今日のMSN産経ニュース(4/26分)

■【正論】「国民の憲法」考 拓殖大学総長・渡辺利夫
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130426/plc13042605010010-n1.htm

「国民の憲法」ってのは産経の作った憲法案のことです。「国民の憲法」考と言いながら「国民の憲法」には全く触れず、やってることは現行憲法への非難だけというのが「何だかなあ」ですね。大体「国民の憲法」って名前からして「外国人が全く視野に入ってないらしい」のがうんざりですね。産経らしいですけど。

宗教上の争いが日本に深刻な亀裂を生じさせることもなかった

「深刻な亀裂」が何を意味してるのかわかりませんが、「一向一揆」「廃仏毀釈運動」とかを考えればはっきり言って間違いじゃないんですかね。

10世紀初頭に唐王朝が滅亡して以来、大陸からの影響力は急速に失(う)せ

 渡辺の言う「影響」の意味が良くわかりませんが、日宋貿易とか日明貿易とかあるんだから影響がないわけないんですが。いわゆる鎌倉新仏教(栄西道元は中国で禅宗を学んだ)や雪舟水墨画なんかも中国の影響でしょう。
 そんなに中国の影響力を認めるのが嫌か?。「今の中国が共産国」だから嫌なのか?。それとも戦前の「チャンコロ」云々的な民族差別か?

異民族の征服や反乱、権力内部の大逆や謀反に彩られた中国史に比べれば、日本ははるかに平穏な歴史を織り成してきた。

まあ、島国なので外国の侵略を受けにくいと言う意味ではそうかもしれない。権力内部の抗争というのは「乙巳の変蘇我入鹿暗殺)」「壬申の乱大友皇子大海人皇子の争い)」「保元の乱後白河天皇方と崇徳上皇の争い)」「承久の乱後鳥羽上皇鎌倉幕府北条氏の争い)」とかいろいろあるので日本も大して変わらないと思いますが。「個々の天皇流罪になることはあっても」天皇家それ自体が滅ぼされたことはなかったという点は中国とは違いますけどね。
それと時代にも寄りますね。戦国時代なんか全然平穏じゃないでしょうけどね。

同質的で自成的な日本はひとたび急迫の事態に直面するや、これに抗する力を一気に凝集する高い政治的能力をみせつけたのである。

・「政治変革が必要という総論」は一緒でも薩長(武力倒幕派)と幕府(徳川家)の政権プラン(各論)は違っていて、だからこそ「戊辰戦争」になったのに何が「同質的で自成的な日本」「一気に凝集する高い政治的能力」なんでしょうか?
・そして「日本侵略」という「急迫の事態」に直面して「国共合作」を成立させた中国を産経や渡辺はどう思ってるんでしょうかね?
 国共合作の直接のキッカケとなった西安事件をどう思ってるんでしょうかね?

大正期に入れば普通選挙法を成立させ、民主主義的法制度の整備を急遽(きゅうきょ)進めた。

でいわゆる大正デモクラシーが昭和に入って軍部の台頭で台無しにされたことはどう思いますか?。大体普通選挙法が成立したのって大正14年なんですけどね。どこが急遽なのか?しかもセットで治安維持法が可決されてるのに何が民主主義か。

憲法すなわち国体が連合国軍総司令部(GHQ)によって押し付けられたのである。

やれやれです。憲法アメリカの案を日本がそのまま受け入れたわけでは全くない。日本政府もいろいろと「それは受け入れられない」とか注文をつけたわけです。
それに一応国会で審議されてるし、それでいろいろと修正も入ってるわけです。大体、産経が押しつけって言うのは憲法だけですからね。占領下の行為は大なり小なり押しつけ性がありますが、産経に都合のいい「安保条約」だの「レッドパージ」だのについては全く押しつけ云々とは言わないのだからご都合主義です。
大体「変な自主憲法」より「まともな押しつけ憲法」の方が何倍もマシでしょうよ。

腑に落ちないといったのは、サンフランシスコ講和条約で日本が独立国家となったにもかかわらず、当の日本人自身が「GHQ憲法」を、後生大事に守護し「不磨の大典」のごときものとしてしまったことである。

別に「不磨の大典」としてるんじゃなくて産経のような「右翼改憲派改憲案」があまりにも酷すぎるから賛成しないだけですが。まともな改憲案なら誰も反対しません。
むしろ「女帝は絶対にいやだ!」という産経の方こそ「男性天皇制」を「不磨の大典」化していますよね?

黒く塗りつぶされた戦前史

そんなものはありません。戦前の問題点が批判されてるだけです。まさか「戦前に何一つ悪いところはなかった。あの戦争は聖戦だし、当然南京事件731部隊のような非道な行為はなかった」「治安維持法による被害者もいなかった。横浜事件?。何ですか、それは」とか言い出す気なんでしょうか?

日本人が忠誠を尽くして守るべき誇らしき文化的伝統をもつ国家が日本であることを憲法に明記せよ。

憲法って「日本国民は日本国家に忠誠を誓え」と命令する代物なんですか?。逆でしょうに。「政府の人権侵害から国民を守るためのもの」が憲法ですよ。大体「誇らしき文化的伝統を持つ国家」って日本以外はそうじゃないとでも?
 「日本が世界で一番だ」と思い上がるのも大概にして欲しい。
・そもそも憲法に忠誠云々と書いて忠誠心を上からたたき込むって考え自体が異常ですけどね。産経が「中国の愛国教育」や「朝鮮学校の教育」を「上からの押しつけ」と非難していた*1のは何だったんでしょうか?
 産経の非難理由が「反日だから」に過ぎなかったのは間違いないでしょう。
・別に積極的に「国家に忠誠を誓うな」とか言う気もないですが「国家に忠誠を誓わない自由」も認めているのが近代憲法でしょう。他人に迷惑をかけない限り、基本的に何を主張してもいいというのがまともな憲法じゃないんですか?

日本がこの大いなる国民共同体としての国家の凝集力を再生させねば、膨張する大陸国*2とは対峙(たいじ)することも、共存することさえかなわないのではないか

だから憲法ってのはそういう代物じゃないから。大体「国民は国家に忠誠を誓え」と憲法に書かないと日本がやってけないって、どんだけ日本人をバカにしてるんでしょうか?

*1:産経の非難が正しいかどうかはひとまずおきます

*2:中国のこと