新刊紹介:「経済」8月号

「経済」8月号の詳細については以下のサイトをご覧ください。興味のある記事だけ紹介してみます。
http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/

■随想「電力料金の公表と改革」(成田修身)
(内容要約)
 現在経産省の「総合資源エネルギー調査会総合部会・電力システム改革専門委員会」(http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/2.html参照)で「発送電分離の是非」などの電力システム改革が議論されている。その専門委員会の議論を踏まえた上で、あるべき電力システム改革を考える必要がある。


■世界と日本
【選挙結果と欧州経済危機(宮前忠夫)】
(内容要約)
・フランス大統領選挙、下院選挙では社会党が勝利した。今後は新自由主義政策への見直しがされるのではないかと期待されている。
ギリシャ国会選挙は緊縮政策派が何とか過半数を確保したが、緊縮反対派も一定の議席を確保しており、緊縮政策を容易に推進できる状況ではない。今後の展開が注目される。


多国籍企業の課税逃れ(合田寛)】
(内容要約)
タックスヘイブン(租税回避地)を利用したアメリ多国籍企業の税逃れを批判した上で、オバマ政権へ「タックスヘイブン」規制を求めている。


特集「経済・政治の歪みただす」
■座談会「こうすれば経済・財政も生活も立て直せます」(荻原博子小池晃、日野秀逸)
■「グローバル経済段階の経済運営はいかにあるべきか」(米田貢*1
(内容要約)
座談会も米田氏の主張も細部はともかく大筋では変わらないので一つにまとめた。
「消費税増税は景気への悪影響と、逆進性から支持できない」
「むしろ所得税法人税の累進性を高めるべきだ」
「不況の原因は内需縮小であり、内需縮小の原因は生活不安だ。新自由主義政策を改め、社民政策に転換することが生活不安をなくし、内需を拡大し、不況克服にもつながる。好況になることによって税収も増える」
「具体的には最低賃金引き上げ、医療費の窓口負担の引き下げ、生活保護、失業保険の充実、学費の無料化などが考えられる。少なくともヨーロッパの福祉国家レベルにはできるはずだし、しなければならない」


■「国と地方の民主主義の危機と対抗軸」(小沢隆*2
(内容要約)
・国政の閉塞原因は「小選挙区制」である。この制度では二大政党以外の政治勢力キャスチングボートを握ることは困難である。つまり選択肢が事実上二つしかないのであり、そのどちらも賛同できない人間にとっては閉塞を感じざるを得ない。ましてや野田民主党政権と谷垣自民党執行部のように形だけでも対立するどころか「完全に談合政治」では、選びようがない。
 困難ではあるが小選挙区制以外の選挙制度に早急に改めることが急務である。
・地方における橋下、河村的ポピュリズムの原因の一つとしては、「共産以外、与野党相乗り政治への反発」があると見られる。橋下、河村が「維新の会」「減税日本」等を旗揚げし、相乗りから距離を置くかのようなポーズをとっていることが評価されていると言うことである(実際は単なるポーズに過ぎないのだが)。相乗りが嫌なら共産を評価しろよと俺なんかは思うがそこは「日本の反共意識の強さ」と「共産の政治的力量不足」ということだろう。
 それはともかく事実上選択肢を奪ってきた相乗り政治について深刻な反省が必要だろう。


■「橋下・維新の会の特徴と民主主義――大阪市における職員・労働組合攻撃を考える」(城塚建之*3
(内容要約)
・橋下の政治手法としては「敵味方二分論」「決められる政治」があげられるだろう。「政策*4に批判的な者を敵視し、何が何でもネガティブなイメージを貼り付け」かつ「その敵に果敢に挑む決められる改革者」を偽装するという話である。当然敵は打倒の対象ではあっても議論の対象ではない。
 そうした手法は無茶苦茶としか言いようがないので必然的に「独裁的手法」が要請されることになる。こうした独裁者・橋下を支持する者は厳しく批判されて当然であろう。
大阪府知事時代以上に大阪市長になった橋下が労組相手に無茶苦茶をやってる理由は分析の必要があると思われる。単に調子に乗ってるだけ、今の橋下が府知事なら同じ事を府労組にやるという可能性もあるが、市労組側に何か弱点(組織率の低さや橋下に非難されるような道義的問題があるなど)がなかったか反省すべきは反省すべきであろう。もちろんそれは橋下が正しいと言うことではないが、この際、弱点があるならばそれはできる限り改めるべきだろう。

