今日の産経ニュース(2022年1/1日分:その1)(副題:産経の「新年挨拶」を批判する)

 新年の挨拶は抜きで、「新年の挨拶代わり」に早速いつも通り産経を批判してみます。批判するのは「産経の新年の挨拶」にあたる記事「複数」です(それ以外の産経記事は別記事で批判します)。
【年のはじめに】さらば「おめでたい憲法」よ 論説委員長・乾正人 - 産経ニュース
 それにしても新年に論説委員長が書く文章が「憲法九条へのレベルの低い悪口」とは実に産経らしくてくだらない。
 なお、産経らウヨは「九条護憲派」を「侵略されたらどうするのか、おめでたい」「中国、北朝鮮、ロシアの脅威ガー」と悪口ですが、小生も含めて多くの九条護憲派は「自衛隊の存在を否定していません」からねえ。
 政府見解「専守防衛自衛隊は合憲」に従う限り九条改憲する必要はどこにも無い。
 そもそも今の九条改憲論は「集団的自衛権」が最大の目的です。「ベトナム戦争での韓国」「イラク戦争での英国」などのように「海外で日本が戦争できる国(その場合、想定されてるのは日本単独ではなく米国との共同軍事作戦ですが)」が「九条改憲の目的」であって「中国、北朝鮮、ロシアの脅威ガー」などデマも甚だしい。そもそもこれらの国が日本侵略する可能性は低く、そういう意味でも「中国、北朝鮮、ロシアの脅威ガー」はデマですが。
 仮に軍事行使するなら中国なら「台湾」、北朝鮮なら「韓国」、ロシアなら「ウクライナ」でしょう。日本ではない。
 中国の沖縄侵攻、ロシアの北海道侵攻など口にするのは非常識です。
 まあ、「台湾」、「韓国」、「ウクライナ」への軍事行使の可能性だって低いでしょうが。理由は簡単でまず第一に軍事的に勝てる保証がなく*1、第二に軍事的に勝てたところで「政治的に負けるリスク(欧米の経済制裁)」があるからです。
 戦前日本も「軍事的には中国蒋介石政権に勝っていた(とはいえ局地戦の勝利に過ぎず、重慶という奥地に拠点を移した蒋介石を軍事的な意味でも打倒することは出来ませんでしたが)」ところ「政治的には敗北」し「米国の経済制裁を食らって」結局自滅しました。
 勿論小生も含めて多くの九条護憲派は「九条改憲の目的は集団的自衛権行使」と理解した上で「集団的自衛権行使阻止」のために九条護憲を主張しています。
 自民党支持層でも「集団的自衛権行使のための九条改憲」を積極的に支持する層は少ないのではないか。
 だからこそ、産経は「侵略の脅威ガー」を全面に出すのでしょうし、九条護憲派としては「九条改憲目的は海外での武力行使」と言うことを強くアピールする必要がある。
 勿論「海外で武力行使して何が悪い」、あるいは「自民党の決めることなら何でも従う」「自分に害がなければ海外で戦争しようと構わない。被害を受けるのは戦争する自衛官だけだ」という自民党支持者もいるでしょうが、産経のせこい印象操作でもわかるように、そうした人間は「九条護憲派の俺の願望込み」ですが多数派ではないでしょう。
 もし多数派なら産経も躊躇なく「九条改憲して海外で武力行使すべきだ。日本は米国とともに世界の警察官になるべきだ」と書いたでしょうから。
 メインの批判はこれで終わりですがいくつかサブの批判もしておきます。

 今年は日中国交正常化50周年にあたる。この間、天安門事件で欧米諸国から孤立した中国を円借款再開と天皇陛下訪中で救ったのは、ほかならぬ日本政府なのである。「おめでたい」にもほどがある大失策だったが、事件から三十余年で中国は強大な「モンスター国家」となり、世界の脅威となった。その現実から目を背けている日本人は少なくない。

 ちなみに「沖縄返還(1972年)50周年」「天皇訪中(1992年)30周年」でもありますがそれはさておき。
 むしろ産経の方が「多くの事実から目を背けている」というべきでしょう。
 まず第一に「日本が制裁解除したから欧米が解除した」わけではない。
 それは「日本がアパルトヘイト南アと経済交流し続けても、欧米は最後まで日本の態度を口実に南ア制裁解除などしなかったこと」で明白でしょう。
 欧米は「最初に制裁解除して目立ちたくなかった」だけにすぎません。
 第二に「制裁解除すること」によって日本は中国で金儲けしたわけで「一方的に中国が利益を得た」わけではない。
 第三に果たして中国は産経が言うような「モンスター」「世界の脅威」なのか。
 軍事的脅威かと言えばとてもそうはいえないでしょう。中国は「アフガンに軍事展開していた米国」「シリアに軍事展開しているロシア」と違い海外での「武力展開」はしていない。
 経済的脅威かと言えば、まあ「経済大国」だから間違いではないですが、「中国は経済大国になるな」と言うのもおかしな話でしょう。
 いずれにせよ「日本が制裁解除したから中国は経済大国になった」という単純な因果関係にはない。

