先で「経済の好循環」に逆行する「新成長戦略」」(垣内亮*7
■「安倍政権に反撃する国民的包囲網の形成と発展可能性」(二宮厚美*8
(内容要約)
 垣内論文、二宮論文は「安倍政権の経済政策(アベノミクス)」に対する批判である。アベノミクスの目的は「企業収益の最大化(財界の望む政策の実施)」であり、景気回復でも家計応援でもない。
 だからこそ「過労死を助長するホワイトカラーエグザンプションの導入を主張」「低所得者の生活や景気に悪影響を与える消費税増税」といったことが実行できるのである。こうした庶民無視の経済政策は庶民生活に激しい痛みを与える上、景気にも悪影響なので、むしろ安倍政権の不支持を増大させる要因になるのではないかと評価。対抗策として「消費税減税(当面の目標として8%から5%へ)」「所得税累進課税の強化」「法人税増税(といっても当面の目標としては自公政権による減税分を元に戻すだけだが)」「社会保障の充実」をあげている。
 また経済への悪影響としては「右翼的外交政策による中韓との対立」が指摘され、早急な対中韓外交の立て直しが主張されている。


■「教育委員会めぐるたたかいの到達点」(藤森毅*9
(内容要約)
・安倍政権による「地方教育行政組織運営法改悪(教育委員会制度における首長権限の強化)」への批判と国会での共産党の論戦など「教育委員会を巡る戦いについて」の紹介。
・まず戦いの成果としては「教委制度廃止論」は実現しなかったことがあげられる。もちろんだからといって安倍政権の制度改悪はいささかも軽視できるものではない。
 が「教育制度の完全な首長直結」については、保守層からも「極右を除いて」は支持があまりなかったこと、そのためこの問題で保守層と共産党との間に一定の共闘が成立したことについてはそれなりの評価が可能であろう。
・いくつか共産党の論戦を紹介してみる。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-04-19/2014041902_03_1.html
 日本共産党宮本岳志議員は18日の衆院文部科学委員会で、教育の独立性を壊す教育委員会改悪法案は「形式上も欠陥法案だ」と追及しました。
 法案は、首長が教育行政の「大綱」を策定することとし、「大綱に即して」教育行政の運営が行われるよう「意を用いなければならない」と教育長の服務を定めています。宮本氏が「首長の意に沿って教育行政にあたれと指示するものだ」と批判したのに対し、(中略) 文科省前川喜平初等中等教育局長は「教育委員会の了解がない部分は『意を用いなければならない』ということにはならない」と答弁。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-05-10/2014051001_08_1.html
 日本共産党宮本岳志議員は9日の衆院文部科学委員会で、教育委員会改悪法案について「侵略戦争美化の教科書を採択させるのが狙いだ」と告発しました。
 宮本氏は、安倍晋三首相や下村博文文科相も属していた「日本の前途と歴史教育を考える会」が「(南京大虐殺は)通常の戦場以上でも以下でもない」「(『慰安婦』は)単なる売春行為」と述べ、首相が教育基本法に最適だとする育鵬社の歴史教科書の執筆者が「南京事件は教科書で教えない方がいい。教育基本法がいかされていない」と述べていることを指摘。南京大虐殺や日本軍「慰安婦」問題を記述した教科書が教育基本法に反しているのかと質問しました。
 外務省は南京大虐殺について「非戦闘員の殺害や略奪行為があったことは否定できない」と認め、文科省も「慰安婦」制度への旧日本軍の関与を認めた河野談話をあげ「教科書検定もこうした考えをふまえている」「教育基本法に基づいて検定し合格している」と述べました。下村氏も河野談話について「文部科学大臣として政府の見解を継承します」と答えました。
 そのうえで宮本氏は、検定に合格した教科書を下村氏が「(愛国心を盛りこんだ改定)教育基本法に則った記述になっていない」(『WiLL』4月号)と批判していることをとりあげ、「撤回すべきだ」と追及しました。下村氏は「教科書は教育基本法に則っている」と認めたものの、「日本の教科書は陰の部分のみが強調されている」と述べ、矛盾した態度をとりました。