参考
赤旗
大阪市 思想調査データ廃棄、共産党府委 これで幕引き許されない」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-04-07/2012040701_07_1.html
「橋下市長“役所は僕の顔色うかがえ”職員条例案 狙い露骨に」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-04-14/2012041404_01_1.html
違憲の市職員政治活動制限、橋下市長が条例案提出、大阪市
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-07-07/2012070701_02_1.html
大阪市条例案憲法の下、許されない、市職員の政治活動を制限」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-07-07/2012070704_04_1.html


特集「ストップ!TPP 見えてきた「壊国」路線」1
■「世界の「宝」 国民皆保険・地域医療を守る」(色平哲郎)
■「医療制度に及ぼす影響」(郄山一夫)
(内容要約)
赤旗の記事紹介で代替。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-11-09/2011110901_05_1.html
主張『TPPと医療、「命の格差」の拡大許さず』
 お金の心配なく、いつでも安全な医療をうけることができる―。日本の医療で最も大切にすべき原則を、野田佳彦首相が大本から覆そうとしています。
 野田首相が交渉参加を表明しようとしている環太平洋連携協定(TPP)です。「非関税障壁」をなくすという米国の要求のもとで、医療を企業のもうけの対象にした「市場原理」優先の仕組みを日本に持ち込む危険が明らかになっています。「命の格差」を拡大するTPPに参加すべきではありません。
 TPPでは、農業と食料だけでなく、くらしのあらゆる分野が「自由化」の対象にされます。医療では、混合診療の全面解禁、株式会社の病院経営への参入、医療機器・医薬品の輸入規制の撤廃、価格の自由化などが交渉の課題になる可能性があります。
 とりわけ焦点になっているのは混合診療です。外務省は7日、民主党に示した追加資料で、混合診療の解禁について「TPPで議論される可能性は排除されない」と初めて認めました。混合診療は、公的医療保険がきく診療と、保険がきかない診療を合わせたものです。政府が認めた一部の医療を除く保険外診療を選択すれば、全体が公的保険の対象外となり、全額患者の自己負担となります。
 混合診療を全面解禁すれば、保険外診療がさらに拡大され、経済力の違いで「医療の格差」が生まれます。患者が窓口で医療費の一部を負担するだけで受診できた公的医療保険の文字通りの解体です。
 政府はもともと、混合診療全面解禁は「TPP交渉の対象になっていない」と主張してきました。しかし、日本共産党志位和夫委員長が国会で追及したのを受け、野田首相が「可能性は否定できない」と認め、外務省もようやく追加資料を出したのです。国民の命にかかわる問題をごまかし続けてきた政府のやり方自体、TPP参加の道理のなさを示すものです。
 米国は、自国の保険会社や医薬品会社に市場を開放することを繰り返し日本へ要求し、日本の公的医療保険制度、国民皆保険制度が障害だとしてきました。TPP参加による医療の「市場開放」は、医療費削減・患者負担増によってもたらされた「医療崩壊」をますます深刻にしてしまいます。
 株式会社の病院経営参入も、医療に「利益第一」の運営が持ち込まれ、不採算部門を切り捨てることになります。医療機器・医薬品の規制撤廃も、医療の安全性よりももうけを優先させるものです。外務省の資料でも、米国は「医薬品へのアクセス拡大」を目標に掲げていることを明記しました。日本の医療と国民の安全が脅かされる危険は明白です。
 日本医師会日本歯科医師会日本薬剤師会の医療関係3団体はこのほど、公的医療保険制度が脅かされるとして、「TPP交渉への参加を認めることはできない」と表明しました。医療の安全と安心を守るため、たたかいを広げることが急務です。
 ことしは市町村に国民健康保険が導入され、「国民皆保険」が確立してから50年です。その節目の年に公的医療制度を米国の大企業に売り渡す暴挙に踏み出すことは、将来に大きな禍根を残します。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-10-27/2011102702_02_1.html
医療自由化 命脅かす、高橋議員追及
 日本共産党の高橋ちづ子衆院議員は26日の衆院厚労委員会で、環太平洋連携協定(TPP)が医療分野に及ぼす危険な影響についてただし、交渉参加をやめるよう求めました。
 高橋氏は、米国が保険の利かない混合診療を拡大させ、米国企業の参入を迫ってきたことや、米国がTPP交渉で公的医療保険制度の自由化を求める方針を示していることを挙げ、米国の圧力に屈して国民の命と安全を危うくしてはならないと追及しました。
(中略)
 高橋氏は、米韓の自由貿易協定(FTA)では米国に有利な形で医療保険制度を弱体化させる条項が盛り込まれたことを示し、「危機感がなさすぎる。公的医療保険を守るというなら交渉参加すべきではない」と強調しました。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-12-09/2011120901_01_1.html
TPPで安い薬 ピンチ、「知財保護」でもうけ独占狙う米、「国境なき医師団」が警告
 国際的な医療・人道援助団体「国境なき医師団(MSF)」の米国組織は、入手したTPPの米国提案とみられる流出文書には、ジェネリック医薬品後発医薬品)の供給を脅かす内容が含まれているとしています。
(中略)
 MSFによると、ジェネリック医薬品により、過去10年間で第1世代のHIVエイズ治療薬の価格が99%引き下げられました。その結果、2002年時点で1人当たり年間1万ドル(約78万円)だった価格が現在の60ドル(約4680円)へ大幅に引き下げられました。MSFは、TPPで知的財産権保護が強化されると、発展途上国で安価な医薬品の入手が困難になると訴えています。