 中国に渡って人民解放軍の増強に手を貸す研究者が後を絶たない。

 千人計画に応じた日本人研究者への誹謗中傷も甚だしい。名前を出してないとはいえ、これは「千人計画に応じた日本人研究者」への誹謗としか理解できないでしょう。千人計画に応じた日本人研究者は名誉毀損で産経を民事提訴、刑事告発してもいいのではないか。
 産経はこんなことを言うなら「中国の軍事研究に日本人研究者が関わってるという証拠」を出せという話です。
 そもそも「以前も書きました」が日本人研究者が千人計画に応じるのは「実に単純な話」です。
 日本ではいつまでたっても講師のままでいつ准教授や教授になれるか分からない。研究予算も研究者を支援するスタッフ*2も大してつかない。そもそも国が国立大への交付金や私学助成を財政難を理由に減らしているので「研究予算やスタッフが増える見込み」は今後も乏しい。海外ではスタッフがやるような事務作業も研究者がやらざるを得ないし、設備が老朽化しても設備更新も簡単にできない。
 そんな状況で「中国であれ、どこの国であれ」、『あなたを准教授(あるいは教授)で採用します』『研究予算もスタッフもきちんとつけます』というおいしい話を持ってきたら誰だってそれに乗るでしょう。中国シンパな訳でも何でも無い。
 日本が「きちんとした待遇を研究者にすれば」、中国への研究者流出など起こらない。現状は例えば研究者の待遇について「あいうえおの5分野」で「1~5」段階で評価すると

◆日本
 あ:5、い:3、う:3、え:5、お:5
◆中国
 あ:3、い:5、う:5、え:5、お:3

で「日本も中国も『分野が違う』とはいえ5評価が3つ、3評価が2つだがどっちにしようか、悩ましい」なんて話ではなく

◆日本
 あ~お:全部3
◆中国
 あ~お:全部5

ぐらいの段違いの差がある話でしょう。
 普通の人間なら「日本の研究環境が悪いのは問題だ、改善しよう。予算を増やそう」となるでしょう。しかし、産経らウヨは、この記事のように「なぜ日本から出て行って外国で研究する。愛国心がないのか」と罵倒を始め「日本人研究者が中国に流出しないよう法律で規制できないか(待遇改善で流出阻止ではない)」と言い出すから呆れます。どれほど気が狂っているのか。

 世界は、米国を中心とした「民主主義国家」と中露を主軸とした「強権国家」が対峙する新たな冷戦時代に突入した。

 バイデン政権はそう「アピールしています」がデマも甚だしい。
 そもそも「米国が付き合ってる国(米軍基地を置いているなど)」にも「王政のサウジ」「軍政のエジプト」など「反民主的な強権的国家」がありますし、「中露と付き合いのある国(貿易など)」には「民主国家の英仏独」などがある。
 中露と付き合う「強権的国家」にしても「ソ連がリーダーだったワルシャワ条約機構」等とは違い、「中露をリーダーとしている」わけではない。単に「国益の観点から今は中露と付き合っている」に過ぎません。何らかの理由でいつ「中露から離れても」不思議ではない。
 例えば、中露が加盟国の

上海協力機構 - Wikipedia
加盟国
 中国、ロシア、カザフスタンタジキスタンキルギス(1996年の設立当初からの加盟国)、ウズベキスタン、インド、パキスタン、イラン
BRICS首脳会議
 ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成

において「大国中露の存在感は大きい」とはいえ、「ソ連がリーダーだったワルシャワ条約機構」等とは違い、中露は「リーダー国」というわけではない。大体、産経も「ブラジル」「インド」「南ア」を「反民主主義の強権国家」とは言わないでしょうが、であるならば、これらの国が「中露とともに上海協力機構BRICS首脳会議といった国際機構を構成していること」をどう説明するのか。
 「おめでたい」のは「中露をリーダーとする強権国家」VS「米国をリーダーとする民主国家」という『事実に反する与太話』をする産経の方でしょう。


【産経抄】1月1日 - 産経ニュース

「(年末年始の)帰省や旅行についてはオミクロン株の動向を踏まえ、慎重に検討していただくようお願いする」。
 (ボーガス注:12/24に)岸田文雄首相はこう呼びかけ、自身の地元の広島県への帰省を取りやめるとも語った。
▼国民はこの2年間、マスクや手洗いを徹底して自粛に努めてきた。(ボーガス注:コロナ感染者が大幅に減り、緊急事態宣言も解除されて)ようやく離れて暮らす親族たちに会えると航空機や新幹線の予約も済ませた頃になって、冷水を浴びせるようなまねはどうか。節度を守る国民をもっと信用していいはずである。
▼抄子も十分気を付けつつ、久しぶりに里の正月を味わうつもりでいる。

 「24日では自粛要請が遅すぎる。もっと早くできなかったのか」というなら産経に同感ですが「そもそも帰省を自粛しなくていい」というなら反対です。
 いずれにせよ、産経のこの記事自体が「12月中に書けよ」という代物ですが(苦笑)。

*1:中露はともかく北朝鮮は絶対に勝てないでしょう。

*2:スタッフの雇用には当然人件費が発生しますのでね