 もちろん「国旗国歌法案審議」での「強制は考えていない」が現実に無視されていることを考えれば過大評価は出来ないが、法案の問題点を指摘し、

・「教育委員会の了解がない部分は『意を用いなければならない』ということにはならない」
・「(注:極右が非難する南京事件慰安婦の記述がある教科書も)教育基本法に基づいて検定し合格している(注:以上、違法の問題は生じ得ない)」

などの政府答弁を引き出したことは評価に値するであろう。こうした成果を今後どう生かしていけるかが運動側に問われていると言える。


■「傍若無人な米軍機低空飛行をやめさせ、異常な「米軍特権」の撤廃を:本土における調査から」(塩川鉄也
(内容要約)
米軍基地問題というと往々にして「最も米軍基地が集中している沖縄」に目が行きがちだが、沖縄以外にも三沢(青森県)、横田(東京都)、厚木(神奈川県)、岩国(山口県)に基地があり、まさに「税日米軍特権」とも言うべき傍若無人な低空飛行を日本各地で行っている。
 「在日米軍特権を許さない戦い」が今こそ重要である。

参考
赤旗
『米軍低空飛行の中止、衆院委 塩川氏、政府に迫る』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-05-21/2014052104_04_1.html


■「医療・介護総合法の国会論戦がしめしたもの:介護制度再建の道を考える」(谷本諭)
(内容要約)
赤旗の記事紹介で代替する。

赤旗
『安倍政権がねらう医療・介護改悪、社会保障制度変質させる、「医療・介護難民」増やす』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-04-20/2014042001_04_1.html
『入院患者追い出し強いる、衆院委審議入り 高橋議員 医療・介護法案を批判』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-04-24/2014042401_02_1.html
『根拠ない介護締め出し、医療・介護改悪法案 高橋議員が批判』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-04-27/2014042702_01_1.html
『医療・介護総合法案 地方公聴会で批判・懸念』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-05-13/2014051301_03_1.html
『医療・介護総合法案を批判、参考人 撤回や徹底審議求める、衆院委 高橋議員質問』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-05-14/2014051402_01_1.html
『医療・介護総合法案 自公が強行採決、全野党が反対するなか、衆院厚労委 高橋議員「重症まで追い出し」』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-05-15/2014051501_01_1.html
『大多数を排除の危険、医療・介護総合法案 要支援外し新基準、高橋議員に厚労相答弁』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-05-15/2014051502_03_1.html
『「国民の生存権を否定」、高橋議員反対 医療・介護総合法案を可決、衆院本会議』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-05-16/2014051604_01_1.html
『医療・介護総合法案、高橋議員の反対討論、衆院本会議』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-05-16/2014051604_06_1.html
社会保障 責任投げ捨て、医療・介護総合法案 小池氏、廃案求める、参院審議入り』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-06-03/2014060301_03_1.html
『介護2割負担 根拠示せず、厚労省 小池議員追及、審議中断』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-06-04/2014060401_02_1.html
『医療・介護総合法案、小池議員の代表質問、参院本会議』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-06-04/2014060404_06_1.html
介護保険改悪 厚労相 2割負担の論拠撤回、データごまかし明確に、小池氏追及 中断たびたび 参院厚労委』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-06-06/2014060601_01_1.html
介護保険改悪 2割負担の論拠 全面撤回、厚労相 小池議員の追及受け』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-06-11/2014061102_04_1.html
『「要支援」切り捨て明白、参院厚労委 小池氏、新資料批判』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-06-13/2014061302_01_1.html
『「介護難民」を深刻化、医療・介護総合法案を批判、参院委 小池氏』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-06-14/2014061404_03_1.html
『医療・介護法の成立強行、小池議員が反対 制度の根幹ゆるがす、介護給付はずし 病床削減』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-06-19/2014061901_01_1.html
主張『「医療介護法」成立、国民の権利奪う暴挙を許さず』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-06-19/2014061901_05_1.html


■「破綻する核燃料サイクル高速増殖炉開発への固執は何をもたらすか」(青柳長紀*10
(内容要約)
核燃料サイクル」「高速増殖炉」路線に固執する日本だが、米国、フランスは失敗(事故)の連続から事実上撤退しており、見込みはない。日本も早急にこの路線から撤退すべきである。