■「入門講座・TPPから日本の食と農を守るために(4)」(暉峻衆三*5
(内容要約)
赤旗の記事紹介で代替。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-10-15/2011101502_01_0.html
TPPへの暴走を許さない国民的な共同をよびかけます
 TPP参加は、日本の農林水産業に壊滅的打撃を与え、国民への安定的な食料供給と食の安全を土台から崩します。自国での農業と食料生産をつぶし、もっぱら外国にたよる国にして良いのか、この国の根本的なあり方が問われています。
 農林水産省は、関税撤廃で、日本の米の自給率は1割以下、国民が食べる米の9割以上が外国産米になり、その結果、食料自給率は現在の39%から13%に落ちるとしています。TPP参加と食料自給率の向上は、絶対に両立しません。民主党政権が昨年3月に決定した「2020年度までに食料自給率を50%にする」という「食料・農業・農村基本計画」にも反します。
 「第三の開国」とか「農業は保護されすぎている」などと言いますが、今でさえ日本の農産物の関税率は11・7%とアメリカに次いで世界で2番目に低くなっています。日本は「鎖国」どころか、すでに十分すぎるほど「開かれた国」です。
 競争相手は世界で最も農産物の安いアメリカとオーストラリアです。日本農業が壊滅的打撃を受けることは避けられません。1戸当たりの耕作面積が日本の100倍のアメリカ、1500倍のオーストラリアと、「競争できる強い農業」などというのは、国土や歴史的な条件の違いを無視した暴論にすぎません。
(中略)
 日米首脳会談で、オバマ大統領は野田佳彦首相に、BSE(牛海綿状脳症)対策であるアメリカ産牛肉の輸入制限の緩和を要求しました。TPPに参加すれば、食品の安全のための規制も「非関税障壁」とされ、とりはらわれてしまいます。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-12-05/2011120502_01_1.html
主張『農業再生、TPP参加とは両立しない』
 日本農業は農業者の高齢化が進み、耕作放棄地が全耕地の1割にものぼるなど危機に直面し、農業再生は待ったなしの課題です。このなかで、野田佳彦政権は環太平洋連携協定(TPP)への参加に足を踏み出しました。「例外なき関税撤廃」が前提のTPPへの参加は、農業に壊滅的打撃を与えるとともに、農業再生の展望をおおもとから破壊するものです。
 野田政権は、農業危機の原因にふれないまま、農家1戸当たりの平均耕地面積を現在の10倍以上に拡大する大規模化を農業改革の柱にすると決めました。その方針は、歴代自民党政権が失敗を重ねた「構造改革」路線と変わりません。大規模化を無理やり進めれば、生産を担う農業者を追い出し、農業をさらに疲弊させます。
 重大なのは、大規模化をTPP参加の露払いにする意図を鮮明にしていることです。野田首相は、高レベルの経済連携と農業再生は「両立できるか、できないかではない。しなければならない。マスト(絶対)だ」と述べ、TPP参加が前提だと強調しました。
 大規模化で国際競争力をつければ「両立する」というのが野田政権の主張です。しかし、耕地面積は国土の条件に左右されるもので、その拡大には限界があります。TPPに参加する米国の1戸当たり耕地面積は日本の99倍、オーストラリアは1902倍にのぼり、政府の目標が達成できたとしても対等な競争など不可能です。
 日本農業の衰退をもたらした最大の要因は、歴代の政権が米国と財界の要求に応じて食料輸入を次々に自由化し、輸入への依存を強めてきたことにあります。日本の農産物の平均関税率は11・7%と、米国に次いで世界で2番目に低くなっています。食料自給率は39%と主要国で最低の水準にまで落ち込んでいます。自給できるコメをはじめ乳製品や砂糖などまで明け渡すTPP参加は、農業再生にとって最悪の選択です。
 食料自給率の50%以上への引き上げは全国民的な要求であり、民主党政権も50%の目標を掲げ続けています。その実現には、農産物貿易を市場メカニズムだけに任せず、自国の必要に応じて食と農業のあり方を決め、関税や輸入規制の国境措置をとることができるよう、経済主権と食料主権を確立することが不可欠です。
 同時に、工業と違い自然の制約を受ける農業の再生には、経営を安定して持続できるよう保障することが不可欠です。現実には、農畜産物の生産者価格が再生産費を割り込み、農業経営が成り立たない実態が広がっています。若い人たちが農業に参入しないのも、他産業なみの所得を得られる見通しがもてないためです。
 農業の持続的な再生産を保障するには、農産物価格を一定の水準で支える価格保障が必要です。さらに、農業の環境保全機能などを守る所得補償を組み合わせることも重要です。
 日本には温暖多雨な自然やすぐれた農業技術、安全・安心な食料を求める消費者ニーズなど、農業の発展に必要な条件があります。これらを生かすことで農業の再生は可能です。その第一歩として、TPP参加に「ノー」をつきつけることが不可欠です。


■「原子力技術の根本問題と自然エネルギーの可能性(下)」(大友詔雄*6
(内容要約)
原発には「核廃棄物処理問題」「被爆労働の問題」「廃炉の問題」「事故の危険性の問題」と解決困難ないし不可能な問題が山のようにある。
 このような技術に固執するより、いわゆるエコエネルギー(太陽光、地熱、風力、潮力などによる発電)に力を入れ、脱原発の道に進むことが望ましい。


■「政治的圧力下の日銀の金融政策」(建部正義*7
(内容要約)
・日銀は近時、金融緩和を強めているように思われるが、これは与野党(民主、自民)が金融緩和を行うよう圧力をかけているからと見られる。
 しかしいわゆる「日銀の独立性」を考えるとこうした状況が望ましいかは疑問である。
・現時点での日銀の政策をいわゆる「インフレ目標の一種」と見る者もいるが白川総裁は「金融政策には限界がある」との見方を示した上で日銀の政策は「インフレ目標」にはあたらない、少なくともいわゆるインフレ目標を明確な形で目指したものではないとしている。
・筆者の見解。「金融政策には限界がある」とした上で、「デフレ(要するに不況だが)」の主原因は「生活不安による内需縮小」であり、「社民政策による生活不安解消」こそが本筋であるとする。筆者はインフレ目標論(と言うか金融政策)によるデフレ脱却にきわめて否定的だが、その政策的有効性を仮に認める場合でも「新自由主義政策の続行による生活不安」を放置したままではたいした成果は上げられないと見る。


■「税逃れの温床=タックスヘイブン ――課税強化に逆行する民主党」(丸井龍平)
(内容要約)
赤旗の記事等の紹介で代替。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2012-03-24/2012032401_03_1.html
大企業の課税逃れ許すな、参院予算委 大門氏主張 消費税増税は復興に逆行
 日本共産党大門実紀史議員は23日の参院予算委員会で、消費税増税は復興に逆行すると追及し、富裕層課税や大企業の課税逃れ対策こそ真剣に検討すべきだと迫りました。
(中略)
 大門氏は、ペーパーカンパニーの増大などにふれ、タックスヘイブン租税回避地)を使った日本の大企業の課税逃れを指摘。民主党政権タックスヘイブンとみなす国や地域の基準について、法人税の実効税率25%から20%以下とするなど規制緩和してきたことをあげ、「国内でやるべき対応も取っていない」と述べました。
 大門氏が米国では31・5%以下をタックスヘイブンと規定して対策も講じていることを示して、「税の引き下げ競争ではなく、負担能力のあるところに負担を求める当たり前のやり方に立ち戻るべきだ」と主張すると、野田首相は「米国の取り組みは参考になった。今後、議論していきたい」と述べました。