参考
赤旗
高速増殖炉もんじゅ 廃炉しかない、停止命令で済まない数々の危険』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-16/2013051603_01_1.html
『破綻の核燃サイクルに固執、再処理工場の稼働申請、日本原燃 安倍政権の原発推進と一体』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-01-08/2014010801_01_1.html


特集『「戦争をする国」の歴史が教えるもの』
■「集団的自衛権容認と『永遠の0』」(高野邦夫*11
(内容要約)
 特攻美化小説『永遠のゼロ』及びその作者にして「南京事件否定論」「河野談話否定論」のネトウヨ百田尚樹に対する批判。

参考
法華狼の日記「『永遠の0』で広がる視界はゼロ」
http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20130817/1376703356
赤旗
『NHK経営委員、“他国が攻めてきたら9条教信者を前線に送る”、作家・百田尚樹氏の“見識”』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-11-16/2013111614_01_1.html
『NHKはいま、経営委員がふまえるべき精神とは:百田尚樹氏の乱暴な言説』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-01-26/2014012604_01_1.html
『特異な歴史観で田母神候補応援、百田氏の異常な言動とNHK経営委員の資格』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-02-05/2014020504_01_1.html
『百田氏の東京裁判否定論、侵略正当化で「戦犯政治」応援』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-03-01/2014030103_02_1.html
南京大虐殺は「なかった」 百田発言は世界の非常識』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-03-06/2014030601_03_1.html


■論点
【冤罪の新たな温床をつくる刑事司法改革案】(小林亮淳)
(内容要約)
・法制審議会において7/9に刑事司法改革についての要綱案が発表されたが到底支持しがたい内容である。
・いわゆる「捜査の可視化」が認められたが、捜査当局の抵抗によって大幅な例外が認められた。
・一方で捜査当局の要請で「盗聴捜査ができる犯罪の範囲拡大」「司法取引制度の導入」が要綱案には書き込まれた。これではかえって「冤罪の新たな温床」ともなりかねない。今後、要綱案に従って提出されるであろう政府の刑事司法関連法案に対する十分な監視、批判が必要である。


カネミ油症新認定訴訟上告の争点と課題】(吉野高幸*12
(内容要約)
 筆者は前衛6月号において『カネミ油症新認定訴訟での速やかな被害者救済を』と言う論文を書いている(6月号論文についての小生の感想については拙エントリ(http://d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/20140517/5421309876)を参照)。
 本論文はその続編である。内容的にはかなりかぶる。
 メインの主張は6月号同様

・政府が「原告が主張する認定基準」を認めないのに訴訟を起こせというのは理不尽だ。勝てる保障は何もないではないか
除斥期間の起算点は「カネミオイル摂取」という原因発生時ではなく、政府が「原告が主張する認定基準」を採用した時点とすべき

というものだが、サブの主張として「そもそも民法724条後段の規定は除斥期間ではなく消滅時効を定めた物、最高裁判例変更すべきだ」という意見が示されている。
 筆者が「消滅時効論」を主張するのは「カネミ側が認定患者に治療費支払いを行っていること」で時効が停止し、その時効停止が非認定患者にも及ぶと見なすことが出来るからである(一方、除斥期間には停止がない)。
 筆者に寄れば「最近は724条後段を時効と解釈する学者が多く、また現在進んでいる民法改正でも政府は『時効という方向で解釈』しようとしている」という(除斥期間消滅時効の議論はすごくややこしいので小生はこれ以上深入りしない)。


■暮らしの焦点
【ブラック労働の常態化―アニメーション制作業界】(山口佳織)
(内容要約)
 赤旗の記事紹介で代替。

赤旗
『アニメ現場つらすぎるよ、2カ月働き賃金たった20万円 休みは1カ月で3日 何十時間も不眠で仕事』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-28/2014072807_01_0.html