http://www.daimon-mikishi.jp/kokkai/k-kiji/120323-2.html
大門実紀史
 (前略)
 大事なのは、今日もお話ございましたけど、国際的な脱税行為を許さないことです。いわゆるタックスヘイブンの問題でございます。租税回避地なんですけれども、タックスヘイブンというのは、税金をゼロにしたり、あるいは極端に低い税率にしている国とか地域のことでございます。
 例えば、今日も話が委員会で出ていましたが、AIJ投資顧問、あるいはオリンパスが所得隠しで使ったのがケイマン諸島でございますけれども、ケイマンは法人税などの直接税がゼロの国でございます。ただ、タックスヘイブンというのは、ケイマンのような極端な国だけじゃなくて、日本の場合ですと、外国で法人税の実効税率が二〇%以下の国はタックスヘイブンだと、地域はタックスヘイブンだというふうにしておりますので、幅広い概念でございます。
 何をしているかというと、そういうタックスヘイブンペーパーカンパニーをつくるわけですね。ペーパーカンパニーをつくって、そこに日本の企業、個人投資家などはこういうペーパーカンパニーをつくったり、あるいはファンドをつくる、証券口座をつくって課税逃れをしているわけでございます。そのペーパーカンパニーの数が、このグラフにしましたけれど、急速に増えておりまして、二〇〇六年の三千四十一が二〇一〇年の四千四百七十と、莫大な金額の課税逃れが行われているわけでございます。これは事実上の脱税行為でございます。
 金融庁国税庁も全部は把握しておりませんけれど、例えばケイマン諸島だけで証券投資と直接投資で約四十七兆円のお金が流れ込んでおります。それが、利益を上げても上げてもほとんど課税されないと。国税庁がつかんでいるのはわずか八百何十億だけで、ほとんど把握されていないと。莫大な金額の課税逃れが行われているわけでございます。
 今まで日本はこういうタックスヘイブン、課税逃れに対してどういう対策を打ってきたか、財務大臣、お願いいたします。
財務大臣安住淳君)
 ペーパーカンパニーという言葉は国としては使ってはいませんけれども、今、先生の御指摘のその表でいうと、外国の子会社の合算税制というのはあるわけです。つまり、我が国の税負担に対して、言わば税負担の低い水準にある子会社を親会社である内国法人の所得に合算をするというふうな課税制度です。これに対しての適用はやってきたわけでありますから、その分でいえば、適切な課税はその分は行われたと。
 しかし、様々、マスコミ報道等を含めて、いわゆる所得の把握をうまく世界のそれぞれの主要国がどうもできていないのではないかという指摘はありますので、そうしたことに対しては、やはり外国の税務当局等ともこれはしっかりと話し合いながら対応していかなければならない課題であると思っております。
大門実紀史
 いろいろおっしゃいましたけれど、もちろん外国との協調も必要なんですが、まずその国がやれることはやるべきだと思います。
 そういう点で、日本はこのタックスヘイブン対策が大変遅れてきた上に、民主党政権になって逆に規制緩和をやってきております。二〇一〇年に、タックスヘイブンとみなす基準、先ほど二〇%と言いましたが、それまでは二五%だったんです。ところが、それを二〇%以下の国だけが、それだけの低い税率の国だけをタックスヘイブンとしたと。
 これによって、ここにございますけれども、中国などアジア四か国にあるペーパーカンパニー、この部分、大体この辺の国は実効税率でいくと二〇%から二五%の間でございますから、二〇%以下だけがタックスヘイブンということはタックスヘイブンじゃなくなったわけですね。したがって、今おっしゃいました合算税制もないし、このペーパーカンパニーが増えているにもかかわらず野放しになっているということになったわけでございます。こういう、何といいますか、規制をするどころか、規制緩和民主党政権のときにしたわけでございます。