■スポーツ最前線「ラグビー日本代表、W杯8強めざし急成長」(佐藤恭輔)
(内容要約)
 筆者は赤旗記者。「W杯8強めざし」というのは赤旗の見解ではなく、やはり「日本ラグビー協会ほかラグビー関係者の見解」らしい。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140713-00000032-dal-spo
デイリースポーツ『15年W杯へ進化を続けるラグビー日本代表 目標は8強入り』
 ラグビー日本代表は6月21日に秩父宮ラグビー場で行われたイタリア代表とのテストマッチに26−23で勝ち、昨年秋から続くテストマッチの連勝を10に伸ばした。さらに同23日に国際ラグビーボード(IRB)が発表した世界ランクで過去最高の10位に躍進。就任時から世界のトップ10入りをターゲットに掲げてきたエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)は、来年9月にイングランドで開催される第8回ワールドカップでグループリーグを突破してのベスト8入りを新たな目標に設定した。

テストマッチで勝った事ってそんなに評価出来るの?」「順位が10位になったって言ってもそれテストマッチこみなんでしょ?」と言う疑問をラグビー素人ながら感じざるを得ない。いや「手前日本ラグビー舐めとんか、8強は簡単な目標とは言わないけどサッカーW杯日本8強入り*13と違って一応射程圏内なんだよ」と言う方がいてその説明に納得すれば素直に「8強入り頑張って下さい」と言いますけど。
 で佐藤記者の文章ですが実に歯切れが悪い。「さすがに8強は無理じゃね」と思いながらも「ラグビー協会に公然と喧嘩売れんなあ」と考えてるらしいことがにじみ出てるように思う。
 「日本が自力をつけてることは間違いない」「テストマッチの勝利を喜びたい」と書きながらも「テストマッチでの勝利をどこまで喜べるかは疑問」とし、最後に「過去、W杯成績は1勝21敗2分けと成績が悪いが、健闘を期待したい」ですからね。


■文化の話題
【美術:官展制度から東アジアの近代美術を見直す】(武居利史)
(内容要約)
 福岡アジア美術館府中市美術館、兵庫県立美術館で行われた『東京・ソウル・台北長春*14:官展にみるそれぞれの近代美術』の紹介。
 官展については、「官僚主義」「国家主義」ということから戦後は忌避される傾向があったと筆者はしている(特に満州国の首都だった長春*15の官展を取り上げることは戦前賛美と誤解されかねない)。もちろん日本が外地で行った官展については単純に賛美することは許されないであろうが、ただ忌避するのも正しい態度ではないのではないかと筆者はする。


【映画:時代劇の盛衰を体験してきた大部屋俳優:太秦ライムライト】(伴毅)
(内容要約)
 「5万回*16斬られた男」「日本一の斬られ役」の異名を持つ時代劇俳優・福本清三氏の初主演映画「太秦ライムライト」の紹介。
 
参考
 太秦ライムライト公式サイト
 http://uzumasa-movie.com/
 朝日新聞デジタル『「太秦ライムライト」 老いた斬られ役 奏でる挽歌(沢木耕太郎)』
 http://www.asahi.com/and_M/interest/theater/SDI2014070198301.html
 読売新聞『太秦ライムライト
 http://www.yomiuri.co.jp/culture/cinema/creview/20140711-OYT8T50091.html
 毎日新聞デジタル『太秦ライムライト :“5万回斬られた男”福本清三さんに聞く 独特の倒れ方「エビ反り」開発秘話写真特集付き記事』
 http://mantan-web.jp/2014/07/21/20140721dog00m200030000c.html
 産経新聞『日本一の斬られ役、福本清三が初主演 「太秦ライムライト」』
 http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/140711/ent14071110000005-n1.htm
 デイリースポーツ『斬られ役の福本清三、米映画祭で受賞』
 http://www.daily.co.jp/newsflash/gossip/2014/07/30/0007189807.shtml
 NHKBSオンライン『渡辺支配人のおしゃべりシネマ館「太秦ライムライト」』
 http://www.nhk.or.jp/bs-blog/200/176602.html
 日刊スパ『美しすぎると話題のカンフー美女・山本千尋*17を直撃』
 http://nikkan-spa.jp/689048