 それに比べてアメリカというのは、世界的な大企業とか大金持ちが多い国ですけれども、このタックスヘイブンには大変厳しい国でございます。アメリカがタックスヘイブンとみなす基準というのは税率は三一・五%以下、それ以下のところは全部タックスヘイブンだといって、いろいろ課税の取締りをやろうと、幅広くやるわけですね。日本はさっき言ったように二〇%以下の国だけで、狭いわけですよ。アメリカはそれぐらい厳しいわけです。
 さらに、今年の二月の二十二日、アメリカがタックスヘイブンへの課税強化策を打ち出しました。一つは、ちょっと専門的ですけれども、要するに海外のこういう子会社の所得に一定基準で必ず課税すると、ミニマムタックス制度ですね。もう一つは、知的財産の所有権をこういうタックスヘイブンに移転させたら、それはもう意図的だということで上乗せ課税をやるということですね。
 ほかにもございますが、もう一つ注目すべきなのは、これはタックスヘイブン対策ではないんですけれども、産業空洞化対策でもあるかと思いますけれど、アメリカが今回乗り出そうとしているのは、企業が海外移転をする、これにブレーキを掛けると。日本はもう好き放題やっていますが、アメリカはブレーキを掛けようとしています。どうやるかというと、企業が生産拠点を海外に移転するための経費について損金に認めない、つまり税金を掛けますよとやるわけですね。逆に、海外から生産拠点をアメリカの国内に移した場合、その場合は税額控除、つまり税制上優遇しますと、こういうことまで踏み出しているわけですね。
 日本だけが海外に逃げる、海外に逃げるといって、もう税の引下げ競争ばっかりやっているわけですけれども、アメリカはもうここまで踏み出してきているということなんですね。こういうことこそやっぱりアメリカからきちっと学ぶべきだと、今こそ学ぶべきだと思いますが、いかがですか。
財務大臣安住淳君)
 大門先生の御指摘の話というのは二十二年改正だと思います。
 このときの事情というのは、やはり日本企業の海外進出に対して、日本の場合はやはり企業形態が子会社等を設立をしていくということから、やっぱりそういう意味での法人税の負担水準というものを少し緩和をさせてあげた方が競争力が付くという要望がかなりあったので、これは対応しました。その結果として、御指摘のとおり、いわゆるトリガー税率は二〇%以下にしたと。
 今御指摘のそのペーパーを見ましても、その結果として、確かに中国などアジア四か国で大体四百社、約四百二十程度ですか、これについては御指摘のように言わば税回避が起こるのではないかという御指摘があります。他方、今アメリカ合衆国のことについて御指摘がありまして、これは海外に進出するアメリカ企業のやっぱり形態も違うとはいえ、やはり租税回避行為に対して厳しい監視をしなければならないということについては、これは国際会議、G20等でも出始めている議論の一つでございます。
 ですから、今後私どもとしても、決して税逃れをする企業のために便宜供与を図るなんということは毛頭考えておりませんので、適正な課税をしていただくためにどうするかということは考えていきたいと思っております。
大門実紀史
 総理のお考えもお聞きしたいと思います。
内閣総理大臣野田佳彦君)
 先ほどのアメリカの取組なんか大変参考になりました。今後、私どもの議論にも生かしていきたいというふうに思います。


俺の理解
大門閣下「タックスヘイブンの範囲を狭くする規制緩和ってどういう事や。脱税そそのかしてるのと違うんか?。そんなんで消費税増税か、ああ?。なめとんか、ぼけ、カス」(一部オレ流に誇張しました)

*1:著書『現代日本金融危機管理体制』(2007年、中央大学出版部)

*2:著書『ほんとうに憲法「改正」していいのか?』(2002年、学習の友社)

*3:著書『官製ワーキングプアを生んだ公共サービス「改革」』(2008年、自治体研究社)

*4:しかもその政策が市楽団廃止だの道頓堀プールだのだからお話にならない

*5:著書『日本資本主義の食と農―軌跡と課題』 (2011年、筑波書房ブックレット)

*6:編著『自然エネルギーが生み出す地域の雇用』(2012年、自治体研究社)

*7:著書『金融危機下の日銀の金融政策』(2010年、中央大学出版部)