【写真:“和製キャパ”:岡村昭彦*18写真展】(関次男)
(内容要約)
 ベトナム戦争取材で、岡村シンパからは「和製キャパ」の異名を奉られている写真家・岡村昭彦の写真展『生きることと死ぬことのすべて』(https://syabi.com/contents/exhibition/index-2242.html)の紹介。
 なお、小生、本多勝一氏が以前していた批判「岡村が和製キャパなら、他の戦争カメラマン、たとえば石川文洋*19一ノ瀬泰造*20沢田教一などは何と呼ぶのか?。岡村が他の人間に比べて段違いだとでも言うのか?」に共感するのであまり和製キャパ云々と岡村を呼ぶ気にならない(ウィキペ「岡村昭彦」によれば岡村と本多氏は極めて険悪な関係だったようだがそれを割り引いても『和製キャパって呼ぶのはいかがな物か』と個人的には思う)。 


■メディア時評
【新聞:原発再稼働と地元紙の怒り】(金光奎*21
(内容要約)
 全国紙のうち、朝日、毎日が川内原発再稼働に批判的なのに対し、読売、産経、日経が再稼働を応援していることを批判。
 また、「脱原発」とまではいかないが川内原発のある鹿児島のローカル新聞「南日本新聞」が再稼働に批判的な事を紹介。

参考
赤旗『いまメディアで、川内原発新基準「適合」 地方紙「安全の保証なし」、再稼働督促の「産経」「読売」』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-23/2014072304_03_1.html


【テレビ:集団的自衛権報道とNHK】(沢木啓三)
(内容要約)
 民放と比べNHK集団的自衛権報道を「政府批判が弱い」と指摘。NHKの報道を歪めていると思われる籾井会長、長谷川、百田経営委員らの早期更迭を主張。
 また、写真週刊誌フライデーが報じた「クローズアップ現代への政府の圧力疑惑」について真相究明を主張。

参考
赤旗
『NHK会長問題 現場から、籾井氏が居座り続けるわけ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-03-10/2014031004_02_1.html
『NHK報道 この異様、キャスターが先導 首相の代弁に終始』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-04/2014070401_03_1.html

*1:ソ連共産党書記長

*2:スターリン関係の著書に『スターリン大国主義』(1982年、新日本新書)

*3:パルチザン最高司令官、首相、大統領を歴任

*4:ただし後にその支持はパルチザン支持へと変更される。その当たりについては(下)で説明されるのだろう。

*5:まあ、パルチザンへのスターリンの冷酷な態度が反発の大きな要素なのでソ連の自業自得だが

*6:著書『国際協力と平和を考える50話』(2004年、岩波ジュニア新書)

*7:著書『消費税が日本をダメにする』(2012年、新日本出版社

*8:著書『安倍政権の末路:アベノミクス批判』(2013年、旬報社)など

*9:著書『教育の新しい探究:今こそ「まともなルールを」』(2009年、新日本出版社)、『いじめ解決の政治学』(2013年、新日本出版社

*10:著書『徹底解明・東海村臨界事故』(共著、2000年、新日本出版社

*11:著書『天皇制国家の教育論:教学刷新評議会の研究(新版)』(2006年、芙蓉書房出版)、『軍隊教育と国民教育:帝国陸海軍軍学校の研究』(2010年、つなん出版)

*12:著書『カネミ油症:終わらない食品被害』(2010年、海鳥社

*13:当分無理でしょう

*14:1932〜1945年まで満州国の首都(なお、満州国当時の呼び名は新京)。現在は中国吉林省省都

*15:満州国当時の呼び名は新京だが

*16:ただし福本氏は毎日の取材には「たぶん数千回、5万回なんてそんなに斬られてない」と答えている。

*17:太秦ライムライトのヒロイン役

*18:著書『南ヴェトナム戦争従軍記』(1990年、ちくま文庫)、『定本・ホスピスへの遠い道』(1999年、春秋社)

*19:著書『戦場カメラマン』(1986年、朝日文庫)、『報道カメラマン』(1991年、朝日文庫)、『日本縦断徒歩の旅:65歳の挑戦』(2004年、岩波新書) など

*20:著書『地雷を踏んだらサヨウナラ』(1985年、講談社文庫)

*21:著書『マスコミはなぜ権力に弱いか』(1994年、新日本出版社